歴史と科学の両面から名湯を紹介

 三重県の名湯・榊原温泉の魅力を『温泉教授』の異名を持つ温泉研究の第一人者・松田忠徳さんと、榊原温泉で産湯を使い、同温泉の由縁を知り尽くした郷土史家でエッセイストの増田晋作さんが『枕草子の日本三名泉 榊原温泉』を共著で執筆。3月1日付けで中西出版㈱から発売された。
 松田さんは北海道の洞爺湖温泉で産湯に浸かる。温泉学者、医学博士、文学博士、旅行作家。国内外で大学教授を歴任し、現在はモンゴル国立医科大学教授、グローバル温泉医学研究所所長。日本で初めて温泉を学問として捉え「温泉学」という分野を切り拓いた温泉研究の第一人者。温泉文化論、温泉観光学、温泉医学と、その活動は多岐にわたる。著訳書は約150冊に及びぶ。榊原温泉には25年以上通い、入浴モニターによる実証実験など様々な調査、研究を行ってきた。
 増田さんは、榊原温泉郵便局長、榊原公民館長を歴任。退職後は公民館講座「榊原ものしり講座」の講師、榊原小学校地域コーディネイター、学校運営協議会委員など続けている。また2009年に「榊原温泉ふるさと案内人の会」を組織。楽しく活動すると同時に健康のために榊原の朝湯と飲泉を日課としている。
 同著は全8章で構成。第1章から第5章までは増田さんが担当。榊原温泉ゆかりの人物として、同温泉復興の功労者である事業家の田中善助氏や同温泉の湯治場として一句を詠んだ松尾芭蕉などを地元民の目線で親しみやすい文章で取り上げているほか、自身で挿絵を描きながら榊原地区に伝わるむかし話を紹介。また、「温泉大明神」として慕われている射山神社について記述している。
 第6章からは、松田さんが担当。平安時代に清少納言が書いた「枕草子」の温泉の条で「湯は ななくりの湯(榊原温泉)…」と真っ先に挙げたのは、伊勢神宮参詣に際しての禊ぎ、湯ごりの関係からであることを歴史・文化面から詳しく解説。
 また、温泉の効能の科学的な検証を実施した結果を分析。〝万病の元〟となる活性酸素を抑制、除去できたとし、「温泉大国日本で榊原温泉の持つ抗酸化力の凄さ」を稀有な存在としている。
 二人は「こんな素晴らしい温泉があること地元の人々に知ってもらい、津市民の意思で『日本三名泉』を復活して頂ければ」と話す。
 301頁。定価税込2200円。書店店頭での取り寄せのほか、インターネット書店などで販売中。