2022年4月

泰良木さん、井分さん、西山さん(左から

泰良木さん、井分さん、西山さん(左から

3月17日~22日、津市栄町の四天王会館のVOLVOXで、創作人形作家の泰良木ゆめさん=津市=と書・篆刻作家の井分潭風さん=鈴鹿市=による二人展「春和景明」が開かれた。
泰良木さんは独学で人形作りを学んでおり、粘土や布などを材料にした人形たちは泰良木さんの実体験に基づく昭和をテーマに人間の心理を描き出している。井分さんは書と篆刻の古典をベースとしながらも、様々な字体や表現法を積極的に取り入れ、文字を書くこと本来の楽しさも伝えている。また、泰良木さんと親交のあった木工芸作家の故・西山英樹さんを偲び、西山さんの妻で元市議のみえさんの協力によって作品を展示。
来場者たちは泰良木さんの懐かしくも温かい人形や、井分さんの自由な心を感じる書、西山さんの緻密でリアリティ溢れる木工芸と三者三様の作品を楽しんでいた。

自慢をするつもりはないが、私の家事は手早い。掃除にしても料理にしても短時間で片付ける。半時間あれば三品四品の皿小鉢をテーブルに並べられる。家事の質についてはこの際言及を避けたいが。
私の子どもの頃の日曜日は家事のお手伝いと決まっていた。今どきそんな小中学生がいるだろうか。母は、「近所の〇〇ちゃんはこんなにちゃんと手伝いをする」と言うのが常で、女の子は学校の勉強より家事での評価の方が重要だった。そんな家庭があっただろうか。お手伝いはしつけだったのか、母が楽をしたかっただけなのか。
その頃、祖母がよく口にした言葉に、「遅いことは猫でもする」というのがあった。「猫の手も借りたい」という言葉もあるのに、「遅いことは猫でもする」とはどういうことかと思いながらも、私はしかたなく従っていた。仲が良いとは言えなかった嫁姑でも、女の子に家事をしつけることでは一致していたらしい。おかげで手早くはなった。
今朝も夫と並んで洗濯物を干していたら、夫が一枚干す間に三枚をきれいに干してしまった。すると、「どうしてそんなに早くする必要があるのか」と言われた。不要不急の暮らしなのに。
私はすかさず言い返した。「遅いことは猫でもする」祖母に教えられたその言葉が、身に沁みついてしまっている。      (舞)

桜が旅の始まりを彩る(大阪市柏原市)

桜が旅の始まりを彩る(大阪市柏原市)

いよいよ国道165号を遡る旅は締めくくりを迎えようとしている。最後の行程は前回のゴール地点である近鉄大阪線の大阪教育大前駅(大阪府柏原市)から、大阪市北区梅田の新道交差点までの約25㎞。
5時に家を出て、名張駅前に車を停め、電車で大阪教育大前駅まで移動。春休みのため、学生も少なく落ち着いた雰囲気の駅のホーム。改札を出て国道へと戻ろうとしたが、天気予報通りの雨。用意しておいたレインコートを着込み、7時半に出発。天気が悪いことは数日前から知っていたが、年度の締め繰りに旅を終わらせたいという強い気持ちを胸に今日この時に至る。そして、ここまで読者の皆様からもお便りを頂き、沢山の方々が楽しみにしてくださっていることを実感する。そういった皆様のおかげでここまで来られたといっても過言ではなく、もう私一人の旅ではなくなっているのだ。それでは、この旅の終着点まで、今しばらくお付き合い頂きければありがたい。
ちょうど駅近くの土手に植えられている桜が満開。鈍色の空に、濡れた薄紅色がよく映える。まるで最後の門出を祝福してくれているように感じる。出勤するために駅へと向かう人たちを背に、国道165号を大阪市方面へ進んでいく。
間も無く国道25号との合流地点。中勢地域で暮らしている我々にとってなじみの深い名阪国道はこの国道のバイパス。起点は三重県四日市市で終点は165号の起点と同じ大阪市北区の梅田新道交差点。三重、奈良、大阪の主要部を結ぶこの道については以前、同じく津市に終点がある国道163号を踏破する旅をした際にも少しふれたことがある。自動車専用道で走りやすい名阪国道完成に伴い、交通量が少なくなった本道は、伊賀市と亀山市の区間などで道幅が狭くなり、路面の状況も良くないことから「酷道」と呼ばれることもある。この旅が終わったら、歩いてみるのも面白いかもしれないなどと考えている。
柏原市の市街地を進むと近鉄河合国分駅。駅の出入り口から伸びる巨大なグリーンの歩道橋がロータリーを始め、駅前一帯に広がり〝空中回廊〟を形成している。有効に使える土地が狭い中で考え出された知恵だと思うが、この地で暮らしている人にとっては当たり前の景色も、よそ者にはいちいち面白い。
駅を超えると、奈良県から大阪府に注ぐ大和川にかかる国豊橋。大和川は近畿地方を代表する河川の一つ。津市近辺に暮らす人々には馴染みのない川だと思うが、百人一首でも有名な在原業平の歌、「千早振 神代もきかず 龍田川 からくれないに 水くくるとは」は、この川のことを詠んでいる。落語のネタにもされているこの歌だが、今まで龍田川という川が舞台と思い込んでいた。しかし、そうではなく、ここより少し上流にある桜や紅葉の名所として知られた「亀の瀬」という渓谷付近の大和川が「龍田川」と呼ばれていたそうだ。
特に旅先では何気ない風景の中に、無数の気付きや学びが潜んでいる。雨の中進む私の表情は明るく、心も軽い。(本紙報道部長・麻生純矢)

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