津観光ガイドネットの西田久光会長(70)が、江戸中期に始まった農民による土の神の民俗祭祀「社日信仰」の県内における現状をまとめた著書『三重の社日信仰の今』の出版記念講演を先月、一志町で行った。主催は一志町歴史語り部の会。県内では消滅しかけているこの民俗信仰を3年半もかけて調査した結果や、世代間ギャップが広がる現代に民俗信仰が地域コミュニティに果たす重要な役割などを語った。

 

講演する西田会長

講演する西田会長

社日信仰 西田会長は2015年に美杉町八知でガイドネットが行った調査の際、仲山神社境内で、農耕に関わる5柱の神名を刻んだ石柱「五神名社日碑」を発見。後に、この碑が民間学者・大江匡弼が、古代中国で行われた社日信仰を日本風に簡易化し天明元年に出版した『神仙霊章春秋社日醮儀』に基づく碑であること。全国で数千基確認されているが最初期の天明期碑は仲山神社碑を含めわずか8例で7番目に古いことが判明した。
西田会長はこれを機に、ガイドネットの吉村武司副会長と共に県内の神社など約800ケ所を昨年3月まで3年半かけて調査。これまでに五神名社日碑系34、簡易型の社日碑系22、その他4の計60を確認。地域的には、中南勢や伊賀に偏在していた。
講演では調査結果について詳細に語ったあと、調査を振り返り、社日信仰の重要性について「明治政府はこの様な民俗信仰は無駄だと邪魔者扱いしたが、決してそうではない。この辺りでも山の神の祭りが残っている所があるが、そういう地域のコミュニティは民俗信仰を通じてコミュニケーションをとることができている。我々の若い頃は『十年一昔』と言ったが今は『一年一昔』と言えるほど時代の移り変わりが早く、世代間ギャップが益々拡大している。その中で地域住民が世代を越え連帯感を持つためのコミュニケーションツールとして継承していけるものは、もう地域のお祭りくらいしかない。地元の名もない神社のお祭りに参加することは非常に需要で、そういう祭りの衰退はそのままコミュニティの衰退に繋がる」と語った。
続いて、多くの神社で社殿や参道を包むようにあり神社の目印にもなっている「鎮守の杜」は、形成に200年はかかると説明。「調査中、大変困った地域が、伊勢湾台風で壊滅的な被害を受けた木曽岬町、伊勢長島の東部。同台風から約60年になるが杜が再形成されていない神社が多いため、見つけづらかった。神社の杜は、形成されたらいかに保全していくかが重要とひしひしと感じた。博物学者の南方熊楠は明治政府の神社合祀令に猛反対し、論文で『神社がなくなるということは、鎮守の杜がなくなるということ。杜がなくなると周囲の生態系が崩れる。神社がなくなるとその地域の人々が精神的支柱をなくし、人々の心や田畑も荒廃する』と大論陣を張ったが、当時とは異なる状況で神社が再建されても簡単には鎮守の杜が再生できないのを見ると、今更ながら熊楠の言葉がしみ込んでくる」とした。
最後に社日信仰で祀られる「土」について「身の回りにごく当たり前にあるものだが、実は貴重な資源。岩が風雨や日光に当たり風化したりして土に変わるが、研究者によると、厚さ1㎝の土が岩から生み出されるのに100年もかかる」と締めくくり、観客から、膨大な年月と労力を費やし希少な調査を行った二人に熱い拍手が送られた。
「三重の社日信仰の今」はB5版167頁。頒価2000円。津観光ガイドネット事務局(アスト津2階、津市観光協会内)、本紙で取扱い。
問い合わせは西田会長☎090・3933・6061へ。

きものひろば・奥田さん(津市久居烏木町)

きものひろば・奥田さん(津市久居烏木町)

昭和59年ごろの旧国道165号の一本松(津市HPより)

昭和59年ごろの旧国道165号の一本松(津市HPより)

国道23号中勢バイパスを超えると旧久居市。国道の歩道を井戸山町、野村町と進んでいく。国道に沿って、店舗が並んでいる。それぞれが個性溢れる飲食店なども多く、時間さえあれば、ついつい立ち寄りたくなる。
津市久居体育館の辺りで国道は高架になっているので、導かれるままに側道に入り、近鉄名古屋線を超えるために歩道橋を渡る。長年、津市を走り回ってきた私もここを歩くのは初めて。階段部分は錆びて塗装されている表面が剥がれ落ち、相応の年季を感じる風貌。多分、地元の人以外は日常的に、この歩道橋を利用することは多くなさそうなので、この上を通った人の数以上に、この下を通り過ぎていった人の方が多いだろう。私も車で高架の上は何度も通り過ぎたことがあるし、下を電車で通り過ぎたこともある。身近な未知が一つ既知へと変わった瞬間と言えるだろう。
高架を抜けると、再び国道の歩道へ。北口町から烏木町へと進んだ後、国道沿いの一軒の店に立ち寄ろうとするが、あいにくの定休日でシャッターが閉まっている。
お休みに、わざわざ連絡するのはばかられたので、少し先でしばらく腰を下ろして休憩していると、スマートフォンに着信あり。すぐに電話を取ると「さっき165号沿いのところに座ってへんかった?」と元気いっぱいの声。そう、先ほど立ち寄ろうとした呉服店・きものひろば社長の奥田浩明さんである。
国道165号沿いに和装させたマネキンが看板代わりに並べられてるのをご覧になられたことがある方もいらっしゃるのではないだろうか。奥田さん自身も明るい性格で地域のイベントで活躍したり、子供たちにバスケットボールを教えたりもしている。後日改めて、国道165号についてお話をお伺いすると「元々久居のメインストリートは、一本松の方の道やしな。今の165号は新しい道で、うちの店も新参者で気が付けば周りの景色もずいぶん変わったなぁ」と話す。この一本松の方の道こそ、旧国道165号で現在の県道24号。一本松とは長らく久居のランドマークとして、愛されていた松の木のことで15年ほど前に伐採され、今は石碑を残すのみ。津市のHP上の「津市の今昔景観集~久居編」に一本松の姿と共に当時の国道沿いの活気ある姿が確認できる。国道の今昔もまた、旅に彩りを添えてくれる。(本紙報道部長・麻生純矢)

◆松菱「第13回さくらの絵・写真コンクール」への応募作品募集中 応募締切3月2日㈪。受付場所は1階案内カウンター。作品は、郵送でも受け付ける。〒514─8580、津市東丸之内4─10、㈱津松菱営業推進部宛てへ。展示期間は3月11日㈬~4月19日㈰、松菱店内特設会場にて。入賞者には表彰と賞品を贈呈。また、応募者全員に、作品返却時に参加記念品を贈呈。作品サイズ=画用紙(8つ切りサイズ以上)縦・横・画材・紙質は自由。写真はA4または6つ切りサイズでプリントしたもの。出品点数一人様5点まで。※未発表のオリジナル作品のみ。画用紙は1階案内カウンターで用意。
◆東日本大震災チャリティーコンサート 3月7日㈯13時半より。専琳寺にて(津市久居寺町1234番地)。演奏者=フルート…伊藤三五、ヴァイオリン…中村葉子、ヴァイオリン、ヴィオラ=足立順子、ピアノ…蔡明日香。演奏曲=モーツアルト作曲「魔笛」、トルコ行進曲、荒城の月、川の流れのように他。連絡先・河野さん、専琳寺☎津256・3625。

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