検索キーワード
社会
鈴木英敬知事インタビュー。県内の経済を支える産業振興政策、ゴルフツーリズムを活用した海外に向けた観光戦略、住み慣れた地域で安心して暮らすために欠かせない医療、地球温暖化対策など、鈴木県政2期目を締めくくる重要施策に迫る。(聞き手=本紙・森昌哉社長)
─新年あけましておめでとうございます。早速ですが、昨年に10年先を見据えた県内の産業施策のあるべき方向性を示した「みえ産業振興戦略」を全面改訂し、新たに「みえ産業振興ビジョン」を策定されました。人口減少と超高齢社会の到来、若者の県外流出やIoTやAIなどの第4次産業革命による産業・就業構造の大転換など、三重県の産業を取り巻く情勢は大きく変化しています。経済の持続的な発展をめざしていくため、どのような産業施策を考えていますか。
知事 スマートフォンの登場でこの10年のライフスタイルは大きく変わりました。AIとかIoTは私たちの生活と経済の仕組みを変え得るものであるのでしっかりと掴み取っていかなければなりません。みえ産業振興ビジョンをつくるにあたり、県内5千社にアンケートを取りましたが、AIやICTやIoTを重要と思う人の率が県外と比べると少なかった。このままでは他県の企業に後れを取る可能性があり、まして人手不足の中で生産性を高めていくことが重要となります。そこをもっと理解して頂き、活用してもらうために産業政策を新しいステージにもっていくというのが基本的な考え方。
その中で、大切にしているキーワードは「組み直し」です。例えば、伊勢市のおはらい町にある老舗食堂ではAIを使った来客予想システムを使い、人材の配置や食材の調達をしながら利益アップや職員の給与向上にもつなげています。他にも津市の会社では、トマトを生産するのに様々なセンサーや自動化技術を入れて、単位面積当たりの収量を上げて、利益も上げるという事をしています。このように今まで近くにあったけど、繋がっていなかったり、これまでと繋ぎ方を変えてみようといった組み直しによって新しい付加価値を産んでいきたい。
もう一つ、若者の流出が続いているので、若者が魅力に感じる仕事を創出しなければいけないと思います。IoTやICTを活用することで効率的に仕事ができ、自分のプライベートも充実できる。そうやって若者が定着し、共に躍動していく産業政策でありたい。
3つ目は三重県の得意なものづくりをスマート化していくことを考えています。やはり、ベースとなるのは中小企業で、そこでは事業承継が課題になっています。三重県事業承継支援センターでは事業承継診断が年間720件目標に対し、2400件も寄せられています。後継者がいない事で優れた企業が失われることがないように事業承継の支援を行ったり、生産性の向上のための支援を行っていきます。こういった部分を普遍の課題としながら産業政策を考えていきたいです。
津市森町に進出する「ソウルオブジャパン」という会社は、シンガポール資本のアトランティックサーモンの陸上養殖をする会社。現在、日本ではアトランティックサーモンは全量輸入なので、日本初、津市でつくれるようになれば、日本全国に出荷されていく。そうやって海外の力を取り込んで組み直すことも大事だと思います。
─次は観光政策についてです。三重県は数多くあるゴルフ場を活用して外国人観光客を誘致する「ゴルフツーリズム」に取り組んでいますね。昨年10月には日本初となる国際ゴルフツアーオペレーター協会主催の日本ゴルフツーリズムコンベンション(JGTC)が県内で開催され、ゴルフ旅行先としての日本や三重の魅力を、欧米豪を中心とする海外の旅行会社52社にもPRしました。今後は更なる海外観光客の誘致が重要ですが、具体的な方策などをお願い致します。
知事 日本全体が世界で三番目に多く、三重県は約70のゴルフ場があります。ゴルフツーリズムに取り組んでいる自治体は他に北海道と沖縄県くらい。ゴルフで来日する層は富裕層が多く、連泊もするし、家族は買い物を楽しむので、地域に落ちるお金も多い。他が余りやっていないという状況も加味して、ゴルフツーリズムに取り組んでいます。10月のコンベンションでは商談が1256回も行われました。実はこの前日に台風が来ていて翌日にプレイをしてもらう事など不可能と思っていたら、受け入れ先のゴルフ場が完璧な状態に仕上げてくれました。そこで日本のホスピタリティとゴルフ場のマネジメントの凄さを実感して頂きました。それを生かして今年のラグビーワールドカップや来年の東京オリンピック、パラリンピックに合わせて来にする人にもゴルフをセールスしたい。
インバウンド全体としては客が客を呼ぶサイクルが主流。皆インスタグラムやフェイスブックを見て観光に来ます。現在、海外向けのキャンペーンをやっていますが、三重県に来た観光客自身が発信をして、周囲の人も行きたくなるというサイクルで個人旅行の増加を狙っています。キャンペーンのアンバサダーも全国約1200名の応募から選ばれた5名です。台湾向けには台湾の方が一般消費者として良さを伝えてもらうキャンペーンをやったところ、6600人もの応募がありました。客が客を呼ぶサイクルで今年はやっていきたい。
今年は熊野古道の世界遺産登録15周年なのでインバウンドにしっかり取り組んでいきたい。昨年は四日市と鳥羽に外国クルーズ船が6回来ましたが今年は10回来ます。和歌山県新宮港にも結構来るので、乗船客に三重県に上がってもらえたら。
津市は国宝指定を受けた高田本山専修寺の人気があるので、もっと情報発信していく。また、津なぎさまちがあるので三重県全体のゲートウェイとしてパワーを発揮して頂けると。(2面に続く)
─急速な高齢化の進行と共に、人口減少時代を迎え、社会構造の多様化・複雑化が進む中、医療技術の進歩、県民の意識の変化など、医療を取り巻く環境が大きく変わりつつあります。団塊の世代が全て75歳以上となる2025年に向け、医療や介護が必要な状態となっても、できる限り住み慣れた地域で安心して生活を続けられ、その地域で人生の最後を迎えることができる環境の整備が求められます。そこで望ましい医療の在り方、目指すべき方向、具体策をお聞かせください。
知事 ご指摘の通り2025年が大きな節目となるので、一昨年にそこにたどり着くまでにどういった地域医療を構築するのかという地域医療構想をつくりました。他県では二次医療圏毎に病床数を考えるのですが、三重県は4つあったそれを、なるべく細かい単位で地域医療を考えるため、全国で唯一の8つにまで割っています。患者さんのQOLを高めたり、住み慣れた地域で治療を受け、最後を迎えることを望まれるニーズも強いです。病院完結型から地域完結型になると思うので、それを支えられるような地域包括ケアシステムで医療、介護、福祉など多職種が連携していける仕組みをつくります。在宅医療は市町にやって頂くことが多いのですが資源が足りない部分を支援していきます。
後は県立一志病院で中山間地域の医療を支える診断を行う総合診療医を育成しています。今は東の筑波、西の三重と言われるくらいになりました。また、一志病院では総合診療医以外にも看護師でも同様にプライマリーエキスパートナースを育成しています。三重県では女性が働きやすい医療機関認証制度を全国で初めてやっています。医師の中でも女性は二割になっているし、看護師や事務員を合わせると病院で働く女性は多いので、そういった方々が働きやすい環境を全国に先駆けてつくっていくことで女性の医師や看護師などの医療従事者の確保をやっていきたいと思います。
─女性の更なる活躍はこれからの社会に欠かせませんが、地域医療を守っていく上でも非常に重要な要素となりそうです。住み慣れた三重県で安心して暮らし続けられる医療施策の展開をよろしくお願い致します。
─地球温暖化対策、省エネ・節電の取り組みとして昨年7月~8月に、三重県地球温暖化防止ライトダウン運動「ライトダウン・みえ2018」を実施しましたね。この期間内には3日間、県内の事業所や市町、県民の協力で一斉消灯が行われましたが、その効果と今後の温暖化対策をお聞かせください。
知事 多くの皆様のご協力もあり、159の事業所に入って頂いた。昨年は色々な災害があり、津市でも大規模な停電もありました。温暖化はもちろん、エネルギーの消費について電気の在り方に意識を突き付けられる年でした。159の事業所で節電したのが、5・5万kwh、約4600世帯の1日分の電力消費に相当するので、身近なところで地球温暖化対策をしていきたいと思っています。県では平成26年より地球温暖化対策推進条例を施行しています。温暖化対策で最も大切なのは、温まった地球を冷却するのは難しいので、温まるスピードの緩和と温暖化への適応です。企業や県民の皆様に啓発をしていきながらご協力を頂いています。
─今年は災害の影響でエネルギーのありがたみを改めて感じた人が多いと思います。この機会に取り組みが更に広がれば良いですね。
─社会経済情勢の変化や東日本大震災の発生などによる県民ニーズの変化に適切に対応した新しい三重づくりに取り組むための長期の戦略計画「みえ県民力ビジョン」は、平成31年度に第二次行動計画の最終年度を迎えますが、詳しく教えてください。
知事 これまで9割以上の政策が概ね順調に進んでいるものの、目標達成に向けてしっかりと取り組んでいかなければなりません。平成31年度は伊勢湾台風から60年、昭和19年にあった南海トラフ系の昭和東南海地震から75年という節目に当たり防災に力を入れます。更に県民意識調査を毎年やっていますが、重要だと思う政策分野に医療が一番で上がっています。それに介護も加えて安心を提供していく。3番目は若者の定着。人口減少も緩和と定着だと思う。4番目は強靭な産業。観光面でも選ばれる三重にしていきたい。5番目は2年後の「三重とこわか国体」に向け、しっかりとスポーツを盛り上げていく。
そういう5本柱でしっかりと取り組んでいきたい。今年は平成から新しい時代に生まれ変わる歴史の節目ですし、4月18日には今の天皇陛下が伊勢神宮にお見えになられる。地方にお越しになる最後の機会になる見込みです。平成の時代に国民に寄り添って頂いた感謝の気持ちと新しい時代に向けて頑張っていこうという思いを共有する機会になればと思うので是非県民の皆様のお力をお借りしてスタートダッシュする三重という形でいければ良いと思います。
─ありがとうございました。知事の2期目の任期も残すところわずかとなりましたが、そのラストスパートと今後のご活躍も期待しております。
2018年12月31日 PM 12:02
津市の旅客船ターミナル「津なぎさまち」付近の臨港道路では平成17年の就航以来、乗船客による長時間駐車・横断歩道付近などでの違法駐車が多く問題となっている。最近、高速船の乗客増に比例し違反車両が一層増えた。そこで三重県・津市・津警察署は対策を協議し、今夏から啓発を開始。さらに津署が9月から取締りを強化し、刑事罰を科す赤切符を2件交付するなど厳重に対応。すでに効果が出ている。
「津なぎさまち」は、中部国際空港への海上アクセス拠点として平成17年に開港。津市などでつくる「津なぎさまちイメージアップ事業実行委員会」のPR活動などによって高速船の乗客数は増加傾向で、昨年度は過去10年間で最多の28万8954人に上った。また、海を臨む施設周辺は市民の憩いの場でもあり、散歩などで訪れる人も多い。
しかし一方で、開港以来、なぎさまち付近を通り県が管理する「臨港道路」のバス停近くなどでは、主に乗船客による違法駐車が蔓延。休日には、片側一車線の道路両側に約40台の車が長時間駐車されていることも珍しくなく、交通安全・防犯・景観面で深刻な問題となっていた。
違法駐車の要因の一つは、高速船利用者用の無料駐車場の不足。2泊以下の駐車の場合はなぎさまち内駐車場、3泊以上の駐車の場合はなぎさまちから800mほど離れた第2~5駐車場を利用できるが、需要に対して収容台数が少ない。そのため駐車場拡大が課題だが、土地の確保が困難で現状、実現は難しい。
また第2~5駐車場の利用者用になぎさまちまでの無料送迎車が運行しているが、高速船ターミナルに近いからと臨港道路に長期間駐車する人も多い。
この道路には公安委員会(警察)が設置する駐車禁止の標識は設けられていない。但し「道路交通法」に基づき逆向き駐車や横断歩道付近などでの駐車が禁止で、違反すると青切符が交付され反則金が科される。また「自動車の保管場所の確保等に関する法律」に基づき長時間駐車が禁止で、違反すると赤切符が交付され刑事処分で罰金が科され、前科が付く。
乗船客の増加とともに違法駐車の数も増えてきたこともあり、県・市・津署が対策を協議し、今夏からビラで長時間駐車禁止の啓発を始めた。
さらに津署が9月からこの臨港道路での駐車違反の取締りを強化し、10月末までに青切符交付が5件、赤切符交付が2件と厳重に対応している。
これら具体策が功を奏し、違法駐車が平日や連休中も減少した。
今後、行政が違法駐車防止のため看板・ポストコーンを設置する予定。また警察は将来的に標識を設け規制化することも視野に入れていて、さらなる効果が期待される。
津市の海の玄関口の安心・安全を守るため、これら具体策の意義は大きい。そして対策以上に重要なのが、市民一人ひとりが意識し駐車マナー向上に努めることだろう。
2018年11月29日 AM 5:00
世間はそろそろ忘年会シーズンだが、津市の繁華街でも時折、見かけるのが自転車の飲酒運転。酒酔い運転として検挙されれば、重い罰則が科せられ、場合によっては自動車の免停にも繋がることまでは余り知られていない。道交法改正による自転車の罰則強化から3年以上が経過し、近年では自転車が事故を起こした場合には乗り手側に厳しい判決が出ることも増えている。今一度気を引き締めるべきだろう。
自動車の飲酒運転は、罰則の強化と共に、職場によっては停職や解雇など厳しい処分が下されることも珍しくない。それに伴い、運転代行サービスなどを利用する人が増加している。
その一方で、自転車の飲酒運転に対する意識はかなり低い。津市の繁華街でも、飲食店に自転車で来て、飲酒した後に乗って帰る人の姿を見かけることも、そう珍しくない。「今日は飲み会だから、自転車で」や「自転車なら大丈夫」というような会話を耳にしたこともあるのでは。
平成27年の道交法の改正によって、安全規定に14項目の危険行為が定められた。それで3年以内に2回摘発された自転車の運転者には安全講習の受講が義務付けられているが、本当に厳しいのは検挙された場合。
誰でも乗れる自転車には運転免許制度が無いため、減点にあたる交通反則告知書(青切符)が存在しない。つまり、自転車の危険行為で検挙されると、いきなり赤切符(告知書)が交付され、刑事罰が科せられる可能性がある。刑事罰が科せられれば、いわゆる〝前科〟が付く形となる。刑罰の内容としては酒酔い運転の場合、自動車と同じ懲役5年以下もしくは100万円以下の罰金と非常に厳しい。更に、検挙された者が、自動車の運転免許証を所持していると、免停処分になることもある。
そればかりか、自転車の加害事故では、数千万円の賠償が命じられる判決が出ることも増えている。まして、運転者が飲酒しているとなれば、更に重い判決となることも予想される。
津署でもミニ検問を設置するなど、日常的に取り締まりを行っており、危険運転をする者には、指導警告書を渡している。その数は今年1月~10月で542件。その内、飲酒運転はイヤホンをつけながら運転などと同じカテゴリーの中にまとめられた総計206件に含まれている。今まで津署では、飲酒運転を含む、自転車の危険行為で検挙にまで至った例はないが、「本当に危ない運転を発見すれば、すぐに検挙する」と話している。
平成28年には全国で酒酔い運転の検挙は127件あり、自転車の飲酒運転によって、重い刑罰を受けたり、それによって生活が一変する可能性があることは意識をしておくべきだろう。
しかし、他県ではあろうことか警察官が自転車の飲酒運転で検挙されるという不祥事も発生。いかに自転車の飲酒運転に対する意識が浸透していないかが伺える事例ともいえる。
夜の飲食店街がにぎわう忘年会シーズンには自転車の飲酒運転も増加する。自転車は法律上、車両で、運転者に大きな責任が課せられるということを改めて認識し、軽はずみな気持ちで飲酒運転をしないよう運転者自身
が心掛けるだけでなく、その周囲の人も目を光らせていく必要がある。
2018年11月22日 AM 5:00