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社会
24日~31日、アスト津を主会場に「稲葉特別支援学校」=津市稲葉町=と「女子美術大学」=東京都杉並区=の共同展覧会「アール・ブリュット(生の芸術)のエスプリと街なかワークショップ」がある。主催=県教委・同校。共催=三重大・津駅前都市開発㈱・津市等。同校生徒や同大所蔵の作品展示などを通じ、既成概念に捉われない芸術スタイルで障害者ケアにも有効なアール・ブリュットの魅力を広める。
フランス語で、〝生の芸術〟を意味するアール・ブリュットはフランスの画家・ジャン・デュビュッフェ=1901~85=が考案した芸術スタイル。英語でアウトサイダー・アートとも呼ばれる正規の美術教育を受けていない人々が伝統や一般的な技法に捉われない自由な創作のもとに生み出す絵画や造形物のことを指す。鮮やかな色彩や大胆な構図など、作り手の感性をダイレクトに投影した作品が多いことも特徴といえる。障害者のケアにも非常に有効で国内では女子美術大学が、障害者による作品の研究・制作支援や、展覧会での作品展示を通じ、アール・ブリュットの普及と人材育成を両立する専門教育を実践するなど、先導者的な役割を果たしている。
今回の展覧会が開催されるきっかけとなったのは昨年に桑名市博物館で行われていた同大の所蔵作品の展覧会。そこで、作品の美しさなど、アール・ブリュットの素晴らしさに感動した稲葉特別支援学校の浅生篤校長が後日、東京の同大を訪ね、協力を打診したところ快諾を得た。以後、同校では小中高の各部で授業に取り入れており、同大からも制作支援だけでなく出来上がった作品の批評を受けている。子供たちものびのびと作品づくりに取り組んでおり、みずみずしい感性を真っ直ぐに表現した作品の中にはい評価を受けた作品もある。浅生校長は「子供たちがこんなに素晴らしい能力を持っていたことを改めて自覚した」と笑う。
そして、両校がアールブリュットの魅力をより沢山の人たちに知ってもらうと共に障害者への理解を広めてもらおうと開催するのが「アールブリュット(生の芸術)のエスプリと街なかワークショップの試み」。
共催には、障害者の社会参画をめざし11月にシンポジウムも開催予定の三重大の地域戦略センターを始め、アスト津を運営する津駅前都市開発㈱や「平成25年度津市にぎわいづくり事業」として支援する津市も名を連ねている。
アスト津5階アストプラザのギャラリー1と2で行う作品展には稲葉特別支援学校の小中高各部の子供たちによる絵画や陶芸など40点と女子美術大学の収蔵作品50点を展示。そのほか、ダウン症の人たちによる優れた芸術作品を生み出しているアトリエ・エレマン・プレザンや、松阪市のNPО法人・希望の園、七滝進治コレクションからも特別出展作品がある。
今回の展覧会を通じて、県内の特別支援学校で現在同校のみが取り組んでいるアール・ブリュットの更なる普及と世界的に注目されれるこの芸術分野が障害者の社会参画のきっかけとなることも期待されている
イベントの詳細は以下… ▼女子美術大学&稲葉特別支援学校作品展 24日~31日9時~17時、アスト津5階アストプラザのギャラリー1&2にて。ギャラリートークは24日16時半~、25日14時~、26日11時~、31日14時~。
▼キックオフイベント 24日13時~16時、津市センターパレスホールにて。女子美術大学の小林信恵教授らによるトークセッション「表現の自在性とアール・ブリュットのこれから」。
▼ワークショップ 25日10時半~、11時半~、13時~、14時~、15時~。アスト津1階にぎわい交流サロンにて。版画作品でグリーティングカード作成。各自定員約10名。更に13時より作ったグリーティングカードでカレンダー作成し、ギャラリー1に展示する。
▼物産・学校販売実習 23日・24日10時~16時。にぎわい交流サロンにて。高校や福祉施設で作ったお菓子などを販売。
全て入場無料。問い合わせは稲葉特別支援学校℡津252・1221へ。
2013年8月8日 AM 5:00
アユ釣りシーズン真っ只中だが、津市内でも雲出川を中心にカワウによる川魚の食害が深刻化しており、内水面漁業関係者たちの頭を悩ませている。イノシシ・サル・シカなどの獣害対策が進んでいるのに比べると、行政からの支援もほとんどなく、猟友会による追い払いなど地道な対策を行っているものの、苦しい状況が続いている。
カワウは一時期、絶滅寸前にまで追い込まれていたが環境の改善や餌となるアユなどの魚の放流などにより、ここ20年余りで生息数が激増。更に本来の生息域は中下流域だが、上流にまで生息範囲を広げている。
成鳥は体重約2~3㎏に対して1日当り約500gの魚を食べると言われており、内水面漁業に深刻な被害を与えている。県内では櫛田川・宮川の他、津市内を流れる雲出川でも大きな被害が発生している。
最も有効な対策は駆除などによる個体数調整ということもあり、カワウは平成19年より狩猟鳥獣となったが、肉や羽毛に価値がなく好んで撃つハンターはいない。また、カワウはシカ・イノシシ・サルなどと共に国の鳥獣害対策特措法の対象とはなっているものの、直接的な被害を受けているのが内水面漁業関係者に限られるため、三重県では本腰を入れた支援を行っていないのが現状だ。
県内のアユなどの水産資源への昨年の被害総額を見ると、1万4700㎏で4410万円。金額だけで見ると、他の獣害より被害は小さいが釣り人が川で釣りをするために必要な遊魚券の販売で収益を得ている内水面漁業関係者にとっては釣果に影響が出れば売上げが下がり、死活問題となる。県内24の内水面漁協が組織する「三重県内水面漁連」では猟友会に依頼し、県内全域で年間約800羽ペースで駆除をしてきたが、被害が減る気配がない。
津市の雲出川漁協でも昨年に、2625㎏で787万円5000円の被害が発生。今年もアユ釣り解禁前に同漁協の10支部で合計2140㎏のアユを放流したが相当の被害が出ている。更に今年は水不足で上手く遡上できずにいる天然アユを狙い打ちされるなど、例年にも増して深刻だ。同業漁協ではシーズン前に川の水面にテグスを張ったり、シーズン中も猟友会に見回りや追い払いを依頼するなど、出来る限りの対策を講じているが、苦境が続く。
津市内には垂水の二重池や雲出川支流の河口付近、君ケ野ダム付近などにカワウのコロニーがあるが、下手な追い払いや駆除をすると生息域が広がる可能性もある。先進県では木の上にある巣の卵を石膏製の擬卵にすり替えたり、卵を冷却して孵化しなくするなどの対策を行い成果を出しているが、これらの対策を行うには莫大な費用と労力が必要。行政の支援がほとんどない県内では、現状より踏み込んだ対策ができないのが実情だ。
内水面漁業は過疎地域の貴重な観光資源になっているケースも多く単純に被害額だけで図れない要素を含んでいるのも事実。また、県内でも海で養殖されている魚への被害報告もあるだけに、今後は行政もより広い視点を持って、カワウ対策に取り組んでいく必要が出てくるだろう。
2013年8月1日 AM 5:00
三重県内にある知的障害者の入所施設の待機者数は4月1日現在で480人と年々、増加を続けている。国は平成18年の障害者自立支援法施行以来、〝施設から地域へ〟を掲げ、入所施設の新設を認めない方針を打ち出しており、県もそれに従っている。しかし、県が増設を進めるグループホームやケアホームでは対応できない重度の障害を抱える待機者も多く、保護者の高齢化なども含め、問題は予断を許さない状況だ。
障害者自立支援法施行を境に国は、〝施設から地域へ〟を掲げ、24時間体勢でサポートを受けながら利用者が生活する入所施設の新設は基本的に行わず、最低限の補助を受けながら、ある程度、自立した暮らしを地域の中で行うグループホームやケアホーム(以下、GH・CH)の新設を進めている。三重県でも国に従う形で「これ以上、入所施設の新設や定員増加はしない方針。GHやCHで対応できる人が入所しているケースもあるため適正化を進めている」としている。
しかし、県内に全部で24ある知的障害者施設の待機人数は、県障害者支援センターのまとめによると平成24年4月1日現在で404人だったものが、今年4月1日には480人に。施策とは反比例する形で増え続けている。その理由は簡単で入所施設とケアホーム・グループホームが必ずしも同じ性質を持つ施設とはいえないからだ。
基本的にGH・CHは、ある程度の生活能力を持った軽度障害者たちが授産施設などで日中活動を行いながら、地域の中で共同生活を送るための施設という想定がされている。
そのため、24時間体勢で職員たちがサポートを行う入所施設と比べると、職員体勢が薄く、特に夜間や土日などは行き届いた支援が難しいというケースも多い。大部分のGH・CHでは重度の障害を抱える人を受け入れることが難しいというのが実情だ。
更に保護者の高齢化もこの問題に大きく関わっている。重度の知的障害を抱える人の場合、物や人などへのこだわりや自傷、徘徊などを伴うことがあり、体力が年々、低下していく中、家庭内だけで我が子を支えることが難しくなった保護者が入所を希望するケースも多い。これは非常に切実な問題といえよう。
ある施設関係者は「〝施設から地域へ〟という考え方自体は素晴らしいし、GHもCHもそれを進める上で非常に重要な施設。しかし、現実的には入所施設は必要で、待機人数が増えている以上、新設や定員の増加も考えていくべきだ」と語る。更にその上で「入所施設はGHやCHと比べて悪いというイメージを持たれがちだが、利用者一人ひとりに密着しながら日々の支援を続け、きっちりと成果を挙げていることも知って欲しい」と続ける。
津地域でも待機者は年々増え続けているが、施設が極端に少ない伊勢志摩圏域は更に深刻。県内480名のうち114名の待機者がいることからも、なんらかの手立てを考えていく必要があるだろう。
高齢者問題にまで視点を広げると、介護疲れによる無理心中にまで発展することもそう珍しいことではない。この問題も放置を続ければ、そのような最悪のケースに発展する可能性も否めないはずだ。県外では自立支援法成立後も入所施設を新設したというケースもあるだけに、県内でも現状の施策の〝歪み〟をもう一度冷静に見直し、現実に即した形で対応していくことが求められよう。
2013年7月25日 AM 5:00