社会

未だ終息の見えない新型コロナウィルスの感染拡大。政府の緊急事態宣言の対象地域が全都道府県に拡大され、人々が不要不急の外出を控えている中、景気も急速に悪化している。津市でも人々の心だけでなく、経済にも暗い影を落とし始めており、非正規雇用の雇い止めなどによって職や住まいを失った生活困窮者の相談件数も徐々に増加。長期化も予想されるため、予断の許さない状況は続く。

 

 

三重県内の感染者は32人(17日現在)で初の死者も出るなど、緊張が高まっている。津市在勤、在住者の中にも感染者が出ており、市民の不安も高まり続けている。津市では津市役所1階ロビーと8階に、新型コロナウイルス感染症市民生活相談案内窓口を開設。市民からのコロナウィルス感染症に関する相談事を全て受付け、然るべき部署や機関へと取次ぎを行っている。9日の34件から13日には75件と市民の不安の高まりを受け、相談数も増えている。
窓口へ市民からの相談で最も多いのは、政府の給付金の支給について。こちらに関しては、これまでに政府の対応が二転、三転しており、現段階で分かることを答えるに留まっている状態。また、市内に感染者が出ると、その詳細情報を確認しようと、問い合わせが増えるという。その中で、予防や病気の感染対策などについては津保健所、景気悪化によってダメージを受けた経営者からの相談は商業振興労政課、生活が困窮している人は援護課といった具合に取り次いでいくいく。「コロナウィルス感染症で何か困ったことがある場合は、まずはご相談して頂けたら」と呼び掛ける。
担当者が日を追うごとに感じているのは、終息が見えない中、緊急事態宣言が全国に拡大したことも受け、市民の不安や悩みが多岐に広がり、一つひとつが深くなっていいることだという。
そんな状態の中、感染リスク拡大と並んで、市民の不安の根源になっているのが経済的な破綻である。急激に業績が悪化した企業の経営者達は資金繰りのため、国の給付金を申請したり、日本政策金融公庫の無利子無担保の特別貸付制度の活用や、従業員の休業手当を支払うための雇用調整助成金などの手続きに奔走しているものの、事業の縮小や、存続が危ぶまれるケースも出ている。
それに伴い、非正規雇用で働いていたが、雇止めなどによって職を失った労働者からの生活困窮による相談も少しずつ増加。生活困窮者への相談業務やサポートを行っている津市援護課には、4月初旬では1日1、2件程度だった相談が現在では3、4件寄せられるようになっている。まだ大きな数字でないが、契約社員の契約の区切りとなる月末を境に更に増える可能性は高い。
現在は解雇や雇止めにあいやすい外国人からの相談が多い状態だが、景気の悪化に従い、日本人からの相談も増えるのも確実。出口の見えない情勢下で、生活に困る人が身近に現れてもおかしくない状態といえる。
同課ではコロナウィルスの影響で収入が減少した世帯を対処に無利子で生活費の貸し付けを行う緊急小口資金(個人事業主などは20万円以内、それ以外は10万円以内)・総合支援金(2人以上の世帯で月20万円以内、単身で月15万円以内)、生活困窮者自立支援制度で家賃補助が受けられる住宅確保給付金(最大3カ月)の取次ぎや受付を行っている。同課では「今すぐ必要ではない方も、どのようなセーフティーネットがあるか知って頂くことも大切」と語る。ただ無利子とは言え、貸付であったり、期限付きであるため、十分とは言えない。生活再建の礎となる求人も減少していることからも、国の新たな支援策は必至だ。
感染拡大防止は今が正念場。過去に前例が無く、長期戦も予想されるが、いつ自分が苦境に立たされるかもわからない。非常時にどのようなセーフティネットがすぐに利用できるかなど、取れる限りの自衛策を知ることも重要となる。
コロナウィルス関連の悩み全般は津市新型コロナウイルス感染症市民生活相談案内窓口へ☎059・229・3576。

個人事業主や定年退職後の前期高齢者(65歳~74歳)などが主に加入する『国民健康保険(国保)』 。都道府県単位の運営に移って財政基盤の強化がはかられたが、加入者の高齢化と減少、一人当たりの医療費の増大など構造的な問題が重い保険料負担となってのしかかっている。津市は今年度の料率アップを見送ったが、依然として予断の許さない状況。地方からも制度の限界が浮き彫りとなっている。

 

国民健康保険は、ひと昔前までは個人事業主の加入が多かったが、社会情勢の変化によって、職を持たない人や定年退職をした年金生活の前期高齢者65~74歳など、低所得者が主となっている。高齢者は75歳になると後期高齢者医療制度に移行することもあり、加入者は年々減少している一方で、一人当たりの医療費は年々、増加しており、苦しい状況が続いている。市町村単位で運営がなされていたが、厳しい状況だったため、国が財政基盤の強化を目的に財政支援を行うと共に、2年前に都道府県単位での運営に移行。保険料の算定や窓口業務、収納などの業務は、これまで通り市町村が実務的な運営を担っている。
津市では平成24年度に4万1701世帯6万9032人の加入者が居たのが、平成31年度3万3600世帯5万5000人とわずかな期間で大幅に減少している。本来ならば加入者が減れば、保険から医療機関に支払われる医療費は減少をするのだが、加入者の高齢化だけでなく、新薬の登場などの医療の進歩による高額化などによって年々増加。医療費の支出は30年度約220億円(加入者の自己負担分を含む)で一人当たりに換算すると39万9856円まで上昇。平成23年度が一人当たりが約31万4000円と考えると、短期間で相当上昇していることわかるだろう。
医療費の支出増大もあり、財政的にも厳しい状況が続いているため、津市では平成28年度には料率を21%と大幅な値上げを行うことで基金を積み上げ、運営の安定化を図っている。令和2年度の保険料は、平成30年度時点で10億6000万円ほどある基金を取り崩すことで料率を維持できることとなった。
国保の保険料は所得によって課税額が決まる住民税などと違い、所得に関係なく一人当たり一律の金額が課せられる均等割があるので所得が少ない家庭であればあるほど、保険料の負担が重く感じてしまう。加入者は低所得者が中心なので、これ以上の負担増は出来る限り避けるべきだ。
健康保険組合や協会けんぽに加入するサラリーマンは国保とは無縁だが、定年退職後の65歳以上になると加入するケースが多い。今後、新型コロナウィルスの影響で経済が悪化し、失業した場合なども加入する可能性があり、誰にとっても無縁とは言えない存在となっている。
国民皆保険制度を支えるセーフティネットである国保だが、今後も厳しい運営が続くのは間違いなく、重い保険料は保険加入者だけの相互扶助とは言い難いレベルの負担にもなっている。抜本的な制度改革が必要なことは地方の現状からも浮き彫りになっている。

新型コロナウィルス感染拡大による政府の自粛要請で津市でも次々とイベントが中止となっているが、官公庁や学校も多い土地柄もあり、それに引っ張られる形で送別会や謝恩会などの宴会が軒並み中止に。飲食業者を筆頭に打撃を受けた企業も少なくない。先の見えない状況に不安が広がっているが、終息に備え、地域経済の主役である市民が感染拡大防止と経済活動の両立を意識することが重要といえる。

 

 

新型コロナウィルスの影響は終息が見えない状況が続いている。三重県でも3月19日現在で感染者は9名にまで拡大。政府の自粛要請も出される中、桜の名所を擁する津市でも恒例イベントが中止になるなど影響が広がっている。いつ終息するか先行きが見えない不安が自粛ムードを生み、4月の野外イベントに関しても「開催して良いのか」と主催者に問い合わせがあったり、5月・6月のイベントでも中止が頭をよぎる主催者も少なくない。
当然、経済に対し悪影響も出ている。ただ、中小企業からの経営相談を受けている津商工会議所によると、新型コロナで地域経済全体が悪くなっているのでは無く、悪影響は〝まだら模様〟のようだ。
例えば飲食業界。市内のある飲食店では、毎年3月は企業や官公庁の送別会や学校の謝恩会などの宴会が多いこともあり、忘年会シーズンの12月と並ぶ稼ぎ時だった。それらが軒並みキャンセルとなり、4月も歓迎会などの予約も全く入っていない状況という。
その一方、ランチが好調だったり、自粛ムードに疲れた人々の来店やテイクアウトなど別の需要が生まれることも。郊外店では普段と変わらない売上の店もある。市内のあるカフェ店主も「理由はわからないが、いつもより忙しい」と話す。
小売業界でも外出を控える人が増え、婦人服などの売り上げが落ちる一方、学校が休校の関係で食品小売りの売り上げは好調。建設業界では4月からの新生活に合わせて新築住宅の引き渡しが増える時期で、中国製のキッチンなどの水回り製品や、建材などの生産の遅れから工事完了できないケースも発生しているが、材料を海外に依存しない業種は余り影響が出ていないという。
しかしながら、政府も非常事態と捉え、日本政策金融公庫などによる無利子・無担保融資など企業への支援策を打ち出す中、津市が窓口となっている経営が不安定な中小企業を対象とした資金繰り支援制度「セーフティネット保証」を利用した事業者も3月中で20件を超えた。2月以前は月に数件の利用だったのが、現在はリーマンショック時と同水準。危機的な企業が増えていると見て間違いない。長引けば更なる悪影響も確実だろう。
不安が不安を呼ぶ日々が続くが、衛生面での感染拡大防止と経済活動の両立こそが最重要課題。終息に備え市民一人ひとりが「正しく恐れ、正しく行動する」意識を持つことこそが肝要である。

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