日が沈もうとする頃に毎日ウォーキングに出かける。虫の声、鳥のねぐら入り、夕焼け。暑くも寒くもなくて、今が一番ウォーキングに適した季節だ。歩けばお腹も空いて夕ご飯が美味しくなる。
灯りのついた窓の下を通ると夕食の匂いを感じることがある。カレーだったり、肉だったり、今夜のメニューが分かることもあって楽しい。
賑やかな声が聞こえてくることも。子どもたちの騒ぐ声。何か訴える子どもを叱るママの声。油の匂いがする。子供の面倒を見ながら料理をするママはたいへんだ。私もそういう時は同じように大声で叫んでいたように思う。
ストーカーのようにそんな窓の下で立ち止まって探っているのではない。道を歩いているだけなのに、声も匂いも換気扇や窓からこぼれてくるのだ。秋の窓は開放的。
排水路からシャンプーの香りが立ち上ることもある。誰かがお風呂に入っている。どぶの匂いと混ざって、もわっと熱を感じる。良い匂いではないが、これも嗅ぎなれた匂いだ。
家々の生活の匂いはどこか懐かしく温かい。忙しい毎日の忙しい時間の暮らしぶりが滲んでいる。ウクライナにもシリアにもこんな生活があるはず、あったはず。銃撃の音や硝煙の匂いのない平和なこの街で、明日も明後日もこんな暮らしが続いていってほしいとつくづく思う。(舞)