社会

農業による地域活性化を掲げ、今年7月にオープンする『花と水と緑の里(仮称)』=津市高野尾町=を運営するフューチャー・ファーム・コミュニティ三重が主体の『地域特産物づくり委員会』は、高野尾地区でかつて栽培が盛んだったサトイモの特産品化をめざす。同施設での販売・PRに加え、病院食レシピなどの開発による販路拡大で、農家の収益増もねらう。また、同地区に留まらない新たな特産品として津市全域や周辺市の農家や一般から栽培希望者を募り、品評会も実施する。

 

サトイモの種イモ

サトイモの種イモ

黒ボク土壌が広がっている高野尾地域にはかつて、サトイモやサツマイモの畑が一面に存在していた。それが約50年前に㈱赤塚植物園がサツキの大量生産に成功して以降、地域を挙げて植木類の栽培に力を入れ、一大産地にまで成長した。しかし、現在では植木類の売上が低迷。そこで苦境にあえぐ地域を救うべく、赤塚植物園と三重大学が中心となって設立した『㈱フューチャー・ファーム・コミュニティ三重』が、高野尾地区活性化プロジェクトに着手している。農業による地域活性化というテーマを支える中核施設として今年7月に、農産物の直売所やフードコートなどを備えた施設「花と緑と水の里(仮称)」をオープンさせる。
それに伴い、施設で販売する農産物の出品者を募集しており、その中で同社が中心の「地域特産物づくり委員会」を設立。新たな特産品の発掘や開発を進めている。その取組みの一つとして同地域で、かつて盛んに栽培されていたサトイモに着目。サトイモの栽培を高野尾地区だけに留まらず津市全域や周辺市の農家にも広く呼びかけ、農業振興の足掛かりとしていく。
具体的には、集客力の高い同施設で特産品として販売・PRを行ったりスイーツなどの商品開発を行うのはもちろん、産学連携ならではの柔軟な取組みで収益増をめざす。サトイモは、イモ類の中でも低カロリーで食物繊維が豊富。更にぬめり成分のムチンは消化促進、マンナンは便秘予防、ガラクタンは免疫力向上などがそれぞれ期待できる。そういった栄養学的な要素の裏付けや、味の追求を行いながら新しい病院食やダイエット健康食のレシピを開発。独自の販路を開拓し、需要拡大をねらう。
また、農作物を育てる上で重要となる土づくりにおいても、赤塚植物園や三重大学の技術や研究成果で生産者を支援。収量や品質面からも差別化も行う。
生産・加工・販売・流通を一手に行うことで収益性を向上。農業をしっかりとした産業として成立させることで、農家の高齢化と後継者不足という問題の解消にも繋げる。成功すれば、一つの作物を軸に産学連携で地域活性化と農業振興を実現する先進例にもなる。
それらの計画に先駆け、広く関心を持ってもらおうとサトイモを栽培する農家と個人を募り品評会を開催。同員会が用意した種イモを育て10月頃に行うイベントで収量・味・形などの項目を競い合う。希望者には、植物の生育を助ける㈱赤塚の土壌活性改質培土FFCエースを格安で提供。参加者対象の勉強会も開き、栽培を支援する。
品評会の詳細は…農家の部(一口1畝=約100㎡=)が①種イモ100球付が1000円、②種イモ100球+FFCエース20㎏付が3000円。一般・個人の部は①種イモ10球付で500円、②種イモ10球+FFCエース1㎏付で1000円。参加希望者は希望のコース・〒・住所・氏名(フリガナ)・☎を明記し、FAX059・230・0576へ送信。または電話でも申込み可。申し込め切りは3月30日必着。
電話申込み・問い合わせはフューチャー・ファーム・コミュニティ三重(大平さん)☎059・230・0282へ。

『地域ケア㈱』=津市殿村、浜地重成社長=は、世界的に普及が進むシェアリング・エコノミーを取り入れた買い物代行システム『シェアマッチ』を開発。高齢者などからの依頼を受けスマートフォンの専用アプリを通じて場所や時間など条件に合う登録者を選定。依頼者から報酬を得るというもの。育児中など時間に制約のある人でも、空いた時間を賃金に変えられ、介護や家事などの技能を持つ登録者を増やす事で高齢化社会が抱える問題を多面的に解決する手段としても活用が期待される。

 

GPSによる「シェアマッチ」の管理画面

GPSによる「シェアマッチ」の管理画面

ウェブサイト上などで双方向の交流ができるソーシャルメディアを活用し、見知らぬ人同士が家や車、個人の持つ技能まで有形、無形を問わず様々な「遊休資産」の交換・共有を行う「シェアリング・エコノミー」。この新しい概念は、欧米を中心に世界中に広がり続けており、タクシーの配車サービスのウーバーなどが有名。
それをいち早く取り入れ地域ケア㈱が開発したのが買い物代行システムの『シェアマッチ』。同社は高齢者用の施設運営のほか、家事代行サービスも展開している。システムの開発には経済産業省の『ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金』を活用。自由に買い物に行けないなど様々な悩みを抱える高齢者が住み慣れた地域で快適に暮らせるよう、より多くの地域で暮らす人々の力を活用しながら、企業が行うよりも低額で支援を行う有償ボランティアを募れる。
システムの概要を簡単に説明すると…最初に依頼者が電話などで同社に買い物の条件(店名・時間・品目や登録者の年齢や性別など)を提示する。その際に、このシステムに登録している代行者がスマートフォンの専用アプリを起動させていると、GPS機能によって代行者の現在位置などが本部のパソコンの管理画面に表示される。その中から本部が条件に合う代行者を選定するという流れ。
このシステムの最大の利点は、なんといっても無理なく、サービスを持続できること。例えば、条件に定められたスーパーを普段から利用する人が自分の買い物のついでに依頼品を買って届けるというように普段の生活の延長線上で気軽に賃金が得られる。元気な高齢者だけでなく、育児などの事情で時間的な制約があり働けない人や学生が、自分の空いた時間を収入へ変えながら、高齢社会が抱える問題を解決する一石二鳥の妙手にも成り得る。
また、買い物代行だけでなく、介護や家事などの技能を持つ人たちが登録することで高齢者の様々な悩みを解消することができるネットワークをつくりあげられる。その中で代行者たちが高齢者から感謝される内に、介護の世界に興味を持つきっかけとなることも期待している。同社社長の浜地重成さんは「システムを活用して、地域をみんなで支える社会の実現を達成したい」と語る。
現在、試験的に旧津市内限定でサービスを展開するために準備中。利用者や登録者を募集中。また、システムを導入したいという各種団体なども募集している。問い合わせは地域ケア☎津213・3717へ。

平成27年中に三重県内で発生した自転車が起こした人身事故で過失の割合が高い第一当事者のうち、15歳以下が28・4%と最多。16歳~19歳と合わせると未成年者が48・7%を占めている。通学などで自転車に乗る機会の多いこの層だが、近年では小学生が乗る自転車と歩行者の衝突事故で高額の損害賠償が求められる事例も発生。学校や家庭での交通安全教育を通じて〝自転車は車両〟で加害者にも成り得るということも改めて理解してもらい、新たな事故の発生を防ぐことが重要だ。

 

昨年、県内全体の自動車を中心に全ての人身事故は7169件発生した。そのうち自転車が起こした人身事故は197件。これら事故の発生における過失の割合が高い第一当事者のうち28・4%に当たる56人が15歳以下。次いで、70歳以上で20・8%で41人。16~19歳が20・3%で40人となっている。つまり、通学や普段の足で自転車に乗る機会の多い中高生を中心とした未成年者だけで全体の半数近くを占めているという実情が分かる。
交通弱者であるこの層がいかに交通事故の被害にあわないようにするかというのは交通安全教育における最も大きな課題である。しかし、ここ近年で自転車を取り巻く環境が変わりつつあり、更に大きな観点で捉える必要が出てきている。
環境の変化をもたらした大きなきっかけは、平成20年に神戸市で発生した当時小学5年生の少年が運転する自転車と女性が衝突した事故。女性は意識不明のまま、寝たきりの生活を長年にわたって余儀なくされていることもあり、神戸地裁が少年側に9500万円の損害賠償を求める判決が出されている。これ以降も自転車の加害事故で、高額賠償を課す判例が相次いでいる。言い換えれば、はっきりと自転車は、〝車両〟であり、運転している者の年齢を問わず、加害事故を起こした場合には、社会的責任が問われる司法判断が出ているということだ。
そういった流れの中、昨年、道路交通法が改正され安全運転規定14項目に違反し、3年以内に警察に2回以上検挙された14歳以上の自転車搭乗者に安全講習を義務付けられるようになった。東京や大阪では実際に講習を受ける者も出てきている。
未成年者の自転事故を防ぐには、社会・学校・家庭などが一丸となった交通安全教育が重要だ。前述の県内の人身事故の第1当事者197人の内、事故の原因は安全不確認が83件(42・1%)と最多。これらは、正しく交通ルールを学び気を付けていれば、事故を起こさなくても済んだ可能性があるともいえるはずだ。
三重県警でも改正以降、危険運転をする自転車の取締りにも力を入れており、昨年よりも約600件多い3275件の指導警告を実施。学生に対しても登下校の時間に合わせて、県内各地の街頭で交通指導を行うなど事故の減少に繋げようと努力を続けている。
一方の教育では、津市教育委員会も春の交通安全週間に合わせ、小中学校や幼保育園で交通安全教室を実施。加えて模範となる安全運転パイロット校の認定もしながら、交通安全教育に取り組んでいる。
では、残る家庭はというと『自転車の安全利用促進委員会』=東京都=が自転車通学をする子供を持つ保護者に「子供の自転車利用について気になる点」を調査したところ、「遅い時間の帰宅」や「通学路の危険性」など通学環境への関連項目が最も多く、「左側通行」「危険運転」などルールやマナーに関する項目に対する関心が余り高くないことが分かっている。
そもそも親自身が普段自転車を運転する機会が少なく、街中で大人が運転する自転車を見ていても、右側通行・無灯火・傘差し運転…と危険行為を平然と行う者が後を絶たない。本来、子供たちの規範となるべきはずの大人たちが交通ルールを実践できていない実情が浮き彫りになっている。
4月から新たに自転車通学をする子供たちが交通事故の被害者や加害者になっては悲劇である。まずは大人たちが自転車の交通ルールを把握し、自ら実践をしながら伝えていくことが事故を減らす第一歩になることは間違いない。

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