特別寄稿

2019年のラグビーワールドカップ、2020年の五輪とパラリンピック、そして、2021年のワールド・マスターズ・ゲームズ関西と、今や日本は世界の旅行社から熱い視線が注がれている(らしい)。
ブレグジット(2016年に起こったイギリスのEU《欧州連合》離脱問題のこと)が懸念されるものの、英国もそのうちの一つである。この国の英国旅行業協会ABTAは、従来EUエリアで開催されてきたものを覆し、来年2019年のトラベル・コンベンションは東京で開催する事に決めた。期間は10月7日から9日で、場所はグランドプリンスホテル新高輪。観光経済新聞によると、ABTA加盟の英国の旅行社幹部など、500人の参加が見込まれている。
とはいえこれは、ABTAのウェブサイトによると、日本政府観光局JNTOが他国と競争入札した結果のようだ。メガイベントもそうなのだが、投下資本を上回る成果を期待したいものである。その為には、2012年のロンドン五輪における英国の、隠れた知恵も拝借すべきであろう。
2012年の英国へのインバウンドは、『クラウディングアウト(貨幣供給量不変のもとでの国債の市中消化による財政支出の増加が利子率の上昇を通じて民間の資金需要を抑制し、民間投資を減少させる現象のこと)』によって前年を割ったが、翌年からは急上昇、国連世界観光機関発行のツーリズムハイライト2014によると、2011年は2930万6千人、2012年は2928万2千人、そして、2013年には3106万4千人となった。その秘訣は何だろうか?
実のところ、これは英国政府観光庁による、スクリーン・ツーリズム作戦の結果である。五輪開会式でのジェームズ・ボンドとエリザベス女王(スタンドイン)の、メインスタジアムへのパラシュート降下に始まり、同年中に、ロンドンとスコットランドを舞台とした007『スカイフォール』を世界で公開、同時に、英国政府観光庁は世界に向けて4種類のボンドツアーを販売し、しかもそれは続編『スペクター』の公開を経て今もなお継続中である。
ツーリズムハイライト2018によると、この映画公開後の英国へのインバウンドは3581万4千人で、オリンピック開催年に比べて20%近くも増加した。著名な映画によるプロモーション効果は驚くほど長いのである。
ちなみに、『スカイフォール』の世界配給収入は11億856万1013米ドル(当時のレートで1081億8446万9259円)、『スペクター』は8億8061万4260米ドル(同958億203万6224円)となっている。英国では映画輸出も『サービス貿易』の柱の一つであり、所轄はデジタル・文化・メディア&スポーツ省DCMSとなっている。
007最新作のクランクインは来年初頭、監督は日系米国人のキャリー・ジョージ・フクナガ。公開予定は配給会社と監督の交代で2020年となり、海外での配給はユニバーサル・ピクチャーズからとなる。ストーリーは秘密だが、前作終盤の傾向からみると、映画の冒頭にボンドの結婚と花嫁の死が起きそうだ。原作では、ボンドは精神的リハビリも兼ね、外交使節として日本に送られるが、偶然にも仇と対峙する事になる。このプロットどおりならば、日英間の観光交流が促進されること受け合いだ。もちろん、ロケ地は原作にある三重県が適している。三重はG7サミットを開催して十分な道路整備を行ったが、外国人観光客が比較的少ないために野次馬が少なく、短期間での映画撮影が可能だ。最近だと、第31回東京国際映画祭にエントリーされ、来年2月に全国公開される『半世界』(阪本順治監督)が、約一カ月間撮影されている。
ABTA関係者ならば、来年から2020年にかけて日英両国政府が実施する『日英文化季間』も踏まえ、興味を抱くに違いない。でなければ、本気度が疑われる次第である。(O・H・M・S・S「大宇陀・東紀州・松阪圏サイトシーイング・サポート」代表)

『遷都1300年祭』の前年から始めた古都の定点観測も96回目となった。今回は観光協会の専務理事ご同行である。
例年この頃は、春と並んで最も観光客が多いシーズンだが、今年も近鉄奈良駅周辺では、ハザードランプを点滅させたツアーバスが散見し、奈良公園も多くの外国人観光客で賑わっている。餌がたくさん貰えるので、鹿たちも満足そうだ。角切り行事も終えたようである。
傾向としては、アジア系よりも欧米系のツアー客が目立ち、日本人団体客は学生さんも含め、全くと言ってもいいほど見当たらない。興福寺の境内も外国人の方が遥かに多いようである。この世界遺産興福寺の『中金堂』は、江戸時代に焼失以来301年を経た今年、本格的に再建されて、いよいよ明日から一般拝観が始まる。おそらく日本人訪問者数も急増するに違いない。
思い返せば、2011年の東日本大震災と原発爆発では、47都道府県から等しく外国人訪問者の姿が消えた。日本人観光客も自粛ムードや史上最大の海外旅行ブームによって大きく落ち込み、奈良も例外ではなかった。誰一人、今にちの賑わいは想像し得なかったのだ。隔世の感ひとしおである。
三条通りでは、色とりどりのヒジャブを被ったムスリムの御婦人方が多く見られ、茶巾うどんの店も外国人観光客による長蛇の列、また、猿沢池のほとりでは、春から建設中だったホテルも足場を解かれ、総板張りの外壁を見せている。猿沢インのマネージャーによると、関西の外部資本によるものだそうだ。私達は猿沢イン3階にあるビジターズ・ビューローを訪ね、大和路カレンダー2019の宣材を預かり、国連世界観光機関へと向かった。
国連世界観光機関の駐日事務所では、局長が応対してくれた。私は先月大阪で開催された『メガイベントを通じた地域振興・地域活性化』シンポジウムのお礼を述べると、ふるさと新聞に載せたシンポジウムレポートを渡した。また、来年2月に三重県で開催される『日本食文化会議2019』の記事や、来年12月に京都で開催される国連世界観光機関とユネスコの『観光と文化をテーマにした国際会議』のコピーを提供した。
局長は、10月11日から13日にかけて中国の揚州市で開催された『世界運河都市フォーラム』に出席したそうで、その冊子を見せてくれた。このフォーラムのテーマは世界運河都市文化の保護・継承と利用で、米国をはじめ、英国、ドイツ、フランスなど、31カ国から関係者約400名の参加者があったそうだ。が、気候変動による海面上昇問題に悩むベネツィアの参加はなかったようである。気候変動による環境急変への対応策が、今後、大きなテーマになると思うのだが。
帰り際に米国人広報担当副マネージャーに会った。彼女は大阪でのシンポジウムでカメラウーマンに徹していた。慣れない日本での労をねぎらった次第である。
なお、昨年10月に三重県で開催された『観光業の持続可能な発展における女性の役割』のようなシンポジウムを、来年2月に奈良で開催するそうだ。奈良らしいテーマを検討しているようである。
(O・H・M・S・S「大宇陀・東紀州・松阪圏サイトシーイング・サポート」代表)

 ラスベガス・サンズの会長アデルソン氏は、かつてトランプ氏が経営していたカジノのライバルである。ところが、調査報道で知られるニュースサイト『プロパブリカ』は10月10日、2017年2月にトランプ大統領が安倍首相とフロリダで会談した際、ラスベガス・サンズに対して日本参入の免許を与えることを検討するよう強く求めたと報じた。然もありなん、アデルソン氏は大統領の熱心な支持者である。「昨日の敵は今日の友」は日米関係だけではない。
とはいえ、58名もの犠牲者を出した、昨年10月のラスベガス銃乱射事件の記憶もまだ消えやらぬラスベガス・サンズである。そのアデルソン会長は、事件の前月9月に大阪府庁を訪問し、日本のカジノ事業で厳しい面積規制を導入しないようにと訴えていた。結果として、今年7月に成立した『IR整備法』に、政府案に当初盛り込まれていた面積上限の数値が含まれる事はなかった。
また、日本では報道されていないが、フロリダでは他社の名前も上がったとされる。一つはご存知MGMリゾーツ、そして、会長が共和党の国家委員会を運営しているウィン・リゾートである。彼らにしてみれば、日本は最後の開拓地なのだ。
そうは言っても、MGM独占の可能性は政権交代後はあまり高くはないようである。この会長は、民主党のオバマ前大統領より国家インフラ諮問委員会に任命されていたし、更には、MGMリゾーツの日本法人の代表執行役員兼社長が、民主党オバマ政権末期にキャロライン・ケネディの後任として在日米国大使館臨時代理大使だった上級外交官だからである。
プロパブリカは、外国首脳との会談で、献金者の利益に直接結びつく話を持ち出すのは外交儀礼に反するとしている。だが、密室で決められるよりマシである。
2012年10月のウォールストリート・ジャーナルによると、2008年の選挙戦におけるオバマ陣営への献金は金融業界が最も多く、全体としては4300万ドルを献金しており、また、JPモルガン・チェースとシティグループ、バンク・オブ・アメリカ、モルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックスの従業員も350万ドルを寄付した。
結果として、彼らは二期目の選挙戦では離反したとはいえ、いわゆる市場原理主義の黄金時代を築き、格差社会を拡大したのだ。
トランプ大統領は、1999年に民主党のクリントン大統領によって廃止された「グラス・スティーガル法」の復活によって、その是正さえも念頭に置いているのである。
(O・H・M・S・S「大宇陀・東紀州・松阪圏サイトシーイング・サポート」代表)
※プロパブリカ アメリカ合衆国の非営利・独立系の報道機関。公益を目的とした長期間にわたる独自取材によって行政や企業の不正・腐敗を明らかにする「調査報道」を専門とする。
 ※グラス=スティーガル法 1933年に制定されたアメリカ合衆国の連邦法。1980年代のレーガン政権(共和党)下で規制緩和、自由競争の復活という経済路線が強まり、証券と銀行の分離を原則とする1933年銀行法(グラス=スティーガル法)の見直しが始まった。1990年代のIT好況に転じたアメリカ経済を背景に、1999年11月、共和党が多数をしめる上・下院はグラス・スティーガル法を廃止し、銀行・証券・保険を兼営する総合金融サービスを自由化する法律(グラム・リーチ・ブライリー法)を可決、クリントン大統領(民主党)が署名して成立した。このように新自由主義に基づいて金融をも自由競争にさらすことになったアメリカ経済はその後、金融工学というコンピュータ依存の金融商品が暴走し、サブプライムローンなどの問題を引き起こすこととなった。
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