女の落書帖

 ピンポンとインターホン。不意の訪問は宅配便だった。回覧板は郵便受けに置かれるから、インターホンを鳴らす人は、宅配便とセールスと宗教ぐらいなのだ。
 インターホンが鳴っても、「間に合ってます」「興味ありません」とすませることも多い。
 玄関を開けなければ、悪徳セールスにひっかかる危険も減り、インターホン越しだと断るストレスが軽減される。鍵とインターホンは防犯のかなめだ。
 ところで、私はいつから玄関に鍵をかけるようになったのだろう。田舎で育ったので、玄関の鍵はいつもかけなかった。子ども達やその友達が玄関を出て行ったり入ってきたり。何ということもなく人が立ち寄り、おしゃべりしていくような家だった。
 それが今はこんなに閉鎖的に暮らしている。子ども達が家を離れた後、訪問者が減ったのと、鍵をかけるようになったのと、どちらが先だったろうか。玄関先での立ち話がなくなって、少し寂しいと思わないでもない。
 この変化には、携帯電話の普及も関係しているに違いない。人はまず電話でアポイントメントを取ってから訪れる。よって、前触れするほどでもない訪問が減っていく。 人と人をつなぐツールが、かえって人と人との生身の交流を妨げているようにも思える。
 時代の流れというべきかもしれないが。            (舞)

 若いころのように食べられないが、それでもビュッフェに行くと、デザートを食べ過ぎてしまう。一切れが小さいのを良いことに、あれもこれもと。
 「ああ、ずつな」と声にして、その言葉を久しぶりに使ったと気がついた。関東育ちの友人に「ずつないって分かる?」と聞いてみる。地元の若い人にも分からないかもしれない。
 「ずつない」は満腹で苦しいことを意味する。単に苦しいだけではなく充足感のようなものが含まれる言葉である。お腹を撫でながら言ったりすると、それらしい。
 そういえば、気ずつないという言葉もあった。「ずつない」はどのあたりまでの方言かと調べてみたら、「術無し」と書く古語だとあった。
 標準語だと思っていた言葉が方言だったり、方言だと思っていた言葉が標準語や古語だったりすることがある。WOOD JOB!の原作「神去なあなあ日常」の「なあなあ」も方言のように見えるが辞書に出ている。 歌舞伎の掛け合いが由来だそうで、折り合いをつけて雰囲気で物事を運ぼうとするさまを表現する。津の人なら「なあなあで行こに」、伊勢なら「なあなあで行こまい」と笑顔とともに言ったりすると似つかわしい。
 この地は都に近かったせいか、古語が残って方言となっている場合も多い。柔らかい関西弁とも言われる三重弁が、私は大好きだ。    (舞)

 とても面白いという評判を聞いて、映画館に足を運んだ。美杉で撮影された映画WOOD JOB!(ウッジョブ)。エキストラとして参加した知人を見つけられるか、美杉の見知った景色に出会えるかという興味もあった。
 映画は林業をテーマとした青春コメディで、「青年よ大木を抱け」とポスターにある。都会の若者が田舎で鍛えられる、ありきたりのストーリーだろうと、内容にはそれほど期待していなかったが、大いに楽しんだ。俳優陣の活躍と脚本の良さと監督の腕だろうか。
 主人公は都会育ちのちゃらちゃらした十八歳である。失敗を重ねる彼を、くすくす笑いながら見ていると、へらへらしながらも少しずつ変わっていく。取り巻く田舎の人々も個性的で魅力的。伊藤英明の山猿っぽいカッコよさが出色である。
 聞いたところ、俳優は実際に高い木に登って枝の上に立ったり、大木を切り倒したりしたらしい。実写とは思えないほど大掛かりなシーンもあって、映画にはCGが当たり前という認識を改めることになった。
 見終わって、爽やかな気分になった。原作者のお父さんが美杉出身だそうで、親戚の方々も美杉にお住まいとか。勝手に親近感を感じた私は、未だろくに挨拶もできない主人公が、この先美杉の山でどんな変化を遂げるだろうと、映画の続編までも期待したのであった。       (舞)

[ 20 / 42 ページ ]« First...10...1819202122...3040...Last »