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2021年9月
インテリジェンスが発達している先進6カ国、中国、ロシアでは、新型コロナウイルスワクチンの開発・接種も順調で、国連世界観光機関が今年の初めに予測したとおり、国際ツーリズム復活の兆しも見えてきた。テキサスの友人からも、2カ月連続でテキサスでは死者ゼロとの事である。ところが日本では、まだ蔓延防止や緊急事態宣言などの時間稼ぎレベルだ。何故だろう。
新型コロナウイルスのデータを毎回記録していると、PCR検査や抗体検査、抗原検査の件数が抑えられてきた事がわかる。コロナウイルス感染者は、たとえそれが無自覚・無症状で元気であったとしても、特別措置法で二類に指定した以上、社会から隔離する必要があるからだ。大規模な感染者の洗い出しは、あっという間に医療崩壊につながるからである。
とはいえ、日本が懸念している医療崩壊は、パンデミック初期に諸外国で見られたような、街なかで死屍累々と対峙するものではなく、感染症に対応した限られた医療機関のみである。何故ならば、日本では医師の過半数が個人医院(診療所)を経営しているが、これらは二類感染症には対応できず、大きな病院でも感染症用の病床や機器、担当医師や看護師が限定的だからある。また、全国にあった感染症対策の拠点たる保健所も、結核の撲滅と共に非力となっている(この事は、厚生労働省がほぼ毎日更新している医療機関別の検査件数を見れば一目瞭然だ)。これが日本のコロナ禍における病床不足の原因であり、崩壊が懸念されるのはこの領域なのである。
幸い日本では、まだ特効薬がないにもかかわらず、多くの患者が回復・退院している。これが、ソ連型のBCG接種による所謂「ファクターX」によるものかどうかは分からないが、変異株によって感染確認が急増しても累計死亡率は比例せず、むしろ下がってきているのも事実である。新型コロナは、お年寄り特有の病であるといわれる所以だ。
それでも二類感染症である。密閉、密集、密接の三密を回避し、経済活動も制限しなければならない。安倍前首相は昨年8月28日の辞任会見の冒頭、プロンプターなしで(つまり自分の言葉で)二類から五類へのシフトダウンについて触れたが、結局のところ、それは新型コロナ特措法の延長をもって霧散した。おかげで日本のツーリズム産業は、先の大戦以来の壊滅的な状況である。これは、モノ貿易からサービス貿易の時代への移行期にある世界のツーリズム産業地図を大きく書き換える由々しき事態だ。そのエビデンスは、以前の本稿に訳出したUNWTOの「インターナショナル・ツーリズム・ハイライト2020」にも記録してあるが、コロナ禍の前、2019年の極東における日本のインバウンド収入は、既に中国本土のそれを上回って東洋一となっていた。だからこそ、新型コロナウイルスワクチンの一刻も早い接種による、戦後復興が望まれるのである。
それなのに事態は一向に進捗しない。この日本におけるワクチン接種の遅れについては、接種体制の整備の遅れが原因だとしている。
だが、真相はそれだけではないようだ。5月15日のニューズウィークでは、厚生労働省の契約ミスが指摘されている。すなわち霞ヶ関の役人は、日本が認可してない段階だからと、欧米の製薬会社本社とではなく、話のしやすい日本支社や代理人と交渉していたのだ。それも、買うのか買わないのかはっきりしない前段階としてである。ファイザーのCEOはギリシャで育ったユダヤ系、ビオンテックはトルコからドイツに移住した家庭で育った医師が立ち上げた企業だが、このような多国籍企業である欧米の製薬会社経営陣は、国家の関係よりも契約書と株価だ。それが役人には分からなかったようである。また、薬害エイズ事件のトラウマや11年前の新型インフル・ワクチン供給過剰に対する批判を恐れる厚生労働省としては、法的根拠のない特例を作ったとしても、後から責任は負いたくないという事もある。この省益を守らんとする姿勢が初動を遅らせ、それが日本の国際的なワクチン取得レースの敗因になったのだ。厚生労働大臣は5月21日、特例として日本におけるモデルナ/武田薬品工業とアストラゼネカのワクチン製造と販売を承認したが、何をか言わんやである。
日本はどこで躓いたのか。先ず、役人の「海を渡り、川を登れ(新しい政策構想には、まず海外の事例を調べ、過去の前例を探す)」の政治家説得と世論批判の回避の手法だ。すなわち「前例主義」と「証拠主義」である。加えて、与・野党への献金最高額業界の医師会のリスク回避の姿勢と、WTOの傀儡たる専門馬鹿のメインメディアを通じた御託宣だ。福島第一原発の放射性物質問題の時もそうだったが、日本の偉い先生方には、核兵器や生物兵器に対する知見はない。これらが、日本の観光業、旅行業、飲食業をスケープゴートにし、21世紀のサービス貿易の国際ツーリズムを壊滅的状況に追い込み、そればかりか世代間対立や五輪開催の賛否という、世論の対立にまで至らしめたのである。漁夫の利を得たのは中国共産党に違いない。
では、今後どうすれば同じ轍を踏まずにすむのだろうか。私はAIによるオープンソース・インテリジェンスを提言する。これこそDX(Digital Transformation)の本命だ。もちろん民主主義国である以上、得られる情報は内閣府のV─RESASのように全ての国民が共有できるものでなければならない。そして、その真偽の確認や専門的な裏付けには、多くの現場からの裏付けも欠かせない。この手法は、インテリジェンス先進国では既に試験運用されているとみるのが論理的である。(O・H・M・S・S「大宇陀・東紀州・松阪圏サイト・シーイング・サポート」代表)
2021年9月9日 AM 4:55