特別寄稿

1・売上高=客数×客単価=(既存のお客さま+新しいお客さま)×(買上点数×一品単価)

この方程式は製造業、卸売業、飲食業、小売業等すべての業種に共通します。
「今月はよく売れた。みんなよく頑張った!」というのが一番危ない経営です。
なぜなら、「売れる」という「受け身」の考え方で経営をしていては、すべてがお客さま任せ、お天気任せ、成り行き任せになります。
「売れる」時のために沢山の在庫を持ち、人員も補強し、販売促進に大変な経費を使い、ひたすらお客さまを待っていることほど不確かなことはありません。
もし、売れなかった時には経費と在庫だけが先行し、多大な損失が生じます。
「今月はよく売った。商品も改良したし、既存のお客さまに出したDMの反応も良かった。そしてその口コミにより新しいお客さまも僅かだけれど獲得できた。お客さま一人当たりの買上点数も増えて、計画した売上高を実現できた」
売上高は会社経営のスタートラインです。そして、どれだけ「売る」ための根拠を作ることができるか、不確定な要素をなくすことができるかが経営です。

2・売上高-利益=費用(売上原価+経費)

損益計算書では「売上高-費用=利益」となっていますが、残ったものが利益という意識では会社を強くすることも進化することも、社会に役立つこともできません。
会社は必要とする利益を計画的に確保し、存続し成長しなければなりません。
付加価値を生まないすべてのモノや仕事を「ムダ」と言いますが、それらをすべて削ぎ落し、計画した利益を生みだします。利益を上げることができれば、設備や研究開発や人材への投資が可能となり、さらに売上高を伸ばすことができます。
費用とは多ければ多いほどムダを生み、少なければ少ないほど知恵が求められます。
そして、何よりも費用のムダを取り除く努力は成り行き任せではなく自律的です。
今ある損益計算書を発想を変えて作り直し、まず、売上高から目標とする利益を差し引き、残された費用もさらに倹約し、スリムな経営体質となって「明日の準備」を進めたいものです。そして、その利益は競争力を向上するために、お客さまには商品の品質の向上で、従業員には福利厚生の充実と教育によってお返ししたいものです。

3・成果=知恵+カネ(経営資源)

「今はまだ小さな会社」にはカネ(経営資源)が不足しています。
しかし、これからの人口減少・超高齢社会による売上高減少の中を生き抜いてゆくには、持てる資源を何倍にも活用し、経営資源の不足を知恵で補わなければなりません。
知恵は現場での気づきや創意工夫から生みだされます。無意識に蓄積した「潜在能力」も知恵に換える必要があります。今、自分の会社が置かれた状況を正しく把握し、「不安感」ではなく「危機意識」をもって、創意工夫を積み重ねてゆきたいものです。
お客さまからの信頼のために「変わらないために、変わり続ける」知恵と努力は決して裏切ることはありません。

4・経営はすべてが「自己責任」、依存心は進化の敵
東日本大震災といった天変地異や急激な為替変動はお客さまの生活と購買心理に大きな影響を及ぼし、売上高と利益の減少に繋がります。
しかし、会社経営においてはそれすらも従業員の給与を払えない、借入金を返済できない言い訳にはなりません。どのような事態が起ころうとも、お客さまからの信頼と従業員の生活を守りぬく責任があります。
そのために、いつも最悪の事態を想定して準備をしておく。
その方法は過剰在庫や遊休設備・資産など会社内にある付加価値を生まないすべてのムダを徹底的になくし、身軽であり、変化に俊敏に対応できる事、お客さまの生活の中で「困っていること」と「期待していること」を見抜き、「特異と得意」を伸ばし素早く先手を打てることです。
進化の本質は変化への対応、チャンスも危機(ピンチ)も変化の中にあります。
「準備をしておこう、チャンスはいつか巡ってくる(エイブラハム・リンカーン)」

大 西   肇(㈱ブレーメン再健本舗代表取締役)

1・大企業の時間、「今はまだ小さな会社」の時間
「ゾウの時間 ネズミの時間(本川達雄著)」という書籍があります。
ネズミとゾウの生涯の心拍回数はなぜか同じ20億回だそうです。
そして、心拍時間はハツカネズミ0・1秒、ネコは0・3秒、ヒトは1秒、ゾウは3秒、身体の大きな動物ほど心拍時間も呼吸も筋肉の動きもゆっくりしています。
時間という尺度は人間が地球の自転周期から考え出したものですから、生き物としての1日の長さは同じです。とすれば、ネズミはヒトやゾウより生きる時間が短いのではなく、生きるスピードが速いのではないでしょうか?
ネズミはヒトと比べると同じ1日を10日分生きていることになります。
どうりで追い回したって捕まえることができないはずです。
この1日が10日分というネズミのスピードが私たち「今はまだ小さな会社」の最大の武器です。
2・スピードを失う3つの原因
「今はまだ小さな会社」から「大企業・大組織」の変化のスピードを見た時、動かないモアイ像のように見えても不思議ではありません。
大きな会社や行政は多くの人間という細胞に支えられて、「慣習」や「しきたり」や時には「忖度(そんたく)」に縛られ、その統率に多くの時間と労力を必要とします。
大きな会社や行政がスピード(時間)を失う3つの原因があります。
①過ぎ去った過去の常識に囚われる
②表面的な間違った情報に囚われる
③モノ事の本質ではなく、枝葉末節に囚われる
「今はまだ小さな会社」はこの「大企業病」という過ちを犯してはなりません。
常にモノ事の本質を見抜き、時代と共に変わりゆく常識を疑い・否定し、お客さまの要望と商品が出会う現場のナマの情報を信じて、さらに決断のスピードを高めなければ、シャープや東芝やダイエーのように、人口減少と老齢化、そして日々進化する情報・物流革命によって暴力的に変化する社会から置き去りにされてしまいます。

3・織田信長の情報戦略に学ぼう
わずか3000人の兵力の織田信長が、4万人ともいわれた今川義元の軍勢を破った「桶狭間(田楽狭間)の戦い」を分析すると、確かな情報とスピード(時間)の大切さを学ぶことができます。
合戦の前日、合戦現場の地の利に詳しい土豪・簗田正綱は「今川軍の勢力は2万人」「今川軍の本陣は地元民が運んだ食事内容から、桶狭間ではなく田楽狭間である」「田楽狭間の兵力は2~300人」「明日の午後、合戦場を嵐が襲う」という活きた現場情報を伝えました。
合戦の結果は、読者の皆さまがよくご存知の通り、信長軍は今川義元を打ち取り、名門今川氏はこれをきっかけに衰退、信長は一躍天下取りに名乗りを上げることになりました。そして、この合戦の最大の功労者は今川義元の首を取った者ではなく、土豪・簗田正綱でした。彼が信長に伝えた情報は誰かに命じて調べさせた内容ではなく、日頃から住民と深い信頼関係を築き、常に自分の目で現場を見続けた者にしか分からない貴重な情報でした。この生きた情報が織田信長の素早く確かな決断と行動を導き、7倍もの兵力差にも関わらず歴史的な勝利に導きました。
お客さまのご要望と商品が出会う現場は事業の存続と進化の基本です。
机の上や会議の中には付加価値や生の情報はなく、コストしかありません。
お客さまと従業員からの生きた情報は、「現場主義を貫く経営」だけに集まります。
大 西   肇(㈱ブレーメン再健本舗代表取締役)

2020年までに4000万人のインバンウンドが欲しい。それが日本の数値目標である。一方、首都圏偏重の是正、地方都市への分散も課題だ。その為には地方都市の情報発信力の強化も求められている。だが、実際問題として地方都市には東京なみの情報量はなく、方法論も確立してはいない。
いったいどうしたら人気を得る事ができるのか?
言うまでもなく、人気観光地とは知名度のある所である。この点、最も人気なのは首都圏であり、日本一の観光地が東京である事に今や異論を挟む余地はない。
次が、世界的な名所・旧跡である。その情報は、今にちでは世界遺産の概念によって知られているが、それ以前は、書物・文献、旅行社ガイダンス・映画が広報に貢献し、20世紀後半にはテレビによって爆発的に知れ渡るようになった。つまり、それはメディアの商業投資のおかげであり、そのモチベーションは公共放送を除くと専らスポンサーのお金儲けにあった。
多くの人気観光地は、そのようなプロセスを踏んで有名になってきたと言えるのだ。
この点において、ネットを通じた動画サイト等の発達は、全く新しい情報伝達を可能にしたかに見える。だが、これはまだ『ドラマチックな追体験』を求めるものには至ってはいない。選択肢を無限に広げただけで、不特定多数に対する所謂『ブーム』が起爆していない。映画やTV番組ならば、感情移入できるキャラクターの背景としてロケ地が視聴者に記憶されるが、『ドラマトゥルギー(作劇法)』が未熟なネット動画にはそれがないからである。
人気観光地と呼ぶには少しニュアンスが異なるが、有名所には宗教聖地や貿易拠点として知られた場所もある。メッカや伊勢、或いは港湾都市がいい例だ。しかし、それらへの帰属意識は限られており、その知名度は強い目的意識によって維持されているに過ぎない。私は過去に何度か『観光客』の定義を試みてみたが、こういった場所を観光地と呼ぶのには違和感を持つ。日本語における現代の『カンコウ』にはレジャー的意味合いが強く、お参りまで観光(サイトシーイング)扱いするのは非礼に感じるからである。
ちなみに国連世界観光機関では、観光を『サイトシーイング』ではなく『ツーリズム』としている。これは広義的解釈が可能であり、国際的な人気観光地に到着したのは、観光客のみならず幅広い訪問者も含むということになる。『ビジネス』でもOKだ。とはいえ、統計上の分類では24時間以上の滞在を『ツーリスト(滞在者≒観光客)』とし、それ未満は『ビジター(日帰り≒訪問者)』としている。
閑話休題。国際的な人気観光地には、他所にはない要素がある。それは、映画やテレビなどで不特定多数の人々にインプットされた地名であり、感情移入可能な登場人物が非日常的状況によって形成されたイメージをお客さんが再現できるかどうかにある。『ドラマトゥルギー』のないニュース番組にはそれがない。例えば、2016年にG7サミットが三重県志摩市で開催されたが、その開催地は世界的に有名になったのか?
その答えは、日本人がエルマウ、タオルミナ、ラ・マルベイを知っているのと同程度でしかない。つまり、殆ど誰も知らないのだ。ブランディングに役立ったとは言い切れないのである。ブランディングといえば、日本も1992年に条約に批准して発効した、先に触れた『世界遺産』がある。だが、その知名度の明暗も『ドラマトゥルギー』が有るか無いかによって顕著である。
2016年に国連世界観光機関が開催した『遺産観光に関する国際会議』では、保存と活用、観光資源の磨き上げ、持続可能な活用というテーマで、UNESCOの取り組みについても少し触れた。だが、保存には維持費が不可欠なのに、プロモーションの為のセオリーはなかった。
例えば、長崎の『端島(軍艦島)』の整備活用計画では、護岸、採炭生産施設の一部、幹部社宅三号棟だけでも、約108億円が必要だとされている。2019年に開催される『UNWTO/UNESCO 観光と文化をテーマにした国際会議』では、この要素も加えてほしいものである。
顕著な『ドラマトゥルギー』の影響は、しばしば名作と呼ばれる映画のシーンとオーバーラップする。特に、007映画のような世界的景勝地を求める映画のロケ地は観光地としても成功しており、今ではそれを逆手にと、イギリス国内でさえ主要舞台となっている。周知の如く、このシリーズに世界遺産の遺跡が沢山カメラに収められ、実のところ『軍艦島』も007映画のロケ地にはなった。しかしながら、カメラこそ入りはしたものの、ストーリー展開上それが日本の長崎である事についての言及は一切無く、マカオ沿岸の『デッド・シティ』として扱われていた。
長崎市の観光統計によると、映画公開年2013年の訪問者数は15万1567人で、2014年が18万3996人、2015年が26万6620人、2016年が27万2619人だった。2015年の世界遺産登録を以ってしても、前年よりも8万2624人増えただけ。インバンウンドも含めて、年間平均21万8700人しか来ていないのだ。これでは世界中から訪問者が追体験を求めて殺到しているとは言い難い。年間約420万人で閉店した『サンバレー』の、おおよそ二十分の一である。
(O・H・M・S・S「大宇陀・東紀州・松阪圏サイトシーイング・サポート」代表)

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