

検索キーワード




津市東丸之内の百貨店「松菱」は9月から来年3月にかけて、首都圏の百貨店で三重県内の食品業者を集めた「三重の食フェア」を開く。県の受託事業として、新型コロナで苦戦が続く業者の販路開拓を支援するだけでなく、松菱も業者とのつながりを深め、自社の品揃えを充実させる。百貨店が他百貨店で催事を開くことは全国的にも珍しく、「地域商社」という新たな役割を打ち出す取り組みに注目が集まる。
同フェアは、三重県から受託した販路開拓事業として松菱が首都圏の百貨店の食品売り場の一部や催事場を借りて行うもの。県内食品業者を募り、県内産の弁当、惣菜、菓子などを販売する。参加希望業者は、松菱に出店料を払う形だが、行政の補助が受けられるので、交通費などの出店コストが軽減されるのも特徴。出店先は日頃から松菱と付き合いがあり、協力を求めやすい首都圏の百貨店が中心。出店スケジュールは、9月1日から松屋銀座店=東京都=を皮切りにスタート。京王百貨店新宿店などで来年3月まで開催していく。
多くの客が訪れる呼び水となる物産展など、百貨店の催事は他売り場への集客目的でも開かれるため、同フェアのように他百貨店で開くという形は全国的に見ても非常に珍しい。参加する県内食品業者にとって、大都市との販路拡大になるのはもちろんだが、大都市の百貨店にとっても、地方の良質な商品を集めた催事を開けるのでメリットは大きく、松菱と商圏が重なっていないため競合にもならないという。松菱としても地元業者とのつながりを深めて自社の品揃えの強化が図れるだけでなく、同フェアでの売れ行きを参考にしながら県内業者と商品の共同開発も検討していく。
既存の考え方に捉われない新たな試みに対する反響は大きく、首都圏の百貨店の担当者や出店希望業者からの問い合わせも多数寄せられている。現在、東京、神奈川、埼玉の百貨店を中心に調整を進めている。更に、関西などの百貨店でも、同様の催事を開いていく予定。
全国的にも地方の百貨店は大型ショッピングセンターやネット通販の台頭で逆境が続く。三重県内でも、最大5店舗あった百貨店は徐々に姿を消し、今では松菱と近鉄百貨店四日市店を残すのみとなった。時代の流れを読んだ生存戦略を練っていく過程で、唯一県内に本社を置く百貨店である松菱は、地元に根付いた強固なネットワークを生かす立ち回りが求められる。そのような背景で企画された今回のフェアに色濃く打ち出されているのは「地域商社」としての役割だ。
政府が掲げる「地方創生」で地域が誇る物産などを地域外へと広く販売していく「地域商社」の存在はキーとして注目されているが、実践するためのハードルも高く、成功例は決して多くない。
地方の百貨店の新たな在り方と可能性を示す試金石となる今回のフェア。その成功と今後の展開が期待される。
2021年8月12日 AM 10:56
<< JOCジュニア五輪杯へ アサヒSSの永井さんと奥田さん 津城復元ゴルフコンペ 参加者募集 10月6日 一志ゴルフ >>