国際的に活動する刻字作家・有石さんの個展、津城復元の会協賛チャリティ展「古代文字をアートに 刻字家有石展・最終章」が11月30日㈬から津市中央の三重画廊で開かれる。会期は12月4日㈰まで。
有石さんは、1968年に長揚石氏(初代・国際刻字連盟会長)に師事。毎日書道展刻字部審査部長・総務部長・陳列部長・国際刻字公募大展審査員・日本刻字展審査部長を歴任。
現在は(公社)全日本印章業協会主催の全国印章技術大競技会審査員、全印協認定印章アドバイザー。白浦惠壽子(別号)として「古代文字で恋文を描く」をテーマに創作活動する。
作風は現代性を表現した作品が多く、漢字圏以外の国々への出品・訪問が目立つ。作品の収蔵先は、チェコ共和国国立美術館・在サウジアラビア王国日本大使館・真言宗総本山高野山金剛峯寺。
海外展出品・訪問国は、米国・イスラエル・オーストラリア・フランス・シンガポール・チェコ共和国・サウジアラビア王国・ポーランドなど計10カ国に上る。
個展は1980年に松菱で第1回を開催して以来、今回で10回目、今回が最終の個展となる。出品数は「天孫降臨」「雪月花」「祈」など珠玉の26点、参考出品2点。その内の1点は25歳の時に制作した500文字(西冷印社記)の作品。
「今後、個展の開催はないので、興味のある方はぜひ観て頂ければ」と話す。
写真の作品「神木(祭神如神在)」=「文明の始まりは象形文字(絵文字)である。古今東西、真理はひとつであるはず。絵画・音楽は万国共通であり、刻字も例外ではない。人種・言語・宗教を超えて、人々に伝わるような、文字を読むのではなく観て感じてもらえるようなデザイン性・空間構成を重視。神木の形をどうするか…全ての枝の先に神を宿らせた。祭神如神在を左右に入れた」と話す。
2022年11月24日 AM 4:55
時刻は17時50分。日没も迫り、薄暗くなった大都会の中心に私は立っている。周囲には、仕事を終えて家路を急ぐ人の姿が目立つ。ここは梅田新道交差点。目指し続けてきた国道165号を遡る旅の目的地である。津市にある終点からここにある始点まで遡り続けてきた距離は約120㎞。途中で道を間違えた分も加えてざっと計算すると、ここまで計9日間で140㎞ほど歩いてきたことになる。そして、この場所に立つのは実に3年ぶり。前回は同じく津市に終点がある国道163号を遡る旅をしていたのだが、今回と逆方向の東から来た。今回は国道の最後の区間が一方通行のため、並行する大阪市道南北線を北上。土佐堀川と堂島川を渡り、関西を代表する歓楽街・北新地を越え、国道2号を西へと進み、梅田新道交差点へと入ってきた。
競い合うように雨空へと向かって伸びる高層建築物の谷間であるこの交差点の一角には、ひっそり佇むように小さなモニュメントが建てられている。これは「大阪市道路元標」。道路元標とは、国道の起点や終点に設置される標識で、ここは東京から大阪を結ぶ国道1号の終点、ここから北九州に向かって走る国道2号の起点など、4つの国道の起点と3つの国道の終点がある。その中に、津市に終点がある国道163号と165号も含まれている。この旅を振り返ると、①津市雲出本郷町の国道終点から久居IC②久居ICから西青山駅③西青山駅から名張駅④名張駅から榛原駅(宇陀市)⑤榛原駅から長谷寺駅(桜井市)⑥長谷寺駅から桜井駅⑦桜井駅から上ノ太子駅(大阪府太子町)⑧前回が誤って国道のバイパス方面へと進んでしまったので本道を通るため、大和八木駅から大阪教育大駅(大阪府柏原市)⑨柏原市から大阪市の終点という流れ。(駅は全て近鉄)。
春夏秋冬と歴史に彩られた道中での出来事は全て鮮明に記憶している。徒歩は自動車と比べると10分の1以下のスピードしか出ない反面、旅路の景色、天候、気温、湿度、においなどの情報を文字通り五感で味わえる。新幹線や高速道路などで移動すると一日で多くの目的地を巡ることができるので時間効率は良く、あっという間に次の街へ移動できる。しかし、矢継ぎ早に新しい情報が入ってくるため、脳の処理速度が追いつかず消化不良起こすことがままある。その点、徒歩旅は多面的な情報をじっくりと咀嚼しながら、飲み込み、自らの血肉へと変える時間を得られるのが最大の魅力といえる。
事実この旅を終えようとしている現在、旅の前には、ほとんど知らなかった土地に対する知見を得ただけでなく、愛着さえ抱いている。
モニュメントを眺めていると、旅路での思い出が次々と蘇り、熱い思いがこみあげてくる。スタートから2年以上。長いようで、あっという間だった。年度を締めくくるこの日に国道165を遡る旅を締めくくることができ、えも言われぬ達成感が心を支配している。だが、明日どうしても行ってみたい場所があるので、今日は宿がとってある。疲れた体に鞭を打ち、なんとかホテルに到着した私は、朝まで泥のように眠った。(本紙報道部長・麻生純矢)
2022年11月24日 AM 4:55
三重大学の近くの赤信号で車を止めていたら、バタバタとヘリコプターの大きな音が聞こえた。白地に赤のヘリコプターが頭上を過ぎ、大学病院の方へ飛んでいった。ドクターヘリだ。
ドクターヘリという言葉を知ったのはアメリカのテレビドラマだったろうか。救急の医師や看護師がヘリコプターで患者のもとへ駆けつける緊急救命の最前線である。
病院の方に目をやると、白い建物に緑色の文字が鮮やかだ。あそこで亡くなった友人がいる。人がいつか去っていくのは当たり前のことだけれど、救える命なら救ってほしい。それが見知らぬ人であっても。
さっき飛んでいったヘリコプターにも命の危機にある患者さんが乗っていただろうか。救命できるうちに病院に着いたかと気になった。
ヘリコプターは速い。道路状況の影響を受けないし、救急車よりずっと速い。三重県の端までも何十分かで到着し、患者さんを治療しつつ病院に搬送できるという。素早く手当を受けられるところが心強い。
機器でいっぱいの機内には、きっと志高くてカッコいい医師や看護師が乗っているだろう。どんなことが行われているだろうかと想像する。それは私の中でドラマになってしまうが、現実に命に係わる責任感と重圧は生半可なものではないと思う。乗務の方々を尊敬するばかりだ(舞)
2022年11月24日 AM 4:55