筆ちどり

 先日、登山家・野口健さんの講演会を取材したが、大変印象に残っている。
 エネルギーや環境についての内容だったのだがエベレストや富士山での清掃活動や、子供たちを対象にした環境教育に取り組む立場上、原発問題への質問を投げかけられる機会が多いという。しかし、賛成か反対の二元論でしか意見を求められず、どちらかを即答しないと痛烈な批判を浴びてしまう。それに対し、一人の人間の中でさえも多種多様な考え方が混在しているのに、二元論で答えが出る訳がないとした上で「安易な色分けが社会に自ら限界をつくっている」と反論していた。
 未だに終息の見えない福島第一原発の事故の問題などから、原発再稼働への懸念が大きいのはわかる。だが、火力発電への依存によって貿易赤字が拡大しているのも事実で、国民生活に大きな影響が出る可能性も高い。 早期の脱原発も不可能ではないだろうが、相応の痛みに耐える覚悟は必要だ。原発は嫌だが電気代が上がるのは困るし、便利で豊かな暮らしは何も変えたくない。そんな甘い考えは通用しない。
 間もなく8%となる消費税についてもそうだ。増税は嫌だが手厚い社会保障は維持してほしい。これも無責任だ。
 野口さんは「エネルギー問題は落としどころ」とも語り、最も小さな負担で最も大きな効果を得る解決策を模索することの重要性を訴えていた。
 この考え方は全ての事柄に当てはまる。我々は目の前の現実から逃げずに、正しい〝落としどころ〟を見極める責任を背負っている。講演を聴きながら、改めてそれを実感した。 (麻生純矢)

 2月4日の任期満了に伴う津市議選がいよいよ1月19日に告示され、同26日に投開票を迎える。
 既に引退を表明している現職もいる一方で、着々と準備を進める新人の姿も目立ち始めているが先日行われた立候補予定者説明会には新人9を含む、39陣営が出席。
 36の議席をかけて、最終的にはどれだけの立候補者が出馬するかはわからないが、70名超の立候補者が入り乱れての大激戦となった合併直後の平成18年の市議選を思えば比較的穏やかな選挙戦といえるかもしれない。
 この仕事を始めてから市議選はある意味では国会議員や県会議員の選挙よりも難しい選挙だと、つくづく実感している。なぜなら市会議員は、市政運営に係わる重要な政策論議を行うだけでなく、市民の力だけではどうにもならない問題を行政に働きかけて、解決に導いていく能力が問われるからだ。その最も身近な存在であるという性質上、候補者の実力が有権者にも実感し易く、一票のウェイトも大きい。
 最近では、選挙と名のつくものの投票率は軒並み振るわず、政治への失望感から、議席数の削減のみを美徳とする風潮がある。しかし、批判を恐れずに言わせて頂くと、それに終始することは自らの民主主義に対する権利を放棄しているに等しい行為だと思う。
 選挙は民意を映す鏡である以上、どんな結果であれ、有権者の想いが如実に反映されたものと言っても過言ではない。月並みな言葉かもしれないが、有権者が真剣に政治と向き合い、責任感を持って投票し続ければ政治は必ず変わる。これは紛れもない事実である
 今回の市議選は市長選と別に行われるため、投票率の低迷が予想されるが津市内の23万人近い有権者の盛り上がりに期待したい。  (麻生純矢)

 今年は平成18年に全国でも稀な10もの市町村が合併し琵琶湖と同等の広大な面積を持つ新津市が誕生してから9年目に当たる。合併時に10歳だった子供も来年には成人する。そう考えると時の経つのは本当に早いものである。
 その間、官民協働で様々な取り組みがなされ、市民の一体感の醸成が図られてきた。当初、合併によって地域の特色が無くなるのではないか?と危惧する声も少なからずあったが、住民らの努力で各地域に残る伝統文化の保存・継承が図られ、かえって地域コミュニティの重要性を再確認させられた市民も多い。
 中でも行政が注力してきたのが美杉地域の活性化である。津市森林セラピー基地の認定や、県宅建協会が協力する津市空き家情報バンク制度の推進による人口増加策、また、県と住民とが歩調を合わせて進めたバイパス道路整備など、合併前と後では市街地とのアクセスが段違いに改良され、津市を代表する観光地の一つにまでになった。
 一方で、これからなのが中心市街地の活性化。20年ほど前には繁華街として大いに賑わった丸之内界隈は、今では津駅周辺に持って行かれた感は否めない。しかし、岡三證券ビルの完成や、百五銀行新本館ビル2棟と三交不動産の新本社ビルの建設など平成27年には中心市街地に新たなランドマークが次々に現れ、それらによる賑わい創出が期待されている。
 さて、我社のモットーは「地域づくり・街づくりの応援団」。市民の期待に応えられる紙面づくりに邁進することが地元新聞社の大きな責務であると、改めて心に刻む。 (森 昌哉)

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