女の落書帖

小春日和のひと日、電車に乗った。電車に乗りたくて鳥羽まで出かけた。
ずっと車移動ばかりで久しぶりの電車だから、スマホの乗り換え案内でしっかり調べていく。鳥羽のMAPも予習した。
鳥羽駅からもう少し先まで。各駅停車のワンマン列車を無人駅で降りるのは初めてだ。車内の運賃箱に切符を入れるシステムだが、運転手さんにどう切符を確認してもらうかと緊張した。
降りたのは海の近くの駅。海に沿って歩いて、港に並んだ船を見た。青い空に青い海、そこに白い船が映える。目を遠くにやると、島なのか半島なのか、豊かな緑の中に観光ホテルが美しい。鳥羽は観光地だ。
車で訪れる鳥羽と電車で訪れる鳥羽は違う。車ならば、車を止められる場所にしか立たない。駐車場に車を置いて、店に入ったり展望台から眺めたりしても、すぐに車に戻ってしまう。電車ならば、こんなふうにぶらぶら歩いて、海や空や島や鳥を見るために立ち止まる。
食堂に入り刺身定食を食べた。観光レストランではなく地元の人相手の食堂を見つけられたことがうれしい。海のそばで食べる魚は新鮮だ。
そして鳥羽の町を散歩。昭和の商店街のようなどこか懐かしい町並みを行って、店をのぞいたり神社の階段で銀杏を拾ったり。
電車に乗れば旅となる。日常から脱することができる。  (舞)

秋になって散歩が気持ち良い。田んぼの風を楽しみながら側溝沿いの道を歩く。
セイタカアワダチソウの黄色がきれいだ。ミゾソバの金平糖みたいなピンクの花もかわいい。センダングサの種がもうできていて、ひっつき虫で遊んでみる。ジュズダマの実も黒くなっている。
ジュズダマは昭和の少女たちの注目植物だった。ネックレスにしたり、お手玉に入れたり。秋の野でジュズダマを見つけると競って採ったものだった。
通っていた小学校の近くに池があって、そこにジュズダマが生えることは、ちょっとした秘密だった。熟した実は艶々と黒く美しい。学校帰りにスカートのポケットをジュズダマでいっぱいにする。毎日採って菓子箱一杯のジュズダマを集めた。
集めるだけで満足していたそのジュズダマを、夏休みの工作の材料にした。ジュズダマのれんを作成したのだ。針を使って木綿糸にジュズダマを通す。それを何本も棒に吊るして目隠しとなるほどの密度にする。
途方もなく長い時間がかかった。今なら難なくやり終えられることも、不器用で根気のない小学生には大仕事だ。夏休みの工作で記憶にあるのはジュズダマのれんのみ。それほど苦労したということだ。
側溝のジュズダマを採りたくなった。でも採ってどうする。のれんもネックレスも要らないし。(舞)

無防備ではいられない日々は続いていて、私は家の中でできることを探す。掃除や片付けみたいに役に立たなくてもいいから楽しいこと。本を読んだり、動画を見たりの他に何か一人でできること。
本棚の整理をしていて、折り紙の本を見つけた。引っ張り出してペラペラめくると折りたくなった。古い色紙でまず蓮の花を、次に狐を折った。それなりに面白いが、夢中にはなれない。ちまちまとこんなことしていても。
そこで、コピー用紙を取り出して飛行機を折ってみた。子どもの頃覚えた折り方は、しっかり頭に残っている。そして、隣の部屋に向けて投げた。でも、あまり飛ばない。投げた分だけ進んだら落ちる。
悔しいので、ネットで折り方を調べることにした。折り紙ヒコーキ協会というサイトがあり、そこに様々な折り方が紹介されていた。
一番簡単なイカ飛行機を折ってみたら、見事に飛ぶ。滞空時間が長く、滑るように部屋から部屋へ移動する。
飛行機には昇降舵というものが必要だったらしい。翼の後ろを小さい三角形に折り上げる。その折り上げ角度が大事らしい。微妙に変えて投げてみる。何度も何度も投げてみる。
紙飛行機は素晴らしい。一枚の紙で充分遊ぶことができた。できたら誰かと競いたい。飛行距離や時間や的当てで。やはり人と会いたいのだ。(舞)

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