三重県と奈良県の県境

三重県と奈良県の県境

国道を歩く人を目で見送る

国道を歩く人を目で見送る

休憩に立ち寄った道の駅「宇陀路室生」

休憩に立ち寄った道の駅「宇陀路室生」

いよいよ三重県と奈良県の県境。この旅も、ここからがようやく本番と言っても良いかもしれない。名張市と接しているのは、奈良県宇陀市の旧室生村にあたる市域。室生と聞くとすぐに思い浮かぶ人も多いと思うが、女人高野として名高い室生寺もある。
宇陀川に沿って走る国道沿いは、のどかな田舎の風景が広がっている。もう慣れたとはいえ、歩道は途切れがちで、大型車の往来も盛んなことから気を引き締めて進んでいく。以前に国道163号を踏破した時も思ったが「こんな無謀なことをしているのは、自分だけだろう」という根拠がない自負があった。165号についてもそうだろうと慢心していた。しかし、県境の少し手前付近で、年の頃では40代半ばの男性が国道を歩いてくるところ目撃した。歩きやすい服装でリュックサックを背負っている。なんらかの事情で、やむを得ず歩いているというよりは、明らかに自分の意志で歩く能動的な意志を感じる。つまり、彼もお仲間ということだ。お互いに軽く会釈を交わし、すれ違う。少し足を止めて、小さくなる彼の背中を見守りながら、ひょっとしたら関西方面から初瀬街道を歩くのが流行っているのかもしれないなどと妄想を膨らませる。確かに、このあたりは近鉄大阪線が国道にそって走っているので行き帰りも容易。おかげさまで帰りの交通手段を心配する必要がない。
そんなことを考えながら、しばらく進むと道の駅「宇陀路室生」。ベンチに腰を下ろし、少し休憩を取る。国道の方に目をやると、先ほどの男性と同じくリュックサックを背負って歩く60代くらいの夫婦を目撃。平日の昼間に同じことをしている人を二組も見かけたのだ。やはり、旧初瀬街道をルーツとするこの国道を歩くことを楽しんでいる人たちが一定数存在している。国道163号を歩いている時は一度も出会わなかったので新鮮な感覚である。
この道を踏み固めてきた数多の故人たちと心を通わせ、未来への思いを新たにする。今、この国道を歩いている人たちとも道を通じて心が繋がっていると思うと、得も言われない感覚がこみあげてくる。疲れも和らいだところで、私はベンチから立ち上がり、再び国道へと戻る。(本紙報道部長・麻生純矢)