社会

津市久居東鷹跡町の旧久居庁舎跡地に建設され、平成31年度に供用開始予定の「(仮称)津市久居ホール」は、「劇場、音楽堂等の活性化に関する法律」(劇場法)に基づき、実演芸術の振興と人材育成を目指す施設で、現在、専門家や地域住民らによって施設運営などに関し多角的な議論が行われている。しかし、市は管理運営の体制や内容を未だ決定しておらず、迅速な対応が求められている。

 

 

外観パース久居ホールの整備は、津市の副都市核に位置付けられている久居駅周辺地区まちづくりの一環。
津市の約10あるホールは市の中心地にある施設以外は利用率が低く、
市の文化振興において長年の課題となっている。
また平成24年に施行された劇場法は、音楽や演劇などの実演芸術の振興や人材育成を国と自治体の役割と規定。今年6月には、文化芸術振興の根拠法となる「文化芸術振興基本法」が改正され、観光やまちづくり、国際交流、福祉、教育など関連分野の施策が同法の範囲に加えられた。
帝塚山大学名誉教授で公共文化政策専門の中川幾郎氏は、公共ホール運営について「社会的少数者を含め市民皆の文化的権利を守る公平かつ平等な政策と、まちの特有性を生かしアイデンティティを高める選択的な政策の2つが必要」として、万人が芸術に触れられる事業と、地域の文化・観光振興などを目的とした事業の両方を実施することが重要とした。
このような中、劇場法に基づき整備される同ホールは、平成26年に整備基本計画が策定された。今年5月には設計業務が完了し、720席のホール、専用展示ギャラリー、多目的アートルームなどが設けられることとなった。現在、専門家や地域住民らによる建設検討委員会・管理運営検討委員会で多角的な議論が行われている。
市内で初めて劇場法に則り開館するホールであり、文化・観光振興などのまちづくりにおいて他のホールのけん引役となることも期待される。
しかし、津市は整備基本計画で、「独自性ある文化芸術の創造と発信を行う」などの基本理念を掲げたものの、運営の具体的な内容を未だに決定していない。
また施設の管理運営については現在のところ、直営はせず指定管理者を募集する方向だが、質の高い事業を実施するためには、指定管理者の選定や、管理運営の目標設定・モニタリング・評価を行う際に、文化芸術の専門知識を持つ人材が必要となる。
さらに、久居ホールは既存の津リージョンプラザお城ホールと津市白山総合文化センターしらさぎホールとの連携を目指しているが、内容は未定。
市は管理運営計画を今年度を目途に策定完了予定だが、ホール運営の基盤をつくるには、これらの課題に対応した計画だけでなく、開館前から、市民が文化芸術に関心を持つ気運を醸成し、ホールで芸術活動を行う人材を育成することが重要。 市には、劇場法に基づくホールの果たすべき役割という原点に立ち返ったうえでの、早急な取り組みが求められている。

津市の友好都市である北海道上富良野町で10月15日に行われた「かみふらの収穫祭」に『高野尾花街道 朝津味』=津市高野尾町=の職員や農業塾塾生や津市豊が丘住民らによる訪問団が参加。津市産のサトイモや県産のミカンなどの販売を行うと共に、同町や周辺地域の農家や販売店を周り、年間を通じた相互の農作物の流通促進を軸にした新たな交流への第一歩を切った。(本紙報道部長・麻生純矢)

 

訪問先の農家(右から2・3人目)と朝津味職員、濵本さん(右)

訪問先の農家(右から2・3人目)と朝津味職員、濵本さん(右)

収穫祭で飛ぶように売れるミカンとサトイモ

収穫祭で飛ぶように売れるミカンとサトイモ

向山富夫町長を表敬訪問した翌日の10月14日、訪問団15名は二手に分かれ、団長の生川介彦さんら12名は現地で農産物の直売などを営む三野隆治さんの案内で、同町やその周辺の文化施設などを巡った。
もう一方の朝津味職員と農業塾生ら3名は、朝津味が相互地域発展のために「文化、産業協定」を結んでいる「㈲フラワーランド上富良野」を訪問。朝津味では、昨年より旬を迎える7月から8月にかけて、同社のメロンの販売を行い、好評を博している。津と同町の更なる交流促進のためにも、同社で生産しているじゃがいもなど、他の農産物を朝津味で販売したいと、伊藤仁敏社長に相談した。
その後、河芸町で5年ほど住んだことがあり、現在は同町の深山峠でコテージ「ウッディライフ」を営んでいる濵本幹郎さんの協力で、同町や周辺の中富良野町や美瑛町の農家を訪問し、農産物の取引に向けた交渉を行った。農家はそれぞれ春のアスパラガス、夏のとうもろこし、秋のかぼちゃ、冬のたまねぎなどを生産しており、交渉が上手く進めば、四季を通じた農作物の仕入れが可能となる。一行は農家一軒当たりの作付け面積数十ヘクタールという大規模農業ならではのスケール感と、北海道の農産物の品質の高さを改めて実感した。
15日、訪問団はいよいよ「かみふらの収穫祭」に参加。朝津味が地域ブランド化を目指しているサトイモ30㎏と、県産のミカン100㎏に加え、生川さんが用意したサツマイモを販売。どれも気候の関係で、北海道では栽培しづらい農作物であることから、人気を博し全商品がわずか一時間足らずで完売。需要の高さを肌で実感することができた。また、会場では、
津市のサトイモと同町のジャガイモがコラボした「芋煮汁」が販売され、大好評だった。
朝津味では、訪問した農家の農作物や、三野さんの仲介で北海道のブランド米「ゆめぴりか」などを販売するビジネスプランを作成中。加えて、同町の㈱一色商店と三野さんが経営するファーム富良野で、津市や三重県産の農産物を販売する予定。
今後は双方の農産物を使ったコラボ品の開発なども行う予定で行政レベルでの交流が中心だった両地が、民間レベルの経済的な相互交流に向け一歩を踏み出した。

津市の友好都市である北海道上富良野町で15日に行われた「かみふらの収穫祭」に『高野尾花街道 朝津味』=津市高野尾町=の職員や農業塾塾生や津市豊が丘住民らによる訪問団が産業交流を目的に参加。それに先立ち13日には、同町の向山富夫町長を表敬訪問した。訪問団の様子を2週にわたり報道する。(本紙報道部長・麻生純矢)

訪問団団長の生川さん(左)より枝付きの柿を贈られ、笑顔の向山町長(中央)と服部教育長

訪問団団長の生川さん(左)より枝付きの柿を贈られ、笑顔の向山町長(中央)と服部教育長

向山町長(前列中央)らと記念撮影をする訪問団

向山町長(前列中央)らと記念撮影をする訪問団

上富良野町は北海道のちょうど中心部に位置する人口約1万1000人の町。明治30年に入植した津市納所出身の田中常次郎ら三重県出身者が富良野原野を切り拓き、町の礎を築いた。しかし、大正15年の十勝岳噴火による火山泥流に飲み込まれ、144名もの死者を出し壊滅。北海道開拓庁も復興を諦めたほどだったが、津市一身田出身で村長だった吉田貞次郎が不退転の決意で、町を蘇らせた。その縁から平成9年に友好都市提携を締結し、今年で20周年を迎えた。津市や三重県内の市町出身の先祖を持つ町民も多く、〝故郷〝に対する想いは今も強い。
今回の訪問団は、友好都市提携20周年に加え、朝津味の運営会社「フューチャー・ファーム・コミュニティ三重」が「㈲かみふらのフラワーランド」と相互の地域産業発展をめざす「文化、産業交流協定」を結んで1周年の節目を迎え、同町とのより深い交流を目的に収穫祭に参加した。
県下最大級の農産物直売所を備える朝津味が、新たな特産品化をめざしているサトイモや、三重県でとれるミカンなどの果物は北海道の気候条件では栽培が難しいために需要が見込める。収穫祭でそれを販売することは販路拡大の試金石ともいえる。加えて、同町の特産品であるメロンやじゃがいもなどの農産物は津市でも需要があり、その生産状況や市場を調査し、年間を通じた相互の農産物流通の活性化による産業交流をめざす。
訪問団は、朝津味の職員と農業塾塾生、豊が丘の住民らを加えた総勢15名で構成。団長は津市自治会連合会会長で40年以上も同町と草の根交流を続けている生川介彦さん=津市豊が丘=。生川さんは人脈を活用し、販路開拓にも協力した。
13日、旭川空港に到着した訪問団は上富良野町の職員らに出迎えられ、その足で向山富夫町長を表敬訪問。向山町長は「今年で上富良野町が生まれて120年になる。明治30年に津市や三重県の方々が足を踏み入れてくれなかったら今日の町が無かったといっても過言ではない。皆さんの収穫祭への参加は嬉しい限り」と一行を歓迎。
生川さんは、20周年を迎え、相互交流が活発化していることに触れ「上富良野の皆さんの熱い思いをやっと津市が受け止めるようになった。上富良野と津市の縁が長く続いていくように私たちも頑張るので、受け止めてほしい」と語った。
その後、生川さんは鑑賞用のみかんの木や、津市産の海産物などを贈った。特に枝付きのみかんや柿は同町で珍しいこともあり喜ばれ、農産物の流通促進への可能性を感じさせる一幕もあった

(次週へ続く)

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