地域

講演する大原さん 7日、(公社)津法人会が三重県総合文化センター生涯学習センター大研修室で㈱ビスタワークス研究所・代表取締役社長でネッツトヨタ南国取締役の大原光秦さんを迎え、同会・青年部の合同研修会を開催した。演題は「人が輝く最善最幸の生き方・働き方」。
 大原さんは 「人を育む経営」の実践において全国的な注目を集めるネッツトヨタ南国で人材開発(採用・教育・プロジェクトチーム運営)の責任者として20年以上携わっている。
 聴講者約100人を前に、大原さんは責任のある管理職になりたがらない若者いわゆる『マイルド社員』が増えていることに対して、ネッツ南国での取り組みを紹介。
 大原さんはまず、周囲からただ与えられただけのものに対する感情を満足感と呼ぶのに対して、自らの力で勝ち取ったものに対する感情を幸福感と定義。同社では、高校を卒業したばかりの新入社員に、幸福感を得ることの重要性を伝え、職場の仲間や自分の家族を大切に思う気持ちを育んでいる。その結果、義務感ではなく自ら考え行動する責任感が生まれることで、社員のやりがい・顧客の満足・企業の独自性向上・社会的な調和にも繋がり、経営品質が向上していくサイクルを説明した。

先週号からの続き)
 爆弾の破裂音が後を追ってくるようだった。途中、何度も教わっていたように「伏せの姿勢」をとり、地面に顔を下にして、両手の指で目と耳をしっかりと押さえた。また低い姿勢を取ることで、爆風や爆弾片や飛んで来る物が体に当たることが少なくなる。250キロ爆弾の粉微塵となった破片は厚さが約10センチ、長さが2~3センチから20センチくらいと様々であった。
 断片はとても鋭く、鋭利な刃物のようで、事実、断片で紙が切れ、触ると熱いのだ。爆弾が爆発してできた穴は直径5~6メートルくらいで、すり鉢のような形をした穴の底には水が湧き出てきていた。海岸の松林は逃れてきた人でいっぱいであった。
 しばらくすると、爆弾の爆発音も消え、上空のB─29のエンジン音が聞こえなくなった。午前10時丁度にB─29は津市の空爆を終えた。B─29、4機による34分間の空襲であった。これがアメリカ軍が津市を攻撃目標地と選定した最初の本格的な空襲であった。
 喜代美ちゃんがどこにも見当たらない。級友らは喜代美ちゃんを探し回ったが、工場の敷地内は爆弾が爆発してできた大きな穴だらけであった。喜代美ちゃんは泥だらけになって呻き声を上げていた。
 「お母さん、お母さん、助けて」。級友が駆けつけ、傷口を両手で押さえて止血しようとしたが、押さえた指の間から血が止め処も無く、喜代美ちゃんの体から流れ出してきた。
 喜代美ちゃんは駆けつけた救護班の担架に乗せられて、津市塔世橋近くの県立病院(三重県立医学専門学校付属病院のこと)に運ばれた。病院は津市の爆撃による負傷者でごった返しておえり、激痛にうめき声があちこちから聞こえている。救護者により手当てをされた三角巾も血が滲んでいた。医師、看護婦、医学生が懸命に救命の手当てを施しているものの、足の踏み場も無いくらい、怪我人であふれていた。
 喜代美ちゃん危篤の知らせは、河芸町のお母さんに届き、お母さんと実弟は急遽駆けつけた。お父さんは戦地の南方に出征中で家には居なかった。
 「喜代美、大丈夫か。なんてことに」。喜代美ちゃんのお母さんは泣き崩れた。「お父さんは留守だというのに」。「気をしっかりもたなあかん」、喜代美ちゃんの手をしっかり握り締めて言う。喜代美ちゃんの体温がお母さんに伝わってきた。
 「お母さん、泣いたらあかん、泣いたらあかん」と、か細く言うも、喜代美ちゃんの手のぬくもりがだんだんとなくなっていく。お母さんはその手をしっかりと握り続けたが、とうとう、喜代美ちゃんの手が冷たくなってしまった。お母さんは喜代美ちゃんの手を握りながら、喜代美ちゃんの名前を叫び続けました。「喜代美」、「喜代美」、「死んだらあかん」。
 「お母さん、泣いたらあかん、泣いたらあかん」。これが喜代美ちゃんの最後の言葉になった。享年12歳。喜代美ちゃんのそばには手付かずのお母さんが心を込めてその朝、喜代美ちゃんのために作った大根弁当が残されていた。
 喜代美ちゃんが工場でどのような仕事をしていたのか、周りの人々は殆んど知らない。それは「仕事の内容を一切他人にしゃべるな」という一種の緘口令が敷かれていたからである。
喜代美ちゃんはそれを忠実に守っていたのである。級友40名のうち、喜代美ちゃんが唯一の犠牲者であった。
 戦後、お父さんは戦地から無事帰還された。「お父さんはお前らに会いたくて、その一心で歯をくいしばって、生きて還ってきたというのに、なんで喜代美は死んでしもうたんや」。「喜代美を返してくれ。喜代美を返してくれ。喜代美を返してくれ」。遺影の前でお父さんは、ただただ泣き続けた。
 喜代美ちゃんが今ご健在ならば多くの孫やひ孫さんに囲まれて幸せな日々を送っておられるだろう。あの戦争さえ無かったなら。
         合掌
        (終わり)

 23日、メイク体験とおしゃれを楽しみながら、大門周辺を散策する『昭和乙女のおめかし散歩』の参加者を募集中。対象は概ね55歳以上の女性。参加無料だがアンケートへの協力を。
 津市が三重大学地域戦略センターと連携して立ち上げた中心市街地活性化タスクフォースの所属チームのひとつ「大門☆夢かなえ隊」が企画したもの。
 大門地区の復活&再生を目的としている同チーム。いつでも集える新たなコミュニティの構築をめざしており、その第一歩の企画。街の駅だいもんに集合後、プロによるメイク体験を受け、商店街を散策する。
 参加希望者は、午前の部10時~12時もしくは午後の部13時~15時を選択し電話で申し込み。案内係やメイクボランティアも募集中。
 申込は野田さん☎090・7300・5840へ。

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