「新型コロナウイルス特別措置法」の正式名称は「新型インフルエンザ等対策特別措置法」。この法律の目的は、2009年から世界的に大流行した新型インフルエンザ(H1N1亜型インフルエンザウイルス)を契機に、免疫を獲得していない新型インフルエンザ等の病状重篤化が危惧される感染症への対策強化など。成立は2013年の3月で施行は翌4月、初適用は2020年の3月で、新型コロナウイルス感染症に対してである。新型コロナウイルスを 「暫定的に」新型インルエンザと同等にみなし、適応の範囲内とする同法の改正が成立、翌4月、緊急事態宣言が初めて発令された。
この「特措法」の趣旨は、「感染拡大を可能な限り抑制し、健康被害を最小限にとどめる」「社会・経済を破綻に至らせない」であり、「感染を予防し人命を守る対策」と「権利、活動の制限を最小に抑える調整」に必要な権限を規定するものとされる。「新型コロナウイルス感染症を新型インフルエンザ等と同分類にみなす」という暫定的対象拡大期限は2021年1月31日まで(延長を含めて最大2年間=2022年1月31日まで)と定め、昨年1月7日、1年間の期限延長を決めた中で改められ、2月13日に改正法が施行された。
改正法の法的位置づけは、「特措法」の本文に「新型コロナウイルス感染症」を明記することで、期間の制限なく明示され、現況だけでなく、今後の再発生時も視野にした感染抑制に向けた実効性のある法整備が施行できる事である。また、「国と地方自治体間の情報連携」や「権限強化」も盛り込まれた。つまり、「まん延防止等重点措置」の新設、要請に応じない事業者に対する規制、感染者に対する規制、帰国も含んだ海外からの入国者に対する規制である。
しかし、欧州諸国では、新型コロナ対策の規制を次々緩和している。ツーリズムに基づいたサービス貿易の重要性を理解している国ばかりである。イタリアは2月1日から、EUなどから入国する際に求めていた陰性証明が不要である。スウェーデンも9日から国内規制をほぼ全廃。無料のコロナ検査も打ち切りとなり、保健相は「パンデミックは終わったといえるだろう」とする事実上の終息宣言である。
英国も11日から、ワクチンを2回接種した人についてはイングランド地方に入国する際に求めていた検査が不要となり、フランスでは政府報道官が9日の記者会見で、国内の飲食店や長距離鉄道利用時などで必要になるワクチン接種証明が「3月末か4月には撤廃できるかもしれない」と述べている。
アジアにおいても、厳しい規制で知られたフィリピンが10日から、ワクチン接種済みの人については隔離無しで入国を認め、タイも2月1日から、昨年12月からオミクロンで一時停止していた検疫なしの入国が再開だ。
規制解除については一部で批判もあるが、行動制限はいつまでも続けられるものではなく、重症化率が高くなければインフルエンザなどと同じように扱うというのが英国などの立場である。
ところで、中国は世界で最も感染対策が進んでいると主張しているにもかかわらず、そのような動きをアナウンスしてはいない。中国における2019年の経常収支は赤字転落直前だったが、2020年からは劇的に改善した。アウトバウンドによる巨額な人民元流出を懸念しているのだろうか。だが、ワクチンや治療薬を販売する製薬企業でさえ、パンデミック収束を視野に入れ始めている。アストラゼネカは10日、2022年のコロナ関連売上高が2021年に比べ2割ほど減るとの見方を示している。スイスのロシュも、2022年のコロナ関連売上高は2021年比で3割減るとみており、次第にパンデミックからエンデミックへと移行して、売上は4月から6月にかけて減少に転じると予測している。
アフターコロナはサービス貿易の時代である。開国の遅れは周回遅れになるのだ。
(OHMSS《大宇陀・東紀州・松阪圏・サイト・シーイング・サポート代表》)