女の落書帖

秋になって散歩が気持ち良い。田んぼの風を楽しみながら側溝沿いの道を歩く。
セイタカアワダチソウの黄色がきれいだ。ミゾソバの金平糖みたいなピンクの花もかわいい。センダングサの種がもうできていて、ひっつき虫で遊んでみる。ジュズダマの実も黒くなっている。
ジュズダマは昭和の少女たちの注目植物だった。ネックレスにしたり、お手玉に入れたり。秋の野でジュズダマを見つけると競って採ったものだった。
通っていた小学校の近くに池があって、そこにジュズダマが生えることは、ちょっとした秘密だった。熟した実は艶々と黒く美しい。学校帰りにスカートのポケットをジュズダマでいっぱいにする。毎日採って菓子箱一杯のジュズダマを集めた。
集めるだけで満足していたそのジュズダマを、夏休みの工作の材料にした。ジュズダマのれんを作成したのだ。針を使って木綿糸にジュズダマを通す。それを何本も棒に吊るして目隠しとなるほどの密度にする。
途方もなく長い時間がかかった。今なら難なくやり終えられることも、不器用で根気のない小学生には大仕事だ。夏休みの工作で記憶にあるのはジュズダマのれんのみ。それほど苦労したということだ。
側溝のジュズダマを採りたくなった。でも採ってどうする。のれんもネックレスも要らないし。(舞)

無防備ではいられない日々は続いていて、私は家の中でできることを探す。掃除や片付けみたいに役に立たなくてもいいから楽しいこと。本を読んだり、動画を見たりの他に何か一人でできること。
本棚の整理をしていて、折り紙の本を見つけた。引っ張り出してペラペラめくると折りたくなった。古い色紙でまず蓮の花を、次に狐を折った。それなりに面白いが、夢中にはなれない。ちまちまとこんなことしていても。
そこで、コピー用紙を取り出して飛行機を折ってみた。子どもの頃覚えた折り方は、しっかり頭に残っている。そして、隣の部屋に向けて投げた。でも、あまり飛ばない。投げた分だけ進んだら落ちる。
悔しいので、ネットで折り方を調べることにした。折り紙ヒコーキ協会というサイトがあり、そこに様々な折り方が紹介されていた。
一番簡単なイカ飛行機を折ってみたら、見事に飛ぶ。滞空時間が長く、滑るように部屋から部屋へ移動する。
飛行機には昇降舵というものが必要だったらしい。翼の後ろを小さい三角形に折り上げる。その折り上げ角度が大事らしい。微妙に変えて投げてみる。何度も何度も投げてみる。
紙飛行機は素晴らしい。一枚の紙で充分遊ぶことができた。できたら誰かと競いたい。飛行距離や時間や的当てで。やはり人と会いたいのだ。(舞)

遠方で帰省できない友人に頼まれてちょっとした用事をしてあげたら、経費を知らせてと言ってきた。わずかなこと請求もできないので、気にしないでと返事したら、菓子折りとともに定額小為替が送られてきた。
そういうものがあるのは知っていて、受験料や手数料支払いに使った経験はあるものの、受け取ったのは初めてである。
住所氏名を書いて郵便局へ持っていったら、無事に換金できた。千円。こういうお金の送り方があることをすっかり忘れていた。
お金を送る際に真っ先に思い出すのは現金書留で、使うこともある。コロナ禍で県外の親戚にお祝いを届けられなくて、現金書留にのし袋を入れて送付した。
買い物をしてもクレジットカードや電子マネー、QR決済と、ほとんど現金を扱わない暮らしをしているので、現金書留は新鮮な感じがした。
近頃は、商品券や図書券も電子マネー型ギフトカードやQRコードになってきている。ネットショッピングで使えるギフト券も便利だ。いずれは結婚式のご祝儀もスマホでQR決済キャッシュレスとなるだろうと、これは聞いた話である。
スマホで送金は簡単だが、さすがにご祝儀ともなると抵抗を感じる。お年玉もお盆玉も、ピッピッとするよりかわいい袋に入れて手渡したいと思う。面と向かって会えればの話だが。   (舞)

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