社会

津市は自分で災害情報を集めるのが困難で避難に支援が必要な障害者や高齢者などで一定の基準を満たした避難行動要支援者とその関係者に対して「津市緊急告知ラジオ」の無償貸与を行っている。しかし、情報収集が苦手な層が対象ということもあり、用意した2000台のうち、まだ約200台しか貸し出されていない。台風シーズンも近づいており、本当に必要な人の下へ届けられることが求められている。

 

「津市緊急告知ラジオ」

「津市緊急告知ラジオ」

近年では携帯電話やスマートフォンの普及が進み、どこに居ても、リアルタイムで緊急災害情報を受け取ることが容易となった。その一方、それを使えない人々に、どのように情報を届けるかが課題となっている。
津市では、行政防災無線を津市全域に整備しているが、屋内で聞こえづらく、それだけでは防災情報を報せる手段として力不足であることを指摘されてきた。そこで登録制のメールやFAXでの情報発信など、補完するサービスを行っている。 それらサービスが利用できず、避難時に支援が必要な人への情報伝達が急務となっていたため、昨年度より無料貸与が行われているのが「津市緊急告知ラジオ」。このラジオは津市がFM三重に依頼し、番組内で災害情報の発信が行われると、自動起動。市内を4エリアに分け、該当エリアだった場合に放送が流れるという仕組み。FM三重の電波が届かない場合はケーブルテレビの回線を利用して放送を受信することもできる。
貸与対象者は一定の基準を満たした高齢者と障害者などで津市がリストアップを行っている「避難行動要支援者」とその代理の家族や自治会関係者など。支援者の数は約1万8000人。この数と携帯電話の普及台数から割り出した2000台を用意した。
ラジオは昨年10月より貸与の受付を開始。今年1月より貸与を行っているが、6月1日現在で203台しか貸与されてない。これは需要がないというより、対象者の性質上、無料貸与を行っているという情報が行き届いていない可能性が高い。 そこでラジオの貸与を行っている危機管理課では、全戸配布している市の広報誌で再度告知を行ったほか、要支援者と接する機会のある民生委員やケアマネージャーにも周知を行っていく。貸与の手続き自体は非常に簡単で、津市役所8階の危機管理課か各総合支所の地域振興課で手続きをするだけ。前述の通り、支援者本人以外でも家族や自治会長などが代理で手続きを行える。
まだラジオを使った緊急放送は一度も行われていない(6月14日現在)が、夏にかけて台風シーズンを迎えるため増水による避難情報などが流れる可能性も高い。
身近にラジオが必要な支援者がいると感じた場合も気軽に市へと問い合わせを行い、必要としている支援者の元に1台でも多くのラジオが届けられることが求められる。
ラジオについての問い合わせは、津市危機管理課問い合わせ☎059・229・3281へ。

津市美杉町八知に国内事務局を置く「NPO法人DIFAR」は、同町出身の瀧本里子さん(41)が03年に前身の団体を発足。ボリビアのサンタクルス県を拠点に、現地の市民の生活向上に取り組んでいる。06年からは、不法投棄など深刻なごみ問題を抱える同県内3市で、ごみのリサイクルシステム導入事業を実施。堆肥場建設や人材育成などにより、最終的には市民や行政が自主運営できる仕組みを作っている。

 

 

パンパグランデ市での事業で行われている、生ごみの回収の様子 回収された生ごみは堆肥化される

パンパグランデ市での事業で行われている、生ごみの回収の様子
回収された生ごみは堆肥化される

パンパグランデ市のごみ廃棄場 無分別で投棄されたごみが飽和状態になっている

パンパグランデ市のごみ廃棄場
無分別で投棄されたごみが飽和状態になっている

バジェグランデ市での事業で建設されたリサイクルセンター

バジェグランデ市での事業で建設されたリサイクルセンター

瀧本さんは00年から2年間、青年海外協力隊(JICA)としてボリビアで活動。男尊女卑社会の中、母親達が苦労し野菜を作り売っているが貧しく、子供も栄養失調になっている状況を目の当たりにした。
それを機に03年、現地の人々の生活向上を目指し「DIFAR」の前身の任意団体を設立。08年にNPO法人化した。現在、瀧本さんは現地で夫や子供らと暮らし、国内事務局は瀧本さんの父・幸弘さんと、母・規久子さんらが運営している。
ボリビアでは環境意識が低く、ポイ捨てや不法投棄が蔓延し、市のごみ回収制度・処分場の整備も進んでいない。そこで同法人は、サンタクルス県内3市で、新たなごみのリサイクルシステムの導入に取り組んできた。 まず最初は06年7月~11年3月にコマラパ市で、国際ボランティア貯金配分事業として、生ごみを堆肥化するシステムを導入。
現地は農家が多く、堆肥の需要が高い。一方、当時ボリビアでは家庭内分別が未実施で、生ごみはポイ捨てされるかゴミとして出すのが一般的だった。同法人は市と協力し堆肥場を作り、生ごみの回収日を決めて集め堆肥化。同市では今も分別回収が続けられている。
同法人は次にバジェグランデ市で13年6月~今月16日まで、1万人の住民を対象に、JICAから受託した草の根・技術協力事業として「生ごみ・資源ごみ回収事業」に取り組んだ。
コマラパ市での事業を視察したバジェグランデ市長からの依頼を機に始まり、インフラ整備や市の廃棄物課職員の育成、住民対象の講習などを行ったことで、市内約1000世帯が家庭でごみを分別し決まった日に出す習慣が定着しつつある。
さらに人口約9200人のパンパグランデ市で16年~19年3月まで、地球環境基金の助成を受け「農薬容器を含む廃棄物のリサイクルシステム導入事業」を実施中。
同市ではごみ投棄場が飽和状態。また農薬の空容器が大量にポイ捨てされ、市民の健康や環境への被害が懸念されている。同事業で市役所に廃棄物課が設置されたほか学校などでの環境教育やインフラ整備が行われ、分別回収が始まった。
この様に同法人は、3市のニーズを的確に捉え、最終的には市民や行政が自主運営できるリサイクル事業を構築し、現地の環境や農業にも貢献してきた。一方、市民の事業への自発的な参加が少ないのが課題で、「今後、第2フェーズとして環境教育に取り組みたい。また当法人では若い人にこういう仕事を思いきりしてもらうには運営資金が重要なので、日本企業と連携したい」としていて、活動の発展が期待される。

 

国の「再生可能エネルギー固定価格買取制度」が始まり、津市でも遊休地や高齢化などで管理が難しくなった農地を活用した太陽光発電のパネル設置が進んでいる。その一方、設置を規制する法令がないこともあり、津市でも業者と地域住民の間でトラブルに発展するケースも出ている。トラブルを未然に防ぐ意味でも、より細やかな条件を定めた国の法整備や自治体の条例など新たなルールが求められる。

 

 

業者と住民がトラブルとなっている高さ3mの太陽光パネル(奥)

業者と住民がトラブルとなっている高さ3mの太陽光パネル(奥)

太陽光発電は、平成24年に成立した再生可能エネルギー特別措置法に基づく、発電した電気を一定料金で電力会社が買い取る「再生可能エネルギー固定買取制度」の導入によって加速度的に普及している。
太陽光パネルは、住宅などの建造物と違い、電気工作物であるため、建築基準法や都市計画法の対象とならず、特別な許可を取る必要もない。そこで国や三重県でも太陽光発電計画策定や導入にあたってのガイドラインを定めており、計画段階から設置する地域との十分なコミュニケーションと住民への配慮を求める旨の条文を設けている。ただし、これらに法的な強制力はなく、結局のところは、業者と地域住民という当事者同士の話し合い頼みの構図となる。
そうなると土地の財産権を持つ設置業者側が法的に優位なこともあり、地域の要望との折り合いがつかないケースも発生。設置の増加に伴い、業者と住民との間での摩擦が生じたり、中にはトラブルにまで発展するケースも出てきている。
津市内でも実際にトラブルが発生しているのが津市一志町小山。現場周辺は、太陽光パネルが多く設置されている〝パネル銀座〟。昨年初夏に住宅地に隣接する農地を転用し、岐阜県の業者が太陽光パネルを設置した。しかし、周囲で最も高いパネルの倍近い約3mもあり、最も近い住宅では突如として1階居間から見える景色をさえぎる壁ができた状態に。更に近くのJR名松線の線路まで東側に約150mの間、複数業者が連続設置の動きを見せ、南側一帯の景観が完全に遮へいされる可能性が出てきた。
地域住民は設置計画の内容について全く聴かされていなかったため、業者に説明を求めたところ建設用地を売却した元地権者が住む小山自治会の会長には工事を始めるとの説明をしていた。しかし、当該箇所の地域住民は地理的な関係から隣の中屋敷自治会に属しており、計画内容が伝わらなかった。ここでのボタンの掛け違えがトラブルの発端となった。
そこで地域住民は、設置業者に要望し、昨年11月18日に、土地の仲介業者、これから隣地で計画をしている他の業者らも含め、説明会を開いた。
その中で、住民側から太陽光パネルの設置自体に反対はしないが、周囲のパネルに合わせ高さを1・6mまで下げる要望が出された。業者側はこれに対し、パネルの角度が変わると反射光で光害が発生、また設備の保全性に問題があるなどと反論。納得できない地域住民側は、光害発生の根拠となるデータ提示を求め、業者もこれを了承した。このような経緯から業者は既設パネル隣の新設工事を止めている。
データ提出に期限は設けられていなかったが、4か月を経て、痺れを切らした住民側は業者社長宛てに、今年3月初め配達証明郵便で要望書を提出。光害発生の根拠となるデータの提出、もしくは1・6mまでパネルを下げる確約を文書で3月末までに提出するよう求めたが返答はなし。住民側は業者に対する不信感を募らせた。
一方、業者側も住民側の求めた期限には応じなかったものの、要望について検討。パネルを住民の要求する1・6mまで下げて光害が発生した場合に再度上げるよう求めないという確約さえ得られれば、工事に必要な費用を、既設のパネルの周辺で設置計画のある業者と共に負担して工事を行うことと、新たに設置するパネル高も1・6mで統一する方向性で協議を進めている。業者側はそれら内容をまとめた文面と光害の発生根拠となる簡易なデータを5月初めに法律事務所を通じて内容証明郵便で中屋敷自治会長へ送付したが受け取られず戻ってきたとしている。自治会長は受取拒否していないと話しており、なんらかの手違いがあったのかもしれない。
先週末現在、お互いの不信感から良好なコミュニケーションが難しい状態だが高さ1・6mという着地点は一致しており、建設的な話し合いがなされれば、早期解決される可能性もある。
今回もそうだが、地方で太陽光発電普及が進むのは土地や農地の資産価値が低く、地権者の高齢化で管理どころか相続すらままならず放置される可能性があり、利活用策として有効だからだ。
しかし、その裏で置き去りにされがちなのが、田舎の唯一の財産ともいえる自然溢れる景観との調和という観点だ。これはより深く議論されるべき課題といえるだろう。
今回のトラブルも元を正せば、国が〝推進ありき〟で設置に関する規制を盛り込んだ法律を整備せず当事者任せにしたせいともいえる。景観との調和や地域住民との合意形成を前提とするなど、今以上に明確な基準を設けた法整備や自治体の条

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