社会

 注目を集める『ポルタひさい』の再建案について、津市は2月7日の津市議会全員協議会で、土地建物を市が買い取った上で久居総合支所・久居保健センター・津南工事事務所を移設して活用する意向を示した。駅周辺地区全体では耐震性に問題がある同支所の建物を解体した跡地にホールを建設、久居駅東口側には公園や駐車場などを整備。本格的な議論はまだだが、旧久居市から続く問題に一つの着地点が示された形だ。 

 ポルタひさいを運営する㈱久居都市開発は相次ぐテナント撤退の影響で赤字に転落。昨年、旧久居市から引き継ぐ形で津市が金融機関と締結している損害担保契約(約7億2千万円)の発動が確実となったため、津市に同社の持つ土地と建物の買取を要請していた。この契約は津市が同社の債務を全額肩代わりするばかりか、同社の土地建物まで金融機関に全て没収されてしまうという厳しい内容。この様な経緯もあり、ポルタひさいの再生を巡る市の動向が注目されてきた。
 ポルタひさい管理組合や自治会連合会久居支部、久居地区地域審議会、久居商店連盟など、地元関係団体との意見交換を経て、今回津市が実行に移すべく示したポルタの再建案は昨年11月の津市議会全員協議会で津市が「久居駅周辺地区まちづくりビジョン」として示したプランのひとつを叩き台にしたもの。
 この案の内容は要請の通り同社の持つ土地と建物を津市が買い上げ、同社はその金額で金融機関の債権と津市への債権約2億円を返済。ポルタひさいは津市が改修を加えた上で、津市久居総合支所・久居保健センター・津南工事事務所として活用するとしている。更に耐震性に問題のある現在の久居総合支所と同工事事務所が入っている南庁舎は解体し、その跡地に老朽化の著しい津市久居市民会館=津市久居元町=に代わる市民ホールを建設。このホールには①住民票発行などの窓口サービスと、ポルタに移転する庁舎のサテライト機能②自治会や地域団体などを含めた住民活動の支援③文化関係団体との連絡調整と、芸術文化事業などに対する活動支援や施設の維持管理、といった機能を持つ課を配置する。その上でホールと久居ふるさと文学館との連携を強め、久居地区の文化拠点エリアとしての機能を強めていく。
 PFI方式による市民ホール及び保健センターの建設が頓挫した後、開発が白紙に戻っていた久居駅東口側には駅前公園広場・駐車場などを整備。箱物なしのオープンスペースとし、柔軟な活用を行う。
 この案の雛形となったプランの総事業費は約39億6600万円で、市の実質負担は合併特例債の活用で約16億900万円。この案もほぼ同額になる見込み。
 津市は前述の各団体との意見交換で概ね理解が得られたことも根拠とし、今回の案を決定したが、平成18年の市町村合併時の取り決めでは総合庁舎を同じ場所に新しく建て直し、駅東口側に市民ホールと保健センターを建設するという計画だったため、根強い反対の声があるのも事実だ。
 しかし、その取り決めを結んだ時点ではこの問題にもまだ緊急性は薄く、東口側の開発頓挫については地域住民からの理解が得られなかったことが原因となっていることを考慮すれば、従前の計画通りの開発を進めることが必ずしもベストな選択肢と言い切れない。
 津市の想定スケジュールでは今月末より始まる津市議会第1回定例会に、ポルタ取得費と改修設計に関わる予算、久居駅東口と基本計画作成に関わる予算案を提出。平成26年度にポルタひさいへ久居総合支所、久居保健センター、津南工事事務所を移転及び開設。平成27年度より駅東口の公園広場などと、東鷹跡町のホール整備事業に着手する。
 もちろん、同定例会で市議たちから、この案に対する様々な意見や要望が市当局へと寄せられるのは確実だが、限られた選択肢の中で、一つの着地点を示した市の決断は一定の評価をされて然るべきものだろう。今後の動きにも注目が集まるが、市は過去の過ちを再び繰り返さないよう覚悟を持ってこの問題の収束を図るとともに未来を見据えた施策を行うべきだろう。

岡田泰典専務

 津市白山町佐田の『猪の倉温泉』=運営・㈱猪乃倉=は三重県の財団法人と旧白山町の第3セクターが運営していたが地元の自動車部品製造会社が買取り、平成17年に民営化。以降、地域活性化や雇用創出を目指し地元農産物やオリジナル化粧品の販売、官民連携による「湯けむりコミュニティ事業」など地域密着の経営を行い集客を伸ばしている。同社の岡田泰典専務(30)に話を聞いた。(聞き手=本紙・小林真里子)

 

 ──自動車部品製造業から温泉業に挑戦した経緯を教えてください。
 岡田 当温泉が競売にかけられたとき、津市内や県外の企業から手が挙がったが、町内からは挙がらなかった。県外企業が買い取ったら地元の雇用がなくなるかもしれない。そこで、当時、町内で「白山電器」を経営していた当社社長で私の父の岡田照良が、「地元企業として手だけでも挙げよう」とプレゼンに参加し入札した。当時、私は高知工科大学の学生で、卒業後すぐ帰郷して働き始めた。
 経営にあたってはお客様の利便性と、お客様目線のサービスを重視。町内近辺など地元の人材を積極雇用し、新人研修では、私が挨拶やおもてなしの心を直接指導する。
 また〝地域密着の手づくり的経営〟を目指し、名古屋・大阪・京都からの観光客向けの地域の産品や、私自身がアトピーに悩まされていたのを機に開発した温泉水配合のボディーソープをはじめ化粧品を販売。
 当温泉を核に官民が連携し地域活性化を目指す「湯けむりコミュニティ事業」では一昨年、津市社会福祉協議会の協力を得て独居老人向けのサロンを開いた。ほかにも、施設周辺に2ケ所のノルディックウォーキングコースを整備し、イベントを開いている。
 ──民営化後、利用者数はどう推移していますか。
 岡田 年間利用者数は増減を繰り返しているものの全体的には増えており、日帰り温泉の入浴者数は年間16万人から18万人と約18%増加した。要因にはサービスや認知度の向上もあると思う。
 ──東京でのPR活動も盛んに行われていますね。
 岡田 私が4年程前から東京に出向いて旅行代理店への営業や、旅行雑誌に掲載を交渉したり、津市観光協会とイベントに参加したりしている。
 学生時代、高知県では三重や津も知名度が低いことを知って、各地域の発展がなければ三重県全体の発展もないことを実感した。現在、津青年会議所などに所属しているが、自分が三重を発展させるための一つのピースになれたらと思い活動している。
 ──今後の展望を聞かせてください。
 岡田 ビジネスホテルが台頭しているが旅館は年々減っており、例えば、もし学校週6日制が導入されれば、家族旅行が増えるのかまたは減るのかなど、社会情勢の先が読めず不安はある。しかし会社に魅力があればお客様は来てくれるしここにしかないオンリーワンを創るのが私の仕事だと思う。
 今後、通販で扱う地元産品をより広く発信する方法を考え、〝地産外消〟により働く場を作りたい。私も白山で生まれたので、自分の娘や息子達も、町外に出て行かなくても生活の基盤が作れるまちづくりができたらと考えている。
 ──ありがとうございました。

松本正之NHK会長(前列中央)と第8次請願団

 江戸幕府草創期に大きな役割を果たした津藩祖・藤堂高虎公を主人公とした大河ドラマを!──21日、NHK大河ドラマ『藤堂高虎』を誘致する会(西田久光世話人代表)の呼びかけにより滋賀・愛媛・三重の3県4市町の首長や団体などの代表32名が東京都渋谷区のNHKを訪れ松本正之会長(伊勢市出身)らに早期実現を求める請願を行った。
 

大河ドラマ『藤堂高虎』のNHK請願は平成14年、当時の北川知事や近藤津市長、上野市自治会連合会と共に1県2市で第1回を行って以来、今回で8回目。
 三重からは川崎二郎衆議院議員、鈴木英敬知事、前葉泰幸津市長、田村宗博津市議会議長、高橋千秋参議院議員林秘書、竹林武一津商議所会頭、藤堂保和藤堂藩五日会前会長、村田修ときめき高虎会会長。更に昨年末結成の津市議会お城を活かしたまちづくり推進議員連盟(14名)から小菅雅司会長、小林貴虎、岩脇圭一、西山みえの4市議が議連として初参加。伊賀市からは城政彦市産業振興部次長や商議所、観光協会、伊賀上野城から4名が参加。
  高虎公前任地の四国からは江里寿樹愛媛県観光物産課主幹、山本浩今治市市民まちづくり推進課課長補佐が参加。生誕地の滋賀県犬上郡甲良町からは北川豊昭町長、山本日出男観光協会会長。また、北川町長らの働きかけにより滋賀県庁から上山哲夫東京事務所長が初参加。滋賀県の参加により請願団の構成は、前回までの2県4市町から3県4市町に拡充した。
 松本正之NHK会長らとの面談では、まず最初に誘致の会の西田会長が請願書を読み上げ、高虎公の現代的意義として、無名の郷士から叩き上げ時代を予見し次々とスキル(能力)アップしていった生き方は現代人の良き手本であること。また、工期・コストを半減させ城づくりに革命をもたらした層塔型天守の創出など技術革新(イノベーション)で時代を生き抜いた公は、現代日本人に大きな勇気と元気を与えると指摘。「高虎公を主人公に信長・秀吉・家康、名補佐官豊臣秀長、無名の技術者、有名無名の女性たちを配すれば従来の戦国物とは一味違った大河ドラマとして人気を博するものと確信する」と早期実現を要望した。
 この後、參加者一人ひとりが各々の思いを表明。川崎代議士は「松本会長の間に何とか実現できたら。切り口を考え、一つひとつ階段を上らせて頂けたら」。鈴木知事は「叩き上げということに私も大変共感している。県全体の観光としてはポスト遷宮と各地の周遊が課題。大河ドラマが決まればポスト遷宮の活性化の起爆剤になるのでご配慮をお願いしたい」。
 前葉津市長は「愛媛県、滋賀県からも来て頂き、広域的な纏まりで県・市町一体となり(誘致運動を)進めている。三重県出身の松本会長が身びいきでなくご決断頂ける状況になっているので是非ご決断を」。北川甲良町長は「昨年、高虎公が産湯を使った場所を公園化した。県道には4mの看板もあげPRに務めている。1年でも早く実現をお願いしたい」と訴えた。
 これらに対して松本会長は「高虎は凄い人物だし、いろんな構成要素があると身びいきではなく思っている。スタッフにはぜひ藤堂高虎をと言っている。現実には幾つも(候補)ある中で、高虎の名前が広がっていくと全体的に盛り上がっていく。現実にそうなりつつあるが、更にそれを続けることが近道と思う」などと誘致運動、顕彰運動の一層の高まりを求めた。
 また、若泉久朗ドラマ番組部長は「いろんな方の陳情、推薦を頂いているが、高虎公は長く前から陳情頂いており、大河ドラマの企画の中には深く入っているので、後はタイミングと時代の流れとか、どういう切り口でいくか、本当に真摯に検討していきたい」などと答えた。
 戦国と幕末維新を軸とする大河ドラマのパターンからすると、チャンスは来年発表の平成28年分か。

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