社会

津市が昨年4月から運用している『徘徊SOSネットワーク津』は認知症高齢者が徘徊などで行方不明になった場合、関係機関で情報共有することで早期発見・保護や、本人や家族の負担軽減をめざす。今後更に高齢化が加速していく中、大きな力となる事が期待され、非常に有意義な制度だが、高齢者の登録数が5月末で121名で、協力機関・協力者数も355にとどまり、更なる周知の必要性が浮き彫りとなっている。

認知症の高齢者の徘徊は深刻な社会問題となっており、津署管内でも昨年中に28件発生。今年も1月から5月末で14件と昨年を上回るペースで発生している。そのような背景で、同ネットワークは、徘徊の心配がある高齢者を持つ家族などが津市か、各地域包括支援センターで対象者の基本情報(氏名、住所、身長、体重、歩行の程度など)や上半身の写真などを事前登録(無料、要介護度などの基準はない)を行い、中核的機関の津市、地域包括支援センター、津警察署、津南警察署で共有し迅速な対応を行うのが特徴。もし、登録者で行方不明者が出ると、津市から民生委員・児童委員や高齢者施設など事前登録している協力機関や協力者へメールで情報を配信。従来は電話で連絡を取り合っていたが、これで大きく保護までの時間を短縮できることが期待されているだけでなく、津市が育成している認知症サポーターを始め、一般からも広く協力を募ることで、より多くの目で登録者を見守れるのが最大の長所といえる。また、登録者には、靴に貼る反射ライト用シールを配布し、登録者を見つけやすくする工夫も行っている。
発見が遅れれば、命に係わるだけに、非常に有意義な制度ではあることは疑いようがないが、運用開始1年を迎えて課題も抱えている。それは登録者数で、5月末現在で121名で、協力機関・協力者についても355と、更なる周知の必要性を感じる数値となっている。協力機関と協力者には、認知症の高齢者との接し方や知識が、ある程度求められるため、活躍が期待されているのが津市が平成20年より育成している認知症サポーターだ。現在までに8677人を育成している。津市は市内全域で行っている育成講座で同ネットワークを紹介し、協力を呼びかけている。一方、認知症サポーターも活躍の場が課題となっており、上手くマッチングできれば一石二鳥ともいえる。
津市の総人口約28万人のうち、65歳以上の高齢者は5月末現在で約7万9707人で高齢化率は28・37%にも及ぶ。今後も高齢化が加速していくのは確実で、徘徊が益々、深刻かつ身近な問題となっていくことは確実。現在でも、警察に相談する前に家族が発見しているケースも考えると、想像以上の数が発生しているといえる。
警察や行政などだけでは徘徊の対応を行うにも限界があり、この問題と向き合うには、高齢者を見守る目をどれだけ増やせるかが大きなカギとなることは間違いない。他市ではより情報共有をし易くする取組みも行われており、今後そういった部分の検討も必要となるだろう。
徘徊の恐れがある認知症高齢者を登録したいという人や、協力機関や協力者として参加したい場合は、津市高齢福祉課☎059・229・3156へ。

27日㈯・28日㈰、『高野尾花街道 朝津味』=津市高野尾町=で、伊賀の忍者と老舗菓子店とのつながりを紹介するトークショウなどを盛り込んだイベント『三重の文化と忍者』が催される。主催=「㈱フューチャー・ファーム・コミュニティ三重」。赤塚植物園と三重大の共同研究で、海外から多くの観光客が訪れる伊賀市や関宿などとの連携を深め、津市の交流人口の拡大をめざす取り組みの一環として行う。

 

深川屋に伝わる徳川家康の伊賀越えについて書かれた古文書

深川屋に伝わる徳川家康の伊賀越えについて書かれた古文書

『朝津味』は、赤塚植物園の赤塚充良会長が地域の農業者らと地域活性化を目的に設立した『㈱フューチャー・ファーム・コミュニティ三重』が運営。県下最大級の農産物直売所を備え隣接する赤塚植物園の「レッドヒルヒーサーの森」は広大な敷地を誇る里山で、豊かな自然を楽しめる。 昨年9月には、朝津味の集客を生かしたり、伊勢別街道や名阪国道などとも近い好立地を生かし、周辺地域とのハブ機能を持った拠点とするべく、赤塚植物園と共同研究を行っている三重大学地域戦略センターが三重県や津市など関係団体を交え、「地域連携ゾーン文化・観光交流研究会」を設立。津市の交流人口を増やすことを目的に、海外からも多くの観光客が訪れる伊賀市や関宿など周辺地域との連携を深める取り組みを行ってきた。今回もその一環。
忍者をテーマにした催しは、以前にも一度行っており、今回で2回目。
5月27日・28日に行われる「三重の文化と忍者」のイベント中でも目玉は、28日12時20分~13時20分に朝津味イベント広場で開かれる、老舗菓子店の店主が忍者と菓子の密接な関係を語るトークショウ。服部半蔵の元居住地に店舗を構え創業400年余り、銘菓「釣月」で知られる桔梗屋=伊賀市上野東町=の店主・中村伊英さんが「忍者にまつわるお菓子」をテーマに講演。服部半蔵の親戚筋で関宿で創業370年を超える銘菓「関の戸」で有名な深川屋=亀山市関町中町=の店主・服部吉衛門亜樹氏が「和菓子にみる忍法」をテーマに語る。老舗菓子屋に伝わる忍者についての記述などを元に両者から、ここでしか聞けない興味深い話の数々を聞ける。トークショウ開始5分前から両店のお菓子を配布。最後まで聴講すると忍者ステッカーがもらえる。
また、深川屋には、創業当時から今も守り抜いている関の戸の秘伝のレシピや徳川家康の伊賀越えについての資料など、先祖伝来の貴重な古文書も残っており、それらを写した写真や服部半蔵の名を冠している東京の半蔵門などのパネル展示を27日・28日9時半~17時半に行う。
28日13時半~15時には、伊勢木綿の着物を着た津クイーンとの記念撮影をヒーサーの森で実施(参加費200円。100名限定)。
27日・28日の両日、映画「君の名は」で大人気となった伊賀の組紐のワークショップを実施(協力=松島組紐店)。組紐のブレスレットとキーホルダーを製作するもので、両日共にイベント広場で①11時~②13時半~③15時~の全6回(各回6名限定)。参加費は1500円(この新聞を見たという人は1100円で申し込み可能)。参加希望者は朝津味総合案内所で1500円を添えて事前に申し込む。
今回のイベントは三重と忍者の文化にスポットライトを当てるだけでなく、朝津味を軸に、伊賀市・関宿と高田本山・榊原温泉などの津市の観光地を結び、相互機能で発展を目指す足掛かりにする意欲的な取り組みと言えよう。各イベントの問い合わせは朝津味☎津230・8701へ。

津市美杉町三多気の国登録有形文化財「田中家住宅主屋」=田中稔さん(61)所有=がこのほど茅葺屋根の葺き替え時期を迎えたが、費用が約1千万円と高額にも関わらず、国の補助の対象外で工面に苦慮している。また田中さんは、同住宅を将来に亘り保存し、地域活性化のため活用する方法も検討中。同様の課題は市内のほかの登録有形文化財も抱える可能性があり、行政による保護施策の充実が求められている。

 

 

今月10日、美山町の茅葺職人が田中家の屋根の一部を修理する様子

今月10日、美山町の茅葺職人が田中家の屋根の一部を修理する様子

国登録有形文化財「田中家住宅主屋」と三多気の桜による豊かな山村景

国登録有形文化財「田中家住宅主屋」と三多気の桜による豊かな山村景

平成8年、文化財保護法の一部改正により誕生した「文化財登録制度」は、近年の生活様式の変化などにより消滅の危機にさらされている、多種多様で大量の文化財建造物を後世に幅広く継承することが目的。
重要なものを厳選し、許可制などの強い規制と手厚い保護を行う「指定制度」を補完する。保護措置は届出制と指導・助言など緩やかで、所有者が外観の変更や内装の改修をある程度自由にできるため、生きた文化財として保存されるのが特徴。
登録の基準は、原則として建設後50年を経過したもののうち、①国土の歴史的景観に寄与しているもの②造形の規範となっているもの③再現することが容易でないもの。
「田中家住宅主屋」は江戸後期の木造平屋建、入母屋造茅葺。国指定名勝で、さくら名所100選に選ばれた「三多気」の並木とともに豊かな山村景観を形成していることが高く評価され、基準の①を満たしているとして、平成22年9月10日に市内の民家としては初めて登録された。
現在、この家には田中さんの母・彌生さん(85)が一人で住んでおり、花見客
や、茅葺屋根と周囲の自然がつくる美しい風景を撮影しに来る写真家にも人気のスポットとなっている。
一方、このほど屋根の葺き替え時期を迎えて、1千万円という費用の工面や、将来に亘る保存・活用という大きな課題にも直面している。
昔はこの地域に茅葺の家が多かったため、地元の山に住民が共有する茅場があり、刈り取り作業も皆で行っていた。そして田中家では町内の職人に葺き替えを頼んでいたという。
しかし時代の変化でその風習もなくなり、約20年前に屋根全体を葺き替えた際は、7~800万円の費用
をかけ、茅葺の家が多数現存する「重要伝統的建造物保存地区」がある京都府南丹市美山町の職人に工事を依頼した。
その当時、田中さんは市の正規職員だったためローンを利用できたが、現在は定年退職し嘱託職員であるため今回の葺き替えではローンが組めない。
また登録有形文化財建造物の修理に関しては国の補助があるが、要綱で明文化はされていないものの総工事費が約2千万円以上・設計費200万円以上といった条件があり、個人宅での利用は極めて難しい。
そこで田中さんは、跡継ぎがいないこともあり、クラウドファンディングによって、今回の葺き替え工事を含め将来に亘って同住宅を保存し、活用する方法を検討中。保存のための資金を集め、地域活性化や田舎暮らしをしてみたいなどの目的で同住宅に滞在してもらうという構想がある。
田中さんは「住民が途絶えさせず昔からある桜と共存している家を、屋根を直すことに同じ方向性の思いがあり、夢を持つ人のフィールドにしてもらいたい」と話しており、実現が期待される。
市内には他に18件の登録有形文化財があり、特に所有者が個人の場合、保存や活用に同様の課題が生じ得る。人脈やノウハウなどがないと個人での解決は難しく、国が一定の文化的価値を認め、後世への継承を目的に登録されている以上、行政による補助などの保護施策の強化が必要だろう。

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