社会

県下最大級の農産物直売所を備えた施設「高野尾花街道 朝津味」を運営する『㈱フューチャー・ファーム・コミュニティ三重』が『高野尾農業塾』を開講。家庭菜園向けの内容とは一線を画し、就農をめざす塾生に対して希望に応じた面積の農地を貸し出すと共に本格的な栽培方法を指導し、朝津味で育てた野菜を出荷・販売までを行う実践的な内容。農業の後継者育成と地域活性化を視野に入れた先進例にもなりそうだ。

 

農業塾で使用する農地の前で…塾長の佐野すま子さん

農業塾で使用する農地の前で…塾長の佐野すま子さん

朝津味は、農業による地域振興を目的に昨年7月にオープン。現在までに約46万人が来場し、地元高野尾町の周辺農家を中心とした農産物直売所の出荷者も500名を超えるなど、着実にその役割を果たしてきた。
三重県の地域活性化プランによる支援を受けた新たな取り組みとして3月に開講する『高野尾農業塾』は、高齢化と後継者不足という農業が抱える構造的な問題に挑む新たな試み。既存の農業塾は、受講者全員に同じ面積の土地を貸し出し、家庭菜園向けの指導を行う趣味的な側面が強い。それに対し、将来的に農業に従事したい人をメインターゲットに据えた高野尾農業塾は、現役農業者から栽培技術や農業を営む上で必要な知識について指導を受けられるだけでなく、希望すれば自分で出荷した野菜を朝津味で販売する部分まで実践。就農する上で重要となる出荷・販売の部分を体験できる意義は大きい。
塾長を勤めるのは、三重県農業会議常任会議委員・津市農業委員会委員・JA津安芸女性部長を勤める佐野すま子さん(68)で、講師に三重県農業普及センターの薮田信次さん、四日市市の(株)小林総業の小林哲博さんら、土づくりアドバイザーに三重大学生物資源学研究科講師の坂井勝さんらを迎える。高野尾町内でしばらく耕作されていなかった農地1haを活用し、参加者一人ひとりが自分ができる広さの農地をある程度、自由に借りられる。作付けを行うのは、高野尾地域の特産品化をめざしているサトイモの栽培を中心にジャガイモ・トウモロコシ・枝豆の4種類。月に一回ペースで講習を行う他、県内外の若手農業者との交流の場なども設ける。継続的に売れる農産物の生産に向け、協力を受けている赤塚植物園のFFC技術といった様々な農業技術を活用するモデル農地としての役割も持つ。
三重大学の学生の参加も決まっており、若者から高齢者まで幅広い年齢層に参加を呼びかけ、新規就農を考えている人が無理のない範囲で野菜を栽培しながら農業を学べたり、自身の適性を確かめられることもできる場所は貴重だ。一緒に女性や定年退職後のセカンドライフに就農をめざす人も参加しやすい環境づくりも心がけている。
佐野さんは「露地栽培で季節に合った野菜を育てていくスタイルなら農業経験や大きな初期投資が少なくても新規就農しやすい。まずは、多くの人に塾に参加してもらい、農業の楽しさを感じて欲しい」と参加を呼び掛ける。
将来的には、高野尾町内に約29 haある休講農地を塾を卒業後に新規就農する人に貸し出す仕組みづくりも計画。成功すれば、農業人口の増加・耕作放棄地の解消と共に地域活性化を成し遂げる先進事例になる。
農業塾の定員は先着30名(夫婦での申込歓迎)。講習費無料(ただし、種芋・苗代は自己負担で道具も自分で用意)。サトイモの種芋はセレベスが1㎏1000円、土壌活性化培土をつけると3000円。あかがらが1㎏2500円、土壌活性化培土付きで4500円。開校日は3月14日㈫。希望者は朝津味に設置されている専用の申込用紙に必要事項を記入し、提出すること。締切は3月10日。問い合わせは☎059・230・8701へ。

特定外来生物の「アライグマ」が津市内でも急激に生息域を広げている。農業被害だけでなく、住宅侵入など、これまでと違った形での獣害が頻発。繁殖力が旺盛で人里での生活にも適応するため、市街地にも出没しており、津市が貸し出しを行なっている捕獲用の罠の稼働率も高くなっている。被害範囲が農家だけでなく一般家庭にも及ぶことから市民全体で、この厄介な隣人とどう向き合うかが課題となっている。

 

捕獲されたアライグマ(読者提供)

捕獲されたアライグマ(読者提供)

北米原産のアライグマはペット用として1970代に大量輸入された。しかし愛らしい見た目とは裏腹に成獣になると気性が荒くなることが多く、手に負えなくなった飼い主が次々と飼育放棄。雑食性で果物から動物まであまり食べるものを選ばず、成獣なら毎年3〜4頭を出産可能で天敵もいないため、自然環境に放たれたそれらの個体が徐々に繁殖しながら生息域を広げ続けた結果、近年では全国各地で様々な問題を引き起こしている。特定外来生物の指定もいち早く受けており、許可なく飼育・繁殖を行なったり、放逐すると重い罰則が科せられる。
津市でアライグマの問題が初めて浮上し始めたのは平成24年頃。香良洲地区のナシ園が被害を受けたことを皮切りに、近隣の久居などでも被害が続出した。当初は農作物を荒らされた農家からの被害がほとんどだったが、ここ最近は状況が一変。江戸橋など住宅密集地にまで生息域を広げ、ねぐらにするために住居の屋根裏や軒下に侵入するという生活被害が増えている。侵入の際に壁などを破壊されるばかりか、糞尿で天井が腐ることもあり、京都でも貴重な歴史的建築物が被害にあっている。
津市も平成27年にアライグマの防除実施計画を策定し、被害農家や一般家庭に小型捕獲檻の無料貸し出しを行なっているが、52基がフル稼働状態。それに伴い、駆除頭数も飛躍的に伸びており平成27年4月〜12月で15頭に対して平成28年の同月間で67頭にまで膨れ上がった。
実際にアライグマを捕獲したわな免許保持者の話では、ねぐらさえ特定できれば初めてでも比較的簡単に捕獲できるという。だが、様々な病原菌を媒介している可能性があるのでを捕獲した場合は、津市に引き取ってもらうことを勧めていた。有料だが専門業者も駆除してくれる。
ただ、それでも駆除が全く追いついていないと見られ、環境省のシミュレーションによると100匹のアライグマを全く捕獲しなかった場合、生息数は6年後に5倍、10年後に50倍という結果が示されている。加えて、生息数の50%以上を捕獲しない限り、増え続けるという結果も示されている。また近年、飛躍的に増加を続ける空き家が格好のねぐらになることも駆除の課題になるだろう。
同じ獣害でもシカ、イノシシ、サルは在来種で適正な個体数に戻すことが重要だが、アライグマは外来生物。環境省も完全な駆除を最終目標に掲げている。生態系保護の観点からの対策や危機意識の共有も必須だ。最善のアライグマ対策は地域への侵入を防ぐこと。もし、自分の近所で見かけた場合にはねぐらの特定と素早い駆除が重要となる。繁殖期を迎える4〜6月に侵入被害が増加するため、自宅の侵入されそうな隙間をふさぐといった対策を行うと同時に、屋根裏から聞きなれない音がするなど異変に気付いた場合は然るべき対応をすべきだろう。被害の相談は津市農林政策課獣害対策担当☎059・229・3238へ。

 

生活保護制度を利用する前の生活困窮者に食料支援を行うNPO法人『フードバンク三重』=中川美佐理事長、津市中河原=が設立された。家庭での不用品や、企業・農家の規格外品などの提供を受け、食料を求める生活困窮者に届けるサービスを実施。福祉サービスの隙間を担う非常に有意義な役割を果たすだけでなく、今後の展望も期待される。

 

前葉市長(右二人目)を表敬訪問した中川理事長(左二人目)と理事

前葉市長(右二人目)を表敬訪問した中川理事長(左二人目)と理事

アメリカで始まったフードバンク事業は、食品メーカーや外食産業などの取り扱う商品で品質に問題はないが、包装の不備などで廃棄となってしまう食料の提供を受け、生活困窮者の支援を行うというもの。近年日本でも同様の活動が広がりを見せており、各県で支援が広がっている。昨年4月には生活保護制度を利用する前の段階の人々が対象の「生活困窮者自立支援法」が施行され、一時的な住居確保に必要な給付金支援などは行われているが食料を直接提供する支援は無かったため、福祉制度の隙間を担うという意味でも大きな意義を持つといえる。
そのような社会的背景もある中で、先月11日に設立されたのが「フードバンク三重」。県内では三重県社会福祉協議会が愛知県のフードバンク事業を行う団体から食料の提供を受け、生活困窮者に対する支援を行っており、これまでも県内各地で様々な団体が、それぞれの活動に則した形でフードバンク事業またはそれに準じた形で事業を行っている。そんな中で「フードバンク三重」は、県内の企業・個人から食料の寄付を受け、それを県内の生活困窮者に届けるまで自己完結した事業をめざす。
1月27日には中川理事長らが津市役所の前葉泰幸市長を表敬訪問。法人の設立と今後の活動について報告を行った。前葉市長も県内初となる取り組みに大きな期待を寄せ、生活困窮者に対する相談業務を行っている市役所の援護課でも、必要がある対象者には同法人を通じた支援を紹介していくとしている。
この時の様子が報道された反響で、個人や農家から食料を寄付をしたいという問い合わせが増加。米120kgを始め、野菜やそうめんといった食料が寄せられた。中には、名前も告げずに三重フードバンク事務所に食料を置いて去る人もいたという。それら食料を問い合わせのあった生活困窮者の下へ届けた。
しかし、利用する側である生活困窮者が食料の提供を受けることへの躊躇いもまだまだあることを実感している。中川理事長は「困っている場合は完全に食べる物が無くなってしまう前に迷わず連絡して欲しい」と話している。
同法人では、フードバンク事業の運営を軸に、食を大切にする文化の啓発や、フードバンク活動普及のための調査研究なども行っていくとしており、中川理事長は「寄付して頂いた食べ物を、別の形で支援活動を行いたい団体に提供することができるので、タイアップしていきたい」と今後の展望についても語る。
飽食の時代といわれ、食品の廃棄が大きな問題となる一方、その日の食べものに不足する人も多い。フードバンク事業は寄付する側にとっても処理費用削減と社会貢献の両立ができるだけでなく、社会問題解決の一助ともなる非常に有意義なものといえる。
同法人が、募集しているのは米・野菜・果物などの生鮮食品や、未開封で賞味期限が切れていない缶詰・冷凍食品など。同法人に連絡をすれば、回収に来てくれる。また、食料の支援を受けたい場合も同法人に連絡すれば、出来る限り早く自宅まで届けてくれる。
さらに、津市中河原2129─1の同法人事務所でも寄付・受け取り共に可能。タイアップ希望の団体も募集している。まずは津市周辺を中心に活動していく予定。
問い合わせは同法人☎070・1610・1008へ。(平日9時~17時)

 

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