投資のおはなし

 現在の相場は昨年11月14日の野田前首相の解散発言から始まっています。
 安倍首相の物価上昇2%目標を日銀と共に達成するために、各種政策を早期に行う強い意志を国内外に示したことで、国内より海外の投資家が敏感に反応し、真っ先に日本株を買い始めました。
 この時期、国内の機関投資家や個人は売却しています(いつもの事ですが)。現在、海外勢の買い越し額は3兆3400億円に対し、国内勢は3兆4100億円売却しています。過去、小泉政権下の05年6月から06年3月までに海外勢は日本株を10兆円買い越しています。
 単純な比較は出来ませんが、海外勢の日本株買いはまだ余力があるように思われます。安倍首相ほか政府高官がこれまでの円高修正発言をするたびに、為替は大きく円安に振れていますが、今回の相場は単純な為替の口先介入ではありません。国内要因では、2012年の貿易赤字は7兆円に迫り、32年ぶりに最大となったことです。
 これは、中国向けや欧州向けの需要低迷による輸出減と原子力発電所の稼働停止による代替エネルギーとして液化天然ガス(LNG)の輸入が増加したためです。海外要因では、欧米経済の回復により、ドルやユーロが大幅に上昇しています。
 景気回復の本格化を予測させる兆候として、米国の10年国債利回りが2%を超えてきました。日本の利回りも上昇してきましたが、日米金利差は拡大しています。このように円安というより、米国景気回復によるドル高といった方が良いと思われます。
 最近の経済記事から1ドル95円から100円の予想が多くなってきました。当然、円安により我が国の輸出企業の業績は大幅に改善します。90円程度の円安水準でも来年度は3割の増益が見込まれるとの試算もあります。経済記事では日経平均が年央に1万3000円の予想も複数出てきました。米国ダウ平均は年末までに1万5000ドルの予想が少し出ています。
 次に海外証券投資で注意しなければいけない大変重要な事を述べます。
 昨年12月以降の円安により、特に海外証券はどの商品でもと言っていいくらい上昇しており、本当にうれしい状況になっています。このまま円安が続けば、投資家ならどの海外証券でも今のままの保有で良いと思われます。
 しかし、今後も現状相場が続けば続くほど、今の投資判断ミスがこれからの投資リターンの格差に大いに影響が出てきます。
 ポイント1、海外証券は大幅な円安により為替部分で大きく寄与していますが、投資対象の証券では上昇率に大きな違いが出てきています。海外の投資対象である株型・債券型・リート型の証券に対し、為替の円安による上昇を分けて検討する必要があります。
 12月と1月それぞれ1カ月間の騰落をチェックしてみます。12月円ベースの上昇率は先進国株10・3%、同リート10・5%、同債券6・1%、この間のドルやユーロの上昇率は7・3%ですので、債券は外貨ベースではマイナスになっています。
 1月でも円ベースの上昇率は先進国株式10%、同リート7・6%、債券6・9%、この間のドルユーロの上昇率は、7・4%ですので、外貨ベースで債券はマイナス、リートもほとんど上昇していません。
 景気が回復し金利が上昇し始めると、債券では特に低格付けの高い利回りで償還までの期間の長いものほど下落します。リートも上昇の伸びが落ちてきています。その分、株式の上昇が目立ってきました。世界的な株高になってきていますが、12月以降は特に出遅れている日本株や中国株の上昇が顕著です。
 ポイント2、外貨の為替変動リスクを回避するタイプの投信が人気化しているという記事が日経に掲載されています。1月末時点2・9兆円の残高で1年前に比べ2・7倍に増加とあります。
 確かにこれまでの円高により為替の損失は大きかったと思われますが、せっかく円高修正局面が出てきている時に、為替ヘッジを付けてしまうと、最近の円安のメリットの恩恵が無しになってしまいます。勿論、現在の円安時での為替ヘッジは十分に理解できます。自分の相場観が重要です。 私の経験から述べますと今回の相場は、89年の大相場や00年のIT相場に匹敵する可能性があります。リーマンショック後の世界の金融緩和により各国の物価上昇率は2%以上となっています。わが国はこの間デフレであったため、世界標準の2%の物価上昇を目指すことになります。
 デフレからインフレに、円高から円安に、超低金利から金利上昇になると、これまでの生活に変化が起きてきます。十分に今後の生活に対応してください。
 学習する講座を中日文化センターで4月から月第 3木曜日午前10時から11時45分まで行います。最近確定拠出型年金の運用においても問い合わせが多くあります。学習する人のメリットは、相場の騰落時において過去の相場との比較ができ落ち着いて投資判断ができることです。
 今後の相場に十分に対応してください、まだチャンスはあります。(宮﨑 英壽 連絡先℡090・5008・0874)

(前回からの続き) 
 一つ目の予測として、昨年の9月以降、世界の更なる金融緩和により債券と株式が同時に上昇する金融相場が続いていますが、今年は世界景気の改善が注目されますと、良い意味の金利上昇により、株式上昇の本格化と債券相場の下落がより明確になる事が予想されます。そうなると債券を含む資産については売却を考える事が必要となります。二つ目では、為替相場の見通しです。現在ドルは90円を、ユーロは120円を超えています。ターニングポイントとなった昨年の衆院解散発言の11月14日以降の上昇率は、ドル12・1%、ユーロ17・4%、豪ドル13・7%、インドルピー14・9%、ブラジルレアル13・4%、南アランド11・5%、トルコリラ15・4%となっています。
 最近の安倍首相以下、政府高官の円高修正発言によれば、為替は当分この方向に進むと思われます。ポイントは海外、特に米国や欧州からのドル高やユーロ高を懸念する発言が多く出てくる時です。円安により日本の輸出企業の業績は好転しますが、海外、特に米国などの輸出企業は逆に悪化します。それまでは米国や欧州が今の円安を容認していると判断しても良いと思います。円の全面安により先進国や新興国の通貨はどれも昨年の3月時点を上回ってきていますが、一部新興国でまだ割安な通貨もあります。中でもブラジルレアルが面白いと思われます。ブラジル政府は一昨年のレアル高への対抗措置として外資の流入規制を昨年12月に見直し外資流入政策(ブラジルレアル高円安)にカジを切ったという記事がポイントになります。
 昨年の資産運用は金融緩和と円安により久しぶりに投資リターンが全ての金融資産で上昇し、投資家は久しぶりに嬉しい気持ちになっていると思います。しかし投資というものは、皆が幸せになっている状況の時には、相場は新たな対象を求め、現在の保有証券には下落リスクが首をもたげてくるものです。
 ここでアメリカの著名投資家ジョン・テンプルトンの相場格言、「相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えていく」という言葉に注意が必要です。現在の状況下で、どの証券が更に上昇し、どの証券が下落するのかを見極める必要があります。従って現段階で保有する有価証券の見直しが必要です。今年の相場予測をもとに、運用対象証券を決めたら、自分の保有証券をシフトさせることです(例えば債券重視から株式・リートに)。
 次に海外証券を多く持たれている場合、為替の見通しをもとに、円安水準で利益確定を行う必要があります。特に海外証券の中で、運用リターンに占める円安の影響は大きいものです。 そこで、円高になっても為替面で資産の下落をある程度抑制できる為替ヘッジ付きの商品に切り替える必要があります。昨年9月か10月頃の日経夕刊に「為替ヘッジ証券が人気化し、その残高が増加しています」という記事が掲載されていましたが、それらの投資家は11月以降の一番おいしい円安のメリットを受けていない訳です。今後の為替水準を勘案し、どこかで為替ヘッジ無しから、為替ヘッジ付きに切り替える時期が非常に大事になります。
 次に同じ投資対象証券では、年間トータルリターンの比較的高いものを選択することが重要となります。保有していなければ切り替える必要があります。見直しは売却で損が発生する場合でも必要です。年間の価格の推移を見れば、どのように運用利回りが低い証券でも、高値と安値の価格差は1割を超えています。高値を売却し、その後の安値を1割以下で購入すれば売却時に比べ、1割口数が多く買えるわけです。リーマンショック前の高値を購入している投資家でもこの作業を2回から3回繰り返せば、買い付け価格を下げ、結果的に損失は大幅に減少することになります。
 この方法は、自分の買い値を下げる工夫であって、次々と別の商品を売買することではありません。今年も投資のチャンスが多くあると期待できます。投資の学習をしっかり行ってください。買い付ける証券の価格の水準をチェック、どの状況で上昇又は下落するのかを理解し、常に買い付ける商品は他社の同じ対象証券と比較検討を行い、売買のタイミングを逃さないことを頭に置き、資産増加に励んでください。
 今年こそ不満・不安・後悔する運用から納得・安心・楽しみの出来る運用を目指してください。必ずそれが出来ます。
(資産運用アドバイザー 宮﨑 英壽 質問や学習を希望される方は連絡ください。連絡先℡090・5008・0874)

 昨年の大きな変化としてまず1つ目は世界的に更なる金融緩和が起きたということです。それは主要各国の10年国債の利回りの低下にはっきり現れています。08年9月に勃発したリーマンショック時も世界的な金融緩和が生じましたが、今回は更に金利が低下しています。
 具体的には、リーマンショック時(08年)と昨年(12月中旬まで)の各国の利回りを比較しますと、日本1・7%→1・2%、1%→0・7%。米国4%→2・3%、2・2%→1・5%。ドイツ4・5%→3%、1・8%→1・4%。豪州6・5%→4%、4%→3%、ブラジル17・5%→13%、11%→9・25%。インド9・5%→5・5%、8・5%→8・1%となっています。
 つまり金融資産としてはリーマンショック後、債券相場は大幅な金利低下により上昇し続けたわけです。 昨年、いかに債券が買われたかという出来事として2年以下の国債にマイナス金利が付いたことです。
 本来債券を保有すれば利息を受け取れますが、マイナス金利の付いた債券保有者は、利回り分だけ元本が減少するという異常事態が夏頃に起きています。
 このマイナス金利の付いた国は、米国や欧州のドイツ・フランス・オランダ・フィンランド・ベルギー・スイス・オーストリア・デンマークなどです。
 ただし財政危機にあったイタリアやギリシャでは逆に信用不安から債券が売られ、利回りが上昇(債券単価は下落)しました。イタリアでは昨年7月に5%→7%に、ギリシャで同15%→36%に利回りが上昇しています。
 その後、イタリアは4・5%、ギリシャは16%まで低下しています。いかに南欧国の国債が売られ、利息を払ってでも安全な国の国債を保有したい投資家が多かったかがわかります。
 2つ目は、12月に世界株式指数が円ベースで3月の高値を更新したことです。つまり昨年は債券も上昇したが、同時に株式も上昇しているわけです。
 本来この2つの資産は株式が上昇すれば債券は下落し、債券が上昇すれば株式は下落するという逆相関関係にあるものですが、昨年は両資産とも上昇しています。背景には、世界的な超金融緩和により有価証券すべてが買われ上昇したということです。
 このような状況は金融相場といわれ、景気回復が無くても市場にお金があふれている場合に起きる現象です。ここで国内投資家から見て(円ベース)、国内外の金融資産の昨年の騰落を見てみます。期間は年初から12月中旬の計算です。国内株式指数15・6%・先進国株式指数23・6%・新興国株式指数22・5%、国内債券指数1・8%・先進国債券指数15・3%・新興国債券指数23・4%、国内リート指数31%・先進国リート指数29・3%となっています。
 このように国内投資家にとってはどの金融資産も上昇しています。なかでも国内外のリート・国内外の株式・海外債券の上昇は結構なものです。そのため皆さんの保有証券も上昇していることと思われます。特に後半の上昇に影響を与えたのは為替の円安によるものです。
 3つ目は昨年3月にも円安水準がありましたが12月に入り更に円安が進みました。通貨についても年初から12月中旬までの円と主要国の為替を検証します。  円の対ドル9・1%・対ユーロ10・4%・対豪ドル12・4%・対インドルピー6・2%・対ブラジルレアルマイナス3%・対南アランド1・4%・対トルコリラ15・6%となっています。先進国とトルコは1割以上の円安に対し、新興国通貨はまだ円安水準が低いと判断できます。 
 昨年の3つの流れをもとに今年の相場はどの様に予測できるのでしょうか?参考として昨年12月に証券分析のプロである世界の証券アナリスト6700人を対象にした今年の相場見通しに関するアンケート結果が出ていました。
 株式市場では最も有望な対象として米国株回答比率32%、次に中国株17%、ブラジル株10%と続きます。 もっとも高い運用利回りが期待できる金融資産は、株式で50%、次に貴金属22%、債券8%となっています。株式は、前年比9ポイント上昇、貴金属や債券は前年比2から3ポイント低下という結果でした。全体的にリスク資産に強気な背景には世界景気見通しの改善があるようです。
 (資産運用アドバイザー 宮﨑 英壽 連絡先℡090・5008・0874)

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