4月より不妊治療の公的保険適用が拡大しているが、津市でも三重県の助成制度を活用した特定不妊治療費補助制度を始めるため、6月の市議会に補正予算案を提出する。第二子以降の胚移植に伴う費用助成の回数追加と、先進医療で発生する費用の助成を行う。ライフスタイルの変化に伴う晩婚化が進むにつれ、不妊治療を行う夫婦も増えているが重い経済的負担を和らげることは有効な少子化対策といえる。

 

今回の案で津市が利用するのは三重県の助成制度。これは不妊治療の保険適用に伴い、同保険制度を補う助成を実施する市町の費用の2分の1を補助するというもの。
不妊治療は保険適用されたものの、受精卵を培養した胚を胎内に移植する「胚移植」は一子あたりで40歳未満は6回まで、40歳以上43歳未満は3回までの回数制限が設けられている。
津市が行う助成事業の内容は2つ。1つ目は第二子以降に前述の保険適用回数を超えた場合に助成を行うというもの。具体的には保険と違い、一子毎のリセットは無く通算8回まで。採卵から胚移植を行う場合は一回につき30万円の助成。胚移植のみの場合は1回17万5千円の助成を行う。
もう一つは保険診療と組み合わせて実施できる保険適用外の先進医療への助成。助成は治療費の70%で上限5万円。胚の培養の精度を高めるタイムラプス、不妊の原因にもなる子宮内細菌の状態を検査するEММA・ALICEなどが対象。
事業の対象は今年4月1日以降に開始した治療。治療開始時点で法的な夫婦または事実婚の夫婦。夫婦の一方、もしくは双方が津市の住民基本台帳に記載されている人。市はこれら事業903万円の補正予算案を提出。380件の助成を想定している。
近年では晩婚化が進んだこともあり、不妊治療は非常に身近になった。市内の不妊治療を行っている病院の待合室には、多くの人たちが訪れ、時に診察室から涙を浮かべながら出てくる女性の姿も見かける。そういった苦しい治療には、精神、肉体だけでなく、重い経済的な負担がつきもの。それを理由に、我が子に恵まれないまま治療を断念してしまう夫婦もそう珍しくはない。今回の助成制度案は経済的な負担を和らげるという観点から、有効な少子化対策といえる。
ただし、不妊治療で第一子を得た夫婦は前述の苦労を味わっていることも多い。積極的に第二子以降の不妊治療に取り組むケースはそれほど多くないとみられる。

そういった観点から考えると、第二子以降に絞った胚移植の助成の効果は限定的になる可能性は否めない。
今回の議案が6月の市議会で可決され助成制度がスタートしたとしても、それとは別に、待望の第一子を経済的な理由で諦めざるを得ない夫婦が少しでも減るような方策も、新たに検討していくべきだろう。
少子化対策は、市政の未来を考えていく上で避けては通れない重要課題のひとつ。津市の未来を見据え、よりきめ細やかな取組みが広がっていくことにも期待したい。