今年12月に『民生委員・児童委員』の全国一斉改選が行われるが、津市でもなり手の確保に頭を悩ませている。担当地域で暮す高齢者の見守りや児童虐待などに対する見守り役として活躍を期待される場面が増える一方で、年々欠員が増えているのが実情。 改選に向け、地域住民から委員を選出する自治会も人選に力を注いでいる。

 

民生委員は、市町村の推薦を受けた上で、国から委嘱を受けた非常勤の地方公務員。各市町村ごとに定数が定められており、細かく割った区域ごとに配置される。児童福祉法によって児童委員も兼任する形となり、共に任期は3年。
職務の内容は、委員自らが暮らす地域の高齢者や子供たちへの日々の見守りや相談に応じたり、必要な行政サービスとの橋渡し役もこなす。地域コミュニティの希薄化に伴い、高齢者の孤独死や児童虐待が社会問題化している中、その役割に期待が集まっている。
津市では、委員一人に対して基本的に170~360世帯を受け持つ。しかし、プライバシー意識の高まりや、個人情報の取り扱いに伴う法整備が進められる中、十分な活動をするために必要となる地域の正確な状況を把握するのが困難となっている。
活動のしづらさや仕事の定年延長などの理由もあり、なり手不足は全国で深刻化。津市でも定数617人に対し28人の欠員が出ており、今年4月1日現在で589人。充足率は95・46%だが、改選ごとに約1%ずつ下がっており、欠員は隣接地域の委員がカバーしている。国は委員の年齢に基75歳未満と基準を定めているが、津市では前回の改選の際には約10%が75歳超。後任が決まらない地域が増えれば、更に割合が高まる可能性も。
また法改正によって、企業などの70歳定年が努力義務化され、今後更に人員の確保が難しくなっていくのは確実。両委員の仕事の性質上、活動期間が長くなるほど、地域住民とのコミュニケーションが円滑となりやすいが、津市でも1任期3年で職を離れてしまう人は多い。現在では改選に向けて各自治会が適任者選びに苦慮している。
こういった現状に対し、津市民生委員児童委員連合会会長の速水正美さんは「本来の民生委員の役割は、地域住民の見守りと必要に応じた行政サービスとの橋渡し。しかし、近年では専門的な内容の研修への参加が求められ、それも負担増の原因になっている」と指摘。また、児童委員として活動を行う際、個人情報保護を理由に担当地域の子供のリストが提供されず、正確な情報の把握が困難な現実にも直面している。加えて、来年から「こども家庭庁」が設立されることもあり、時代に即した専門職を新設するなど新しい対応をしていく必要性も訴える。
地域を支える意義の大きい仕事であることは疑う余地もなく、津市は「まずは出来る範囲でやって頂ければ」と呼びかけると同時に、研修の見直しといった負担軽減にも務めていくとしている。
欠員を解消するためには、制度の意義を改めて広く伝える必要がある一方、時代の流れが大きく影響しているという現実も無視できない。歴史ある制度だからこそ、国としても、時代に合った在り方を改めて考えていくべきといえるだろう。