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中部電力㈱の「竹原水力発電所」=津市美杉町竹原=が今年10月で完成から100年、来年1月で運転開始100年を迎える。地球温暖化対策の温室効果ガス排出抑制のため、太陽光や風力など再生可能エネルギーの導入が進んでいるが、大正から令和と長い時の中で自然と調和しながら地域の電力を支え続けてきたこの発電所を紹介する。
豊かな自然に囲まれた君ヶ野ダムの麓。雲出川と、その支流・八手俣川の合流地点付近に竹原水力発電所はひっそりと立地している。JR名松線伊勢竹原駅の南付近の鉄橋辺りを通過する際に車窓からも建屋が見えるが、多くの人が何か気付かずに通り過ぎていることだろう。
明治30年(1897)に三重県県下で初の電気事業を行ったのは津電灯で、すぐに県内各地で電力会社が立ち上げられた。三重県は全国的にもかなり早い段階で水力発電が開始されており、明治32年(1899)に新宮水電が鮒田発電所で発電を開始。次々と県南部を中心に水力発電施設が運転を始めており、大正時代に最盛期を迎える。雲出川では、現在の津市美杉町八知に大正6年(1917年)に大勢水力電気が神河発電所で事業を開始(昭和6年に廃止)、同じく大勢水力電気が認可を受け、同社を合併した北勢電気が大正11年(1922年)10月に完成させたのが「竹原水力発電所」。運転開始は翌1月で100年の節目を迎える。現在は中部電力㈱の三重水力センターが運転及び管理している。県内で現在稼働している水力発電所の中では5番目に古い。
竹原水力発電所の発電出力は760kWで約1600世帯分の電力をまかなえる。形式は水路式で、日本の水力発電所に多く使われているフランシス水車を発電に使用している。取水口は、八手俣川の君ヶ野ダム付近にあると勘違いされがちだが、実際は更にその上流にある。取水口から3つの水路橋を経た水路の全長は約3・4㎞。水は発電所背後の山の斜面を下り発電所内に流れ込む。発電の有効落差は83mとなっている。森林セラピーの高束山コースで通る向谷水路橋は建築物としても非常に趣き深いので一見の価値あり。
100年の間に無人化したり、建物を建て替えたり、水車の改造などは行われてきたが水路のルートはほぼ当初のまま。 現代では、地球温暖化対策の温室効果ガス排出抑制のために、太陽光や風力など再生可能エネルギーを用いた発電法が普及しているが、自然と調和する形で100年にわたり、小規模だが電力を安定供給してきた竹原水力発電所は21世紀のキーワード〝持続可能〟の好例といえる。
大正、昭和、平成、令和と時代を乗り越えてきた発電所は、また次の時代に向けて動きだす。
2022年11月10日 AM 5:00