2021年9月

神武天皇陵

神武天皇陵

 

JR畝傍駅を過ぎると国道165号は、国道24号と合流。京都市と和歌山県を結ぶこの国道は以前、国道163号を終点から起点まで踏破する旅の際に、少しだけ通ったことがある。なんだか旧友と再会したような気持ちになる。
そのまま国道を南へ進むと、大和三山の最後の一つ。畝傍山が見えてくる。この山の麓には、初代天皇・神武天皇の宮があったとされ、神武天皇を祭る橿原神宮、神武天皇陵などがある。世界でも類まれな2681年もの月日を積み重ねてきた皇室の歴史を刻んだ神武天皇即位紀元(皇紀)。その始まりの地である。国道から畝傍山を眺めていると、津市からここまで国道を遡ることが、日本の歴史を遡るような気持ちになってしまう。私はどこまでも単純で浅はかな人間だ。
ただここから大阪へ向かう国道にいささか不満を感じている。というのも高架化された自動車道として整備されているため、歩くことが叶わないからだ。しばらく国道に沿った側道を延々と歩くこととなる。山間部を走る区間が多かった国道163号ではこのようなことは無かったが、人口の多い市街地を走るという事情の違いがそうさせるのだろう。近くて遠い存在として傍らにそびえる国道に複雑な思いを抱き

畝傍山山頂から見る国道165号

畝傍山山頂から見る国道165号

ながら、側道を歩き始める。「会えない時間が愛を育む」。婚活アドバイザーでもある私は、もっともらしい言葉で自分の心を慰める。いつ再び側道ではなく、国道をこの足で踏みしめることができるのだろう。不満は不安へと変わっている。
後日、追取材のため、橿原神宮やその周辺を訪れた。明治に創建された橿原神宮の歴史自体はそれほど長くはないが、広大な境内は穢れなく厳かな神域。それを取り囲む鎮守の森が広がっている。神武天皇陵も非常に厳かかつ整然とした神域。連綿と続く我が国の原点を垣間見ると、不心得者の私ですら、思わず背筋が引き締まる。古の大王は時の彼方で何を思うのだろう。
その後、境内にある登山道から畝傍山の山頂をめざす。標高199mと高くはない山だが、盛夏ということもあり、頂上へ登った頃には汗だくに。黒いカーディンガンの表面にはうっすらと白い塩が浮かんでいる。山頂から北を走る国道165号をじっくりと眺める。側道を歩いた時は、国道が私を見下ろす立場であったが、今度は私が見下ろす立場である。国道を歩けないことを勝手に「裏切られた」と認識し、復讐心をたぎらせている自分は、まるで自分を捨てた許嫁お宮を恨む金色夜叉の貫一のようではないか。我に返ると深刻に考えている自分が余りにも滑稽で思わず、口元がゆるむ。
国道の側道を歩く旅も結果を先にお話すると、楽しいものだった。次回からはそれを紹介するとしよう。
(本紙報道部長・麻生純矢)

今年9月に開催を予定していた劇団津演の秋公演「井上ひさし作・仇討」は新型コロナウイルス感染症拡大防止のため延期。来年1月29日㈯・30日㈰・お城ホールで開催される予定となっている。

経営上の理由からか、米国の報道は民主党寄りが多く、我が国のメインメディアもその受け売りがほとんどである。
この事は先の大統領選ではっきりしたが、これではファクトが恣意的に解釈される可能性が残り、トータル・バランスを重視するならば、共和党寄りのフォックス・ニュースもチェックする必要がある。
さて、今年5月、民主党のバイデン大統領は米国の情報機関コミュニティに対し、90日以内に新型コロナウイルスのデータを評価して「決定的な結論に近づくことができる」報告書を作成するよう指示した。だが、8月27日に報じられたところによると、自然発生説、武漢研究所流出説、どちらにも意見集約はできなかった。4つの情報機関と国家情報会議(NIC)は、確信度は低いながらも動物からの自然発生だとし、FBIは中程度の確信度で研究所からの流出だとし、CIAなどの3つの情報機関は証拠不十分だとした。
すべての情報機関の意見が一致したのは、2019年12月に中国武漢市で最初のクラスターが発生したこと、その前の遅くとも同年11月までに最初の小規模曝露を通じて人間に感染していたこと、そして、生物兵器として開発されたものではないとの見方。また、ほとんどの情報機関は、確信度は低いながらも、遺伝子操作(機能獲得研究)ウイルスではなかったと評価したことである。
これに先だつこと8月1日、米下院外交委員会のマイケル・マッコール筆頭理事(テキサス州・共和党)は、83ページにも上る詳細な調査報告書「COVID─19の起源 武漢ウイルス研究所の調査」を発表していた。日本のメインメディアは殆ど取り上げなかったが、要旨は以下の如くである。バイデン報告書はこれを超えることはできなかったのだ。

[マッコール報告書が主張するエビデンス]

ウイルスやコウモリやネズミから採取したサンプルなど重要な情報が記載されている莫大な量のデータベースが、2019年9月12日の深夜に突然消去され、研究所はその理由について明確な説明をしておらず、トップ研究者の石正麗氏の説明には一貫性がない。報告書は、9月12日以前に研究所から新型コロナウイルスが流出したとみている。
最初の感染が起きる2カ月半前、研究所では危険廃棄物処理システムや空調システムの改修が行われていた。運営が開始されて2年も経っていなかった新しい施設であるにもかかわらずである。空調システムの修繕代は約660ミリオンドル(6億600万ドル約668億円)。報告者は、これらのシステムが正常に機能していなかったために、新型コロナウイルスが流出したのではないかとみている。
2019年10月に、武漢で〝ミリタリー・ワールド・ゲーム〟という軍事関係者のスポーツ大会が行われ、100カ国以上の国々から9000人以上のアスリートが参加。ルクセンブルグの選手は、武漢の空港に着くなり体温を測定された。また、カナダの選手は人口1500万人の武漢のロックダウン状態を奇妙に感じたが、到着12日後に発熱、悪寒、吐き気などに襲われた。帰国便では60人のカナダ人選手が飛行機の後部席に隔離され、咳や下痢などを発症した。報告書は、最初の感染が報じられる前に、少なくとも4つの国では新型コロナウイルスに類似した患者が既に現れていたことから、このスポーツ大会が初期のスーパー・スプレッダー・イベントの一つになったのではないかとみている。
2019年の9月と10月に撮られた武漢の衛星写真によると、研究所から6・5マイル以内にある5~6の病院の駐車場に駐車する車の数が大幅に増加していた。武漢では同時期、新型コロナウイルスに似た症状を見せる患者が多数出現していた。これらの病院は研究所から地下鉄などの公共交通機関を使って行くことができる。また、研究所の研究者たちは、武漢の地下鉄や武漢国立バイオセーフティー研究所(以下、WNBL)が出しているシャトルバスを通勤に使っていたと思われる。報告書は、最初の感染は2019年の8月か9月に起きていたのではないかとみている。
同年終わりには、中国人民軍の生物兵器専門家が、武漢研究所BSL─4(バイオ・セーフティー・レベル4)のトップに任命され、研究所をコントロールしていた可能性がある。報告書は、その人物がコントロールしていたのならば、それよりも早い時点で中国共産党はCOVID─19の出現を知っており、感染は早くから始まっていたとみている。
研究所は、多くの中国人民解放軍の研究者たちと繋がりがあり、ウェブサイトにもその名前が掲載されていたが、そのリストは2020年5月28日に削除されている。
WNBLのバイオ・セーフティー・レベル4の研究所は、中国とフランスの合意の上に作られたが、中国は2016年、数多くの防護服をフランスに求めていた。フランス側はその数が必要以上に多いと考え拒否したが、このことは、中国が軍事研究をしようとしているのではないかという懸念をフランス国防相内に起こした。
医師が拘留されたり、ジャーナリストが行方不明になったり、中国共産党や研究所の科学者たちは、研究所で行われている研究を隠蔽する行動をとっている。また、サンプルを破壊し、ヒトヒト感染の証拠も隠蔽しWHOの追加調査を拒否している。
これまで科学界では、新型コロナウイルスは遺伝子操作の跡がないので人工ウイルスではなく、自然由来だと主張してきたが、ウイルスの遺伝子操作の痕跡を消す方法は、ノースカロライナ大学のラルフ・バリック博士が2005年に生み出している。報告書は研究所の科学者たちもその方法を使うことができる状況にあったとみている。
BSL─2という低い安全レベルの実験室で、機能獲得実験が行われていたことも隠蔽されていた。このレベルでは、自然由来のウイルスや遺伝子操作されたウイルスが実験室から容易に流出し、市中感染を引き起こす可能性がある。
中国は、これまでコロナウイルスの研究に莫大なリソースをつぎ込んできたにもかかわらず、2020年1月以降、新型コロナウイルスの起源を突き止める努力をしていない。
(次号に続く)
(OHMSS《大宇陀・東紀州・松阪圏・サイトシーイング・サポート》代表)

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