八尾市内を北西に進むと近畿自動車道の亀井跨線橋。この区間は天理吹田線という名称で、その名の通り奈良県天理市と大阪府吹田市を結んでいる。この道を北に行けば、以前に踏破した国道163号にも繋がっている。二つの旅が交差する地点を前にすると心が踊る。
この跨線橋をくぐると、いよいよ大阪市平野区に入る。ゴールは確実に近づいている。平野区は大阪市の中央に位置し、最も人口が多い区。この区に足を踏み入れるのは初めてだが、以前から不思議なご縁を感じている場所でもある。
ご存じの方もいると思うが、私は新聞記者をしながら、結婚相談所のアドバイザーもしている。よくどちらが本業かを尋ねられるが、どちらも本業である。そして、街で起こっている問題を分析し、解決方法を提案していく新聞記者の仕事と、一人ひとり異なる条件や悩みへの解決方法を提案していく婚活アドバイザーの仕事の内容は非常に似ている。この区とのご縁は、結婚相談所の仕事を通じて生まれた。
話は1年以上前に遡るが私がサポートした津市の男性は、この区で暮らす女性とお見合いすることになった。といっても、その時期は政府の緊急事態宣言などが出されていたため、県境を越える移動が難しく、オンラインでのお見合いに。画面を通じての会話だったが二人は意気投合し、交際が始まった。その後もコロナ禍が立ちはだかり、直接会えない日々が続いたがが、二人は創意と工夫を凝らして逆境を楽しんですらいるようにも見えた。毎週、ビデオ通話をして仲を深めるなんてのは序の口。それぞれがカラオケボックスに行き、交互に歌ったり、それぞれが地元のお気に入りスポットの風景を中継するなど、ビデオ通話を駆使したオンライン交際の無限の可能性を示しているようにも感じられた。そんな交際が3カ月ほど続いた頃、緊急事態宣言が解除され、二人は直接会うこととなる。もちろん、すぐに愛を誓い合う仲となり、結婚にまで至った。二人からは「本当のご縁はコロナになんか負けない」という不変の真理を学ばせてもらった。
現在二人は津市で暮らしているが、自分の足でここまで歩いてきたからこそ、改めて感じるのは、一人で見知らぬ土地に嫁ぐ覚悟を決めた女性の男性に対する愛情の深さである。それに伴い、私も心の底から、彼女に対する感謝の気持ちが湧いてくる。平野区に入ってすぐのコンビニで一休みしながら、彼にスマホからLINEでメッセージをするとすぐに返信がある。今も仲良く二人で元気で暮していること、コロナ禍で先延ばしになっていた結婚式を近日行うということなどが綴られている。メッセージに目を通した私の胸中は温かい気持ちで満たされている。
国道165号の終点がある津市で生まれ育った彼と始点の近くで生まれ育った彼女が出会い、深く結ばれるこの物語。いや、出会う前から実は二人は国道という赤い糸で結ばれていたのだろう。そんな二人の出会いに、このような連載をしている私が関われたことに不思議なご縁を感じずにはいられない。
こみあげる思いを抑えながら、私は再び国道を溯る。しばらく歩くと、国道は片側2車線に広がり、隙間なく建物が密集した風景は都会そのもの。柏原市から25号と重複する区間が続いているが、この25号の三重県を走る区間の一部(伊賀市と亀山市の間)は、道幅が狭いいわゆる〝酷道〟として有名。バイパスに当たる名阪国道が平行して走っており、交通量が少ない本道の整備を必要最小限に抑えた結果である。しかし、この立派な道が、いずれ、あれほど〝頼りない〟道になるとは、この辺りに暮らす人たちには信じられないことだろう。同じ国道の名前を耳にしても、生活する区間によって、抱くイメージがまるで違うのは面白い。(本紙報道部長・麻生純矢)
2022年8月11日 AM 4:55
7月26日、国連世界観光機関の駐日事務所を訪ねた。新たに赴任した副代表と、刷新された新メンバーへのご挨拶が目的である。同行者は松阪歴史文化舎と三重ふるさと新聞だ。コロナ禍以前は2~3カ月に一度ぐらいの割で訪問していたのだが、長引くパンデミックの影響で、インバウンドと共に疎遠となっていた。実に二年ぶりの訪問である。
とはいえ、前日7月25日のニュースによると、三重では新たに1660人の新型コロナ感染が発表され(重症者はゼロなのに、病床使用率は42・6%)、また、奈良においても2134人の感染が発表されている(重症者は10人で、病床使用率は43%)。したがって、行程と参加者は接触者の追跡が容易な必要最小限のものとなった。コロナウイルス感染は、日本においては健康被害よりも社会生活に被害をもたらすからだ。ウイルスが弱毒化しても、厳格な指定感染症法に愚直に縛られたままだからである。
奈良公園では子連れの鹿は目立つものの、観光客の姿はまばらだった。外国人グループもゼロだ。路駐の観光バスもなく商店街も空いているようだった。国連世界観光機関APTECや奈良市観光協会がオフィスを構えるシルキア奈良も火曜日だからか静かである。
国連世界観光機関のオフィスでは、副代表を含む四人の新メンバーと旧知の国際部プロジェクトコーディネーターとお会いした。私は自作の2021年の年次グラフで国際収支の分析を紹介し、国際ツーリズムも貿易であるという国際的コモンセンスについて一時間ほど話した。21世紀の外貨獲得産業は国際ツーリズムだからである。
松阪歴史文化舎は、近代日本のルーツとして、豪商を育んだ松阪の位置付けを話した。三重ふるさと新聞は、高田本山専修寺と復元運動の高まる津城の活用を紹介した。奈良と三重は、紀伊半島歴代文化観光圏として外国人に訴求できるポテンシャルを有しているが、隣接県なのに所属する経済圏が異なる為、メインメディアによる情報疎通が少ないからである。
国連世界観光機関から12月に開催予定である「ガストロノミー・ツーリズム」の国際シンポジウムへのお誘いと、休刊中の「インターナショナル・ツーリズム・ハイライト2021」が、「2022」との合併号としてリリースされるとの情報を得た。ツーリズム・ハイライトは、世界のツーリズム情勢を数字で知る貴重な道しるべである。これにより2018~2019年の我が国の国際観光収入が、中国を抜いて極東エリアで最も高かったことが分かる。
4月から、私は売却譲渡された鳥羽のホテルの再生に挑んでいるが、MICEを目標に据え、ホテルの平面図も携えてきた。先方からは「世界観光倫理憲章および関連文書」「責任ある旅行者になるためのヒント」「ガストロノミーツーリズム発展のためのガイドライン」そして「ディスティネーション・ブランディング・ハンドブックの要旨」を頂戴した。前者二冊は既刊だが、後者二冊はコロナ禍に訳出されたものである。「ガストロノミーツーリズム発展のためのガイドライン」は、政府、自治体、DMO、その他の利害関係者に、地域のガストロノミーツーリズム開発の企画と運営において、考慮すべき事項や取るべき行動について示し、また、「デスティネーションブランディングハンドブックの概要」には、ブランド管理戦略を使用したブランディング・プロセスのステップ・バイ・ステップガイドが記載されている。井の中の蛙に陥らない為にも、世界の事例を知ることは重要である。
皆様ありがとうございました。
ところで、28日から奈良では全国知事会議が始まった。感染が急拡大する中、社会経済活動を維持するため、新型コロナの感染症法上の扱いを季節性のインフルエンザと同じ扱いに見直すことも含め、これまでの対策を転換すべきとの意見が相次いだ。
神奈川県知事は「いつまでも『2類相当』では実態とあわず、社会経済活動が止まってしまう」と、季節性のインフルエンザと同じ「5類」に見直すべきだと訴える。北海道知事は「オミクロン株は99%が軽症であることを踏まえ、議論を進めていくことが重要だ」と指摘。千葉県知事は「感染者の『全数把握』は見直しの必要がある。負担を軽減するため『定点把握』に移行すべきだ」と述べている。当然だ。
(OHMSS《大宇陀・東紀州・松阪圏・サイト・シーイング・サポート代表》)
2022年8月11日 AM 4:55
(一財)小原流三重支部=松浦豊惠支部長=は
9月24日㈯~9月25日㈰10時~17時(最終日は16時閉場)、三重県総合文化センター第1ギャラリーで、支部創立70周年記念いけばな小原流展「花・時を紡いで」を開く。入場無料。後援=三重県、県教委、津市、津市教委、小原流本部。
出瓶者115名のうち、こども教室参加者27名が、小原流の伝承花や、溜息が出るような大作、ひらいたりならんだりの可愛い花の共演や、花の絵を描いたように生けるマイ・フレーム、津の海を想像して作った壁面への創作など、小さな作品から大きな作品まで、それぞれの思いを紡いだ作品を展示する。
2022年8月11日 AM 4:55