女の落書帖

にわかに降り出した雨に車のワイパーを動かして信号待ちをしている時、路側帯のバイクのお兄さんに目が留まった。ヘルメットとレザースーツ姿は、お兄さんなのかおじさんなのかわからないが、背筋が伸びていてお腹が出ていないからお兄さんだと思われた。
そのお兄さんが、さっきからバイクのエンジンをかけようと何回もペダルを踏んでいる。バイクの右側に立ってペダルを踏みこむのが、もう十回は超えただろう。なかなかエンジンがかからない。
大型のバイクはハーレーという車種だろうか。雨はみぞれになってきて、お兄さんはさぞ冷たかろうと気にかかる。信号が変わり、私の車は交差点に進んだ。
この寒い日にバイクに乗るとは、よほど好きに違いない。原付バイクになら私も乗ったことがあるけれど、それは車の免許が取れるまでのこと。車に乗るようになってからは、雨風に体をさらして走る人の気がしれない。
普段の私は、ボタンプッシュで車のエンジンをかけている。昔のバイクのエンジンは、ああしてペダルを力いっぱい踏んでかけるものだったと、懐かしく思い出した。
次の信号で止まっていたら、ドッドッドッドという音が後ろから響いてきた。ようやくエンジンがかかったらしい。信号待ちの車の長い列の脇を、お兄さんのバイクがすり抜けて行った。(舞)

本が好きなので図書館をよく利用する。昔は文庫本を買っていたのだが、本が家にたまっていくのが嫌になり、作家さんには申し訳ないが、本は買わずに借りるものと決めた。
本の選び方は人それぞれだろうが、私は作家で選ぶ。一人の作家を気に入ると、その人の書いたものを全部読む。中にはがっかりするものもあるが、好きな作家の本はたいてい面白く読める。
新しい作家の開拓も欠かせない。何かの賞を受賞したり、ベストセラーになったりした作品はまず読んでみる。そういったものに外れは少ない。気に入り作家を見つけ、新刊を楽しみに待つことも多い。
多くのファンを持つ人気作家の本は、図書館に行っても借り出されていることが多い。その時は予約を入れておく。評判の本だと何ヶ月も待つことがあるが、待つのも楽しみの一つだと考える。
図書館には相互貸借という便利なシステムがあるので、所蔵されていない本でも予約できる。申し込んでおけば、図書館ネットワークを利用して県内の図書館から取り寄せてくれるのだ。
いつも私は、新聞の書評やネットの口コミでの評価が高かった本をメモしておく。若い時なら面白くない本でも終わりまで読んだが、もう今はつまらない本を読みたくはない。良い本を見つけて楽しい読書ライフを送りたいと思っている。(舞)

早朝の道で、自転車通学の男子生徒を見かけた。この寒い朝に白カッターシャツ姿。カッターシャツの生地に薄く透けているのは半袖Tシャツで、その二枚しか着ていないらしい。
彼は特別元気な中学生だろうか。それとも高校生だろうか。私は、自転車生徒の肩の辺りを注視した。たぶんあれは高校生。中学生ならもっと肩が頼りない。
うちの子ども達が大人になってしまったので、身の回りに基準となる子どもがいない。だから街で出会う子ども達の年を見分けることが難しくなった。
それでも男子中学生と高校生は肩、二十歳を越えているかは、首筋でだいたい分かる。女子中学生と高校生の場合はふくらはぎだろうか。二十歳を越えているかは、頬と顎の線だろうか。女子の方が男子より見分けるのが難しい。
成人女性の年齢は、ほうれい線の深さや、後ろ姿で見分ける。街を行く女性の年齢を推測するときは、私より年齢が上か下かと見当をつける。そしていくつ上かいくつ下かと考える。
ところが近頃その基準が当てにできなくなってきた。自分より上だと思った人がしばしば若かったりする。
どうも、年々自分に甘くなっているようで、正しく自分を見ることができていない。ここまでくるとそれもまた幸せなことかもしれないと思う。   (舞)

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