社会
ある民事裁判において、三重県教育委員会事務局の職員が「証拠」として提出した自身の勤務表の改ざんが問題視されている。当人は裁判の中で改ざんの事実を認めたものの、県や教育の信頼の失墜及び教育行政そのものを大きく揺るがしかねない不祥事だけに、県教委に対して不正の通報と再発防止を求める要望書も提出されている。
昨年、市内在住のA氏は、県教委事務局の職員B氏に対し、民事上のトラブルによる損害賠償を求めて、津地方裁判所で民事裁判を起こしていた。しかし、B氏は当初A氏の主張が事実無根であるとし、それを裏付ける証拠として自身の勤務表を提出。A氏がトラブルが発生したと主張する日時に自分は仕事をしていたので関与が不可能と反論していた。
この勤務表は県職員でしかログインできない勤怠管理システムのページを印刷したもの。これには「mieken.jp」と三重県のドメイン(インターネット上の住所的なもの)も記されており、三重県から出された確かな情報と認識するに足る体裁が整っていた。
しかし、A氏は自身が調査して集めた情報などから勤務表の内容を不審に思ったため、三重県に対して情報開示請求を行った。そして、取り寄せたB氏の勤務表とB氏が提示していた勤務表を突き合わせたところ、日付に食い違いがあり、改ざんが浮き彫りとなった。 逆に不正の証拠を突きつけられてしまったB氏は、一転して自身が改ざんしたことを認め、A氏の主張が概ね認められる形で裁判は結審した。
裁判所も、県の正式な情報と誤認されてもやむを得ない改ざん書類が証拠として提出されたことについては「民事訴訟法に定められた信義に従い誠実に民事訴訟を追行する当事者の責務に著しく反する」と断じている。
裁判後、A氏は、B氏による虚偽公文書の作成といった行為が公務員の信用失墜に当たることなどを問題視し、賛同者の署名を添え、三重県教育長宛ての「不正の通報及び要望書」を6月30日付で県教委事務局へと提出。B氏への監督責任を問いつつ、再発防止策の提示を求めている。
県教委は要望書の提出を受け、本件の裁判記録を取り寄せ、本人からの聞き取りなどで改めて事実確認を行い、法的な問題点などを精査した上で、然るべき対応や処分を考えるとしている。
県教委が公表している懲戒処分に係る標準的な処分量定一覧によると、公文書の偽造は、停職または免職と定められており、数ある処分の中でも重い方に分類される。
更に、法的に公文書偽造の罪となった場合は、懲役や罰金の刑事罰も課せられる。この罪を問う場合に重要になるのが「行使の目的」。偽造、変造した文書を本物と誤認させる意図があったかが問われる。また、今件が公文書偽造の罪に該当するのか判断する上では、改ざんされた基となった勤怠管理システムが公文書として認められるかが分かれ目という。
ただし、今件が法的に公文書偽造の罪に該当するかどうかを抜きにしても、公務員しか入手できない情報を改ざんし、自分にとって都合の良い方向に事実を歪めようとした行為自体が、著しく社会通念を逸脱している。
また、地方公務員法第33条「職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない」に照らし合わせると、県や教育の信頼を失墜させる行為の疑いがあり、少なくとも学校で日々学ぶ児童生徒やその保護者はもちろん、現場で懸命に働く教職員たちへの重大な背信行為であることは間違いない。
教育行政は三重県の未来を担う子供たちの健全な成長を司る要。その中枢である県教委は、教育に携わる者の規範となるべき存在であり、高いモラルが求められることは語るまでもない。本来の在るべき姿とは正反対といえる今回の不祥事は、発端こそ私的な民事裁判だが、個人の責任の範疇を超え、組織としての責任が問われる領域にまで波及している。
対応を誤れば、教育行政を大きく揺るがしかねない事案だけに、県教委は、速やかに綱紀粛正を図り、二度と同じ問題が繰り返されないよう再発防止策を示すと共に、真摯な取組みが求められるだろう。(この稿、令和5年7月7日現在)
2023年7月13日 AM 5:00
5月13日㈯に津市大門周辺で「津ぅのドまんなかジャズフェスティバル」が開かれる。コロナ禍も工夫を凝らした運営で乗り越え、迎えた今回は、9会場36ステージでプロアマミュージシャン190名の多彩な演奏が楽しめる。また大学生が企画運営する「ニューマルシェ大門」も同時開催。中心市街を音楽と活気が彩る一日となりそうだ。
同フェスティバルは、2015年から津市大門周辺を会場に毎年開催。津市の中心市街地で生演奏が楽しめる本格的なジャズイベントとして親しまれてきた。
中心市街地の活性化や音楽文化の普及を目的に地元のミュージシャン達による実行委員会が運営。2020年のコロナ禍で危機が訪れたが、演奏の機会を失ったミュージシャンやライブハウスの苦境を目の当たりにし、音楽本来の形である生演奏を楽しんでもらう場を提供できないかと感染拡大防止策に創意工夫を凝らした上で、イベントを継続してきた。
8回目の今年は津市まんなか広場、津市センターパレスホール、神楽洞夢、和院、BRAN、コニーズ・カフェ、LinО、МUNEYANの9会場で計36ステージ。
プラネタリウムの神楽洞夢での幻想的な星空ライブには、人気バイオリン奏者・高橋誠氏が率いる「高橋誠 European JAZZ Trio」と名古屋の人気ボーカリスト「junko」トリオが登場。その他、今年のテーマである「サーフ」にピッタリのベンチャーズトリビュートバンド「Wチェアメン」、津市出身のベーシスト・長谷川英喜氏、ピアニストの平光広太郎氏が率いる平光広太郎トリオなどのゲストミュージシャンを含むプロアマ190名が出演する。10時50分~のまんなか広場ステージを皮切りに、多彩な演奏が楽しめる。Heart ぽっぽでも出演ミュージシャンたちによるセッションが随時行われる。
さらに、名古屋音大生の松井京介さんら東海地区の大学生による学生実行委員会「Jam Waves」が、まんなか広場・センターパレスホール・大門商店街で「ニューマルシェ大門」を同時開催。「最初の一歩」を踏み出すフレッシュな大学生による出店が中心で、どこか懐かしさを感じる大門で〝新しい〟に出会えるマルシェになりそうだ。
コロナ禍を乗り越え、誰もが待ち焦がれた日常の中、久しぶりに気兼ねなく音楽が楽しめる今回のイベントにより、津市の中心市街地は心地良いジャズの調べと活気に包まれそうだ。
ライブは全て観覧無料。ただし、神楽童夢のライブは予約制(先着順のため既に締め切っている可能性あり)。また、センターパレスホール、まんなか広場、神楽洞夢以外のライブハウス会場は要ワンドリンクオーダー。今年は京都のイラストレーター・ナカガワ暢さんのデザインしたロゴ入りTシャツやステッカーを販売。利益はイベントの運営資金になる。
2023年5月11日 AM 5:00
取締りや罰則はないが 自分を守る意識大切
4月1日より、年齢に関係なく全ての自転車利用者にヘルメット着用の努力義務が科せられるようになったが、津市内でもまだまだ着用する人は〝少数派〟。一方、津市内の自転車店では大人用のヘルメットが品薄になるなど、関心の高さは伺える。今後、利用者が自分の命は自分で守るという強い意志の下に着用率を上げていく必要がある。
ヘルメット着用の努力義務化が始まって5日目の4月6日午前7時40分頃。津市の中心市街地のオフィス街である東丸之内周辺から近鉄津新町駅へ向かって歩く。歩道には足早に勤務先を目指す人々の姿が目立つ。その中に、時折自転車に乗った人とすれ違うが、顔ぶれはビジネススーツに身を包んだ男性から、学生風の若者、高齢者まで様々。しかし、ヘルメットを着用している人はわずかで、一時間ほど周辺を行きかう人を観察したが43人中3人だけが着用していた。数値にすると約7%と低い。
着用はあくまで努力義務なので警察による取り締まりの対象ではない。三重県警も各署が自転車利用者に街頭での呼びかけや、交通安全教室を通じて啓発活動に注力している。ただし、県警によると過去10年に三重県内で派生した自転車事故でヘルメット非着用時の致死率は2・01%。着用時の致死率0・85%と比べて約2・4倍にもなっている。全国の自転車が絡む死亡交通事故の凡そ6割が頭部の損傷による結果と出ている。また死亡しなくても、頭部を直接強打すれば、脳に衝撃が加わり、後遺症が残る危険性もあるため、着用の意義は大きい。
学校などでヘルメットの着用がルール化している中学生以下の子供の着用率はかなり高いが、高校生になった途端に着用率が下がってしまう。年齢的に自動車の運転免許の取得制限があり、自転車移動に頼る人の割合が高い16歳から24歳は事故も多い。そして、死亡事故率が圧倒的に高いのが、65歳以上の高齢者(主に70歳以上)。令和4年度の三重県内の自転車死亡者の8人のうち5人を占めている。
三重県もラジオ、テレビ、雑誌、SNSなどで情報発信を行うなど啓発活動に務めている。企業から業務中に自転車を利用する場合のヘルメット着用についての質問も寄せられるなど、義務化に対する関心自体は非常に高いことが伺える。
その証拠に、先述の通り、まだまだ着用者が少ない一方、義務化の影響でヘルメットを購入する人も着実に増えている。津市内の自転車販売店でも、大人向けヘルメットの品薄状態が続いている。また、需要の増大に伴い、ヘルメットのデザインも多様化。従来のようなスポーティーなタイプだけでなく、普段着などにも合わせやすく女性に人気の帽子型などスタイリッシュなタイプも登場しており、より幅広いニーズに合わせられるようメーカー側も商品を充実させている。
ヘルメットをかぶりたくない理由は、髪型が崩れるのを嫌ったり、保管方法、購入費用、単純にかぶるのが面倒と人それぞれ。しかし、まずは社会の規範となるべき〝大人〟たちが率先しなければ、着用する人が増えないのは間違いない。啓発を進める県と県警では、職員に対して公私ともに自転車に乗る場合はヘルメットの着用徹底を呼び掛けている。今後、着用率を高めていくには、企業などの協力も不可欠となるだろう。従業員が就業中だけでなく、通勤や帰宅時に事故にあえば、大きな損害を被るため、メリットも大きい。
あくまで、ヘルメットの着用は努力義務であるが、その理由は自転車に乗る人の命を守るためであることを忘れてはならない。自分自身の身は自分で守るという基本に立ち返り、一人ひとりが着用を心がけることが求められるだろう。
2023年4月13日 PM 5:13