桜が旅の始まりを彩る(大阪市柏原市)

桜が旅の始まりを彩る(大阪市柏原市)

いよいよ国道165号を遡る旅は締めくくりを迎えようとしている。最後の行程は前回のゴール地点である近鉄大阪線の大阪教育大前駅(大阪府柏原市)から、大阪市北区梅田の新道交差点までの約25㎞。
5時に家を出て、名張駅前に車を停め、電車で大阪教育大前駅まで移動。春休みのため、学生も少なく落ち着いた雰囲気の駅のホーム。改札を出て国道へと戻ろうとしたが、天気予報通りの雨。用意しておいたレインコートを着込み、7時半に出発。天気が悪いことは数日前から知っていたが、年度の締め繰りに旅を終わらせたいという強い気持ちを胸に今日この時に至る。そして、ここまで読者の皆様からもお便りを頂き、沢山の方々が楽しみにしてくださっていることを実感する。そういった皆様のおかげでここまで来られたといっても過言ではなく、もう私一人の旅ではなくなっているのだ。それでは、この旅の終着点まで、今しばらくお付き合い頂きければありがたい。
ちょうど駅近くの土手に植えられている桜が満開。鈍色の空に、濡れた薄紅色がよく映える。まるで最後の門出を祝福してくれているように感じる。出勤するために駅へと向かう人たちを背に、国道165号を大阪市方面へ進んでいく。
間も無く国道25号との合流地点。中勢地域で暮らしている我々にとってなじみの深い名阪国道はこの国道のバイパス。起点は三重県四日市市で終点は165号の起点と同じ大阪市北区の梅田新道交差点。三重、奈良、大阪の主要部を結ぶこの道については以前、同じく津市に終点がある国道163号を踏破する旅をした際にも少しふれたことがある。自動車専用道で走りやすい名阪国道完成に伴い、交通量が少なくなった本道は、伊賀市と亀山市の区間などで道幅が狭くなり、路面の状況も良くないことから「酷道」と呼ばれることもある。この旅が終わったら、歩いてみるのも面白いかもしれないなどと考えている。
柏原市の市街地を進むと近鉄河合国分駅。駅の出入り口から伸びる巨大なグリーンの歩道橋がロータリーを始め、駅前一帯に広がり〝空中回廊〟を形成している。有効に使える土地が狭い中で考え出された知恵だと思うが、この地で暮らしている人にとっては当たり前の景色も、よそ者にはいちいち面白い。
駅を超えると、奈良県から大阪府に注ぐ大和川にかかる国豊橋。大和川は近畿地方を代表する河川の一つ。津市近辺に暮らす人々には馴染みのない川だと思うが、百人一首でも有名な在原業平の歌、「千早振 神代もきかず 龍田川 からくれないに 水くくるとは」は、この川のことを詠んでいる。落語のネタにもされているこの歌だが、今まで龍田川という川が舞台と思い込んでいた。しかし、そうではなく、ここより少し上流にある桜や紅葉の名所として知られた「亀の瀬」という渓谷付近の大和川が「龍田川」と呼ばれていたそうだ。
特に旅先では何気ない風景の中に、無数の気付きや学びが潜んでいる。雨の中進む私の表情は明るく、心も軽い。(本紙報道部長・麻生純矢)