社会

 発達障害のリアルを当事者・専門家らが語る

発達障害当事者・今井貴裕さん 鈴鹿市出身、37歳。津市などで若い世代の発達障害当事者やその保護者を支援している。東京農業大学在学中によさこいを始め、現在よさこいの衣装を制作するショップを経営。

発達障害当事者・今井貴裕さん
鈴鹿市出身、37歳。津市などで若い世代の発達障害当事者やその保護者を支援している。東京農業大学在学中によさこいを始め、現在よさこいの衣装を制作するショップを経営。

三重県立子ども心身発達医療センターセンター長・金井剛さん 1983年群馬大学医学部卒。児童精神科医。横浜市中央児童相談所長などを経て、2017年現職就任。発達障害などの子供の診療を担当している。

三重県立子ども心身発達医療センターセンター長・金井剛さん
1983年群馬大学医学部卒。児童精神科医。横浜市中央児童相談所長などを経て、2017年現職就任。発達障害などの子供の診療を担当している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「発達障害」は、生まれつき脳の発達が通常と違うために、幼いうちから現れる症状で、自閉症・ADHD・学習障害など。05年に発達障害者支援法が施行されたが、障害に対する社会の知識・理解不足により多くの当事者が生きづらさを抱えている。そこで本連載では当事者や親、専門家が発達障害のリアルを発信する。第1回の対談者は三重県立子ども心身発達医療センター(津市大里窪田町)の金井剛センター長と、成人後に発達障害と診断された今井貴裕さん(鈴鹿市)。
※連載タイトルの「発達さん」は、「発達障害当事者」の呼称で、最近、当事者などによりインターネット上で広く使われている。

 

 

金井 発達障害の診断名は今、乱雑に使われ過ぎていると思う。人は皆、発達障害の特性のような部分を少しは持っている。僕は「発達障害」は診断名じゃないと思っているくらい。例えば内科で「あなた胃の病気です」と言われたのに等しい。胃の病気にも色々あるのに。診断の告知も大流行で、簡単にしすぎていると僕は思う。土居健郎という有名な精神分析家は「診断は本来、その後の治療の方向性までを含めてあるべき」と。例えば内科や外科で「あなたガンですよ、はいさようなら」では告知と言わないだろうと思うけれど、発達障害に関してはそういうことが最近多い気がする。

今井 僕も「あの人変わってるんだけど、発達障害かどうか診てもらったほうがいい?」とよく聞かれますが、基本的に、本人が困ってないならそのままでいいんじゃないのと答えています。
金井 今、社会に医療化、つまり言動に何か問題があると診断名をつけて医療対象にするという流れがあって、それがとても残念。初診でADHD(※)の患者さんを沢山診るけれど、僕が小学校低学年の頃よりは遥かに軽い子が大勢来る。僕は授業中に消しゴムをちぎって投げたり、物を失くすことも多かった。それが廊下に立たされることで許されていたが、今そうだと「病院へ行きなさい」になってしまう。
※ADHDは多動性・衝動性・不注意が特徴。

 

自分なりの工夫で    特性の不注意をカバー

今井 僕は多分ADHD寄りで、不注意がだいぶひどいです。あるお客さんに大阪と名古屋への便をそれぞれ分けて送ってと言われたのに、テレコで逆に送ってしまいました。送る前に、絶対間違えないぞと思って封筒の宛名を書いて中身を入れるところまで全部ちゃんと見ているのに、なぜか逆になったんです。
物を失くすのもしょっ中で、僕は傘を持たないという生き方を選びました。傘を持たないと傘を失くさないし、「傘を失くすかも」という気を使わなくて済むんですよ。
金井 今、初めて気づいたけれど、皆にも僕にも自分なりに身に付けてきた、生きやすくする、生活しやすくするための工夫があるんだろうね。
今井 はい。僕はそういう自分の工夫、ライフハックを人前で話す機会が増えたことにより僕を肯定してくれる人、重宝してくれる環境を見つけられて、すごく自信を持てるようになりました。

 

各特性に合う仕事がある   保護者が様々な職種知って

今井 僕は多動傾向ですが、自閉傾向で大人しくて毎日のルーティンが崩されるのがすごく嫌な人っているじゃないですか。そういう人は毎朝決まった時間に出勤して真面目に働ける。一方、僕は(講演の講師などとして)呼んで頂いたりしますが、ルーティンの作業は全然できないんですね。僕は重宝はされるけれど、本当に世の中に順応しやすいのは自閉でも真面目にやれる人なんじゃないのかなと……。
金井 それは適材適所ですよ。例えば僕が昔診ていた子は、IQはわりと高いけれどバランスが非常に悪くて特別支援学校に行き、清掃の仕事に障害者枠で就きたかった。でも学校側は学校に遅刻しているし推薦できないと。そこで僕は学校に乗り込み、この子はいざそうなったらやるから推薦してくれと言った。 結局その子は就職し、同じ場所を同じパターンで掃除する仕事がとても向いていて、優秀で後輩の指導係にもなった。けれどその子が営業職や店頭に立つ仕事をさせられたら多分つぶれてしまう。
僕は子供たちを診るとき、発達障害などの診断名がつくことがあるけれども「そんなことよりも、とにかくその子の特性を見て下さい。そして、子供がこれからどう生きていくかをいつも考えてほしい」と親御さんにいつも言うんです。
今井 僕も本当にそう思います。以前津市でお母さんの集まりに呼んで頂き子供の進路相談を受けたんですが、「子供は家を建てる仕事をしたいがコミュニケーションが全然とれない。どうしたらいいだろうか?」という話で、僕がそのお母さんに家を建てる仕事をするのは誰だと思いますかと聞くと、お母さんの答えは大工さんでした。でも家を建てるのには大工以外にも三十何個の業種が関わるらしいんですね。だから「お母さんがお子さんのためにその沢山の仕事を知ってあげて下さい、その中でお子さんが向いている仕事をしたらいいんじゃないですか」と話し、喜んでもらいました。(次号に続く)

「高田中学校・高等学校(6年制)」の生徒有志が、名古屋産業大学、㈱フューチャー・ファーム・コミュニティ、㈱赤塚植物園の協力を受けCO濃度を測定してデータを収集するなど環境学習に取り組んでいる。今月31日には、同じく環境学習に取り組む台湾の大同高校とお互いがまとめた調査結果を発表し、インターネットを通じたテレビ会議を開催するなど、文科省の進める探求的な学習を実践している。

 

 

環境学習に参加している生徒たち

環境学習に参加している生徒たち

三重県屈指の進学校としても知られる「高田中学・高等学校」=津市一身田町=。2017年より「高野尾花街道 朝津味」=同高野尾町=を運営する「㈱フューチャー・ファーム・コミュニティ」、多様な植生で環境学習の場となるレッドヒルヒーサーの森=同高野尾町=を持つ赤塚植物園、CО濃度調査に基づく環境教育プログラムの開発と実践に取り組む「名古屋産業大学」=愛知県尾張旭市=の協力を受け、産学連携による環境学習を行っている。目的は、世界的な課題である環境問題に対して、未来を担う若者たちに、自らの課題である認識を持ってもらい、それを周囲に伝えられる人材育成。現在、中学から高校まで35名の有志が参加。
環境学習は、3カ年計画で初年度の一昨年には同大学の伊藤雅一教授から、地球温暖化を防止するための国際的な協定であるパリ協定によって大幅な削減が求められるCOの実測データに基づく、学習の意義を学んだり、岡村聖教授と共に、ヒーサーの森でCO濃度測定器などを使った調査や実験を実施。昨年には、学校内にCO濃度測定器を設置し、定点観測を行いデータを収集。生徒たちが、収集したデータをコンピューターなどを使い分析。伊勢湾から学校に向かって吹く風のCO濃度が高いことに着目し、海中のCOを吸収する植物性プランクトンが減り、COを排出する動物性プランクトンが増えている可能性があるという仮説を岡村教授と共に導き出している。
そして、3カ年目の今月31日には、同じく名古屋産業大学が環境学習の指導を行っている台湾の大同高校と、インターネットを通じたテレビ電話で世界共通の課題である地球温暖化の防止をテーマとした会議を実施。生徒と教員の交流を図る。その翌日には、朝津味で生徒たちは近隣の小学生を対象に、自分たちが学んだことを伝える。
テレビ会議を前に、同校の林翔太さん(16)は「世界の環境問題について改めて考えたい」、成尾和真さん(15)は「日本人との目線の違いを感じたり、同世代との生徒との交流を生かしたい」と語り、谷信孝さん(15)は小学生への環境セミナーに向け「自分たちで学んだことを伝えたい」と意気込む。
同校の環境教育が国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)をベースにしていることから、低炭素社会の実現に向けた教育の実践の場として、ユネスコスクールの認定を申請中。認定されれば、県内で3校目。
また、生徒自らが課題を定め、必要な情報を集め、整理・分析を行い、まとめ・表現する文部科学省の学習指導要領に盛り込まれている探究的な学習をいち早く実践することの意義も大きい。

「一般社団法人・三重県技工士会」が安全技術向上などを目的に、県の委託で行っている「歯科技工技術安全研修事業」について長年、研修会場を無償提供していた「三重県立公衆衛生学院」=津市夢が丘=が施設の使用を禁じる通知を出したことに、同会が反発。減り続ける歯科技工士の人材の養成と確保を厚労省も課題としているが、それと逆行する学院とそれを運営する県の動きに疑問の声が上がる。

 

 

歯科技工士は、歯科医師の指示に基づき、入れ歯、いわゆる被せ物や詰め物と呼ばれる補綴物を製作する医療系の技術専門職。「一般社団法人・三重県技工士会」は、県内の歯科技工士たちで構成されている。
三重県立公衆衛生学院は開学当時の昭和49年から、平成22年3月まで歯科技工学科を開設しており、三重県内の歯科医療の一角を支える歯科技工士を輩出してきた。
平成22年の県下唯一の歯科技工士養成校だった同学科閉科後、三重県は同会に委託し、歯科技工士の確保や安全技術などの向上を目的に「歯科技工技術安全研修事業」を年間5日実施。同学院は長年にわたり、歯科技工学科の実習室などを、同会の研修会場として提供してきた経緯があり、同事業についても、会場を無償提供していた。
しかし、今年4月に同学院から、同会宛てに今年6月30日の同事業を最後に施設の使用を禁止する旨の文書が届いた。その理由としては、学生本位の施設であること、設備の老朽化、不測の事態に対する責任の所在、近年同事業で実習は無く、座学のみの講習を続けていることなどを挙げた。
これを機に、技工士会だけでなく、全ての団体が使用禁止になったが、急にはしごをはずされた形の同会は困惑。更に、同会の事業と同じく公益性の高い内容であるが、三重県歯科医師会が学院を会場として9月に事業を行う通知を出していたため、学院側の一貫しない対応に技工士会は不信を募らせた。これに対し、芝田登美子学院長は、やむを得ない事情で学院長権限によって条件付きの許可をしたと説明。今後、他団体へ施設を貸し出さない意向を強調した。
同学院を運営する県も委託事業費用に会場費を含んでおり、他の会場を探すべきとするが、これに対して技工士会が反発。座学のみの研修であれば、他の施設の会議室で完結するが、粉塵や熱が発生する機材を用いた講師の実演、実習が伴う研修、復職支援講習会を行う場合、県内で会場探しが難しいからだ。
会自前の実習設備も無く、会員の技工所を借りるにしても、県内の約8割の技工所が就業者1人のみ。3人以下の小規模事業所が9割以上を占め、必要十分な会場の確保は難しい。現実的なラインは、県外の歯科技工士養成校やメーカーに場所を借りることだが、果たして、それが三重県の委託事業として適切な形かは疑問が残る。
同学院の実習室は現在、当初のような形で使用していないが、歯科技工教育のために設計された県内唯一の公共施設という事実を踏まえ、三重県歯科技工士会の片岡均会長は「県民の財産を公衆衛生向上のために役立てるという意識に欠ける」と県を批判する。
歯科技工士は全国的に深刻な人材不足で、厚労省も人材の養成と確保を課題に上げるが、冷や水を浴びせるような学院と運営主体である県の対応は、逆行そのものといえる。そもそも同会が受託している事業は、県が公衆衛生のために果たすべき責務を肩代わりしている点も無視できない。
県内の状況はというと、同学院の歯科技工科閉科で県内の養成校は無くなったため、県は代替え策として奨学金制度を設けたが、歯科技工士は年々減少。離職率も高い。歯科医療財団の調べによると、平成28年で全国の歯科技工士免許登録者11万8271人のうち、実際に歯科技工士として働いている者は3万4640人とわずか29・3%。離職者の約8割が20代で、就業者の半数近くを50歳以上が占めるなど高齢化が加速。離職者の復職も少なく、近い将来、歯科医療を支える人材確保が難しくなる可能性も高く、もはや業界内だけの問題とはいえない。
県内の公衆衛生のレベルが下がれば、不利益をこうむるのは県民に他ならない。県は様々な団体と慎重に対話と協議を重ねがら、公衆衛生の向上に何が必要なのかを改めて考えるべきだろう。

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