女の落書帖

 名古屋の三十歳のレンタカー暴走は衝撃的だった。朝日町の十八歳の逮捕には心底驚いた。柏の二十四歳に至っては呆気に取られた。子育てはなんと難しいのだろう。容疑者逮捕のニュースを聞くたびに、そう思う。
 事件の被害者とその家族の苦しみ悲しみは、それはそれはたいへんなものだろう。しかし、加害者側の家族の苦しみも、はかりしれないほど大きいと思う。
 子どもを悪い人間にしようと育てる親はいない。おむつを替え、食べさせ、着せて、遊んでやって、学校へ送り出して…。そういう日々を続けたあげく、わが子が容疑者になったとしたら…。
 まず、自分の子育てに間違いを探すだろう。いつの、何が悪かったのか。どこで道を間違ったのか。間違いを正すには、どうすればよかっただろう。修復は可能なのか。
 成人した息子の所業まで、親は責任を持てないという考え方もある。それはそれで納得できるが、それでも責任を感じてしまうのが親であろう。
 取り返しのつかないことをして容疑者となった子にも、その後の人生がある。それを支えていくのも親の役割だ。一緒に償うことも親ならば考えねばならないだろう。
 子が三十歳になっても四十歳になっても、親の安心は得られそうにない。子育てが間違っていなかったと確信できる日は、いったいいつ来るのだろう。     (舞)

 久しぶりに白塚の魚屋まで行ってみたら、春が来ていた。バカガイの大きなむき身が一パック四百二十円、生の小女子が三百五十円。そして、ざるに大盛りのメカブが四百円。
 メカブはワカメの根元の生殖細胞が集まっている円い葉である。この時期に生で市場に出てくる。ワカメ自体が、胞子体と呼ばれる生殖の形なのだが、中でも、重要な部分である。普通に食べるビラビラ部分よりも栄養豊富で、免疫アップ、ガン予防効果があるとか…。
 志摩を始め、各地で養殖されているワカメだが、食用にするのは日本と朝鮮半島だけだという。世界的には港の害藻として嫌われているらしいのはもったいない話だ。外国でもワカメを採って健康食品として売り出せば、一石二鳥だろうに。
 ワカメは胞子を出しきったら枯れてしまう。育つのは秋から冬で、収穫は春。春風に誘われて伊勢志摩に出かけると、新ワカメがたくさん売られている。海から上げてそのまま干した素干しワカメの大袋を買えば、スーパーより格段に安く、新鮮な地元産が手に入る。
 さて、メカブはさっと湯掻いて水で冷やし、フードプロセッサーでみじん切りにした。三杯酢やポン酢で食べたり、汁物に入れたり。
 健康情報については半分ぐらいに聞く私も、おいしく食べて健康が得られるなら喜んで摂取する。      (舞)

 息子が大学入学で家を離れたのはずっと前のことだが、小学生から使った学習机はまだそのままにしてある。いくらなんでも、もう片付けてもよいだろうと思って、引き出しを開けてみた。
 私に似て整理下手な息子である。高校時代の写真やら、運動会のメダルやら、筆記用具やらがごちゃごちゃと入っている。大事なものは持って行ったはずだから、ここにあるのは基本的に必要ないもの。思い出の多寡がものの価値となる。
 片付けるには、まず分別しなくてはならない。捨てるもの、保存するもの。でも、これが難しい。写真はとりあえず保存するが、その他のものにまつわる物語を知らない。息子に無断で捨てても良いかどうか、どれもこれも判断保留となってしまう。
 ウサギの貯金箱を見つけた。中を見ると一円玉に五円玉が混じっている。全部で数百円だから、これは私が使わせてもらうことにした。一円玉もこんなところに滞っていないで流通したいだろう。息子の小遣いを着服するみたいで気が引けるが。
 そもそも机をどうするか。壊れていないけれど、使う当てもない。来週のゴミの日に集積所に運べば片付くけれど……。
 でも、それが難しい。息子の机については、私にも思い出がある。来週捨てなくとも、その先でもかまわないだろう。結局、家から姿を消すのはウサギの貯金箱の中身だけ。(舞)

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