社会

津市白山町上ノ村で平成23年に設立された『上ノ村自治会獣害対策協議会』=山口俊宏会長=は、「獣害対策を通して地域力アップ!」をスローガンに掲げ活動。非農家を含め住民が、丁寧な合意形成に基づき、侵入防止柵を主体的に管理している。また高齢者や、他地域の学生・企業にも活躍の場が提供され、獣害が激減しただけでなく、関係者の共同体感覚の醸成、獣害対策関連の新たな取り組みにも繋がっている。

 

 

侵入防止柵の管理を行う住民と他地域の学生達

侵入防止柵の管理を行う住民と他地域の学生達

津市では中山間地域を中心にシカ・イノシシ・サルによる農作物への被害が深刻で、市でも従来から対策を推進。今年度は、新たに「防護柵補助制度」を開始すると共に「津市獣害対策相談チーム」を設置した。また現在、市内で20の地域獣害対策協議会が設置されており、上ノ村自治会の獣害対策活動を担う『上ノ村自治会獣害対策協議会』もその一つ。
上ノ村は中山間地域の集落で世帯数79戸・人口289人・平均年齢54・7才・高齢化率40%。多くの世帯が農家で平成20年以降、シカ・イノシシ・サルによる農作物への被害が増えていた。 そんな中、21年に集落全戸と入り作農家の計101戸で、「上ノ村環境保全プロジェクト」(通称=KKP)が発足。翌22年にKKPが行ったアンケートなどによって獣害が集落全体の問題であることが分かり、住民が危機感を共有した。そして自治会をあげて対策を行うことになり、その下準備中、市の担当者から国の「鳥獣被害防止総合対策交付金事業」について説明を受け、自治会として取り組むために、23年1月、KKPと同様の構成員で同協議会が設立された。
同集落の獣外対策の特長は、「被害というマイナスをゼロに近づける活動」で終わらせず、地域おこしに活用していること。
例えば、同事業での侵入防止柵(恒久柵)設置事業をKKPで立ち上げ、協議会で実行する際には、非農家も含め集落全体で取り組むための合意形成を“当自治会運営上、かつてないほど丁寧”に行ったと言う。
それが住民の主体的な活動を引き出し、今では、柵の管理を行う出合い作業に強制しなくてもほとんどの住民が参加。高齢のため参加できない人も、貢献できる役割を自ら探している。
また、集落の休耕田を有効活用する活動に参加している三重大生が、わな免許を取得して猟友会に所属し猟師でもある会長の山口さんの指導のもと、捕獲活動を実施。他地域の企業による休耕田での米作りも数年前始まった。
このような取り組みの結果、獣害の被害額は激減した(22年=約448万円、27年=約97万円)。それだけではなく、集落の内外の関係者に共同体感覚が醸成され、上ノ村は多方面に亘り先進的な取り組みができる集落へと発展している。
その結果、同協議会は、農水省の27年度鳥獣被害対策優良活動表彰で、農村振興局長賞を受賞した。
現在、同集落では、捕獲した鹿の肉を少しでも有効に消費するための「上ノ村ピザ」開発など、獣害対策に直接関連する新たな取り組みも多数実施中。
さらに学生らが取り組みを通じ集落に深く親しみ、大学院進学や就職にあたり「上ノ村に住みたい」と言う人もいるほどだ。
協議会事務局の木村和正さん(62)は「地域おこしのキーワードは〝主体性〟だと思う。
私達は外の人の力も借りますが、こちらがサービスしたり観光的に楽しんでもらうのではなく、互いに好きな事・得意な事を生かして楽しみながら地域貢献するという状況を作りたい。
そのために補助金をもらい、いつまでも補助金に頼るのではなく、補助金が出る間に自立できる基盤を作るというのが、うちの集落のやり方です」と話している。
柔軟な発想で危機を好機に変えた同協議会の活動は地域活性化や獣害対策に取り組む他団体にも、大きなヒントになり得るだろう。

今月、津市高野尾町にオープンした施設「朝津味」を運営する『㈱フューチャー・ファーム・コミュニティ三重』と、北海道の上富良野町で『㈲フラワーランドかみふらの』がお互いの地域農業発展のために「文化、産業交流」の協定を結んだ。北海道開拓でつながりの深い津市と同町は友好都市提携しているが、それよりも以前に結ばれた縁によって実現したもの。農業振興を軸とした連携の発展が非常に楽しみだ。

 

top 「㈱フューチャー・ファーム・コミュニティ三重」(以下、FFC)は、高野尾地区やその周辺地区を農業を軸に活性化するため、同地区の農業者らが中心となって設立。今月初めに、活性化策の中核となる県内最大級の農産物直売所を備えた施設「朝津味」をオープンさせた。今回の「㈲フラワーランドかみふらの」との協定調印はそのオープンを記念して行われた。
津市と上富良野町は、明治30年に入植した津市出身の田中常次郎らが苦労を重ねながら、原野を切り拓いたという深い縁がある。そこで平成9年に友好都市提携を結んで交流を続けている。今回の協定のきっかけはそれを更に遡ること、更に5年前の平成4年。現在はFFCの社長・赤塚充良さん(赤塚植物園会長、当時は社長)と、㈲フラワーランドかみふらの相談役・オーナーの伊藤孝司さん(当時は社長)との出会いにあった。
当時、伊藤さんの経営する農場は主要農産物の値下がりと輸入農産物の攻勢によって収益の減少が続いていた。そこで、従来の市場流通型農業から脱却し、生産者主導型農業を現実化するべく地域の農地を集約し観光生産農場の設立を計画した。それに必要な市場調査を行うために、市場視察を行っていたところ、偶然に赤塚さんと出会った。伊藤さんは津市から入植した開拓者の子孫であることからも不思議な縁を感じ、二人は意気投合。赤塚さんは富良野の環境に適したジャーマンアイリスの球根提供や栽培技術協力を行った。その結果、ラベンダーとアイリスをメインとした観光生産農場「フラワーランドかみふらの」(施設名は赤塚さんの命名)のオープンにこぎつけた。その後、苦労を重ね、施設は現在、同町を代表するスポットとして全国から多くの観光客を集めると同時に、農業を軸とした地域振興の実践例としても知られている。
13日に朝津味で行われた調印式には赤塚さんと、フラワーランド現社長の伊藤仁敏さんが出席。相互の地域農業発展のために、「文化、産業交流」の協定書を交わした。その上で、それぞれが連携し、観光・農業などの産業文化発展のために地域振興に寄与していくこととなる。
18日までの朝津味で記念事業を実施。①ファーマーズマーケットで同町特産のメロンの試食・販売。②語り部による「津市と上富良野町との交流の歴史紹介」など。津市と同町も来年、友好提携20周年を迎えるので、その展開を見ながら今後の連携内容を検討。お互いの歴史文化を紹介するパネル展や、フラワーランドと朝津味が中心のジャガイモやサトイモなどの定期的な販売会の継続を計画している。
120年近く前に津市の先人たちが結んだ両地の縁が、民間主導で経済的な発展も視野に入れた枠組みとして結実したことは非常に灌漑深い。伊藤さんは「朝津味の施設利用を通じて、津市と上富良野の農業振興に取り組んでいきたいと」意気込みを語る。津市の先人より受け継ぎし〝開拓精神〟を軸にした次なる一歩に期待が集まる。
問い合わせ☎059・230・8701へ。

津市が4月より運用開始した『徘徊SOSネットワーク津』。認知症高齢者が徘徊などで行方不明になった場合、関係機関で情報共有することで早期発見・保護や、本人や家族の負担軽減をめざす。だが、高齢者の登録数は6月初旬でまだ17名と更なる周知が必要で、津市がこれまでに7000人近く育成してきた認知症サポーターの活用も制度をより有意義なものにするカギと言える。

 

津市の総人口約28万人のうち、65歳以上の高齢者は平成26年10月で約7万6000人。そのうちの約8000人が要介護認定の自立度Ⅱ以上という内訳になっている。昨年度、認知症の高齢者が徘徊で行方不明となったのは全8件。うち1件は死亡に至っている。これ以外にも、大事に至る前に家族が気付いたり、近所の人に保護されたケースを含めると、相当の数になることが推測される。
このような背景から『徘徊SOSネットワーク津』が4月より運用開始されている。これまで認知症高齢者が徘徊などで行方不明者となった場合、警察、地域包括支援センター、介護事業所、民生委員・児童委員などに電話で氏名と特徴を伝え捜索を開始するという流れだった。電話で連絡を取り合う時点で時間がかかってしまうため、行方不明者の確認や捜査に至るまでの時間がかかりすぎるという欠点があった。
同ネットワークのシステムを簡単に説明すると、徘徊の心配がある高齢者を持つ家族などが津市か、各地域包括支援センターで事前登録(無料、要介護度などの基準はない)を行う。そこで登録された対象者の基本情報(氏名、住所、身長、体重、歩行の程度など)や上半身の写真などを申請者の同意に基づき、中核的機関となる津市、地域包括支援センター、津警察署、津南警察署で共有する。そして行方不明者が出た場合は、津市から、こちらも事前登録している協力機関へとメールで情報配信を行う。協力機関は従来の捜査でも活躍していた民生委員・児童委員や高齢者施設に加えて、津市が平成20年より育成中の認知症サポーターなど、一般からも広く募り、より多くの目で登録者を見守り、保護までの時間を短縮することを目的としている。また、登録者の靴に貼るだけで、ネットワークに登録していることが分かる反射ライト用シールを10足分配布している。
しかし、4月の開始から6月初旬までの登録者は17名とまだまだ周知が必要な段階といえる。加えて、協力機関も130件で民生委員・児童委員が中心と従来のネットワーク以上に広げられていないのが実情。この点に関して特に活躍が期待されるのが津市の養成講座を経て認知症について知識を学んでいる認知症サポーターだ。津市は平成20年度~平成27年度で7000人近くの認知症サポーターを養成してきたが活躍の場の確保も課題となってきた。捜索や日常から見守りを行う場合にも認知症高齢者との係わり方についての知識があるとネットワークと上手くマッチングでき、それだけで大きな力が得られることは間違いない。
県内でも鈴鹿市や四日市市などでも、同様のネットワークが立ち上げられており、付随する施策も展開されている。例えば、東海地区でいちはやく災害情報などを配信するエリア・ワンセグ放送を導入した尾鷲市では、市内の全世帯に配布した受信機を活用。冬場など、発見が遅れると命に係わる場合、家族の同意の上で受信機を通じて、登録者の顔写真などの情報配信を行うとしている。津市でも整備に向けて検討が進められている防災情報戸別受信機も活用がでるかもしれない。プライバシーの保護という観点は重要だが、津市高齢福祉課でも技術の進歩などでネットワークが利用できるものが増えれば、積極的に活用していきたい」と話している。
徘徊の恐れがある認知症高齢者を登録したいという人や協力機関として参加したい場合は、津市高齢福祉課☎059・229・3156へ。

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