女の落書帖

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 「二度とうちの敷居をまたぐな」言われたことはないけれど、そういう表現がある。出入り禁止という意味だ。
 敷居はまたぐものである。言わば結界で、寺の山門などの高く幅広い敷居でも、やはりまたぐ。家の玄関や、部屋と部屋との間の敷居もまたぐ。踏んではいけない。これが、日本の常識である。
 ところが、今どきの家は、バリアフリーなのである。洋風のドアも和風の引き戸も、今どきの家の敷居は床と同じ高さである。スリッパでパタパタと歩くとき、ふと気がつくと、スリッパの先端が敷居の上にあったりする。敷居が低すぎる。
 敷居が高いという表現は、人の家に行きにくいときに使われる。またげないほど敷居が高く感じられるわけである。踏めば簡単に越えられそうな敷居も、踏んではいけない。
 畳のヘリも踏んではいけないものである。和室を歩くときには、畳のヘリを踏まないために、歩幅を調節する。昭和育ちの私は、理由を知らないまま、ほとんど反射的に歩幅を調節している。子どもの頃に身に付いた習慣は崩れない。
 バリアフリーのフローリング育ちだったら、敷居も畳のヘリも気にすることなく踏んづけるに違いない。暮らし方の変化が、習慣を変えていく。日本の文化がすたれたと嘆くべきか、変化した社会に習慣が追い付いたと認めるべきか。 (舞)

 実家の押入れを整理していたら、おはじきが一つコロンと出てきた。姪っ子が遊んだものか、それとももっと古くて、私が子供の頃に遊んだものか。
 平べったく丸い透明ガラスの端にひと筆の緑色がある。表面の波のような凸凹が懐かしい手触りだ。
 どのように遊んだのか、遠い日を思い出した。ぎゅっとつかんで、放り投げ、いったん手の甲で受け止めた後、再び放り投げて、落ちてくるのを今度は手の平でつかみ取り、取った数を競う遊び。
 弾いて遊ぶこともあった。ざっとばら撒き、その中の二個を選び、間を指で切る仕草をした後、片方を弾いて他方にぶつける。うまく当たれば、そのおはじきが自分のものになる。
 陣取りもした。紙の隅の自分の陣から、おはじきを弾き、3回目で自陣に戻ってくる。弾いた軌跡が自分の陣地となり、その広さを競った。
 どれも取ったり取られたりするゲームだが、おはじきの所有権が移るわけではなかった。取った数を競った後は、おはじきを持ち主に戻した。男の子のメンコやビー玉遊びとはそこが違った。
 今の子供たちは、ゲームソフトの中で取ったり取られたり、得点を競ったりしている。遊びとして面白いのは同じだろう。さて、何が違うだろうか。手の平でおはじきを転がしながら考えを巡らせた。(舞)

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