漁業権や使える道具など ルール破れば罪にも

潮干狩りが楽しめる御殿場海岸

 潮干狩りをする上で、まず認識をしておくべきなのが共同漁業権の存在。貝や海藻などの漁を生業とする漁業者の生活を守るために設定されている。海上保安庁がネット上で公開している「海しる(海洋状況表示システム)」でも設定されている範囲を確認できるが、日本の海岸線をほぼ途切れなく取り巻いている。共同漁業権の区域によって、指定されている貝や海藻は異なるが、潮干狩りの主な対象となるアサリ・ハマグリ・バカガイは対象となっている場合が多い。つまり、潮干狩りが出来る砂浜は、観光目的のために漁協と協議の上で有料開放している場所など、非常に限られている。津市内では、御殿場海岸は漁業権が設定されていないため、潮干狩りが無料で楽しめる。一方、香良洲海岸は、資源保護を目的に一般の人の潮干狩りは禁止されており、それ以外の海岸や河口部も同様。隣の松阪市でも、令和3年より資源保護を目的に潮干狩りが全面的に禁止されており、海岸には「採貝禁止」と書かれた赤いのぼりが多数設置されるなど、厳戒態勢が敷かれている。漁業権を侵害すると、100万円以下の罰金が科せられる。ゴールデンウィークの混雑回避に、知人から聞いた穴場で潮干狩りをした結果、密漁で検挙されては目も当てられない。
 また、三重県漁業調整規則によって、潮干狩りに使って良い道具が決まっている。三重県では「じょれん」と呼ばれる長い棒の先にかごの付いた道具や、網がついた忍者熊手も禁止されている。特に忍者熊手は百均ショップや通信販売などでも、禁止されている道具であることなどの注意書きも無く、販売されていることが多いので要注意。その他、ポンプを使って貝を吸い上げたり、水流を吹き付けて採ることも禁止されている。また、アサリは殻長2㎝以下、ハマグリは殻長3㎝以下の個体を捕まえてはいけないというルールもある。
 このようなルールが設けられている背景には、全国的なアサリの資源不足もある。伊勢湾で採れる三重県のアサリは昭和57年のピーク時には年間1万5000トンで全国屈指の漁獲高だったが、2022年には306トンにまで落ち込んでいる。各地で自治体や漁協が資源回復に向けた取り組みに尽力している中、私たちができることは、潮干狩りを然るべき場所、然るべき方法で楽しむということ。もし、県外に潮干狩りに出かける場合、行き先の自治体や観光協会に潮干狩りができる場所やルールの確認をしておくと安心だろう。漁業権の侵害や漁業調整規則の違反で検挙された際、「知らなかった」と言い訳をしても許されない。
 楽しいゴールデンウィークの思い出をつくるために、少し気を引き締めるべきだろう。