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創業慶応3年(1867)、以来154年間、オーダースーツやオーダーシャツなどを手がける仕立屋の中で全国で最も古い歴史を持つ津市万町津の「丁子屋」の店主、小林一仁さん(55)は、生地選び、採寸、型紙製作、裁断、縫製、仕上げまで手がける数少ない職人の一人だ。
現在は、これらの工程は、ほぼ分業化されており、それぞれが専門職として成り立っている。
一方で、オーダースーツは、お客さんの好みや体形、生地選びなど全体のバランスが重要で非常に繊細な作業と感性が求められる。そのため、「一人の職人が一貫して携わるのが本来の姿」と話す。
小林さんは東京のファッションの学院で型紙(パタンナー)を学んだ後、卒業後は企業に裁断・縫製技術者として勤務。昭和63年に「㈱ニコル」に入社、パタンナーとして腕を振るってきた。その後、9年間にわたり身につけた各技術と洋服学の知識をもって平成4年に帰津。父親の営む丁子屋に専務として入り、同10年には同店の3代目(今は無き本家の丁子屋から数えて6代目)として跡を継いだ。
生来の「ものづくり好き」で、「もし、店を継がなかったら宮大工になりたかった」と笑うが、「お客さんに満足して頂けるスーツに仕上げて着てもらえるのが仕立屋の醍醐味」と現在の仕事に誇りを感じている一方で「一生修練するのがこの仕事」と、感性の磨きを怠らない姿勢はまさに職人の鑑と言える。
そんな小林さんの趣味はクレー射撃。父方の家系は松阪市宇気郷村の豪族。祖父、父親も猟犬(ポインター・セッター)を伴い猟師としてキジを獲っていた影響で、自身も銃砲所持許可を取得。本業の傍ら散弾銃で鴨を獲っていたが、子供が生まれたのを機に狩猟は休止した。
以降は気が向いた時に上野市にある射撃場で的(クレー)を射止めに行くのが一番の気晴らしとか。とはいえ、年々必要性が強くなるシカなどの害獣駆除を担う猟師の高齢化などで、いづれは小林さんが地域の山や農業資源を守る役を担う時代も来そうだ。
2021年5月27日 AM 4:55
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