社会

先月、静岡県西伊豆町で発生した自作の電気柵が原因の感電死亡事故を受け、津市でも鳥獣被害対策用の電気柵設置箇所の点検を実施した。その結果、電気事業法で設置が義務付けられている注意表示の設置漏れが10箇所ほどあったものの、30ボルト以上の電源を使用する場合に必要な漏電遮断器の未使用や自作の電気作の使用など、深刻なトラブルを引き起こす原因となる可能性能のある違反は無かった。

 

この点検は、静岡県での死亡事故発生直後の7月22日、国からの通達を受けた三重県が県内の市町に呼びかけ実施したもの。その結果、三重県内では1028カ所のうち、危険表示の未設置が107カ所、家庭用コンセントなど30ボルト以上の電源を使用する場合に必要な漏電遮断器の未使用10カ所と、電気事業法で定められている遵守事項を満たしていない場所が計117カ所見つかった。県によると、自作の電気柵を使用していた箇所はなく、漏電遮断器の未使用箇所も、ヒューズを搭載した市販の電気柵用電源装置(電牧器)を使用していたため、静岡県のような死亡事故が起こる可能性はまずないとしている。これらは全て設置者に改善の指導を行った。
津市は、危険表示の未設置が10カ所ほどあったが漏電遮断装置の未使用は0箇所という結果。これは、乾電池や太陽光発電などで消費電力をまかなえる30ボルト未満の電牧器が主流ということも要因だ。
津市は、獣害対策事業の一環として、1ha以上かつ2戸電気柵の購入費用を機械の購入費用の2分の1補助(最大100万円。設置費用等は除く)を行っている。補助を受ける場合、電気柵の機種の見積もりから設置前と設置後の現地の確認などを実施。今回の事故の発生前より、日常的に担当者が現場をこまめに回り不備がないかチェックを続けている。また、近年では市内の各所で、獣害対策協議会も立ち上がり地域ぐるみでの対策に取り組んでいるため、地域の農地を守る電気柵への意識も非常に高いという。漏電防止のために行う草刈りなども、非常に行き届いていることからも伺える。
元を正せば、今回の静岡県での死亡事故や平成21年兵庫県で発生した死亡事故に共通するのは、どちらも電源から取った電気を高電流のまま流す非常に危険な自作の電気柵を使っていたということだ。一方、市販の電牧器は、電源から取った電気を負傷しないように変換した上で軽いショックを与えるため、適切に設置・運用すれば安全性は高い。両者は全く別物である。
田舎では見慣れた風景である電気柵。夏休みも終盤に差し掛かったとはいえ、好奇心旺盛な子供たちを持つ家庭にとっては、市内の電気柵が安全に運用されていると分かり、一安心ではないだろうか。
電気柵は獣害対策の中でも、大きな役割を果たしている。今後も設置側に適切な管理運用と、行政のしっかりとしたチェック体制の維持を求めたい。

 

天変地異で飢饉が頻発した江戸中期。農耕神『地神』の新しい祀り方として大江匡弼が天明初期に提唱したのが、農耕に関わる5柱の神名を刻んだ石柱『五神名地神碑』を建て祀る方法。寛政期以降全国に広まり明治まで数多く建立された。このほど津市美杉町八知の仲山神社で発見された碑は天明8年2月建立。全国で天明期8例目、中部・近畿では最古例。

 

津市美杉町八知、仲山神社の六角柱「五神名地神碑」

津市美杉町八知、仲山神社の六角柱「五神名地神碑」

発見したのは津観光ガイドネットの『JR名松線復旧記念ウオーク~奇跡の名松線・各駅停車ええとこめぐり』プロジェクトチーム(PT)=吉村武司会長。
同ウオークは10月から来年3月下旬まで津市内の伊勢八太駅~一志駅間を皮切りに、終点伊勢奥津駅まで全10回に亘り、沿線ガイド団体の一志町歴史語り部の会・白山道しるべの会・伊勢本街道美杉会が連携して沿線の名所旧跡などを案内して歩き名松線の観光路線としての価値を高める一助にしようと企画したもの。
一志・白山はこれまで名松線や近鉄を活用したガイド企画の経験があるが、美杉会は伊勢本街道を軸としてきた関係で名松線沿線の竹原・八知地区は空白地帯となっていた。このため6月初旬から美杉会の小竹英司会長らに吉村PT会長や西田久光ガイドネット会長らがサポートに入り、伊勢竹原駅~伊勢鎌倉駅、同鎌倉駅~伊勢八知駅のコース・案内ポイント設定のための現地調査を進めており、これが八知・仲山神社正殿境内での『五神名地神碑』発見につながった。
碑は3段の基壇上に六角石柱を建て全高約90㎝(大洞石製か)。六面に『天照皇太神宮』『大己貴命(おおなむちのみこと)』『少彦名(すくなひこな)命』『埴安媛(はにやすひめ)命』『倉稲魂(うかのみたま)命』…5神名に『天明八戊申□(1字判読不明)二月』=1788年=の建立紀年が刻まれている。
地元では方位盤と見られてきたようだが文献調査の結果、江戸中期から各地で建立が始まった『地神(じじん・じがみ)碑』の一種で、京都出身の民間学者・大江匡弼が天明元年に出版(寛政元年再版)、新しい地神(農耕神)祭祀法を提唱した著作『神仙霊章春秋社日醮儀』に基づく『五神名地神碑』であることが分かった。
大江は農業こそ天下万民の基盤とし中国の『礼記』『礼記説義纂訂』などに示された土地神を祀り悪気を払う方法に倣い、日本の農耕の根幹に関わる5神名を刻んだ碑を建て、春分・秋分の日に近い戊(つちのえ)の日である『社日(しゃじつ・しゃにち)』に祭祀を行うことで、大地に感謝を捧げ鎮め、天下泰平、五穀豊穣が招来できると提唱している。因みに春の社日は山の神が里に降りて田の神に変わる日、秋の社日は収穫を終えた田の神が山の神となって山に帰る日とされている。
石仏研究者達に確認されている『五神名碑』の最古例は天明3年~7年の大飢饉の最中の天明6年秋(1786)神奈川県小田原市で建立された六角柱のものと自然石に五神名を刻んだものの2基。寛政期以降は関東、四国、岡山、九州、山陰などに広まり千基以上が確認されているが、天明期の碑は極めて少ない。
西田会長が『岡山の地神様』『石刻の農耕神~その発生と展開~』などの著書がある岡山市在住の農耕神研究者・正富博行氏に、碑の計測データ、写真等を送り問い合わせたところ、氏が現在把握している中で最初期の天明期碑として仲山神社碑は、小田原市6基、岡山県吉備中央町の1基に続き8例目で、古さは7番目。後年も含め確認事例が少ない中部・近畿地方では最古の貴重なものという。
正富氏は三重県内の事例として『石刻の農耕神』で伊賀市霧生の天保9年(1838)碑を、また専門誌『日本の石仏』2015夏号に伊賀市腰山、飛龍神社境内碑(紀年なし)の2基を紹介している。
自然災害や飢饉に苦しむ農民たちが必死の思いで祈りを捧げたであろう『五神名地神碑』…従来ほとんど空白地帯と思われていた三重県に突然最初期のものが発見され、正富氏は返書にその驚きを記し、県内での調査継続を要請しているが
ガイドネットでは吉村・西田両氏を中心に続行中。
9日までに伊賀市の2基と玉城町の文政10年(1827)碑を現地調査。更に『白山町石造物悉皆調査事業報告書』で家城3基(1基に嘉永4年の紀年)、関連の『社日』碑5基(文政4年、天保8年、慶応元年ほか)。『三重県石造物調査報告書』=東紀州、南伊勢=で五神名碑が大紀町5基、大台町5基、多気町1基、度会町1基、あることも確認。今後も県下の調査を進めていく計画。
名松線PTでは、仲山神社には他にも室町時代や元禄期、幕末など多彩な石造物があり、石造物の宝庫として伊勢鎌倉駅~伊勢八知駅間散策の目玉になるものと期待している。

東日本大震災以降、大地震発生に伴う津波で浸水被害が予測されてる津市沿岸部の土地の取引価格が下落し、固定資産税の評価額と大きなへだたりが生じている。該当する土地の売買が難しくなっているという背景も含め、納税者にとって納得のいかない負担になっているばかりか、遺産相続を妨げ、空き家や未利用地を生む深刻な要因となり兼ねない。税の減免制度の創設といった津市の積極的な対応が求められている。

 

今年は3年に一度行われる固定資産の評価替えの年に当たる。前回の評価替えから東日本大震災の影響で大地震の際に津波で浸水が予想される津市沿岸部の土地は津市が提示する固定資産税の評価額が平均11%下落。内陸部平均4%と比べるとその差は明らかだが、「震災前の3分の1以下になった沿岸部の土地も珍しくない」という市内の不動産業者の証言があるように、実際の取引額はそれを遥かに下回っているのが実情。当然、納税者からは不満の声があがっている。
市税である固定資産税は津市が、総務大臣の定める評価基準に基づき、国土交通省と県が発表している地価公示や不動産鑑定士による評価などの情報を基に、算出している。前回から今回の評価替えの間にも、地価の下落があった土地に関しては、内陸部で2%、沿岸部で4%の下方修正を毎年加えて対応してきたが前述のような実情がある。
震災以降、津市も津波による浸水域を示した予測図を作成し公開している。それも相まって、国道23号沿い、近鉄道路沿いと海に近くなる度に、土地の購入をためらう消費者が増え、取引そのものが厳しい状況が続いている。また、国は土地取引の際に、不動産業者に浸水予測図などの添付をするよう指導しているが、それも購入を踏み止まらせる一因となっているという。
津市がとれる対策として1つ目は、土地の評価額を取引価格に見合うものすることがあげられる。実際に都市計画道路の建設予定地などは、用途が制限されるという理由で周囲よりも評価額が下がっている。しかし、この方法で固定資産税は安くはなるが、それに伴い資産価値も大きく目減りしてしまう。銀行で該当する土地を担保に融資を受けている人もいるため、混乱を招く要因となり兼ねないので、安易な判断は得策と言えないのが実情だ。
残されたもう一つの対策は、一定条件に該当する土地の課税標準額を減免することだが、これを行うには地方税法の改正にまで踏み込む必要がある。現状を重く見ている津市は、東海4県の96市でつくる「東海都市税務協議会」への要望を提出。実現に向けた他市との連携を模索している。
震災以降、高台を中心に住宅地の造成が進み、中には沿岸部より固定資産税が安くて浸水の恐れもないという〝逆転現象〟が生まれているケースも見受けられる。このような背景からも現在の納税者のみならず、将来的に遺産相続が発生した場合に、空き家や未利用地が発生する原因にもなり得る問題と言える。
長い海岸線を持つ津市にとって非常に頭の痛い問題だけに、今後も問題解決へ向けた積極的な取り組みが求められよう。

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