若者の住み始めを支援 中古住宅の取引き活性化策を創設へ

 草深 明けましておめでとうございます。今年も新春放談会をよろしくお願いします。今年の今回のテーマは、「津市の住みよい街づくり」です。まず、松田支部長の方からお願いします。
 松田 コロナ禍が収束して宅建協会津支部も通常どおりの事業をさせて頂きました。中でも津まつりの会場で例年通りブースを出展して「宅建フェスタ」を開催し、宅建協会のPRと不動産相談会を開催することができました。津市さんにも今年も様々な事業でお世話になりますので、よろしくお願いしたいと思います。
 草深 前葉市長、よろしくお願いします。
 市長 土地に関わること、不動産に関わることは、コロナの後、いろんな動きが出てきております。土地としても、なかなか手をつけにくかった所に一歩一歩踏み込んでいくことで、工業団地を開発する際に、調整区域に最初から計画を作るぞという構えで募集を始めたりとか、新しい取組をいくつかしております。今日はしっかりとお話を伺い、またお話を申し上げたいと思います。
 草深 濵﨑幹事の方からご意見お願いします。
 濵﨑 東南海、南海地震によって想定される津波被害の対策が急務と思われています。その中にあって、津市北部ですね、河芸町から白塚の周辺、津競艇の近くでは堤防の改修工事が進んでいますが、市内の多くの居住促進エリアには引き続き震災、被害が想定されます。
 中小規模な地震の沿岸河川の防災対策整備と共に大規模災害に備えた避難設備、避難経路の整備や被害が想定される地域連携の防災訓練などを引き続き積極的に進め、安心して住める町をアピールポイントとすることが津の発展の第一歩と考えますが、市長のお考えをお聞かせ下さい。
 市長 今年はこの春に津松阪港の堤防が完全に完成するという、一つの区切りを迎えます。これは香良洲から実は始まってるんです。平成4年から今年までほぼ32年かかって完成するわけです。香良洲が71億、贄崎は平成14年から43億。そして、阿漕浦御殿場と栗真町屋が平成23年から合わせて106億。合わせますと11・2㎞の堤防が港湾事業によって完成する。我々としては心強いものが出来上がるわけです。
 さらに、北部の河芸・白塚の5・8㎞ですが、これも漁港の事業と海岸堤防の事業が県によって進められておると。これを合わせますと17㎞の海岸線が高さ6mのしっかりとした堤防で守られる。そういう意味では、伊勢湾台風の直後ぐらいに出来た堤防が新しい堤防に全部変わったということになります。
 それがなぜ安心かというと、特に今回の阿漕浦・御殿場・阿漕浦町屋で、一部を地質調査、土質調査したら、液状化の危険がある所がかなりあったんですね。そこについては約2㎞の徹底した土壌改良が行われました。具体的にはサンドコンパクションパイル工法という杭を約地下10mぐらい打ち込んで地盤を全部変えた上で堤防を作った。かなり強い堤防が出来た。それでも、6mを越える津波が絶対に来ないとは限りません。高潮や猛烈な台風が来た時に満潮と重なって越えてくるという想定はされますので、その場合には逃げていただくということが大切。津波避難ビル84棟、津波避難協力ビル17棟の合わせて約15万人の方の逃げ込み先というのは準備しております。そういう意味で、津市は安心して暮らせる、あるいは、災害への備えがしっかり出来た街ということにしてまいりましたし、今後も安心して住める街とをアピールしていきたいと思います。

中心市街地の活性化は 時間軸を見据えた議論が必要

 草深 産業用地開発について濵﨑さんから質問をお願いします。
 濵﨑 商業生活圏についてですが、津駅前周辺であったり、大門などの中心地は従来より様々な要望が出されて、市でも検討されていると思います。しかし、中勢バイパスの全線開通や昔のサティの閉店などで、大門とかの空洞化が進むのではと懸念しております。住みよいまちづくりの観点から市長のお考えをお聞かせいただきたい。
 市長 郊外型のショッピングセンターについては、昭和53年だったと思うんですけれども、サンバレーとサティができて、それから50年近く経ってサンバレーは新しいイオンモール津南に変わりました。旧サティはどうなるかは、まだ事業者側から発表されていませんのが、商業施設が引き続きあることが、まちの利便性の確保につながると思っております。
 その上で津駅周辺と大門丸之内など中心市街地がどのように変わっていくか、変えていかなければいけないか、昨年から課題となっております。津駅については国のバスターミナルの構想から始まったんですが、国のバスターミナル構想の必要性があるかどうかという調査が今年3月までに終わり、次のステップに進むと期待しています。具体的にどういう形でバスターミナルを作るかという調査に入っていくんですが、より具体化していくので、それと連動して東西通路だとか、西口のロータリーをどう作り込んでいくか、エリアマネジメント会議で関係者が集まって議論し利便性の高い新しいロータリーに向けてもう始めております。そういう意味で、津駅の周辺、具体的には大谷町、栄町、桜橋といったような所を住みやすい場所にしていくことが大切だと思っています。商業とか交通施設の価値を高めることが、居住地としての価値を高め、地域の活性化につながっていくと考えております。
 大門・丸之内については、もう少し丁寧というか、深いというか、時間軸をしっかり見据えた議論が必要と思ってまして、単純に一つの企画がきました。それを新しい何か商業施設にしましょうとか、違う使い方で不動産を新しい形にして行きましょうとか、それだけではうまくいかない。かなり大きく大門・丸之内については姿を変えていく。戦災の頃にできた街ですから80年、90年経ってきた街です。それをどう変えていくか。10年、20年先まで見据えた活性化、これはもう街づくりそのものになります。したがって、これは不動産業の皆さんと議論を重ね、ニーズをうまくすり合わせしていく。また、地権者さんがどう思っているか、それに対して次にあの場所を使いたい、あの場所を買ってもいい、あるいは借りてもいいと考えている人がどう思っているのか?今のビルなり店舗のスタイルそのまま居抜きで使いたい、借りたいという人よりも、もうちょっと違う形にしたいという方が多いはずなんです。
 しかも、それが時間軸でちょっとズレがあるんです。ある場所が今日、ある場所が5年後、ある場所が10年後というので、それをどう上手くコントロールして管理していくかが難しい課題なんです。今まで難しいので中々できなかったんですけど、難しいからこそやるということで、地域にしっかり入り込む。大変失礼なお尋ねの仕方になるかもしれませんけど、「今はお店やっておられますけど、この後どうなさいますか」「10年後どうなさいますか」というようなことまで、あえて思い切って踏み込んで開発に入り込んでいきたいと思ってます。

 

人が集まる施策が必要だが 車をどうさばくかが課題

 松田 津市の中心市街地は、やはり人が集まってこないと活性化にはつながらないと思うんです。先日、伊賀上野城に行く機会があったんです。お城を中心として広いエリアで公園が出来上がっていて、それなりに観光客の流れがあって、小さいけれどもいい観光地になってるな、と思ったんです。
 津城の周りの丸之内周辺と比べると公園としての機能が高い。例えば観光バスが止まるような駐車場がすぐ近くにあるとか、近くに観光協会の建物があって物産品を売ってるとか、近くに博物館みたいなものがあるとか。そういう施設が公園を中心として集中的にある。「だんじり会館」もありますし、人が集まるものが出来ると、自然と大門や丸之内の空き店舗もお店屋さんが復活してくるというか、他所から来て出店しようという風になってくのではないか思う。そういう事ももっと考えてほしい。
 市長 人を集める施策・観光としては新しい形を作っていくしかない。伊勢のおはらい町だとか、滋賀県の長浜とか、ああいう風に。あれ、昔の街道筋、あるいはお城の近くとか、神社の門前とか、そういう事はあったんですが、でもやっぱり新しく出来た形ですよね。だから丸之内もそういう形でやるしかないんだろうと思う。その際に一つ大きなポイントとして、先ほど観光バスとおっしゃいましたけれども、車をどうさばくかだと思うんです。
 結局、津の大門・丸之内って、車社会を前提としてない町なんです。大門は車を通そうかというような話も出てきた。車が通るといっても、ビューと通過していくのではなくて、ゆっくり通っていくようなイメージになるんじゃないかなと。東京で言えば、多摩堤通りとかですね。あれ、歩道の方が広く、車道の方が狭い。そんなイメージになるんじゃないかなと思ってます。
 そこまで新しく町を作っていくというところまで来れば、新しい魅力を作り上げることができるんじゃないかなと。
 その時に、問題は不動産の権利関係をどうするかということ。その辺は取引を規制化するというか、当然、所有権の移転ということもあるかもしれませんし、賃貸・賃借権になるかもしれません。場合によっては定期借地権も使いながらになるかもしれません。ちょっと仕掛けを仕組んでいかないといけない。
 今までは、「うちは仕掛けに乗るかもしれないけれども、隣は乗らないよ」とかね、そういう所で止まっていたのが現実なんです。それを動かすとすれば、やっぱり、ある程度フレームっていうか、あの、この呼び止まれ方式の何か形を作らないと、なかなか難しいですよね。でも、逆に言ったら形を作ればできるかもしれない。

空き家問題の相談多く 補助制度の拡充も必要では

 草深 松田支部長は協会の三重県全体の地域支援委員長という役を担っており、県内をくまなく歩いてきた。空き家対策についてお願いします。
 松田 空き家相談会とか、三重県の空き家対策連絡協議会と共同で事業をやったりしているんですが、津市の中央公民館で空き家無料相談会を開催した。その時のお手伝いを空き家ネットワーク三重という団体で協力をさせてい頂きました。空き家ネットワーク三重というのは、宅建協会をはじめ司法書士会、建設業協会、建築士事務所協会、そして税理士会と行政書士協会など8団体が協力して相談員として三重県各地で行っています。当日は延べ98件の相談をやった。その中身なんですが、やはり親から相続した古い不動産をどうしたらいいか、住むことができないので取り壊したいな、あるいは手放したいんだけど、誰か安い値段で、あるいはタダでもいいから引き取ってくれる人いないだろうかとか、切実な相談が結構多い。津市さんも解体するときに特定空き家、壊れそうで、どうしようもないというものに関しては上限30万補助金がでますよと。

 また、その売却の時は、何か補助、建物に対する補助金はあるのか調べると、建物をリノベーションしてよそから移住してきた人に10年間住んでもらうのを条件で貸すと200万円を上限に補助をするというような、何というかハードルが高い。空き家対策に対する補助金としてはズレが大きい感じ。除去するにしても、30万で一軒の家を壊すのは難しい。もう少し補助金制度の見直しはできないのかなっていうふうに思ったわけです。
 市長 解体補助の話は除却を進めるための支援金であって、解体費の相場から来てるものではなく、ちょっと背中押すっていうような話なんです。特定空き家じゃない、管理不全空き家にも税制対策をしていこうというようなことまで出てきたりとか、危険な空き家、あるいは周囲に迷惑をかけてる空き家を除却していくことについては、一定の政策が進んできた。
 一方で、今ある空き家をリノベーションしましょうというような場合の補助金というのは改修費の3分の1で上限100万円。大きな金額になっていない、というご批判を頂くのも事実。今後、そういう市外からの移住者とか対象範囲を拡大していくなど、もう少し充実させていかなくてはいけない。不動産取引を仲介なさっている皆さんの立場からすれば、どういう補助金があれば、空き家の利用や取り引きが進むのにとかがあったら教えてもらえれば。
 松田 補助金制度の実績はリノベーションの補助金が令和2年度に1件100万円、令和3年度に2件で137万円、令和4年度は多分ゼロやったのかなと思うんです。県外から移り住んでくる人に対して100万円上限で補助金を出します、ではなくて今、所有している不動産をリノベーションして貸したいと思っているんだけど、補助金を付けてもらえるってありがたいなって。100万って結構大きな金額ですから、自分の家を直すのにそんなに補助金もらわなくてもいいかもしれません。例えば、人に貸すんであれば、ガス給湯器が壊れて動かないから、これは最低限買い替える、トイレの便利なものとか、床がフワフワしているから、これはちょっとあかんから、じゃあ、20万か30万ぐらいの補助金出してもらったらありがたい、みたいな制度があるといいと思う。
 市長 個人資産の形成にあたる部分への補助というのは従来から行政は抑制的に運用してきている。除却の補助は、本当に個人資産の形成どころか、もう個人資産を取っ払うための補助なんで今までよりも違う考え方で政策が作られている。空き家の補助についても、誰に補助するか、何に補助するかっていうことなんですよね。ガス湯沸かし器をつけ直しに補助したけども、誰も結局住んでもらわないというんだったらダメでしょうし。
 なので、人口がそれで増えたら、あるいは空き家が一つ解消されたら報奨金でいくら、みたいな方が、いいんじゃないかなとも思ったりもすることもとても多い。

民泊への改装も視野に 空き家からリノベーション

 草深 続いて牛場さんお願いします。
 牛場 先ほど松田支部長が私の言いたいことの9割をお話ししたんですけどね。空き家を減らすということであればいいんですが、世帯数が変わらずに、空き家を減らすってことはどこかでまた空いてくるっていう、結局はイタチごっこみたいなもんで。それであれば私がちょっと考え始めたのは、外部からそれを利用できるものを引っ張りたい。例えば京都のようなところに外資の力が入って民泊してたりとか。もちろん地元の方が投資してやってる方もあるとは思うんですが。そういった形のものにも運用していけるようなリノベーションの補助金適用できたらどうなんだろうと。観光バスで市内に来てくれるようなものも合わせてトータルで考えないと難しいんじゃないかと。人がたくさんいるからそこに商売が発生するのか、商売がやってるから人が集まってくるのか、卵と鶏の話かもしれませんけども、どちらが先なのか、ということもあるかもしれませんが、津市の魅力アップを考えなきゃいけない。実際私なんかも山間部である津市西部の方に住んでると自動車免許を返納するとすごく生活が不便になる。
 市長 都市計画の議論になるんですけれども、人口が減少していく時代なので、新しく住宅団地を数十ヘクタール規模で開発しようというのは認められていないんです。
今の都市計画のマスタープラン上、三重県の考え方としてはそういうことなんです。20年~30年前であれば大規模住宅地に新しい家を建ててきたんだけれども、そういうのがなくなってきて今はミニ開発が増えてきたんです。この先さらにこのままいけば、いよいよ中心部の昔の町のところが空洞化してくるというようなことになるので、それであれば、そこに人に住んでいただこうじゃないのというような政策を今後打っていかないと、ということになる。
 真っさらのところへ皆が一斉に家を建てるのと違って、今まで建っている家をどう使うか。今後は家を建て替えることになってくるんではないかと思っていてます。
 津駅西方面とかで家が建て替わったりしているのをたまに見るんですけど、便利な場所で変わって行くことはありがたいですよね。要するにそこの不動産の取引を増やしていくための政策みたいなものも必要になってくる。古い建物を壊して売りに出すと結構、早く売れると思います。住み替えというのは中々ご高齢の方にとっては難しいが、亡くなってからではすでに息子さん、娘さんは全然違うところに住んでて空き家になるというケースが圧倒的に多いわけです。生前の早い段階で高齢者の住み替えも含めてやっていかなきゃならない。そういう住宅政策になるんじゃないかなというふうに思うです。
 今年以降で考えているのは、中古住宅の取引を活性化する支援策を新たに創設したい。若者が最初にどこかの賃貸、いわゆるマンションやアパートに住んで新しい生活を始める時にリノベーションとかまでやるかどうかは問わず、中古住宅を購入、賃借した場合にそこへ支援を打てないかということを考えているんです。住み替え支援、住み始め支援を考えているんですよね。これは選挙で公約にも一つ載せたんです。具体的にどういう仕組みにすればいいのか色々と考えてます。
 若い世代が比較的新しい住宅地に家を建てるのもありなんですが、その手前のところで一旦どっかへ住むと思うんです。その時に空き家になっている中古住宅に住んでもらうといいと思うんです。

「行ってみたいまち」に 津市の魅力を高めPR

 濵﨑 観光についてですが、津市は広範囲にわたって自然や歴史的建造物など様々な観光資源があります。食においては天巻き、味噌カツの発祥地なんですが、観光アピールで遅れをとっているイメージ。昨年は白山高校が題材となった「下剋上球児」が制作されていますが、ロケ地は伊勢志摩、四日市や松阪で行われた。肝心の津市での撮影が殆ど無い。アピールの機会を逸していると言います。津市の魅力をアピールし、訪ねてみたい街として全国的な知名度を上げていくことが、住んでみたい街につながり、人口減少の抑制や、地元産業の発展活性化につながると考えます。
 市長 「下剋上球児」は「わたしの幸せな結婚」の映画監督をした塚原あゆ子さんが演出をやっている。「わたしの幸せな結婚」は桑名と津、高田本山で撮ったから、津のロケハンは、よーくやってて、どこに何があるか、よくご存じなんです。あえて今回、津を選んでいないというのは多分、演出者の意図。完全フィクションなのでリアルの白山高校をイメージさせる場所で撮らなかったのかなと。ただ、結果として残念ではある。何にせよ、こういう機会はとても大事なので、映画・テレビの制作には協力していきたい。訪れてみたい、訪ねてみたい、住んでみたいで言えば、住んでみたい街だけでは魅力が不十分。やっぱり1回は行ってみたい街にしなきゃいけないというのは、おっしゃる通りだ思います。津市としても各地の魅力を高めていくということがとても大事だと思っています。
 草深 今日はありがとうございました