特別寄稿

1・大企業の時間、「今はまだ小さな会社」の時間
「ゾウの時間 ネズミの時間(本川達雄著)」という書籍があります。
ネズミとゾウの生涯の心拍回数はなぜか同じ20億回だそうです。
そして、心拍時間はハツカネズミ0・1秒、ネコは0・3秒、ヒトは1秒、ゾウは3秒、身体の大きな動物ほど心拍時間も呼吸も筋肉の動きもゆっくりしています。
時間という尺度は人間が地球の自転周期から考え出したものですから、生き物としての1日の長さは同じです。とすれば、ネズミはヒトやゾウより生きる時間が短いのではなく、生きるスピードが速いのではないでしょうか?
ネズミはヒトと比べると同じ1日を10日分生きていることになります。
どうりで追い回したって捕まえることができないはずです。
この1日が10日分というネズミのスピードが私たち「今はまだ小さな会社」の最大の武器です。
2・スピードを失う3つの原因
「今はまだ小さな会社」から「大企業・大組織」の変化のスピードを見た時、動かないモアイ像のように見えても不思議ではありません。
大きな会社や行政は多くの人間という細胞に支えられて、「慣習」や「しきたり」や時には「忖度(そんたく)」に縛られ、その統率に多くの時間と労力を必要とします。
大きな会社や行政がスピード(時間)を失う3つの原因があります。
①過ぎ去った過去の常識に囚われる
②表面的な間違った情報に囚われる
③モノ事の本質ではなく、枝葉末節に囚われる
「今はまだ小さな会社」はこの「大企業病」という過ちを犯してはなりません。
常にモノ事の本質を見抜き、時代と共に変わりゆく常識を疑い・否定し、お客さまの要望と商品が出会う現場のナマの情報を信じて、さらに決断のスピードを高めなければ、シャープや東芝やダイエーのように、人口減少と老齢化、そして日々進化する情報・物流革命によって暴力的に変化する社会から置き去りにされてしまいます。

3・織田信長の情報戦略に学ぼう
わずか3000人の兵力の織田信長が、4万人ともいわれた今川義元の軍勢を破った「桶狭間(田楽狭間)の戦い」を分析すると、確かな情報とスピード(時間)の大切さを学ぶことができます。
合戦の前日、合戦現場の地の利に詳しい土豪・簗田正綱は「今川軍の勢力は2万人」「今川軍の本陣は地元民が運んだ食事内容から、桶狭間ではなく田楽狭間である」「田楽狭間の兵力は2~300人」「明日の午後、合戦場を嵐が襲う」という活きた現場情報を伝えました。
合戦の結果は、読者の皆さまがよくご存知の通り、信長軍は今川義元を打ち取り、名門今川氏はこれをきっかけに衰退、信長は一躍天下取りに名乗りを上げることになりました。そして、この合戦の最大の功労者は今川義元の首を取った者ではなく、土豪・簗田正綱でした。彼が信長に伝えた情報は誰かに命じて調べさせた内容ではなく、日頃から住民と深い信頼関係を築き、常に自分の目で現場を見続けた者にしか分からない貴重な情報でした。この生きた情報が織田信長の素早く確かな決断と行動を導き、7倍もの兵力差にも関わらず歴史的な勝利に導きました。
お客さまのご要望と商品が出会う現場は事業の存続と進化の基本です。
机の上や会議の中には付加価値や生の情報はなく、コストしかありません。
お客さまと従業員からの生きた情報は、「現場主義を貫く経営」だけに集まります。
大 西   肇(㈱ブレーメン再健本舗代表取締役)

2020年までに4000万人のインバンウンドが欲しい。それが日本の数値目標である。一方、首都圏偏重の是正、地方都市への分散も課題だ。その為には地方都市の情報発信力の強化も求められている。だが、実際問題として地方都市には東京なみの情報量はなく、方法論も確立してはいない。
いったいどうしたら人気を得る事ができるのか?
言うまでもなく、人気観光地とは知名度のある所である。この点、最も人気なのは首都圏であり、日本一の観光地が東京である事に今や異論を挟む余地はない。
次が、世界的な名所・旧跡である。その情報は、今にちでは世界遺産の概念によって知られているが、それ以前は、書物・文献、旅行社ガイダンス・映画が広報に貢献し、20世紀後半にはテレビによって爆発的に知れ渡るようになった。つまり、それはメディアの商業投資のおかげであり、そのモチベーションは公共放送を除くと専らスポンサーのお金儲けにあった。
多くの人気観光地は、そのようなプロセスを踏んで有名になってきたと言えるのだ。
この点において、ネットを通じた動画サイト等の発達は、全く新しい情報伝達を可能にしたかに見える。だが、これはまだ『ドラマチックな追体験』を求めるものには至ってはいない。選択肢を無限に広げただけで、不特定多数に対する所謂『ブーム』が起爆していない。映画やTV番組ならば、感情移入できるキャラクターの背景としてロケ地が視聴者に記憶されるが、『ドラマトゥルギー(作劇法)』が未熟なネット動画にはそれがないからである。
人気観光地と呼ぶには少しニュアンスが異なるが、有名所には宗教聖地や貿易拠点として知られた場所もある。メッカや伊勢、或いは港湾都市がいい例だ。しかし、それらへの帰属意識は限られており、その知名度は強い目的意識によって維持されているに過ぎない。私は過去に何度か『観光客』の定義を試みてみたが、こういった場所を観光地と呼ぶのには違和感を持つ。日本語における現代の『カンコウ』にはレジャー的意味合いが強く、お参りまで観光(サイトシーイング)扱いするのは非礼に感じるからである。
ちなみに国連世界観光機関では、観光を『サイトシーイング』ではなく『ツーリズム』としている。これは広義的解釈が可能であり、国際的な人気観光地に到着したのは、観光客のみならず幅広い訪問者も含むということになる。『ビジネス』でもOKだ。とはいえ、統計上の分類では24時間以上の滞在を『ツーリスト(滞在者≒観光客)』とし、それ未満は『ビジター(日帰り≒訪問者)』としている。
閑話休題。国際的な人気観光地には、他所にはない要素がある。それは、映画やテレビなどで不特定多数の人々にインプットされた地名であり、感情移入可能な登場人物が非日常的状況によって形成されたイメージをお客さんが再現できるかどうかにある。『ドラマトゥルギー』のないニュース番組にはそれがない。例えば、2016年にG7サミットが三重県志摩市で開催されたが、その開催地は世界的に有名になったのか?
その答えは、日本人がエルマウ、タオルミナ、ラ・マルベイを知っているのと同程度でしかない。つまり、殆ど誰も知らないのだ。ブランディングに役立ったとは言い切れないのである。ブランディングといえば、日本も1992年に条約に批准して発効した、先に触れた『世界遺産』がある。だが、その知名度の明暗も『ドラマトゥルギー』が有るか無いかによって顕著である。
2016年に国連世界観光機関が開催した『遺産観光に関する国際会議』では、保存と活用、観光資源の磨き上げ、持続可能な活用というテーマで、UNESCOの取り組みについても少し触れた。だが、保存には維持費が不可欠なのに、プロモーションの為のセオリーはなかった。
例えば、長崎の『端島(軍艦島)』の整備活用計画では、護岸、採炭生産施設の一部、幹部社宅三号棟だけでも、約108億円が必要だとされている。2019年に開催される『UNWTO/UNESCO 観光と文化をテーマにした国際会議』では、この要素も加えてほしいものである。
顕著な『ドラマトゥルギー』の影響は、しばしば名作と呼ばれる映画のシーンとオーバーラップする。特に、007映画のような世界的景勝地を求める映画のロケ地は観光地としても成功しており、今ではそれを逆手にと、イギリス国内でさえ主要舞台となっている。周知の如く、このシリーズに世界遺産の遺跡が沢山カメラに収められ、実のところ『軍艦島』も007映画のロケ地にはなった。しかしながら、カメラこそ入りはしたものの、ストーリー展開上それが日本の長崎である事についての言及は一切無く、マカオ沿岸の『デッド・シティ』として扱われていた。
長崎市の観光統計によると、映画公開年2013年の訪問者数は15万1567人で、2014年が18万3996人、2015年が26万6620人、2016年が27万2619人だった。2015年の世界遺産登録を以ってしても、前年よりも8万2624人増えただけ。インバンウンドも含めて、年間平均21万8700人しか来ていないのだ。これでは世界中から訪問者が追体験を求めて殺到しているとは言い難い。年間約420万人で閉店した『サンバレー』の、おおよそ二十分の一である。
(O・H・M・S・S「大宇陀・東紀州・松阪圏サイトシーイング・サポート」代表)

10月24日、『住宅宿泊事業法の施行期日を定める政令』および『住宅宿泊事業法施行令』が閣議決定された。
施行期日は来年の6月15日で、違法操業に対する罰則は、旅館業法改正までは現行法どおりである。担当部署は国土交通省と厚生労働省、観光庁観光産業課と土地・建設産業局不動産業課だ。
住宅宿泊事業法要綱によると、民泊を行う住宅については、家主不在の場合はホテルや旅館と同様、非常用照明器具や火災警報機の設置を原則として義務付けるとし、家主がいる場合でも床面積が50平方メートルを超える宿泊室は、通常の宿泊施設同様の安全性確保が必要として、同様の対応を求める。
また、家主は2カ月ごとに民泊を利用した外国人客の人数や国籍などを報告し、得られたデータは観光統計として観光庁が活用する。更に家主には、民泊住宅と分かる標識の掲示や宿泊者名簿の作成、定期的な清掃などが義務付けられ、違反した家主には業務停止命令などに、無届け営業には旅館業法違反などに問われる。
とはいえ、今年6月に成立した新法に基づく民泊施設は、あくまでも『住宅』なので旅館業法の適用外となり、住居専用地域などでの提供も可能となる。
一方、宿泊施設と区別するため、年間の宿泊日数を180日以下に設定し、地域の実情に応じて、都道府県などが条例で区域と期間を定めて民泊の実施を制限できるようにする。これは土地利用の状況や宿泊に対する需要の状況などを勘案し、騒音の発生など、生活環境の悪化を防止することが特に必要である場合に実施される。近隣住民への配慮が必要だ。
住宅宿泊事業者は都道府県知事などへの届け出が必要で、家主不在の場合などは、国土交通省に登録された住宅宿泊管理業者に管理を委託しなければならない。
新法に基づいて届け出できる物件は、家主の居住物件、入居者再募集中の物件、別荘など。つまり中古物件だ。それぞれ届け出時には証明書類の提出を求め、届け出書には届け出住宅の規模などを記載、住宅宿泊管理業務を委託する場合には、住宅宿泊管理業者の商号、名称などを記載する必要がある。
届け出書に添付する書類は、住宅の図面、登記事項証明書など。
また、住宅が賃借物件である場合は転貸の承諾書、住宅が区分所有建物である場合には規約の写し、規約に住宅宿泊事業に関して定めがない場合は管理組合に禁止する意思がないことを確認したことを証明する書類などが必要となる。
住宅宿泊に必要な設備としては『台所』『浴室』『便所』『洗面設備』の4つを挙げ、居室の床面積は宿泊者1人当たり3・3㎡を必要とし、定期的な清掃や換気も行うことを求める。
更には、安全確保のために非常用照明器具の設置や避難経路の表示などの措置も必要になる。届け出住宅ごとに標識の掲示も必要だ。
なお、家主には宿泊者名簿を作成する義務も生じる。この名簿は、作成日から3年間は保存して、届け出住宅などに備え付ける必要がある。名簿には、宿泊者の名前と住所、職業、宿泊日に加え、外国人の場合は国籍とパスポート番号が記載されていなければならない。
また、外国人宿泊者の快適性と利便性を確保するため、住宅設備の使用法について外国語で案内することも求める。
この規則では、宿泊日数の算定方法も明確にした。毎年4月1日正午から翌年4月1日正午までの期間において、人を宿泊させた日数とし、正午から翌日の正午までの期間を1日とする。帳簿は5年間の保存となる。そして、住宅宿泊事業者は都道府県知事などに対し、2カ月ごとに宿泊実績を報告する必要がある。
さて、合法的な住宅宿泊(民泊)事業は本当に儲かるのか?
初期投資に必要なのは、リフォーム料、リネン、家具、電化製品だけではない。防火設備、許認可支出などは100万円を超える。また、電力、ガス、上下水道などの運転資金、受信契約、保守、清掃なども必須だ。
これらを勘案すると、稼働率の低い地方都市では赤字となって、五輪後にはお手上げになるかも知れない。多くの市町村が現地市場の正確な動向を知らないからである。
みずほ総研が9月22日に発行した最新レポート『2020年のホテル客室不足の試算』では、副題を『民泊、クルーズ船の利用急増で需給ひっ迫懸念は後退』としている。この45ページにわたるレポートは、9パターンの変数シナリオごとに、47都道府県の日本人と外国人の宿泊需要を予測している。たとえば、ホテルの新規開業計画から予測される供給側のシナリオが『標準』の場合、日本人・外国人の宿泊需要が共に『上振れ』するシナリオであっても、2020年の不足客室数は最大で3800室程度にとどまる。また、全シナリオで、地方の宿泊施設のシェアが2016年比で減少するとも予測している。

(O・H・M・S・S「大宇陀・東紀州・松阪圏サイトシーイング・サポート」代表)

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