社会

GWを前に、全線復旧したJR名松線応援企画として、本紙記者が先週20日、同線の全区間を列車で往復し、市のレンタサイクルで津市美杉町を観光する旅の魅力を体験した。津市も、4月29日~5月8日に同線の終点・伊勢奥津駅(津市美杉町奥津)と道の駅美杉・北畠神社(何れも同町上多気)を結ぶ無料臨時バスを運行する。この機会に、同線に乗って美杉町をはじめ沿線に出かけてみては。  (取材=小林真里子)

 

国指定の名勝・史跡「北畠氏館跡庭園」

国指定の名勝・史跡「北畠氏館跡庭園」

美杉名物の練養甘を作っている老舗の「東屋」

美杉名物の練養甘を作っている老舗の「東屋」

名松線は平成21年10月の台風で被災し、家城駅(津市白山町)~伊勢奥津駅間で鉄道が運休。沿線の人口減少の影響もあり元々、利用者が少なく、一時は同区間の存続が危ぶまれたが、先月26日に全線復旧した。
今後、同線を活性化する
には観光路線化が不可欠。
市によると、今月11日~17日の同区間の1日平均利用者数は300人弱で、被災前の約3・3倍に急増した。復旧直後で県内外から注目されており、GWも観光客誘客の絶好の機会だ。
今回は、そんな同線の乗車体験を全区間で楽しむため、朝、自宅の最寄り駅である津駅から近鉄で松阪駅に行き、同線の松阪駅9時38分発・伊勢奥津駅11時2分着の列車に乗り換え。晴れていたこともあり、多くの観光客が乗車していた。
同線の魅力の一つが、車窓からの様々な風景。この日も松阪の街や、新緑、日差しで光る清流の水面、見頃の八重桜など豊かな自然の景色が次々と現れ、ほかの乗客も「以前、車でこの辺りに来た時とは違う風景が見える」と喜んでいた。
伊勢奥津駅で下車後、まず近くの「お休み処かわせみ庵」に行き、お茶と笑顔でもてなしてもらい、あまごごはんを購入し、旬の竹の子の味噌汁を振舞ってもらい昼食にした。かわせみ庵の営業は通常土日だが、同線の復旧後、今秋まで毎日営業中。同線利用者などの憩いの場となっている。
続いて同駅前で、市の電動アシスト付き・無料レンタサイクルを借り、20分程こいで約4・6km先の「道の駅美杉」へ。ちなみに同道の駅のほぼ向かいには、自家製の野菜などを使い手間ひまかけて作られた定食や丼、うどんなどが味わえる「旬のお食事処みすぎ」がある。
道の駅で一休みし、13時に約1・2km先の「北畠神社」に向けて出発。途中にある「美杉ふるさと資料館」で地元の情報を収集してから到着し、参拝した。また社務所で、可愛らしい御守りを買うと共に、神社内にある国指定の名勝・史跡「北畠氏館跡庭園」の入園料を支払った。
同庭園の作庭者は細川高国と伝えられている。高国は室町末期の武将で、その娘は伊勢国司7代・北畠晴具の妻となった。武将の手による庭らしく素朴で豪放な魅力に溢れ、歴史の哀歓を秘めた景観をしばらく眺める。
その後、上多気の伊勢本街道沿いにあり、100年以上、「練養甘」のみを作り続けている老舗「東屋」へ。同店は中川康代さんと娘さんが営む(不定休)。練養甘は、北海道産うずら豆などを使い、かまどで薪を炊き調理するなど昔ながらの製法で半日かけて作るそう。さっぱりとした甘さが好評の美杉名物だ。
15時前に同店を出て、同道の駅で再び休憩。時間に余裕があったので美杉町八知の同線比津駅まで足を伸ばしてみた。その後、伊勢奥津駅周辺へ戻って伊勢本街道奥津宿を巡り17時15分発の列車で帰路に着いた。
美杉町には多気を含め、名所があるものの公共交通機関が不便で車以外では行きづらい地域が複数あり、同線に観光客を誘致する上でも大きな課題となっている。今回、無料レンタサイクルがその対策の一つとなり得ることを実感した。
しかし一方、日頃運動不足の私には、坂道の多いこのコースのサイクリングは電動アシスト付きでも体力的にかなり厳しかった。同様に体力や、高齢などの理由でこの自転車の利用が困難な人は少なくない。加えて、途中の飼坂トンネルの通行も危険。従って、臨時バスの運行は非常に有効な対策になりそうだ。
私はこれまでにも取材で何度も美杉町を訪れたが、今回、同線の発着時刻に合わせてゆっくり巡ることで各名所の良さを再発見できた。また列車内や訪問先で地元の方々と交流し、その素朴な優しさに感動した。今後も取材などを通じ、名松線や美杉町のこのような魅力をより多くの人に知ってもらえるよう努めたい。
なお臨時バスは定員53名で、列車の伊勢奥津駅発着時刻に合わせて1日4往復する。臨時バスとレンタサイクルに関する問い合わせは美杉総合支所地域振興課☎津272・8080へ。

 

GWに美杉町上多気の各地で催される行事を紹介。
《道の駅美杉》
◆敷地内の屋外で様々な商品が販売される(※天候により中止の場合あり)。
①4月29日~5月8日=普段商品を出品している事業所(東屋・藤田こんにゃくなど)が、通常は出品していない商品も販売。
②4月29日=四季折々の花を生けて同道の駅の和室に飾っている地元住民などが、花類を販売。
③5月1日=地元住民が菊芋の漬物、あられを販売。
◆地元のグループがGW中に苔玉作り教室を開催。
問い合わせは同道の駅☎津275・0399へ。
《上多気地区内で沢山の鯉のぼりが大空を泳ぐ》
4月24日~5月10日まで。津市商工会美杉支部多気地区の会員有志が揚げているもの。
《北畠神社の春祭り》
5月5日開催。
◆11時~、祭典=神前奉納演舞……柳生新陰流(第16代尾張柳生家当主)、宝蔵院流槍術(第21世宗家)。
◆神賑行事(雨天時は社務所ホールで)=▼奉納演舞(北境内舞台前)……柳生新陰流と宝蔵院流槍術(13時~13時40分)▼のど自慢大会(13時45分~14時45分)▼お楽しみ抽選会(14時50分~約15分)。
このほか地元団体による飲食の販売も。問い合わせは☎津275・0615へ。

5月5日~8日と13日~16日、芸濃町椋本の東日寺境内の特設野外舞台で、劇団『水族館劇場』が『パノラマ島き綺譚外傳 この丗のような夢』を上演する。主催=『芸濃町を芸濃い町にする会』。江戸川乱歩の名作のモチーフが芸濃町にあったという推論を原点に、〝現代河原者〟を自称する同劇団が自らの手でつくりあげた劇場で、サーカス的な迫力ある演出や詩的な台詞に彩られた唯一無二の芝居を構築していく。

 

東日寺に建設中の野外舞台の前に並ぶ劇団員たち

東日寺に建設中の野外舞台の前に並ぶ劇団員たち

「芸濃町を芸濃い町にする会」は、芸濃町椋本出身で東京で活躍する文筆家・伊藤裕作さん(66)を中心に設立。伊藤さんは還暦を期に地元と東京を行き来する生活を送りながら、東京の劇団の舞台を津市の劇場で上演してきた。そして、地元への恩返しという想いもあり、昨年には津市無形文化財である椋本獅子舞の継承に尽力する人々の姿をとらえた映画を地元の人たちとの会でつくった。その会を発展的に解散して同会を設立。日本で唯一の「芸濃(げいのう)」という名前を大切にしたイベントを企画している。今年は、旧芸濃町が誕生して60年に当たることもあり、特別なことをしようと温めてきた企画が、芸濃町椋本の東日寺境内で行う劇団『水族館劇場』の『パノラマ島綺譚外傳 この丗のような夢』だ。
〝現代河原者〟を自称する同劇団は、全国各地の神社や寺院の境内などに、団員自らの手で一から野外舞台をつくりあげる〝小屋掛け芝居〟にこだわりつづけている。サーカスや移動遊園地を思わせる大がかりな仕掛けや大量の水を使った派手な演出と、詩的な言葉に彩られた濃密な世界観は唯一無二で、各方面より注目を集めている存在。
同劇団の作・演出の桃山邑さんの完全描き下ろしの新作となる今回の劇の下敷きとなっているのは三重県出身(本籍地は津市)の小説家・江戸川乱歩の中編小説「パノラマ島綺譚」。この物語の中心人物は、若くして亡くなったM県T市出身の大富豪・菰田源三郎とその同窓生で容姿が瓜二つな主人公・人見廣介。菰田と入れ替わり、巨万の富を手にした人見が、離島を改造した人工の理想郷・パノラマ島をつくりあげていく中で起こる事件を描いている。M県T市はもちろん、三重県津市を指している。
この話と芸濃町を結びつけるきっかけは、伊藤さんが地元に戻るようになってから、椋本の歴史を勉強したことで浮かび上がってきた一つの推論だ。乱歩が大正15年~昭和2年にかけて雑誌・新青年でこの小説を連載するにあたって、津市やその周辺の芸濃町の取材をした可能性は高い。その中で駒越五良八が巨額の私費を投じて、人工のため池・横山池を造成したという話を人工の楽園であるパノラマ島をつくりあげる物語のモチーフにし、更に椋本出身で明治14年(1881)に製茶輸出で大成功を収めた駒田作五郎を菰田源三郎のモデルにしたのではという推論にたどり着いた。
今回の作品には、パノラマ島奇譚や、芸濃町にまつわる歴史や伝説がエッセンスとして散りばめられている。現在、劇団員が東日寺境内に「野外舞䑓 黒翁の走り」を建設中。高さ約12mのテント小屋の中に舞台と客席を設置。同劇団の真骨頂である大量の水を使うための仕掛けも施される。
劇のあらすじは以下。政治的亡命を余儀なくされ、パトロンの大富豪が住む村へと流れてきた都会の舞台女優。大富豪が生まれた地にある枯れ果てた池を巡る失われた神話を聞かされた女優は自らの主演での舞台化することを望むが…。
チケット発売中。公演日は5月5日・6日・7日・8日・13日・14日・15日・16日。各日19時開演(18時半開場)。全席自由席(各日17時半より津市芸濃総合文化センター前で整理券発行)。前売り券3500円は水族館劇場HPで予約するか東日寺で劇団員から直接購入可能。電話で希望日・枚数・名前・連絡先を伝えて3700円を当日清算する予約券もある。問い合わせは☎080・6412・4897へ。芸濃町民・在勤者・出身者は前売り限定で1000円に。こちらは芸濃地区社協☎059・265・4890へ連絡を。当日券4000円。

3月11日、津観音こと『観音寺大宝院』=津市大門=が所蔵する絵画『絹本著色 弘法大師像』が同寺初となる国指定の重要文化財として答申を受けた。更に、同25日に9件が新たに津市の有形文化財指定されており、これで国・県・市合わせて75点の文化財を所蔵することとなった。昨年に真宗醍醐派の別格本山へ昇格した同寺だが寺格の高さを裏付ける多数の宝物を所蔵しており、今後も精力的に文化財認定をめざす。

 

国重文「絹本著色 弘法大師像」

国重文「絹本著色 弘法大師像」

「不動明王像」

「不動明王像」

国重文「絹本著色 弘法大師像」

国重文「絹本著色 弘法大師像」

同寺は平成3年に津観音保存会を設立。昭和20年の大空襲による戦火を逃れた貴重な寺宝などの所蔵品を後世に伝えるべく、修復・整備に着手し、それらを順次、文化財申請している。
今年3月11日に国からの答申があり、同寺初の国指定重要文化財となった「絹本著色 弘法大師像」は鎌倉時代の絵画。真言宗開祖・弘法大師空海が亡くなる直前の姿を描いたとされる御影の形式を踏襲する鎌倉時代の作例。同時代の空海画像は少なからず残っているが特に保存状態が良好。画中の墨書で、以前は京都の泉涌寺に伝わったことが判る作品で、文化史的にも重要な研究材料となり得る作品との評価を受けている。
更に、今年3月25日に9件16点が津市指定有形文化財の指定を受けた。内訳は絵画(全て絹本著色)が①「尊勝曼荼羅図」(室町時代)、②「釈迦十六善神像」(鎌倉時代末~南北朝時代)、③「五大尊像」(室町時代)、④「不動明王像」(室町時代)、⑤「大随求菩薩像」(桃山時代~江戸時代)、⑥「高野四所明神像」(桃山時代)、⑦「職貢図」(明時代)、典籍が⑧「紺紙金銀字千手陀羅尼経」(平安時代後期)、⑨「紺紙金字妙法華経」(平安時代末~鎌倉時代)。
一部を紹介すると…「尊勝曼荼羅図」は伝統的な技法で描かれた仏画だが、天台寺門系に通ずる作風で、真言宗の有力な寺院である同寺に伝わっているのは極めて異例の作品。「不動明王像」は独鈷杵を持つ赤不動を描いた画幅。同じような姿を描かいた本格的な仏画はほとんど知られておらず、資料的価値は極めて高い。尊勝曼荼羅図と同じく、特異な個性を持つ中世仏画の遺品として特筆すべき存在と評されている。その他の文化財も、全国的に見ても希少な品々が揃っており、文化的価値は非常に高い。
同寺は昨年に真言宗醍醐派の別格本山へと昇格。今回、初めて国重要文化財指定の答申を受けたことは、その格式を裏付ける上でも重要な意味を持つ。今後も、所蔵品の文化財申請を積極的に実施。津市民共有の財産として更に価値を高めながら、津市の文化レベル向上にも貢献していく。
津観音資料館で、5月29日まで「平成27年度 新指定文化財展」を開催。開館時間10時~17時。4月14日~19日は臨時休館。弘法大師像は4月19日~5月8日まで東京国立博物館での「平成28年 新指定 国宝・重要文化財」に出展。津観音資料館での展示は無い。

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