三重が世界に誇るブランド「松阪牛」の品質を競う共進会が相次いで催された。
 一つ目は、11月22日、松阪肉牛〝七保肉牛〟の女王を決める『第18回大紀町七保肉牛共進会』が度会郡大紀町野原のJA伊勢経済2課肉牛出荷場で行われた。主催=大紀町七保肉牛共進会。
 同共進会は旧七保村、旧大宮町時代から数えて今年で69年目。今回は七保和牛部会から11の肥育農家が未経産牛を出品した。「松阪肉牛共進会」でも近年は、同部会に所属する肥育農家が上位を占めるなど、レベルが高いことでも知られる。
 今年も優れた肉質・肉量と見た目を兼ね備えた素晴らしい牛が揃い、審査委員長である県畜産研究所大家畜研究課の梅木俊樹主査研究員らが一頭ずつ厳正に審査した。
 審査の結果、最高賞の優等賞1席は、岡田一彦さん(78)肥育の「あゆまる」号700㎏が輝いた。岡田さんは肥育歴50年を超えるベテランでこの共進会での優等賞1席は3年連続。更に昨年の「松阪肉牛共進会」で、チャンピオン牛である優秀賞1席を育て上げ、同共進会でも計三回の栄冠を手した実績を持つ。
 岡田さんは「3年連続で嬉しい」と笑顔。今年も出品された牛を全て購入した津市北丸之内の精肉店・朝日屋の香田佳永社長(63)は「素晴らしい牛だった」と喜んだ。
 そして、11月26日、世界のブランド『松阪牛』の年度チャンピオンを決める『第72回松阪肉牛共進会』が松阪農業公園ベルファームで=で開催された。主催=三重県・松阪市・津市など関係市町ほか関係農業団体。
 新型コロナウイルス感染拡大の影響で昨年3年ぶりに開催されたが、今年は制限を設けないコロナ禍以前と同じ形で催された。厳しい最終予選を勝ち抜き、この日の本選に出場した50頭の特産松阪牛は、兵庫県から買い付けた子牛を松阪牛肥育地域で採算を度外視して900日以上も肥育した未経産の牛。
 早朝から県畜産研究所の職員らによる厳正なる審査の結果、チャンピオン牛の優秀賞1席には、大紀町野原の中村一昭さん(47)肥育の『ひろこの1』号=肥育日数990日、676㎏=が選ばれた。中村さんの1席獲得は5年ぶり2回目で先代も含めると3回目。
 せり市には、この日を待ちかねたギャラリーや報道陣が集まり、朝日屋を始め、松阪の和田金や牛銀などが参加。肉の専門家ならではの厳しい目利きを基に、せり合戦を繰り広げた。大トリの『ひろこの1』号は激しい競り合いで大台を超える度にギャラリーからは歓声と拍手が上がった。最終的に朝日屋が3004万円で落札。朝日屋のチャンピオン牛落札は30年連続、通算40回目。今年も圧倒的な攻勢で50頭のうち、17頭を落札した朝日屋の香田社長は「飼料高騰などで肥育農家が苦しい思いをしているので応援したいという気持ちで落札した」と語った。中村さんは「凄い価格でとても嬉しい」と喜んだ。 朝日屋落札の牛は12月14日からの名牛まつりで通常価格で販売。