女の落書帖

NHKで鶴瓶さんの番組を見ていた。鶴瓶さんは、出かけた町で様々な人に出会う。いつもながら鶴瓶さんの話術は巧みで、相手の個性を引き出してカメラの前に見せてくれる。
一人の女性との別れ際、鶴瓶さんは両手を広げ、自然な形でハグをした。抱き合って背中をポンポンとたたいて、すっと離れた。見ていて暖かい気持ちになる別れのハグだった。
さて、ハグは日本において自然な行為となっているだろうか。この間友人から聞いた話で、ご主人が昔お世話になったご夫婦が伊勢観光にいらしたのでお会いした時のこと。友人が「遠いところをようこそ」とお辞儀をしたら、奥様がぎゅっと抱きしめてくれたそうだ。「都会の人は挨拶の時、お辞儀やなくてハグをする」と驚いていた。
そういえば、去年評判の高かったドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」で「火曜はハグの日」だった。私の知らないうちに、ハグは日本人の慣習となっているのかもしれない。
私もハグをしたことがあるが、それは小さい子をあやすときのこと。大人同士の挨拶としてのハグは未経験だ。そんな場になったらどうしよう。体から加齢臭や汗の匂いなどしたら申し訳ない。誰かに会うかもしれない日には、オーデコロンなど振りかけて、良い香りの人にならなくては。想像するだけで汗が出てしまいそうである。(舞)

週末には新聞折り込みのチラシがどさっと届く。たいていその中に求人広告があって、つい見入ってしまう。今から転職しよう、面接を受けようという気持ちはない。ただ、興味がある。どこに、どんな仕事があって、それでいかほどの収入となるのか。企業はどんな人を求めているのか。
「簡単なお仕事です」「未経験の方大歓迎」「女性が活躍しています」「スピード昇給可能」「週払いOK」企業側はさまざまなキャッチコピーを並べて、採用計画を達成するべく努力している。
現在の就活の状況は、新卒も転職も売り手市場で見通しも明るいという。就職氷河期と言われた時期の息子の苦労を知るだけに、素晴らしいと思う。求人広告からも、それが見える。数年前より、初任給もパートの時給も高くなっている。
人手不足だと言われる原因は、素人でも見つけることができる。団塊の世代が仕事を離れただろうし、介護分野やIT分野の仕事が増加しているだろうし。
工場の自動化は今後ますます進み、人は要らなくなるようにも思えるが、行程全体を把握するエンジニアや分析や改善をする人材はやはり必要となる。その上、消費者はますますサービスを求め、新たな仕事が発生するだろうし。
週末の求人チラシが面白い。一枚のチラシから社会のありようが見えてくる。      (舞)

朝、布団から起き上がった途端、「うっ」と声が出た。胸が痛い。右胸だったから、心臓病でも恋の病でもないことはすぐに分かった。昨夜まで異常がなかったのに、いったいどうしたことだろう。
何本かのろっ骨の中ほどの一本の真ん中がおかしい。動かないときは何でもないが、胸に力が入ると痛い。指で押すと痛い。内臓ではなく、骨か腱か筋肉のようなものの痛みだと自己診断した。
きっと、どこかでぶつけたとか、ひねったとか、寝相が悪かったとかしたのだろう。病院へ行くほどでもないと、それも自己判断した。日常の仕事はこなせるつもり。
だが、痛みというのは、不自由なものである。掃除機を動かして「うっ」、洗濯籠を持ち上げて「うっ」、椅子に座るのも椅子から立ち上がるのも慎重になった。
それだけではない、この痛みは何か大きな病気の前触れではないかと心配になった。近頃、私の周囲で病気に倒れる人が多い。先週まで元気にいたのに入院手術と聞くと、他人事とは思えない。病気が私を避けていくといういつもの楽観が揺らぐ。
「ろっ骨をほんの少し痛めちゃって……」と言いながら、何でもないことにしてしまいたい自分がいる。五日経っても痛みが軽くならなければ、病院に行こう。不安が次の病気を引き起こすといけないから。  (舞)

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