社会

津市は自治会が設置・維持管理する防犯灯のLED型への交換・新設の補助事業を行っているが、開始以来高いニーズを保っている。蛍光灯と比べると長寿命で電気代も安く、自治会の大きな負担となっている防犯灯の維持費の削減にも大きく貢献。今年度分で防犯灯のLED化率が6割を超える見込みだが、事業の財源である環境対策基金が底をつくため、来年度以降も同規模で継続するには新たな財源確保が課題となる。

 

市内に設置されたLED型防犯灯

市内に設置されたLED型防犯灯

市内には自治会が設置している防犯灯が約2万8800基あり、平成24年度よりLED防犯灯の設置補助事業(補助率3分の2・上限2万円)を行っている。当初は、市側が見込んだ予算を遥かに上回る要望が殺到したため、昨年度より市が自治会に事前聞き取りを行った上で、希望数から割り出した金額を当初予算に計上するという形に切り替えている。昨年度は補正予算を含めて約6500基分の約1億円を事業費として計上。これによってLED化率は約42%となった。
今年度も自治会への聞き取りを行い、5567基8738万円を当初予算に計上したが、それ以降に数百基分の要望が届いているため9月議会に補正予算を提出して対応するために協議を進めている。
蛍光灯を使った従来型と比べるとLED型の魅力は維持管理費の安さ。機種にもよるが、電気代は約半分で点灯時間も約7倍の約6万時間であることから、蛍光灯の交換といったメンテナンス代を減らせる。少子高齢化が進む中、会員の減少が続く自治会にとって大きな負担となっている防犯灯の維持管理費の削減は非常に意義が大きい。
この補助事業も、犯罪や交通事故の防止に大きく貢献する重要な社会インフラでありながら、民間サイドが管理しているという防犯灯の特殊性を理解した上で行われているもの。昨年度より温室効果ガスの排出削減という点に環境対策基金を事業の財源に活用しているが、今年度の補助でほぼ枯渇してしまう。そのため、来年度も今年度と同規模の補助を維持しようと思うと、新たな財源の確保が大きな課題となる。
今年度分を合計すると市内防犯灯のLED化率は60%を超える見込み。東日本大震災以降、省エネ意識も高まっているだけでなく、前述の通り防犯灯の維持管理費は自治会の会計に占めるウェイトは大きいため、要望に合わせた施策の継続は不可欠。我々の日々の暮らしを明るく照らす防犯灯の果たす役割は大きく、ニーズに合わせた市の対応を期待したい。

この4月より近鉄久居駅の東出口側に「三重交通㈱」が設置している久居駅東出口のバス停に『ハチ公口』という副題がついた。忠犬ハチ公の飼い主で我が国の近代農業土木の父と名高い久居元町出身の上野英三郎博士(1872年~1925年)とハチ公の銅像が東出口前に建っていることに因み、出口を改名できないかという動きがある中で追い風といえる。今後の改名に向けた盛り上がりにも期待が集まる。

 

緑の風公園に建つ上野博士とハチ公像

緑の風公園に建つ上野博士とハチ公像

「ハチ公口」と副題が加えられた近鉄久居駅東口の三重交通のバス停の時刻表

「ハチ公口」と副題が加えられた近鉄久居駅東口の三重交通のバス停の時刻表

この銅像は平成24年に地元有志らによる「上野英三郎博士とハチの銅像を建てる会」が、久居出身の上野博士の偉業を全国に広く発信し、地域の観光振興につなげるため全国初の博士とハチ公の一対の銅像として近鉄久居駅前の緑の風公園に建立。世界的に有名な東京の渋谷駅前のハチ公像のように地域の新たなシンボルとして受け継がれていくことが期待されている。
そして昨年、三重大学大学院生物資源研究科教授で上野博士の業績にも詳しい成岡市教授による、博士とハチ公像が建つ東出口側を多くの人々でにぎわう渋谷駅にちなんで「ハチ公口」に改名できないかという提案が報道された。それに賛同した銅像を建てる会の元代表である多田滋郎さんは改名を実現させるべく、現三重交通グループホールディングス㈱会長で以前に近鉄の副社長も務めた津商工会議所の岡本直之会頭に理解と協力を呼びかけるなど尽力を続けてきた。
そして、そのような一連の流れがあった中、三重交通㈱が地域の盛り上がりの一助にしたいと、今年4月より久居駅東出口前のバス停に「ハチ公口」と副題をつけるに至った。
今回の三重交通の取組みを成岡教授は「駅の出口の改名に向けた流れに上手く乗ってほしい。多くの関係者たちの気持ちをキャッチした動きは素晴らしい」と喜ぶと同時に、渋谷やハチ公の生誕地である秋田県大館市を結ぶ共通のシンボルとして像の価値への理解がより多くの市民へと広がっていくことを期待する。
多田さんは「非常に嬉しい。もう少し時間はかかると思うが、駅出口の改名も実現させたい」と喜ぶ。
また、像が建つ緑の風公園で定期的にマルシェを開いている久居地域在住・在勤の若者たちによるグループ・久居げんき会代表の石川禎紀さんは「これをきっかけに更に盛り上がっていけば嬉しい」と歓迎する。
今回の三重交通の取組みを受け、近鉄も「行政などから正式な要望があれば検討をしたい」と改名の可能性も示している。そういう意味では、今回のバス停に副題がついたことは、非常に大きな一歩と言えるかもしれない。
今後、駅出口の改名が実現し、渋谷駅に次ぐ「ハチ公口」が誕生するかどうかは行政をも巻き込んだ市民サイドの更なる盛り上がり次第といえよう。

津市白山町上ノ村で平成23年に設立された『上ノ村自治会獣害対策協議会』=山口俊宏会長=は、「獣害対策を通して地域力アップ!」をスローガンに掲げ活動。非農家を含め住民が、丁寧な合意形成に基づき、侵入防止柵を主体的に管理している。また高齢者や、他地域の学生・企業にも活躍の場が提供され、獣害が激減しただけでなく、関係者の共同体感覚の醸成、獣害対策関連の新たな取り組みにも繋がっている。

 

 

侵入防止柵の管理を行う住民と他地域の学生達

侵入防止柵の管理を行う住民と他地域の学生達

津市では中山間地域を中心にシカ・イノシシ・サルによる農作物への被害が深刻で、市でも従来から対策を推進。今年度は、新たに「防護柵補助制度」を開始すると共に「津市獣害対策相談チーム」を設置した。また現在、市内で20の地域獣害対策協議会が設置されており、上ノ村自治会の獣害対策活動を担う『上ノ村自治会獣害対策協議会』もその一つ。
上ノ村は中山間地域の集落で世帯数79戸・人口289人・平均年齢54・7才・高齢化率40%。多くの世帯が農家で平成20年以降、シカ・イノシシ・サルによる農作物への被害が増えていた。 そんな中、21年に集落全戸と入り作農家の計101戸で、「上ノ村環境保全プロジェクト」(通称=KKP)が発足。翌22年にKKPが行ったアンケートなどによって獣害が集落全体の問題であることが分かり、住民が危機感を共有した。そして自治会をあげて対策を行うことになり、その下準備中、市の担当者から国の「鳥獣被害防止総合対策交付金事業」について説明を受け、自治会として取り組むために、23年1月、KKPと同様の構成員で同協議会が設立された。
同集落の獣外対策の特長は、「被害というマイナスをゼロに近づける活動」で終わらせず、地域おこしに活用していること。
例えば、同事業での侵入防止柵(恒久柵)設置事業をKKPで立ち上げ、協議会で実行する際には、非農家も含め集落全体で取り組むための合意形成を“当自治会運営上、かつてないほど丁寧”に行ったと言う。
それが住民の主体的な活動を引き出し、今では、柵の管理を行う出合い作業に強制しなくてもほとんどの住民が参加。高齢のため参加できない人も、貢献できる役割を自ら探している。
また、集落の休耕田を有効活用する活動に参加している三重大生が、わな免許を取得して猟友会に所属し猟師でもある会長の山口さんの指導のもと、捕獲活動を実施。他地域の企業による休耕田での米作りも数年前始まった。
このような取り組みの結果、獣害の被害額は激減した(22年=約448万円、27年=約97万円)。それだけではなく、集落の内外の関係者に共同体感覚が醸成され、上ノ村は多方面に亘り先進的な取り組みができる集落へと発展している。
その結果、同協議会は、農水省の27年度鳥獣被害対策優良活動表彰で、農村振興局長賞を受賞した。
現在、同集落では、捕獲した鹿の肉を少しでも有効に消費するための「上ノ村ピザ」開発など、獣害対策に直接関連する新たな取り組みも多数実施中。
さらに学生らが取り組みを通じ集落に深く親しみ、大学院進学や就職にあたり「上ノ村に住みたい」と言う人もいるほどだ。
協議会事務局の木村和正さん(62)は「地域おこしのキーワードは〝主体性〟だと思う。
私達は外の人の力も借りますが、こちらがサービスしたり観光的に楽しんでもらうのではなく、互いに好きな事・得意な事を生かして楽しみながら地域貢献するという状況を作りたい。
そのために補助金をもらい、いつまでも補助金に頼るのではなく、補助金が出る間に自立できる基盤を作るというのが、うちの集落のやり方です」と話している。
柔軟な発想で危機を好機に変えた同協議会の活動は地域活性化や獣害対策に取り組む他団体にも、大きなヒントになり得るだろう。

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