取締りや罰則はないが 自分を守る意識大切

4月1日より、年齢に関係なく全ての自転車利用者にヘルメット着用の努力義務が科せられるようになったが、津市内でもまだまだ着用する人は〝少数派〟。一方、津市内の自転車店では大人用のヘルメットが品薄になるなど、関心の高さは伺える。今後、利用者が自分の命は自分で守るという強い意志の下に着用率を上げていく必要がある。

 ヘルメット着用の努力義務化が始まって5日目の4月6日午前7時40分頃。津市の中心市街地のオフィス街である東丸之内周辺から近鉄津新町駅へ向かって歩く。歩道には足早に勤務先を目指す人々の姿が目立つ。その中に、時折自転車に乗った人とすれ違うが、顔ぶれはビジネススーツに身を包んだ男性から、学生風の若者、高齢者まで様々。しかし、ヘルメットを着用している人はわずかで、一時間ほど周辺を行きかう人を観察したが43人中3人だけが着用していた。数値にすると約7%と低い。
 着用はあくまで努力義務なので警察による取り締まりの対象ではない。三重県警も各署が自転車利用者に街頭での呼びかけや、交通安全教室を通じて啓発活動に注力している。ただし、県警によると過去10年に三重県内で派生した自転車事故でヘルメット非着用時の致死率は2・01%。着用時の致死率0・85%と比べて約2・4倍にもなっている。全国の自転車が絡む死亡交通事故の凡そ6割が頭部の損傷による結果と出ている。また死亡しなくても、頭部を直接強打すれば、脳に衝撃が加わり、後遺症が残る危険性もあるため、着用の意義は大きい。
 学校などでヘルメットの着用がルール化している中学生以下の子供の着用率はかなり高いが、高校生になった途端に着用率が下がってしまう。年齢的に自動車の運転免許の取得制限があり、自転車移動に頼る人の割合が高い16歳から24歳は事故も多い。そして、死亡事故率が圧倒的に高いのが、65歳以上の高齢者(主に70歳以上)。令和4年度の三重県内の自転車死亡者の8人のうち5人を占めている。
 三重県もラジオ、テレビ、雑誌、SNSなどで情報発信を行うなど啓発活動に務めている。企業から業務中に自転車を利用する場合のヘルメット着用についての質問も寄せられるなど、義務化に対する関心自体は非常に高いことが伺える。 
 その証拠に、先述の通り、まだまだ着用者が少ない一方、義務化の影響でヘルメットを購入する人も着実に増えている。津市内の自転車販売店でも、大人向けヘルメットの品薄状態が続いている。また、需要の増大に伴い、ヘルメットのデザインも多様化。従来のようなスポーティーなタイプだけでなく、普段着などにも合わせやすく女性に人気の帽子型などスタイリッシュなタイプも登場しており、より幅広いニーズに合わせられるようメーカー側も商品を充実させている。
 ヘルメットをかぶりたくない理由は、髪型が崩れるのを嫌ったり、保管方法、購入費用、単純にかぶるのが面倒と人それぞれ。しかし、まずは社会の規範となるべき〝大人〟たちが率先しなければ、着用する人が増えないのは間違いない。啓発を進める県と県警では、職員に対して公私ともに自転車に乗る場合はヘルメットの着用徹底を呼び掛けている。今後、着用率を高めていくには、企業などの協力も不可欠となるだろう。従業員が就業中だけでなく、通勤や帰宅時に事故にあえば、大きな損害を被るため、メリットも大きい。
 あくまで、ヘルメットの着用は努力義務であるが、その理由は自転車に乗る人の命を守るためであることを忘れてはならない。自分自身の身は自分で守るという基本に立ち返り、一人ひとりが着用を心がけることが求められるだろう。