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朝夕、めっきり冷えこむ季節になってまいりました。今年は新型コロナウイルスの流行が世界中に広がるという誰もが想像しなかったことが起こり、不安の中で自粛生活を余儀なくされました。人の集まりを控える流れが続く中、季節の移ろいが早くも感じられ、時間がかえって深くなっているように思われます。
今回は、陰暦晩冬の十二月下旬、人形浄瑠璃や歌舞伎で必ず上演されます「八百屋お七」、この事件をもとに作られた小唄「本郷二丁目」と浅草の、年の市の賑わいを唄った「歳に一度」の二曲をご紹介いたします。
本郷二丁目
本郷二丁目の八百屋の久兵衛が、娘のお七とて釜武が婿入り
折りも折り、嫌おてその家をかけ出す
お寺は駒込吉祥寺
小姓の吉三に惚れたとさ
この小唄は実際にあった「八百屋お七」の事件をもとに歌舞伎になった「松竹梅雪曙」ともとに作られたもので、江戸中期の作品です。
内容は、駒込の吉祥院の小姓吉三郎は、檀家の八百屋久兵衛の一人娘お七と人目を忍ぶ仲となります。ところが、久兵衛は窯屋武兵衛から三百両を借りており、三百両が返せぬため、やむなく武兵衛の入り婿を承知させられてしまいます。十二月二十八日、固めの盃が交わされることになりました。折りも折り、お七は紛失した宝刀「天国」を釜武が所持していることを知り、元は侍だった吉三に知らせようと家をかけ出しますが、午後十時を過ぎて、町の木戸が閉ざされてしまい、行けなくなってしまいます。
何とか木戸を開けてもらって、吉三に会いたい一心から、火の見櫓に上って半鐘を打ち鳴らすという内容です。
実際、お七は放火していて、当時放火の罪は厳しく、火炙りの極刑になっております。いわゆる「振袖火事」といわれているもにです。
歳に一度
歳に一度の市土産
笹の葉にお福か弓破魔 羽子板 海老に橙 穂俵
椹木鉢か本桝か
え~え~ 神酒の口
それがぴっかり ぴっかりと
光る縁起物 買わしゃんせ
この唄は明治中期、浅草で年末に年に一度開かれる「年の市」の賑わいを唄っています。
市土産に、笹の葉にお福の面がついたもの、江戸時代から男の子の初正月に贈ったといわれる弓破魔や女の子には羽子板、そして新年の飾りに使う海藻を干して茶色にし、米俵の形にして穂俵や、椹の木で作った檜に似た木材の鉢や、本物の酒を計る桝、神酒の口と言い、ご幣の形になっていて、薄い板で徳利にさす物や、ぴっかりと光る金箔をぬった男根の形をした縁起物まで店に並び、売声も面白おかしく、年末の浅草「年の市」の活気ある風景を唄っております。
自由自在に旅をして、マスクをせずとも笑いあえる日が来るのを夢見つつ、日増しに寒さが募ってまいります。くれぐれもお体に気を付けてお過ごし下さい。
小唄 土筆派家元木村菊太郎著「江戸小唄」参照
稽古場は「料亭ヤマニ」になっております。三味線や小唄に興味のある方、お気軽にご連絡下さい。小唄は江戸小唄や芝居小唄、現代語や外来語など、新しいものまで多彩になっております。また、中日文化センターで講師も務めております。
稽古場「料亭ヤマニ」☎津228・3590。
2020年12月10日 AM 4:55