少子高齢化によって空き家が社会問題化している。津市でも倒壊の恐れがあり特に危険性の高いものを「特定空家等」に指定。持ち主に対しては書面での通知に加え、直接会って適切な管理を求めるなど地道な努力で着実な成果を上げている。空き家問題は多くの市民が当事者になる可能性があり、決して他人事とはいえない側面がある。

 

平成30年の国の住宅・土地統計調査によると、空き家は全国に約849万9千戸ありと過去最多で空き家率は13・6%。そのうち、賃貸、売却、別荘などの物件を除いた数が約348万7000戸。5年に1回行われるこの調査では毎回空き家は増加。全国各地で管理されない空き家の倒壊などのいわゆる「空き家問題」が広く認知されるようになった。
国は平成25年に施行した「空家対策特別措置法」では、市町村の権限を強化。特に危険な空き家を「特定空家等」と認定し、持ち主が改善や解体に応じない場合は住宅地の税制優遇措置を解除、さらに強制的に解体を行い費用を請求する行政代執行が行えるようになっている。
津市では、倒壊の危険性がある空き家の中でも広く被害が及ぶ危険性がある公道に面した331件を「特定空家等」として、それ以外の危険性のある空き家752件を「特定空家等以外」として認定している。
ただし、これら物件は土地の資産価値が低く、相続登記がされていないケースが多い。登記簿に記されている人物から子や孫まで代を重ねる度に相続人の数が増え続け、全国に散ってしまっているケースも珍しくない。
津市でも認定した空き家に関して、登記情報や固定資産税の課税情報などから所有者を特定。その上で、相続人へ書面の郵送や連絡などを行う。担当職員と所有者が直接顔を合わせて話しをすることも改善を促すうえで重要であるため、県外に足を運ぶこともある。
特定空家等のうち、今年9月末までに改善に至ったのは163件。法律に基づく指導が行われたのが計97件。そのうち30件が改善。税の優遇措置が外れる勧告に至ったケースは計17件で、うち4件が改善。最上級の命令に従わなかったのは1件で行政代執行で解体されている。結果、特定空家等全体の約60%が改善に至っており、「特定空家等以外」は76%が改善。担当職員の地道な努力が奏功している。
これまで市には800件以上の危険な空き家に関する相談が寄せられているが、台風の被害が多かった平成30年度には218件と過去最高。近年は大きな災害に見舞われていないため、令和元年度89件、令和2年度68件、今年度9月末現在で24件と減少している。ただし、空き家は今後も増え続けることは確実で、決して油断はできない。
一方、津市では、使える空き家の利活用にも力を入れており、「空き家情報バンク」を通じて、空き家の売買や賃貸をしたい所有者とを空き家利用者のマッチングをサポート。現在までに登録物件の賃貸と売買合わせて100件ほどが成約している。10月からはサイトをリニューアルして、物件内部を360度画像で見ることが出来たり、遠隔地から物件が見られるデジタル空き家見学会といった意欲的な取組みも企画している。
土地の相続登記は法改正で義務化が決まっており、2024年より取得を知った3年以内に登記を行わないと10万円以下の過料となる。既に相続が発生している土地も対象のため、空き家が建つ相続登記をしていない土地所有者も出来るだけ早く対応をした方が良い。
空き家問題は非常に身近。子供が遠隔地に住んでいて、親の死後は自宅が空き家になるケースなどは顕著な例で、早い段階からどうするかを考えることも、非常に有効な空き家対策となる。
危険な空き家の相談は建築指導課☎059・229・3185。空き家情報バンクは☎059・229・3290。