昨年9月に就任した一見勝之知事による新しい県政がスタートして4カ月。現在、新型コロナウイルス感染症収束に向け全力で対応している。一方でコロナ収束後は、疲弊した県内の産業、観光業等の振興も重要な課題。どのような将来像を描いているのかを知事に聴いた。(聞き手・本紙社長・森昌哉)※インタビューは1月13日に実施。

一見勝之三重県知事

一見勝之三重県知事

人口減少社会に対応   子供が明るく育つ社会に

─現行の長期計画「みえ県民力ビジョン」の第3次行動計画が令和5年度末で期限を迎えます。三重県は昨年、県議会全員協議会で、県の10年先を見据えた長期計画「強じんな美し国ビジョンみえ」(仮称)を策定することを明らかにし、今年6月にも策定する方針です。長期計画は災害リスクや経済の動向、人口減少などの社会情勢を整理し、政策の方向性を記述して「県民が元気に、かつ安全・安心に暮らせる持続可能な地域づくりを目指すとしています。また、県の5年先を見据えた「みえ元気プラン」(仮称)を策定する方針ですが、同プランは長期計画の基本理念を実現するための中期計画と位置付けるとしています。現在までに決まっている骨子をお伺いできますか。
知事 県内の色々な方々のお話を聴く必要があるだけでなく、有識者の話も聴かなければいけません。6月に出せることを目標にしていますが、大切なのはより良いものを作ることなので、更に2、3カ月かけて県民の声をより反映する形になるかもしれません。基礎自治体の皆さんに話を聴いたり、ホームページで原案を見て頂けるようにしようとも思っていますが議論はこれからです。
─災害のリスクも問題になっていると思いますし、人口減少にも取り組む「三重げんきプラン」が重要になりますね。
知事 これから5年間を対象に議論していきますが、10年後にどんな形に、三重県がどうなっていくべきなのか、ファンダメンタルズ(経済活動状況)がどんな形なのかをの見据えて絵姿を描いていきます。10年先は社会の変化など想定できないものも多いので、想定し易い中間点の5年後を見据えてやっていきます。中身について大きいのは、その名の通り三重県に住んでいる人を元気にすること、そして三重県を今後もずっと元気に存続していけるという意味を込めています。人口減少にどう対応していくかも議論していきます。
その前にコロナ対策がある。5年間はコロナ対策と共に自然災害への対応を考えていかないといけないので、安全安心が大きなポイント。加えて人口減少への対応の中に、観光を始めとした産業、移住みたいな施策や集住も議論しなければならなくなると思います。あとは子供の育てやすい社会。人口減少に直接関係はないですが、子育てがし易いだけでなく、子供が明るく育つ社会を作っていかなければならない。便利な社会という意味ではDXもそう。実は災害に強い社会づくりは人口減少対応になる。そういう地域になると、そこに住もうと思ってくれる。
─人口減少は、今日解決する問題でもありません。現状10年後の人口減少は決まっているので、それを補う産業の振興や技術の進歩も必要だと思います。
知事 短期で見れば人口が増えることはないので、減り方を緩やかにしなければならない。そのために生産性革命などをしなければなりません。

 

地の利生かし産業振興   三重県の良い所を全国に発信

─コロナ禍で三重県北部の製造業、南部の農水産業、全域の観光業に大きな影響が出ています。知事は「コロナ禍でも対応できる1次産業の振興を進めたい」と話していましたが、それも含めてコロナ後の地方経済の再生をお話頂けますか。
知事 三重県内での「南北格差」という言葉がありますが、私は地域ごとの特性の違いだと思っています。それに応じた発展の仕方を考えていけば良いと思います。例えば、三重県と東京に賃金格差はありますが、それを同じにしようという人はいません。そこに住んでいて所得が低くても幸せであれば、支出も余りかからないのでそれで良いと思います。

それなのに南北格差をなんとかすること自体に意味があるのか、とは思います。それよりも自分の子供をここで育てたいと思えるようになれば良いと思います。
南の人が不幸せかというと、そうでもない気はします。暖かい南でのんびりくらしている人が寒い北に行ってあくせく働きたいと思わないこともあるでしょう。私も東京で働いている時に三重に居れば、もっと楽だったのになぁと思うことは沢山ありました。それぞれの判断だと思います。
北部の工業製品出荷額は全国第9位、情報デバイスでは全国1位です。なぜ良いかというと中京圏と近畿圏の間にあるため、立地条件が凄く良い。名古屋よりも土地が安い。自然も多くメリットは凄くある。道路網も新名神が整備されたり、東海環状道などこれから整備されていくし、中勢バイパス、北勢バイパスはこれから発展していく。2037年にはリニアができるので、恐らくリニアが通る地域は成長のコリドールというかアベニューというか、凄くよいところになります。空港も新幹線もない三重は今まで交通後進県だったのが、リニアによって一気に先頭に躍り出ることが出来ます。これを使わない手はないです。
ものづくりについても、コロナが収まった後、更に発展させないとなりません。南の方は豊かな自然を生かした農林水産物があり、これを持続可能にしていかなければならない。水産業に関してはサプライチェーンを多様化していくことが一つのポイントです。農業は全県的なので発展させていかなければならない。例えば、三重県の伊勢茶は全国の茶葉生産量第3位だが、三重県の人たちは奥ゆかしいので、前に出していかないが、東京や名古屋などの大都市で、どんどんアピールするべき。
─三重県産の食材が大都市の料亭で使われているといったこともありますよね。
知事 そういったことはどんどん推していけばいい。東京の三重テラスでもっと売ればいいと思うし、大阪にも同じものを作ればいいという気持ちはある。当然、三重テラスも年間で1億円以上のコストが発生して、そのコストを惜しむ意見もあるが、三重県の中だけで生きていければいいが、やがて人口は減ってそうはいかなくなるので、他から色々なものをもってこないとならなくなります。色々なものを作って外に出していくのと同じように、観光では向こうから人が来てくれるようにして稼がないといけない。三重県はその素地を持っている。南は観光資源が多く、もの凄く自然がある。その他の地域でも山歩きや海に入れたりするので、こんなに良いところはない。
津市でも、日本三観音の津観音をもっとPRしないのが勿体ない。日本に三大って名のつくものはそうそうない。私も高田中高に通っていましたが、国宝の高田本山専修寺ももっと出していけばいい。今は外から人が来なくても暮していけるが、平成19年以降人口が減っていることからも経済力が落ちていきます。考え方を変えていく必要がある。そのために観光に磨きをかけていく必要がある。北には鈴鹿サーキットもあるし、長島温泉もある。そういうレジャー施設を活用していけばいいです。

 

 

G7交通大臣会合誘致   コロナ後の観光業の回復図る

─観光業の再建を掘り下げます。知事は2023年に日本で開催予定の主要7カ国首脳会議(G7サミット)の交通大臣会合を志摩市やその周辺に誘致すると発表しました。誘致を通じて新型コロナウイルスの流行で落ち込んでいる伊勢志摩への観光客の回復を図るとしています。今年5月以降に開催都市が決まる予定ですが、具体的にどのような波及効果を見込まれていますか。
知事 関係閣僚会合は過去の開催地のデータから3億円から9億円の波及効果があるといわれています。これに確証はないですが、コロナで落ち込んでいる2023年に開ければ三重県に目が向くきっかけになります。G7ほどではないにしろ大事なポイントになる。これがホップ。次のステップは2025年の関西万博。1970年の万博の時には近鉄が頑張ってくれて沢山の人が三重にも来て頂いた。

その時よりも交通の便が良いのでもっと来て頂けるはず。そして、ジャンプ。少し先にはなりますが、リニア開通の時。それまでに何かあればいいが、人の増える機会になればと思います。
感染状況でGoToキャンペーンは一時停止していますが、コロナが収まってからであれば、なんの遠慮もいりません。これからは一カ所に宿泊場所を決めたら、ある日は伊勢、ある日は伊賀、ある日は熊野古道といった具合に旅をするヨーロッパのような拠点型の観光も進めていきたい。
国内の大都市や海外の富裕層から来てもらえるようになるのが大事。特に中東の富裕層を狙っていくのが大切だと思っています。彼らが暮らしている環境は砂漠なので三重県の南部の魅力を凄く感じてもらえるはず。少し安っぽい表現ですが、暖かくて海があって光がある三重県のプロヴァンスみたいな打ち出し方も良いかもしれない。三重県は環境も良いだけでなく、人も優しいし、言葉も優しい。

脱化石燃料見据えて  新エネルギーと環境施策

─世界はカーボンニュートラル社会に向けて大きな目標を掲げ、各国が固有の事情がありながらも強力に推し進めています。三重県は脱炭素社会の実現に向けた取り組みの一環として、来年度から再生可能エネルギーの導入に向けた調査を新たに行う考えを示し、特に洋上風力発電に関する議論について意欲を示しましたね。将来像としてどのようなエネルギー施策、環境施策をお考えでしょうか 。
知事 三重県の環境施策において大きな柱が三つあります。
一つ目はEV(電気自動車)。県内にはホンダがあり、部品産業の工場ではデンソーやトヨタ車体もある。EVにはリチウム電池に代わる次世代電池として注目される全個体電池にセラミックが使われるため、鋳物産業が参入する可能性がありますが、従来の自動車と比べて部品数が少なくなり、既存のもの使えなくなるので、それどうするかを考えていかなければならない。
あとは四日市のコンビナート。近い将来、化石燃料が使えなくなったら大変なので、どうするのかを考えていかなければならない。水素やアンモニアなど、どうやって対応していくか、四日市と一緒に議論をしていきます。
そして、発電。これから火力発電が無くなって自然再生エネルギーに変わっていく。陸上の風力は色々なところで問題が発生してきているし、太陽光は産廃の問題がある。生きていく道は洋上風力発電しか残っていない。
太平洋側は余り風況の良い場所がないが、電気は必要なため、日本海側から送電網を引くか、少ないですが太平洋側で可能性を追求することになる。その時にブレイクスルーをしていって、今だと着床式を原則で考えていますが、浮体式でできるようにならないかを考えていきます。それが出来れば、水深が深い場所でも発電できるようになるかもしれない。出来るかどうかはわからないが今の時点で考えておかないと。他から送電網で持ってこられれば良いが、送電のロスもある。ロスの少ない技術も開発されているが物凄くコストがかかる。大きな資金を入れるのか、三重県内に適地を探して小規模のウィンドファームをつくるのかってことを考えておかなければならない。それをやろうと思うと今から手を挙げておいた方がいい。いま日本海側で洋上風力をつくるための基地港湾を整備しています。いずれ太平洋側にも基地港湾を作るとなった時に、手を挙げておいて良かったってことになるかもしれない。
─知事は就任時に「前途光明」を掲げておられますが、明るい年になればと思っております。ありがとうございました。

大和高田市の片塩商店街アーケード

大和高田市の片塩商店街アーケード

「3桁国道らしさ」を感じる大和高田市今里付近)

「3桁国道らしさ」を感じる大和高田市今里付近)

意気揚々と私は国道165号を進んでいくが、再びミスを犯す。国道の分岐点を見逃し、近鉄高田市駅方面に3㎞ほど進んでしまったのだ。時間にすると1時間ほどを費やしたが、急ぐ旅ではないし、それもまた巡り合わせ。
好機と捉え、駅のすぐ近くにある片塩商店街をぶらり散策。衣料品や食料品を販売する店や飲食店などが立ち並んでおり、行きかう地元の人々を眺める。更に地域の人たちから親しまれている石園座多久虫玉神社に道中の安全を祈ったりと決して無駄ではない時間を過ごす。おかげで、ここが源義経の愛人として名高い静御前の母の出身地であり、静御前が終焉を迎えた場所と言われていることなども知れた。
前回の行程では、郊外をただ通り過ぎただけなので、大和高田市の印象が大きく変わった。ほどよく田舎だけれど、生活に必要な商業施設などは一通り揃い、電車で大阪方面にも通勤や通学もしやすい。字面で認識していたこれら情報が実体を持ち、自分の心の深みへと沁み込んでいくのがわかる。まさに百聞は一見に如かずである。
間違えた国道の分岐点まで戻ると時間は12時前。どこまでいけるかは分からないが国道を北上していく。ここからは道幅も狭く、歩道もない区間が一気に増える。いわゆる3桁国道らしい情緒はむしろ好ましくすらあり、心が踊る。とはいえ、行きかう車を安全にやりすごしながら進むことになるので気は抜けない。ほどなく近鉄大阪線の踏切をわたり、北上を続けると法隆寺方面との分岐点。今度こそ、間違えずに西へと進む。
そろそろ昼食時なので、めぼしい飲食店を探すが地元でもよく見かけるチェーン店が多い。せっかくなら地元ならではの店で食事をしたいが、ここで欲張りすぎると結局、コンビニで間に合わせるという結果が目に見えているのがこれまでの教訓。温かいものが食べたいので、近くのラーメン屋に入ってチャーシューたっぷりのラーメンを注文。水を飲みながら、スマートフォンの地図アプリを開き、今日の目的地の大まかな目星をつける。目的地の第一条件は、歩ける範囲に帰りの電車に乗るための駅があること。幸いにもしばらくは国道と近鉄大阪線はほぼ並走しているので、その心配は必要なさそうだ。しかし、万全な状態の午前と比べると、疲労が蓄積してくる午後は思ったより距離を伸ばせないこともわかっている。ここから少し進むと香芝市で、その向こうは再び大阪府へ突入という流れだ。17時頃には日が暮れてしまうので自ずと行ける範囲は限られてくる。恐らく、柏原市の大阪教育大前駅もしくは河内国分寺駅のいずれかになるだろう。(本紙報道部長・麻生純矢)

手作り甲冑を作って津まつり高虎時代絵巻に参加してみませんか?
県内に伝わる伝統祭りの保存および継承を目的に活動するNPO法人三重ドリームクラブは1月30日㈰13時半~15時半、津センターパレス地下1階オープンステージで「第13回手作り甲冑教室事前説明会」を開く。後援=津市。同教室に参加する前の説明会で、参加者の体験談や、甲冑の着用体験もある。事前説明会に参加条件は無いが、教室を受講するには次の参加資格が必要。
①完成した甲冑を着て津まつりやその他の催しに積極的に参加できる人
②2月~9月まで月2回ほど集まって作業できる人③最後まで根気強く作業を続けて完成することできる人④高校生以上で70歳未満の人
教室の受講者人数に限りがあるので申し込み多数の場合は選考となる。
問い合わせ・申し込みは同クラブ☎津271・9978、FAX059・255・2257。メールの場合はqzo1341004@yahoo.co.jp
尚、場合により中止・延期の場合がある。

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