社会

 改正消防法の影響で2月以降、ガソリンスタンド(GS)などの給油所に設置された石油の地下タンクで設置から40年以上が経過したものの交換・改修が義務付けられることとなる。しかし、厳しい経営状況からその費用が捻出できず廃業に追い込まれるGSが続出することが全国的にも危惧されている。津市では多くのタンクが設置40年を迎える平成28年と平成29年に最も大きな影響があるとみられている。 

 低燃費車の普及や過酷な価格競争もあり、GSは全国的にも減少傾向で平成15年度で全国に5万軒以上あったのが平成23年度で約3万7000件にまで減少している。更に昨年10月に新設され、今後段階的に原油や石油製品に課せられていく「地球温暖化対策税(環境税)」は現状で1当たり25銭と価格転嫁が難しく経営を圧迫している。そこに追い討ちをかけるのがこの『2月危機』だ。
 ことの発端は地下に埋設した石油貯蔵タンクの老朽化で内容物が漏れ、土壌汚染に繋がってしまうケースが続出したため。そこで平成23年に施行された改正消防法では、設置から40年以上が過ぎたタンクの交換もしくは改修を求めている。その期限が平成25年1月31日。つまり今月末という訳だ。一般的なGSではレギュラー、ハイオク、軽油、灯油と4つのタンクが埋設されているケースが多くタンクの内側を防水性の高い樹脂塗料で補強する工法で対応した場合、数百万円単位の総工費が必要となる。しかし、前述のように先行きの厳しさから、後継者のいないGSが大部分。経営者の高齢化も顕著で多額の改修費用の捻出を諦め、今月末で閉鎖するGSが全国でも続出している。
 1月15日現在、津市消防本部管内に設置されているタンクで今月末までに交換・改修が必要なものは6施設に設置されている10本。うちGSは2施設5本となる。そう聞くと意外に影響は小さいように思えるかもしれないが、この問題はこの2月が幕引きではなく幕開けであることは意外と知られていない。
 つまり今後、設置40年を迎えるタンクも同様に交換・改修が求められていくため、これから次々と決断を迫られるGSが出てくるということだ。津市にとってこの問題が最も大きな影響を及ぼすと見られるのが平成28年と平成29年。それぞれ6GSの14本、6GSの15本となっている。
 元々、過疎高齢化が進む中山間部では、生活を支えるはずのGSの経営悪化による閉鎖は深刻だったが、それにますます拍車がかかる形になる。ガソリンは法律上、灯油のように配達も出来ないため、地域のGSが消えれば給油のために数十㎞も走らなければならない〝ガソリン難民〟が発生する。
 また、GSは災害発生時には地域の燃料補給拠点としての役割も期待されるため、行政も業界団体と協定を結ぶケースが多い。南海トラフ大地震など大規模災害発生が確実視される中、結果的にGS閉鎖を促進することが本当にプラスなのかという疑問も残る。
 三重県石油商業組合・三重県石油業共同組合の寺島巖副理事長も「全国一律の線引きではなく、各店舗や地域の状況を踏まえた施策にすべき」と声をあげる。 今後、ますますこの問題は加速していくが、市民生活にも直結するだけに、より現実に即した国や自治体の施策が求められよう。

 加入者の大部分が低所得者層で負担の大きさも原因となり、保険料の収納率の低下による赤字運営が続く津市の『国民健康保険(国保)』。現在も収納率は90%を割り込んでいるが、国保の業務を担当する市保険年金課の地道な取り組みや市が抱える債権の困難案件の滞納整理を請け負う特別滞納整理推進室との連携で少しずつだが改善をしている。 

 津市の国保加入世帯数は昨年10月1日現在で4万1643軒。保険料収入は平成23年度の合計で約63億4700万円。
 主に地方自治体が運営している国保の加入世帯は後期高齢者制度に以降する前の74歳以下の高齢者や個人事業主などが中心で他の公的な保険制度と比べると低所得者層が多いのが特徴といえる。津市の保険料の平均額が一人当たりに換算すると約9万5千円、世帯全体でみると約15万6千円と所得に占める負担がいかに大きいかが伺える。
 国保は基本的に保険料収入と運営自治体の法定内繰り入れや国・都道府県からの交付金などを併せた特別会計で運営しているが、長い不況で保険料の収納率は低迷。加入者に高齢者が多く医療費支出も年々、増加傾向にあることからも国保は全国的に赤字運営に陥っている。津市でも赤字が続いており、平成18年の10市町村による合併時にあった基金11億円もあっという間に枯渇。やむを得ず平成22年度には一般会計から法定外繰り入れを行ったが平成23年度より保険料の値上げを余儀なくされている。
 受益者負担という制度の性質から考えると収納率が下がった分、保険料を値上げして補填するしかない。しかし、この赤字は収納率向上に対する市の取り組みの甘さも一因で『加入者間の平等』という大前提すら守れていないことが問題視されていた。それは、平成24年10月末現在で滞納保険料の累積が約23億3千万円と莫大なことからも明らかだろう。更に保険料は2年で時効を迎えるため、平成23年度で約5億5千万円が回収不能となっている。この状況での値上げは理不尽といわれても仕方ない。
 ここまで収納率が落ち込んだ一因には国保の業務を担当する市年金保険課が保険証の発行や窓口・電話対応など国保のあらゆる業務を行っていることにある。税務には収税課という徴収の専門部署があるが、同課では他の業務と同時に滞納整理をこなさなければならず体制的にも限界がある。
 そんな苦しい台所事情もあるが、保険年金課でもこの状況を打開すべく改善に向けた努力を重ね、着実に成果を上げている。保険料は滞納すれば延滞金がかかり、更に納付が困難になることから現年度納付の徹底に努め、収税の経験がある職員のノウハウを生かしながら、滞納者に電話で納付を求める催告センターも活用。コンビニ納付も収納率向上に寄与している。
 更に分納誓約による時効中断措置(時効が2年伸びる)も実施。財産調査による差し押さえも積極的に行い、平成24年度10月末で440件約1億7千万円を回収している。市税や国保料など市債権の困難案件を専門に扱う「特別滞納整理推進室」とも連携。同室は平成24年度11月末で229件約1億7000円の移管を受けており、約6800万円の回収に成功している。同室への移管予告を送付した結果、納付に応じる滞納者も多く、抑止力としての効果も大きい。その成果として平成21年度の保険料収納率の現年度分が86・2%、滞納分が7・2%から平成23年度で88・5%、滞納分が15・8%まで上昇。今年度も昨年度以上に上昇する見込みだがその一方で赤字から約2億円ほどの法定外繰り入れも見込まれるなど、依然として窮状は続いている。
 収入に占める負担割合が重過ぎることも含め、国保という制度自体が限界に来ているのは事実。抜本的な制度改革を求めて声をあげることも重要だろう。
 しかし、現行制度に従うしかない現状では、更なる保険料上昇を招かぬよう加入者間の平等を守ることが最優先事項となる。今後も津市の最大限の努力と責任ある運営を期待したい。

藤堂藩五日会会長の斎藤正和さん

作家・童門冬二氏

 江戸時代後期から幕末にかけて数多の優秀な人材を世に送り出した津藩の藩校「有造館」。その教えを現代に生かそうとアスト津を運営する第3セクター「㈱津駅前都市開発」と津藩士の子孫たちによる「藤堂藩五日会」が共催で来月から『有造館ゼミナール』を開く。同会の会員だけでなく大学教授などが月2回ペースで講義を行っていくが2月18日にはその開幕を作家・童門冬二氏による特別講義で飾る。 
 「有造館」は苦しい藩財政の再建に努めた名君として知られる津藩10代・藤堂高兌が文政3年(1820年)に開校。江戸後期から幕末にかけて文武に優れた優秀な人材を輩出し続け、その名を天下に轟かせた。3代督学・斎藤拙堂の時代には海外の知識が集積していた長崎へと学生を積極的に送り、当時の最先端知識である蘭学や西洋医学を学ばせている。その成果を体現する存在といえるのが、日本水路測量の父と呼ばれる柳楢悦や、坂本龍馬を撮影した上野撮影局を開いた上野彦馬と共に日本写真術の黎明期を築いた堀江鍬次郎らである。
 津城の一角にあった有造館は現在、お城公園=津市丸之内=に正門だった「入徳門」=市指定史跡=を残すのみとなったが、文教都市を掲げる津市のルーツとして今もなお、影響を与えている存在といえる。
 今回、アスト津を運営する第3セクターでは「㈱津駅前都市開発」が津藩士の子孫らによる「藤堂藩五日会」と共に「有造館ゼミナール」を開講。温故知新の精神を下に、同会会長で斎藤拙堂の子孫である斎藤正和さんと初代督学・津坂東陽の子孫である同会員の津坂治男さんを始め、大学教授や文化行政に携わる人たちを講師に迎え津市の文化風土や、当時の学びの中心であった経書や史書について学ぶ。そしてそこから学んだ貴重な知識を現代社会に生きる我々の人生の貴重な教訓として役立てるのが目的。
 津駅前都市開発では昨年より映画を軸とした事業を展開し、ビルの新たな付加価値を見出しながら、津駅前で競争が激化するテナント誘致や地域活性化に繋げる戦略を打ち出しており、今回もその一環としての要素も持っている。また、将来的には交通アクセスの良さを生かした社会人向けの大学や大学院のサテライトの誘致などにも繋げる意欲を見せており、その足がかりともいえる第一歩だ。
 ゼミナールの内容は2月~7月を第1部とし、テーマは「藩校の歴史・文学からの学び」。月2回開講。1講座2時間(第2・第4金曜日の14時半~16時半)で計10回。会場はアスト津のホテルグリーンパーク1階のレストラン・ルベール。開講を祝し、2月18日14時~、今に通ずる歴史上の人物の教えや生き様などをテーマに執筆や講演活動を続ける作家・童門冬二氏を招き、特別講義を開催する(無料)。その後は斎藤さんと津坂さんを中心に大学教授らを交えながら多彩な視点からの講義を行う。講義後にも座談会を開き参加者同士が活発に意見を交わしながら交流も広げる。7月以降も東京学芸大学や皇學館大学の教授や作家を講師に迎え、様々な講義を展開していく予定。
 斎藤さんは「このゼミナールは単なる講義ではなく自己研修の場。平日午後からの開催なので中高年が中心となると思うが、そこから子や孫に広がり、やがて社会を変えていく場としたい」と話している。
 激動の幕末と同じく時代が大きく揺れ動いている現代を生き抜くヒントを藩校の教えを紐解きながら、学ぶこのゼミナール。斎藤さんの言葉通り、社会を変える第一歩は、まずその資本となる人づくり。数々の英才を世に送り出した藩校の名を冠するにふさわしい存在へと成長していくことが期待されている。
 特別講義は参加無料だが事前申し込みが必要。ゼミナールは10回一括申し込みで参加費5000円。どちらも参加申し込みの締切は1月末まで。講座の詳細は文末の表を参照。
 申し込み&問い合わせは㈱津駅前都市開発℡059・222・4122。

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