女の落書帖

朝は携帯のアラームで目を覚ます。どうも私は、朝の眠りが深いタイプらしく、自然に目が覚めることはほとんどない。毎朝電子音に起こされる。
ぎりぎりの時間にアラームをセットしているので、すぐに起き出さなければならない。半分目を閉じた状態で着替え、台所に立つ。お茶を沸かして、朝ごはんを用意してとするうちに、昨夜の頭痛も不快感も消えていることに気が付いた。
睡眠は素晴らしい。確か昨夜は、いろいろな体調不良が重なって、寝付くまでふとんの上でころころしていたのに、朝になれば体調がリセットされている。まだ眠いのを除けば、快適な朝だ。
とはいっても、左の頬に枕カバーの跡がくっきりと残っているのはいただけない。深く眠るその間、寝返りもせず、頬をカバーに強く押し付けていたらしい。
忙しい朝にひとつ仕事が増えた。頬の寝癖を消さないことには恥ずかしい。上半身のストレッチ。それから頬のマッサージ、蒸しタオルと、とにかく血行を良くして、解消に努める。
しかし若くはない肌は弾力に乏しく、回復が難しい。いくぶん薄くなったぐらいで出かける時刻になった。
考えれば、頬の寝癖ぐらい取るに足りないこと。痛くもかゆくも気持ち悪くもないのだ。私の頬なんて、誰も注意してないに違いない。元気に感謝の朝である。
(舞)

息子の結婚が決まったと、友人から嬉しげな報告があった。息子たちも娘たちも結婚したがらないこの時代に、よく決心したとほめてあげたそうだ。私もうらやましい。我が子もそろそろ結婚してほしいものである。 それでそれでと、私は聞く。結婚式には留袖を着るの?ドレスを着るの?近頃晴れやかな場所にとんと無縁な私は、そこが関心事。どこのどんな娘さんがお相手かとは、あまりに踏み込みすぎで聞けないので、それぐらいの話題がちょうどよい。 向こうのお母さんと一緒にドレスを見に行ったと友人は言う。紫のフリルのやら、バラのついたのやら、いっぱい着てみて楽しかった。でも、やっぱり花嫁さんより目立ってはいけないので、黒のシンプルなドレスにしてきたわ。 私は友人の舞い上がりぶりがおかしくなる。彼女は無謀にも若い人と競い、場合によっては勝つつもりだ。少し水をかけてやる。だいじょうぶ。いくら派手にしても、きれいなおばさんになるだけだから。 えっ、おばさんなん!悲鳴のように返ってきた。おばさんと呼ばれるのがご不満らしい。おばさんがおばさんで何が悪いと私は思う。りっぱなおばさんとして花婿の母の存在感を示してほしい。 若さばかりが価値ではない。きれいなおばさんなら上等じゃないかと言ってやった。 (舞)

久しぶりにウォーキングしていたら、顔見知りのおじさんと行き合った。「こんにちは」「こんにちは」「いいお天気ですな」「雲ひとつないですね」「だいぶ暑なりましたな」「ホント暑いです。夏が来ますね。少し歩くと汗びっしょり」
雑談の極意は「オウム返し」である。オウム返しは相手の言葉をしっかり聞いているというサインであり、次なる話題へ発展するきっかけとなる。
ところが、おじさんはまじまじと私を見て、次にこう言った。「ちょっとお太りになりましたか」私は思わず絶句した。そして、「ええ、太るというか、垂れるというか、シミやらシワやらいろいろ大変です」と作り笑顔。
失敗に気が付いたか、おじさんはあわてて、「いや、ボリュームがあって、よろしいかと思いましてな」。フォローのつもりが、なっていない。さらに深み、泥沼である。
「いえいえ、それでは」私はにこやかに立ち去りながら、実はショックから立ち直れない。太ったかもしれないが、よく知らない人に言われたくない。タフなおばさんであっても、敬語で包んで言われても、傷つく時には傷つくのだ。
雑談の極意その二には、「質問に注意する」を挙げよう。質問は相手の気にしているところ、弱いところを突いてはいけない。当たり障りのない事柄に限るべし。
「明日の天気はどうですかな」     (舞)

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