津市西丸之内の一角にひっそり佇む昭和レトロな喫茶店「珈琲の正田」が4月末に閉店する。半世紀以上にわたり地域に愛され続けた名店について、子どもの頃から通っているという古金谷久さん(68・津市野田在住)が店主の正田夫妻に感謝の意味を込め、本紙にその想いを綴った記事を送ってくれた。ここに紹介します(文・写真とにも古金谷さん提供)。

 タバコをくゆらせコーヒーの味と香りを楽しむ、そんな昭和の雰囲気が残る津市西丸之内の「珈琲の正田」が閉店する。同店は昭和47年4月にオープン。現在まで51年間の長きにわたり、こだわりのサイホンでたてたコーヒーを提供してきた。当時の僕ら、高校生には少し背伸びをした味だったかも知れない。大将(僕らはそう呼ばせていただいていた)も88歳の米寿を迎え『そろそろ引退』と思われたそうだ。
 使っているコーヒーカップはNIKKO(ニッコー社)製の「山水」。昭和41年に武道館で初来日コンサートを行ったザ・ビートルズが楽屋で紅茶を楽み、寛いでいたカップと同じだ。豆は大将が津に来る前に大阪の十三の店で使っていたアラブコーヒー、ブルーマウンテンは共和珈琲の豆を仕入れ続け、今まで「正田」の味を守ってきた。
 今では数少なくなったコーヒーとタバコを味わえる喫茶店が、また一つ姿を消す。