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社会
津市は昨年4月、要介護者または障害者のみの世帯を対象に無料で行う「大型家具等ごみ出し支援事業」を開始。環境部の職員が対象世帯を訪問し、大型ごみの収集・運搬を行い好評を得ている。同10月1日にはニーズに応えて対象に「要支援者のみの世帯」が追加され、翌11月の申込受付件数が、それまでの月間最高数の3倍以上の72件に上った。市は、今後も事業の周知と、更なる対象拡大の検討を進める。
高齢化や核家族化によりごみ出しが困難な高齢者が増え、全国各地でも自治体などが支援事業を実施している。これは、民間業者が有料で行う家具の引き取りとは異なり、自助・共助によるごみ出しが「したくてもできない」という人が対象の福祉的なサービス。
津市で大型家具など(長さまたは幅が1m以上の家具類)をごみに出す通常の方法は、ごみ一時集積所へ所定日に出す(木製家具は切断するなどして1m程度の長さにする)か、津市リサイクルセンターへ直接持ち込みの2通りだが、高齢者などには難しい。
そのため津市は昨年4月、無料で行う「大型家具等ごみ出し支援事業」を開始。当初の対象は要介護1以上の人または障害者のみの世帯だった。
対象品目はタンス、棚などで、1辺の長さまたは直径が1m以上2m以下で、安全に収集・運搬できるもの。回収は1世帯あたり1回につき3点までで、同年度内に2回まで。電話や窓口で申込を受け付け、対象世帯を訪問して対象の家具を確認し、収集・運搬日を調整して実施する。
実際に収集された家具は家の中で長年使われないままだったケースが多く、ごみ出しの緊急性は低いが、部屋が広く使えるようになるなどして利用者の生活の質は確実に向上。同8月末までに54件の申込を受け付け、好評を得ていた。
一方、問い合わせを受けたものの対象外だった件が8月末までに46件あり、そのうち要支援者の世帯が10件だった。
そのため市が支援の充実を目指し、10月1日から「要支援1以上の人のみの世帯」を対象に追加したところ、同月から申し込みが増加。翌11月にはそれまでの月間最高数22件の3倍以上の72件に上り、そのち要支援者のみの世帯が44件あった。
市では現在、所定日以外にも収集・運搬を実施し利用の急増に対応。今後も高齢者世帯などのニーズを調べ、対象拡大を検討していくという。
また「住民が介護施設に入所したため空き家となった建物内の家具を収集してほしい」など明らかに対象外の問い合わせも一定数あるため、市民に事業の趣旨の理解を求めていく。
問い合わせ・申し込みは環境部政策課☎059・229・3258へ。
2019年1月31日 AM 5:00
交付開始から3年を迎えたマイナンバーカード(個人番号カード)だが全国的にも思うように普及が進んでおらず、三重県でも昨年12月末の交付率は10・25%と全国平均の12・2%を下回っている。また、県内市町でも取組みの差などから、普及率に大きな差が出ている。
居住する市町村に申請すると交付が受けられるマイナンバーカード。行政手続きの円滑化などを目的に国は普及をめざしているが、まだ必須となる場面が少なく、制度への不信感も根強い。内閣府が行った世論調査でも交付を受ける予定がないと答えた人が半数以上を占めている。
三重県内の29市町で最も交付率が高かったのは松阪市の14・08%。次いで菰野町13・82%、東員町13・05%、いなべ市12・42%と続く。21市町は10%を割り込んでおり、最も低いのは紀宝町の6・01%と松阪市と8%以上の開きがある。津市は7番目の10・83%。
トップの松阪市では、市民への広報や市内の地域振興センターや市民センターへの出張申請でカード取得の手助けをしていることなど、地道な啓発活動の積み重ねで交付率上昇に繋げている。
津市では、65歳以上の高齢者を対象とした交通支援策の特典付きICカード「シルバーエミカ」の交付にマイナンバーが必要ということもあり、対象年齢の交付率は短期間で上がっている。
国は、カードを持っていればコンビニエンスストアで各種証明書の交付が受けられるコンビニ交付を推進しており、導入に必要なコストの補助も行っている。県内でも、松阪市や菰野町など、交付率が上位の市町では導入されているが、同じく導入している伊賀市や伊勢市などでは10%を割り込んでいるため、必ずしも普及率向上に寄与していると言えない。津市では、土日も交付が受けられる公共窓口があることから、コンビニ交付の導入は見送っている。
ただし、国も総務省がマイナンバーの導入を進める立場をとっているが一枚岩ではなく、国税庁がインターネットを通じて税金の申告ができるe─Taxでマイナンバーカードを使わずに手続きができる新制度を導入。暫定措置とはいえ整合性の無さから、地方自治体から批判の声も。
今後、国は消費増税の緩和策として、マイナンバーカードに地元商店の買い物などで使える自治体ポイントを付与する方針を打ち出している。津市の例のように実利が伴えば、交付率が向上する可能性はあるが、国の思い描くゴールに至る道のりは遠く険しい。
2019年1月24日 AM 5:00
任期満了に伴う今春の市長選に出馬を表明している前葉泰幸津市長インタビュー。出馬を決断した思いや任期中に達成できた事と今後の課題、高田本山専修寺の御影堂・如来堂の国宝指定に伴う観光政策、人口減少社会の中で地域経済を支える中小企業の事業承継を軸とした産業施策などについて聞いた。 (聞き手=本紙報道部長・麻生純矢)
─あけましておめでとうございます。来春の市長選への出馬表明をされていますが、ご決断された経緯を改めてお伺い致します。また、これまでの任期を振り返り達成された事、これから取り組んでいくべき課題を教えて頂けたら。
市長 2期目の7年半を過ぎた辺りで市民の皆さんとコミュニケーションをとり、これまでやってきた事について、どのように思われているのか、そして郷土である津市のために尽くすという私の原点をどれだけ成し遂げられているのかを客観的に見て頂きました。 市政で最も大切なのは津市や市民の生活にとって何が一番求められているのかという事。合併から10年という大きな節目の年を迎えた任期中に、合併の時にお約束した事もサオリーナの完成を最後に完了しました。市民の皆様からは一定の評価を頂いているように感じる一方で、まだまだやってほしいという事も沢山伺いました。
例えば、学校のエアコンの設置を普通教室から始めましたが、特別教室にも求める声も多かったです。高齢者の外出支援としてコミュニティバスが無料になるシルバーエミカを発行していますが、利用率を見ると12~13%しか増えていないので、まだまだ使い勝手が悪い事から再編を求める声、さらに認定こども園を3つ開園しましたが、今後の保育需要の高まりに合わせた施設整備を求める声などです。新しいものとしては防犯カメラ設置への期待。4年前の選挙に向けて地域を歩いていた時はプライバシーへの配慮や監視社会になる事への不安がありましたが、今やみんなやってほしいという感じが見受けられました。それから高齢者の健康寿命を延ばすといった声もありました。
そういう事を私ができるのかと考えた時に、幸い56歳で気力と体力共に充実しておりますし、将来を見据えた一歩先を行く市政という事で3期目に向けた挑戦をしていきたい。もちろん、できるかどうかが最も重要なので、そこは時代を読んで趣向を凝らして市民のニーズに応える市政を続けます。供、高齢者、地域の事、健全財政の維持などを改めて掲げて、次期津市長選挙への出馬を決意しました。
─続きまして観光についてです。昨年、高田本山専修寺の御影堂と如来堂が国宝指定を受け、津市を訪れる人も増えています。大きな追い風と考えますが、どのようにお考えですか。
市長 専修寺にお越しいただいた方のお話を伺うと、これだけの規模の木造建築物が良い状態で残っており、毎朝お勤めが行われるなど〝生きている〟事が素晴らしいとお褒め頂きます。私は国宝になる前から、あの御堂は魅力的だと思っていました。旧知の仲の元総務大臣の増田寛也さんが津市にお越しの際にもご案内したことがあります。その魅力を自分たちで伝えたいという思いがあり、「津市は職員2500人全員がシティプロモーター」というスローガンを掲げ、その第一弾として、専修寺の御影堂と如来堂を自分の言葉で説明できるようになろうということを始めました。職員全員で研修を受けて、英語の得意な職員は英語で話せるようにということもやりました。東京五輪に出場するレスリングのカナダチームがサオリーナでキャンプすることが決まりましたが、そのセレモニーをする前に専修寺にご案内をして英語で職員が説明しました。生きた施設なので説明も生きた言葉でして、来て頂いた方にも生きている雰囲気を味わって頂きたい。伊勢神宮や高野山なんかもそうですが、観光施設ではないけど訪れる価値のある場所というような存在になればこれからも大きな存在感を示せるはず。
津城もこれから注目されると思いますが、津観音も所有する文化財の価値が認められ、津市民の信仰の場所でもあります。アーケードが無くなって観音さんの姿がフェニックス通り側からも見えるようになりました。改めて津観音の魅力を感じて頂けるのではないかと思います。専修寺の国宝化の話をきっかけに息づいている施設の魅力を改めて実感しました。
─昨年は、にっぽん丸がなぎさまちに寄港したことで新たな津市への訪れ方もできたのかなと感じています。
市長 水深の関係でにっぽん丸はなぎさまちに着岸できなかったので、沖からボートで乗客が上陸されました。不便ではないかと関係者に聞くとお客さんも楽しんでくれるとおっしゃっていてなるほどと。その方々にどのようなコースで観光を楽しんで頂くのかは重要になると思います。その中でも専修寺は外せない場所になっていくと良いと思います。
─津市は素晴らしいものをたくさん持っていますがPRは上手くないので、職員2500人とはいわず、市民28万人がシティプロモーターとなるのが最終目標なのかなと思いました。
─続きましては産業施策です。地域経済を足元で支える中小企業は人手や後継者の不足による事業承継の問題など、少子高齢化が進む中で存続をかけた難しい局面に直面していることが少なくありません。どのような産業施策が必要とお考えですか。
市長 津市ビジネスサポートセンターでは、昨年4月より事業承継について本腰を入れて支援を始めましたが、その結果かなりご相談を頂くことが増えました。
そうすると二つのことが見えてきました。一つは中小企業の事業承継は会社の人間関係などが織りなす繊細な問題を抱えています。経営者の交代では、する側とされる側での思惑の違いが障害となっているところがありましたが、ビジネスサポートセンターが極めて中立な立場で関わることで、通訳のような仕事ができる。
二つ目は事業承継するとなると承継する側の視点で語られがちでしたがされる側の方が経営を引き継いだ場合にどのような変革をし、それに対するリスクなどを改めて考えておくと事業承継が将来計画を伴うものになります。だからこそ、十分なコミュニケーションと十分なビジネスプランとファイナンシャルプランをきっちり作っておくのが大切。逆に言えば、それをしっかりとやっておけば、事業承継はそれほど心配するほどのものではないのかなと、いくつかの事例を通じて感じています。
創業支援も同じようなところがあって、事業を始めるにあたって、しっかりとしたビジネスプランとファイナンシャルプランを立てる必要があります。誰もがそれをすんなりできれば良いですが実際には、皆さんが思っている以上に未成熟な段階からの支援が必要であると思っています。ビジネスサポートセンターはまだ数が少ないですが、それができています。県の産業支援センターでは、非常にレベルの高い支援を行っていますが、市としてはそのレベルよりも、ずっと未成熟な段階からの支援ができると思います。色々なご意見がありますが行政だからこそできる役割があるのだと感じています。
─ありがとうございました。
2019年1月9日 AM 4:55