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近年の防犯意識の高まりを受け、津市は今年度から市内自治会などの団体を対象とした「防犯カメラ設置補助金事業」を実施している。制度を利用して8団体27カ所で防犯カメラの設置が行われたが、制度開始に当たって映像の管理やプライバシー保護といった課題もあがっていたが、適正なルールづくりが奏功しトラブルの報告はなく順調。来年度も事業は継続予定で設置需要の拡大も見込まれる。
近年、防犯カメラは低価格化・高性能化が進んでいることもあり、一般家庭に設置するケースも増えている。それに伴い自治会でも導入を試みるケースが増えている。津市でも今年度から自治会、自治会連合会、地域住民による防犯団体を対象に公共スペースに設置する防犯カメラ1基当たりの購入設置費用の最大2分の1、15万円上限という条件で補助を行っている。
不特定多数の人間を映す防犯カメラは正しく運用しなければプライバシーの侵害などを引き起こす諸刃の剣になりかねないため、津市ではこの補助制度の開始までに、警察、自治会関係者、PTAなどで構成する「犯罪のない安全・安心なまちづくり推進協議会」を設立し、適正なルールづくりや実証実験などを行い慎重に準備を進めてきた。その過程で洗い出された注意点などを盛り込んだ上で、補助制度を利用するためにクリアすべき条件やルールをまとめた津市独自の「防犯カメラ設置の手引き」を作成。ネット上でも公開している。
現在までに市内の自治会を中心とする8団体が制度を利用。通学路や交通量の多い場所、逆に少ない場所など、各地区の防犯上の問題となる箇所に計27機を設置。カメラ設置付近には、「防犯カメラ作動中」といった表記のある看板やステッカーを取り付けていることもあり、地域住民が安心を感じる材料にもなっている。あくまでカメラの設置は防犯目的ではあるものの、ゴミのポイ捨てや危険運転が減るといった効果も発生している。
この制度が始まる時に心配されていた苦情やトラブルも今のところ、市の方には寄せられていない。カメラを設置する前に地域住民のもとを回って設置場所や映る範囲を説明して同意を得ることや、録画した情報を管理する責任者もしっかり定めるといった所までルールで管理していたことが奏功している。ひと昔前までは、防犯カメラを設置すると「監視されている」というネガティブな感情を抱く人も少なくなかったが、重大犯罪や交通事故などが、防犯カメラの映像によって解決される事例が広く認知されれきたことで、安心感を覚える人の方が増えたという背景も大きい。
ただ、補助金があるとはいえ、設置に必要な費用を理由に断念する団体もある。半額の上限15万円まで補助されるため、カメラ本体と設置工事費用込みで30万円前後で申請するケースが最も多いが、この場合は単純計算で残りの15万円前後は団体内で捻出しなければならない。加えて、精密機械でありプライバシー情報を管理する防犯カメラは専門業者による保守点検が必要で1基当たり年間1~3万円ほどかかる。これに電気代や機種によって必要な費用などを加えた維持費も発生するので、これが設置するにあたり考慮すべき要因となっている。
今年度は、コロナ禍を理由に補助金申請をキャンセルする団体もあったが、防犯カメラのニーズは高く、事業は来年度も継続される見込み。世情の回復に伴い、改めて申請を行う団体も出ることも含め、今年度を上回ることが予想される。
補助金制度の問い合わせは、問い合わせ=津市市民交流課☎059・229・3252へ。
2021年3月11日 AM 5:00
マイナポイント還付事業の開始以降、津市でも「マイナンバーカード」の取得率が短期間でアップしている。更に総務省がマイナポイントの還付期限を今年9月末へと延長したこともあり、津市でも相談窓口に連日市民が訪れている。しかし、ポイントの還付を受けるためには、3月末までにカードの取得申請をしておかなければならないため、駆け込み申請の増加も予想される。早めの対応も重要だ。
政府が2022年までに全国民への普及を目指すマイナンバーカード。社会保障や税制との紐づけなどによって、行政の効率化と利便性の向上などを訴えてきたが、取得するメリットが乏しかったこともあり、普及率は伸び悩み続けてきた。
しかし、昨年にその状況に変化を与える出来事が二つあった。一つ目は昨年5月に国民全員に一律10万円が給付された特別定額給付金。マイナンバーカードを取得しているといち早く給付が受けられた。そして、最も効果が大きかったのは、昨年9月から始まったマイナンバーカード取得者を対象に、任意のキャッシュレス決済サービスで一人当たり最大5000円分のポイント還付が受けられる「マイナポイント」。一人につき5000円分のポイントがもらえるという分かりやすいメリットが示されたことで、取得する人が一気に増加。それを受け、国もポイント還付の期限を今年3月末から9月末まで延長。1月末現在で全国の普及率が25・1%と国民全体の約4分の1が取得するまでに上昇している。3月からは健康保険証利用も始まる。
津市でも、65歳以上の高齢者がバスで使えるポイントを還元するシルバーエミカや、図書館の貸し出しをマイナンバーカードで行えるようにしたり、住民票などのコンビニ交付など、マイナンバーカード取得者用の独自サービスを行ってきたが、やはりマイナポイントの訴求効果は大きい。昨年5月末で14・97%(4万1449枚)だった普及率が昨年末には23・36%(6万4486枚)まで上昇。前述のとおり、マイナポイント還付事業の期限が延長されたことや、最近、総務省がカードの未取得者に通知を一斉送付したこともあり、津市市民課へもカード取得についての相談が多く寄せられている。
津市役所本庁舎1階ロビーには、マイナポイント還付事業についての相談・支援窓口の「マイナコーナー」が設置されており、昨年12月中には1722件の相談があった。手続きはネット上で行えるが、操作に不慣れな高齢者も多いため現在も多くの人が訪れている。相談内容で多いのは、任意のキャッシュレス決済サービスとの紐づけが上手くできないといった内容。また、手持ちのスマートフォンによってはマイナンバーカードが上手く読み取れないので、同コーナーに設置したリーダーを利用して紐づけを行う人もいる。
同還付事業の期限は9月まで延長されたが、対象となるのは3月末までにカードの取得申請手続きを行った人のみ。これから期限が近づくにつれ、駆け込みでの申請が予想され、市役所の窓口なども一層混雑する可能性が高い。津市でも早めの相談と申請を呼び掛けている。
市民課マイナンバー担当へ問い合わせは☎津229・3198へ。
2021年2月11日 AM 10:34
鈴木英敬知事新春インタビュー。コロナ禍に直面した昨年から状況を脱した上での展望が求められる今年。太平洋の島国や地域の首脳が志摩市に集まる「第9回・太平洋島サミット」、県内外から事業アイデアを広く公募する「みんなでつくろか予算」、今年開催の三重とこわか国体・三重とこわか大会、三重県版「デジタル社会推進局」など今年の県の関心事に迫る。 (聞き手=本紙・森昌哉社長)
─あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。G7伊勢志摩サミットの開催から5年、パラオ共和国との友好提携から25年を迎える2021年、志摩市で「第9回太平洋・島サミット」が開催されます。太平洋・島サミットは、PALM(パームPacific Islands Leaders Meeting)の略称で知られ、太平洋島嶼国・地域が直面する様々な課題に関して、首脳レベルで率直に意見交換し、日本と太平洋島嶼国の絆を強化するため1997年から3年に1度開催している首脳会議です。日本を含む19か国・地域の首脳等約200名が来県しますが、三重県としてどう関わっていくのか、現在までの進捗状況と三重県への波及効果などをお聞かせ下さい。
知事 島サミットは令和3年における三重県の大イベントの一つ。とにかくオール三重で取り組む。世界的な新型コロナウイルス感染拡大で日程自体は公表していませんが、首脳会議の前段である閣僚会議が昨年10月に開かれており、準備は進んでいます。県内でもこの機会を生かすために、産業、経済、観光、交通、医療などの方々に委員となって頂き、みえ太平洋島サミット推進会議を作り、私が会長となり、昨年8月に会議を開催した。これも着々と準備が進んでいます。
サミットのテーマは、「ポストコロナ時代における地域課題の解決に向けて」です。コロナ対策はもちろん、地元のプログラムなどテーマに沿った形になる。防災、地球温暖化、水産資源の管理、医療体制などは諸国の関心が非常に高く、日本全体や三重県にも共通する。そういった中で他県に先んじて三重県の取り組みを紹介できればと思っています。現在、SNSを活用してPRを行っているので機運上昇を図っていきたい。
おっしゃる通り、令和3年はG7伊勢志摩サミットから5年、パラオ共和国との友好提携から25年という節目の年なので、オール三重で大成功させたいです。
─次は、「みんなでつくろか みえの予算」についてです。県民参加型である同事業では、昨年も「みんつく予算2021」として事業アイデアを募集しましたね。 コロナ禍を経験した事から、どのように県民の命と健康を守り抜くのか、どのように暮らしと経済の再生・活性化を図っていくのかを観点にし、テーマは「感染症防止対策と社会経済活動を両立しながら、三重を明るい未来へと導くアイデア」(想定事業費が概ね1000万円に収まる事業)となっています。そこで、令和2年度に採用した事業の実施状況と、2021年の募集状況などをお聞かせください。
知事 ご説明頂いた通り、これは令和2年度予算から始めたものです。税金の使われ方から、理解、共感、納得をして頂きながら進める方法を模索する中で生まれたもので、都道府県で東京都と三重県だけで行われています。令和2年度分は229件の応募があって、県民の皆さんによる「投票」を実施し6件を事業化しました。令和3年度は感染防止対策や社会経済対策など新型コロナウイルス対策に特化したため、国内外から320件の応募がありました。その内訳は、最年少が18歳、最高齢が82歳からの提案があるなど、幅広い世代からアイデアが集まりました。特に地域経済の再生と進化の提案が多かったです。今回、昨年度と変えたのは、更に皆さんの意見を聞きたいという想いで、みんつく討議という段階を設けました。320件から29件に絞り、事業構築段階を参考にしながら決めていくという流れになります。 前回は東京都を上回る6505票の投票を頂きました。採択した6つの事業の中にはコロナの影響で延期したものもありますが、1位だった「みんなでつくる避難所プロジェクト」では、避難所生活がイメージできずに避難行動を躊躇する事例があることから、独自に開発した避難所体験ゲームが2月末に完成します。防災レシピコンテストも今月に受賞レシピを発表予定です。また、子供たちのインターネットトラブル防止事業に活用するために開発したアプリ「ネットみえ~る」はダウンロード数が3000件を超えています。令和3年も29件まで絞られた事業に多くの県民の方々が投票をして頂いて、予算を決めたい。
─9月~10月まで県内で「三重とこわか国体・三重とこわか大会」が開催される予定です。県民力を結集し、全国から訪れる選手等をおもてなしの心で迎えるため、県は様々なボランティアを募集しましたが、コロナ禍の現在までの応募状況と、大会までに残されている課題や問題が現れているのであればお聞かせください。
知事 三重県は、受付などを行う運営ボランティア、聴覚障がい者を対象とした情報支援ボランティア、全国障害者スポーツ大会では初となる視覚障がい者の移動をサポートする移動支援ボランティアの3種類のボラティアを募集しています。運営ボランティアと移動支援ボランティアは概ね参加して頂きたい人数を達成する目途がついています。情報支援ボランティアは募集人数600人に対して478人となっています。
課題としては、ボランティアをやって頂く人向けの対面式研修がコロナの影響で出来ませんでした。そこでユーチューブやDVDに入れた動画で家庭で学んで頂いたり、ビデオメッセージも配信しています。しかし、実地での研修も必要なので、最善の方法を探していきたい。いずれにしても残りの数の確保などの課題も残っているので、良い大会にしていきたい。
─県はAI(人工知能)などの最新技術を業務や行政サービスに生かす「スマート改革」に着手し、4月からは総務部にスマート改革推進課を新設、改革を担う若手職員の育成などに取り組んでいますね。また、菅義偉首相が打ち出した「デジタル庁」の三重県版となる「デジタル社会推進局(仮称)」を2021年度に設置する意向を表明しましたね。行政手続きに関するデジタル化だけでなく、社会全体の利便性を高めるためのデジタル化を推し進めるとしていますが、県民生活にどのような利便性があるのか、お話いただけますでしょうか。
知事 国全体でデジタル化の推進が凄いスピードで進んでいます。三重県も国任せにするのではなく、全国に先駆けるようなデジタル化を進めていきたい。部局の横断でより強い権限を持った組織をつくる目的てデジタル社会推進局、三重県版デジタル庁を今年4月から始めたいと思っています。
最高責任者であるデジタルチーフオフィサーを置き、行政のスマート化と社会全体のデジタルトランスフォーメーションをやります。行政のスマート化は在宅勤務やウェブシステムの構築、押印の廃止、ロボット技術を使うといった内容です。公募で手を挙げてくれた意欲ある20名をスマート人材として育成中です。
三重県独自の約900の行政手続きや、600の内部手続きの押印は廃止する方向でデジタル化できます。人にやさしいデジタル化を進めるために、地域、年齢、障害の有無で差が生まれない、誰一人取り残さない人にやさしいデジタル化を進めていきます。
例えば、健康面で言えば、自分の検診内容から病歴や薬の履歴など、日々のバイタル情報をリアルタイムで集めることができれば、自分の健康状況が日々わかってくる。どこかへ行きたいときに、検索ルートだけでなく、混雑状況などもわかるようにしてストレスなく移動できるようにするといったことで県民の皆さんの利便性が高まるようにしたい。
スマートフォンを初めてみた時は、どうやって使うのかと感じていましたが、今や誰もが手放せないツールになりました。高速道路のETCやクールビズのように、デジタル化が当たり前になれば。
─今後の県内観光について。県は百五銀行、第三銀行、桑名三重信用金庫、地域経済活性化支援機構(REVIC)と三重県の5者で、「三重県における観光による地域活性化に関する連携協定」を締結しました。新型コロナの影響で観光産業は深刻なダメージを受けている現在において、地域経済が直面する構造的な課題に向き合い、具体的な事業化を後押ししていくことが急務としていますね。まずは、伊勢、鳥羽、志摩の関係者と共に協議会を1月に立ち上げ、「観光遺産産業化ファンド」による第1号の県内投資を年度内に行うとの事ですが、もう少し読者に分かりやすく説明して頂けますか。
知事 コロナ禍以前より、観光産業は生産性やコストの問題や人手不足など、構造的な問題を抱えています。三重県にとって観光は非常に重要な産業です。食べ物、おしぼり、シーツのクリーニングなど裾野も広いので、持続可能にするためには構造的な問題を解決する必要があります。
そのモデル事業を進めるには公的資金だけでなく、金融機関のお金をまわして先進的な取り組みができないかと考えたのが今回の取り組みです。地域経済活性化支援機構と、3つの銀行・信用金庫のファンドへの出資になります。
モデルにしようとしているのが鳥羽の相差地域。50軒ほどの宿がありますが、全てが一泊二食付きで送迎用の大型ワゴン車を2台ずつもっている。みんなが少しの宿泊お客さんのために食事をつくり、鳥羽駅から30分かかる送迎用の車を持ってコストを負担しています。
それをセントラルダイニング式にし、夕食はそこに食べに来たり、料理を旅館に持ってきてもらう形にしながら、地域にお金が落ちるような形にし、朝食だけ提供するようにすれば人手もそれほどかからなくなり、コストも削減できる。
更に共通の交通システムを作り、鳥羽駅への送迎や、地域の居酒屋なども周遊すれば食べ物の原価率を下げたり、清掃、調理、送迎の人材不足という構造的な課題を解決して利益を上げられるようになる。
セントラルダイニングでは伊勢海老や松阪牛を使ったフレンチメニューを提供しようと思っています。また、共同バス、宿、セントラルダイニングの予約をスマホで出来る仕組みもつくろうとしています。それを伊勢や志摩にも広げていきたい。
一軒一軒が頑張っていても、後継者がいなかったり、人手不足で廃業してしまうよりも、みんなでシェアして少しでも長く宿をやっていけるようにしていきたいと思います。
─三重県にとって重要な観光を持続可能な産業を構築するための改革はとても大切ですね。
本日はありがとうございました。
2021年1月12日 PM 4:18